変わる介護サービス(9) #生活援助 #介護シェアリング #介護助手...

生活援助の多いケアプランの届け出義務化

基準を超えたサービス数の場合、届け出が義務化される

2018年10月から、訪問介護の「生活援助」を多く盛り込んでいるケアプランについては、市町村に届け出ることが義務化されています。

生活援助は、訪問介護員(ホームヘルパー)が調理や掃除、あるいは洗濯などの家事を行うことで高齢者を支援する介護保険サービスです。

生活援助サービスについて、財政の合理化を図りたい財務省から「過剰なサービスが一部行われている」と以前から指摘されていました。

その声を反映する形で、今年の介護報酬改定時に運営基準が改正。規定された回数を上回る頻度で生活援助が利用された際に、サービス提供の必要性をケアプランに記載し、市町村に届け出ることが義務付けられたのです。


要介護度別の回数における決定方法については、2016年10月から2017年9月までの生活援助に対する給付実績から、各月の「1ヵ月あたりの全国平均利用回数+2標準偏差(データの散らばりの度合いを示す値のこと)」を計算。

最も高い値となった月の回数を基準としています。


規定の回数以上の生活援助を利用する場合、担当のケアマネジャーはそのことをケアプランに盛り込んだうえで、利用者に交付した翌月の末日までに市町村に届け出ねばなりません。

届け出のあったケアプランは、市町村の地域ケア会議などの場で、自立支援や重度化防止に値する内容かを検証します。


6割のケアマネがケアプラン作成時に基準回数を配慮すると回答

制度が開始されて2ヵ月以上経過(2018年12月現在)しましたが、規定の回数を超えないように忖度するケアマネジャーが多い、という実態が明らかとなっています。

12月13日、株式会社インターネットインフィニティーが、「#ケアマネジメントオンライン」上で会員であるケアマネジャー(N=609)を対象に行ったアンケート調査結果を発表しました。

それによると、「生活援助の基準が示されたことで、ケアプラン作成時の考え方が変わりましたか」という質問に対して、「常に基準を超えないようにしている」との回答は全体の17.0%で、「基準に近いケースなどは、少しだけ気にするようになった」が42.0%となりました。つまり、ケアプランを作成する場合に全体の6割近いケアマネジャーが基準回数に配慮していることがわかったのです。

「基準に引っかかるかもしれない」ことを理由に、利用回数を減らすよう利用者にお願いしているケアマネジャーが一定数いるのが現状。基準回数が制限でないことは国が自治体に周知しているにもかかわらず、実際の現場では基準への忖度が行われていたのです。

その結果、10月以降に基準回数を超えたケアプランを届け出たケアマネジャーは、全体のわずか4.5%にとどまっています。


不当な回数の生活援助が行われていたと財務省は指摘

不当な回数の生活援助が行われているのではないか、と問題提起された要因のひとつに、2017年7月5日に行われた厚生労働省の社会保障審議会介護給付費分科会があります。

財務省が用意した資料をもとに、「訪問介護の生活援助中心のサービスは、全体の平均では1人あたり月9回程度となっているが、月31回以上の利用者が6,626人おり、なかには月100回以上も利用されているケースがあった」ことを指摘。

こうした現状を理由に、生活援助の利用に際して一定の基準回数を設け、それ以上に達するときは届け出をさせ、ケアプランの妥当性を検証すべきとの意見が多発したのです。

これに対して「#認知症の人と家族の会」理事は、「100回以上といっても1日3回程度のことで、認知症の方が在宅で暮らしていくことを考えると、生活上必要と言える」と反論しました。しかし、その意見が通ることはなく、基準回数の設定と届け出の義務化は制度化されたのです。


届け出が義務化されたことによるデメリットとは

主なサービス内容は調理と服薬の確認

ホームヘルパーが生活援助のために1日あたり約3回の定期訪問を続けると、月に100回近くになります。

一見すると利用回数が多いようにも見えますが、そこで行われているサービスの大半が、生活するうえで欠かせない朝昼晩の調理と服薬の確認です。


例えば、北海道に毎月101回の利用を行っている方がいますが、「要介護3」の認定を受けている80歳の一人暮らしの方で、朝昼晩の食事作りとその後の服薬管理が欠かせないため、1日3回以上利用しているとのことです。

また、宮城県では、認知症のため調理ができない一人暮らしの方に対して、日々の調理と服薬の確認のために毎月90回の訪問介護が行われています。心身上の理由により自分自身で食事が作れない独居の要介護者の場合、生活援助があるからこそ在宅生活ができるわけです。


社会保障審議会でのこうした指摘は、現場に問い合わせをしないで「100回」という数字だけを公開し、「社会保障費用を削減のため、ことさらに異常性を強調しようとしたのではないか」という考え方もできてしまいます。

ケアマネジャーは今回の義務化について、どのように思っているのでしょうか?

アンケート調査によれば、「今回の基準回数の設定が利用者の自立支援に役立つといえるか」との問いに対して、「いえない」と答えたケアマネジャーの割合は81.7%にも上りました。

「#介護現場革新会議」が業務の切りわけや介護助手の活用などを推進

2018年12月11日、厚生労働省は特別養護老人ホームや介護老人保健施設の団体の関係者らを集めた『介護現場革新会議』を立ち上げ、初会合を開きました。

この会議は、今後進行していく超高齢社会に対応できる体制を整備すべく、介護現場における業務の効率化や、職員の負担軽減を実現する具体策を検討するために作られた組織です。

介護の業務を、高い専門性が必要なものとそうでない仕事にわけ、介護助手を活用するなど、人材を有効に役立てるマネジメントを広める手立てや、人手不足を解消する方策も検討していくとしています。会議に出席した根本厚労相は「生産年齢人口が急激に減っていくなか、サービスの質を落とさずに介護ニーズの増大に対応していく必要がある」と声明を発表。

介護職が専門性を発揮できる環境が必要

介護助手が担う仕事は、清掃や備品の準備、あるいは食事の配膳など、利用者との身体接触のない介護サービスを中心とした、高い専門性を必要としない業務です。

介護助手を既に導入している三重県では、介護助手を専門知識の有無などによりAクラスからCクラスまでの3つにわけ、それぞれ担当する業務を変えています。


Aクラスでは、認知症高齢者への対応や見守り、話の相手、レクリエーションといった一定の専門知識や経験を要する仕事となりますが、

Bクラスでは、利用者の身体状況に応じたベッドメイキングや、食事の配膳における注意、

Cクラスでは清掃や片付け、備品の準備など、比較的難易度の低い業務を担当することになります。


また、介護福祉士などの資格を有するスタッフとそうでないスタッフが同じ業務に当たっているという状況を改善し、業務の合理化を果たすことができると考えられているのです。


新たな担い手として期待されるシニア層と主婦層

介護助手の担い手は、幅広い年齢層から募集を行うとしていますが、特に中心的な役割を果たすと期待されているのは、シニア層と主婦層です。

前述の三重県では、60歳から75歳ぐらいまでの元気な高齢者を介護助手として採用しています。60歳以上の高齢者でも、就業したいという声は多く、以前介護業界で働いていたという人や、あるいは家族の介護を行っていたという人にとっては、経験を生かすことができる職場だと言えるでしょう。

また、短時間の出勤など、比較的働き方の自由が利くため、子育て中の主婦層などが、担い手となるのではないかと考えられているのです。

この介護助手においては、法律上の位置づけがないため、特別な介護の資格や介護業務の経験が必ずしも必要とはされないなど、新規に参入するハードルも低いのが特徴です。


施設側の受け入れ態勢の未整備が問題に

ここまで介護分野における分業化のメリットを説明してきましたが、超えるべきハードルも多く残されているのも事実です。

まず、介護助手に頼むべき仕事の切りわけや、その役割の明確化など、受け入れる側に体制の整備が必要となることが挙げられます。

#介護シェアリングを行った施設のなかには、受け入れ体制が整わないままに介護助手を受け入れた結果、専門的な業務に対する指導時間が増えてしまい、逆に介護スタッフの負担が増加したという事例も報告されています。

ほかにも、潜在的な人材として期待される元気な高齢者や主婦層などは、稼働日や時間など、労働への制約が大きく、多様であるという特徴もあります。

そのため、業務の限定や、稼働日や時間に自由を持たせるなど、フレキシブルな労働を可能とする環境整備も必要になってきます。

また、現状特別な資格は要らないものの、現状乱立状態にある介護の資格が、介護助手を目指す人に「どの資格を取れば介護助手の仕事に役に立つのか」という混乱をもたらす恐れがあります。

この部分を整備し、検定試験を導入するなど、分かりやすい指針を示すのも、今後必要となるかも知れません。


介護シェアリングによる「細分化」で人手不足を解消

現在、こうした介護現場での業務の細分化を行う「介護シェアリング」に着手している施設は全国で増加しつつあります。

この分業化は現場で働く人々、事業者ともにメリットがあるとされているからです。

介護業界には、短時間しか働けなかったり、業務内容が複雑なために自信がなかったりという理由で働くことを諦めてしまう潜在的な人材が一定数存在していました。

そうした人々にとって、分業化はシンプルな業務を短時間でも行えることから、介護業界で働くことを可能にする手段となります。

また、事業者にとっても、新しく採用したスタッフが業務を円滑に行えるようになるまでの時間が短縮されることや、多様な人材の採用ができるようになるために人手不足を解消できるメリットが存在します。

もちろん、この実用化には先述の通り、分業化をきちんと行える体制を施設側が整えるなどのハードルを越えることが必要です。

しかし、この介護シェアリングが、より効率的な労働を可能とし、介護業界に人が定着する手段として、有効なものであるということが実証されつつあるのも確かです。

今後も、こうした介護業界にブレイクスルーをもたらす新たな施策が介護の現場で普及することが望まれているのです。


#AI搭載のアイオロスロボット、日本初上陸 “介護助手”として展開へ

サンフランシスコに拠点を置くアイオロス・ロボティクスが11日、人間の仕事を支援するAI搭載の「アイオロス・ロボット」を日本でも展開していく計画を発表した。


ターゲットに選んだのは介護の現場。

サービスの需要の拡大や人手不足の深刻化などを踏まえ市場の将来性を見込んだ。

アレキサンダー・フアンCEOはプレゼンで、「施設での運搬や回収、片付けなど幅広い仕事をサポートできる。業務の効率化や負担の軽減につなげられる」と述べた。

既に国内で実用化に向けたテストを始めている。

11日から販売代理店の募集を開始した。

2019年4月からサブスクリプションの予約を受け付け、8月にも提供を開始する予定。価格は月額15万円。

ヒト型の「アイオロス・ロボット」は自律走行が可能。

カメラやセンサを通じて周囲の環境を学習し、そこに誰がいるか、何があるかを見分けられる。急に倒れた人がいるなど、異常を察知するとすぐアラートを出す。長い2本のアームはモノを持つ、拾う、置くことができ、ドアも開けられる。

AIが学んだ情報はクラウドからロボット間で共有される。音声で指示を与えることも可能。


想定されている役割はいわゆる「介護助手」に近い。

任せられる業務として、清掃、配膳・後片付け、ゴミ出し、荷物の運搬、洗濯物の集配、見守り、夜間のパトロールなどがあげられている。

同社は高い性能をアピールしており、生産性の向上にどこまで貢献できるか、現場への普及を進められるかに注目が集まりそうだ。

この日の発表会で登壇した高齢者住宅経営者連絡協議会の森川悦明会長(オリックス・リビング取締役社長)は、「ロボットにパートナーとして支えてもらえば、介護職員は人が本来やるべきこと、専門性の高い仕事に専念できる。

業務の効率化や負担軽減だけでなく、サービスの質の向上にもつなげられる」と説明。

「新たな技術に非常に期待している。周辺の業務を支援するロボットの役割は、やがて高齢者住宅のオペレーションを形作っていく」と語った。


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