変わる介護サービス(7) #介護予防を促すアウトリーチ 練馬区が新たな試み
高齢者のみの世帯を個別訪問
2018.6.25
東京都練馬区は今年4月から、高齢者が1人で暮らす世帯や高齢者のみの世帯を個別に訪問する事業を始めた。
介護保険を利用している人などを除いたおよそ2万人が対象。
地域包括支援センターの職員やボランティアが担い手となり、生活の状況を把握しつつ介護予防の活動などを促していく取り組みだ。
スタートした経緯や目指す効果などについて担当する高齢者支援課の今井薫課長に聞いた。
−− 事業の概要を教えてください。
地域包括支援センターの職員と協力してくれるボランティアが連携し、対象者の自宅を個別に訪問しています。
本格的に始まったのは今年4月からですが、区内の3ヵ所の包括で昨年度からモデル事業を進めてきました。
最初は社会福祉士などが訪ね、専門的な視点で評価します。
どんな生活を送っているか、何か問題を抱えていないか −− 。
ここで見守りが必要だと判断したら、その後もボランティアの方などに定期的に訪問して頂きます。必要があれば介護保険制度につないでいきます。
−− 特に問題がなかった場合は?
介護予防の取り組みをお勧めします。
近くで開催されている活動などの情報を提供し、参加してみてはどうかと呼びかけるんです。
−− 多くの世帯を回らなければいけませんよね。
訪問担当の常勤・専従の専門職2名を地域包括支援センターに4月から新たに配置しました。
1つのセンターで700人から800人ほどカバーするため、年間で1人あたり約400人を担当する計算になりますね。
ボランティアの方には1人あたり多くて5人、平均で1人から2人を担当して頂いています。「買い物のついでに寄ります」などと言って気軽に参加してくれる方が多いんですよ。
−− ボランティアは集まりますか?
今、全員で200人程度ですね。70歳前後の方が多いです。
事業はまだ始まったばかり。
ボランティアにつなぐケースがそれほど多くないため、今のところは不足していません。今後は人数を増やしていこうと考えています。
−− 取り組みを始めたきっかけ、経緯は?
練馬区は1人暮らしの高齢者が非常に多いんです。
今年3月の時点で5万人を超えており、区内の高齢者数(15万8000人)のおよそ3割を占めています。
以前とったデータでは、2人以上で暮らす高齢者の要介護認定率が15%弱だったのに対し、1人暮らしの高齢者は30%を超えていました。
この差をなんとかしないといけない −− 。それが最も大きな問題意識でした。
高齢者のみの世帯も、日々の暮らしを続けていくうえで何らかの課題、困りごとを抱えているケースが少なくないので、訪問の対象に含めています。
−− 認定率の格差に着目した取り組みなんですね。
我々はこの事業で、介護予防の活動につなげていくことを重視しています。
継続的な見守りも大事ですが、社会参加や介護予防をより活発にしていくことに大きなウェイトを置いています。
見守りのための訪問は多くの自治体で行われていますが、介護予防を呼びかけるアウトリーチは珍しいのではないでしょうか。
−− 効果は出そうですか?
前向きな方は積極的に顔を出して頂ける一方で、本当に来て欲しい方にはなかなか来てもらえない −− 。地域の活動にはそんな現実があります。
公式サイトや区報なども十分に見られません。
必要なところに必要な情報が届いていないことが課題でしょう。
そこで訪問です。
公式サイトや区報などで発進するだけよりは高い効果が出ますよ。
区では2年前から、独自の介護予防の拠点として「街かどケアカフェ」を設置してきました。
その事業の中で、職員が1人暮らしの方のお住まいへ行って直接誘うという取り組みを行ったのですが、その時の成功体験がベースになっています。
お誘いした人の約4割がカフェに来てくれたんです。
−− 今後の展望、目標は?
区内の高齢者のみの世帯は今後も増える見通しです。
1人暮らしでも安心して住み続けられる地域を作りたい −− 。我々はそう考えています。
練馬区は地域の活動が盛んで、介護予防の取り組みも積極的に行われています。
NPOやボランティアの数も都内では多い方なんですよ。
つまり、長く元気でいるために必要な要素は揃っている。
あとはそこへどうつなげていくかが重要でしょう。
この事業はそうした認識から生まれました。1人でも多くの方が元気でいられるきっかけを作れればと思っています。
厚労省、介護予防の「通いの場」テコ入れ 専門職を置き高機能化 医療と一体実施へ
2018年7月27日
厚生労働省は26日、介護保険の介護予防と医療保険の保健事業を一体的に実施するための新たな仕組みを創設する方針を決めた。健康寿命の延伸につながる効果の高い事業を展開し、今後の給付費の伸びを抑えていくことが狙い。
社会保障審議会の部会で提案し、委員から大筋で了承を得た。
厚労省が想定しているのは、全国に7万6492ヵ所ある介護保険の「通いの場」をうまく活用すること。
厚労省が想定しているのは、全国に7万6492ヵ所ある介護保険の「通いの場」をうまく活用すること。
参加者同士のコミュニケーションや関係づくり、体操・運動といった既存の取り組みにとどまらず、専門家による疾病予防や口腔管理、フレイル対策などのサービスも併せて行っていく。
言わば「#高齢者サロンの高機能化」で、保健師や栄養士、リハ職などに活躍してもらう構想を描いている。
同様の取り組みは以前から一部の自治体で実践されてきた。
「その制度的な位置づけを改めて明確にすることで、広く全国へ普及させていきたい」。
厚労省の担当者はそう話す。介護保険と医療保険の垣根を取り払い、地域ごとの体制をより効率的に作ってもらいたいという思惑もある。
大もとの制度が異なるため、相互に関連が深い介護予防と保健事業をそれぞれ別々に進めている地域が少なくないが、そうした縦割りの弊害を無くしたいという。
厚労省は今後、8月にも新たな有識者会議を立ち上げて本格的に検討を始める。
焦点はいくつかあるが、最も大きいのはやはり新事業のフレームワークだ。
都道府県と市町村の役割分担や財源の負担の配分などをめぐり、関係者が折り合いをつけなければいけない。
高齢者の健康を支援するメソッドにも注目が集まる。
現場ではどんな取り組みに力を入れてもらうのか、専門職はどのように関わっていくべきなのか、先行事例から学ぶべき重要な課題は何か −− 。
そうしたポイントを話し合い、有効かつ現実的な制度を作ることが課題となる。
厚労省は年内をメドに一定の方向性を示す予定。担当者は「今後の議論にもよるが必要があれば法改正も行う」と説明した。
2020年度にも新たな事業を始められるように進めていくとしている。
【#総合事業】老健局長「現状は本来の姿ではない」 住民主体の介護、ごく僅か
厚生労働省で介護保険制度を担当する老健局の濱谷浩樹局長が11日、今後の地域包括ケアシステムの展開について都内で講演した。 2018.7.13
昨年度から全ての市町村で開始されている新しい総合事業の訪問・通所について、民間のシンクタンクに委託して行った調査の結果を紹介。
住民主体のサービスがまだ普及していないという認識を示し、「これをいかに広げていくかが課題。現状では本来の姿ではない」と述べた。
委託調査は昨年10月に実施されたもの。全国の1741市町村が対象で、94.5%の1645市町村から有効な回答を得たという。
それによると、予防給付の時と同様の「従前相当」ではない多様なサービスを運営している事業所は、昨年6月の時点で訪問が1万1159ヵ所、
通所が1万61ヵ所だった。総数に占める割合は、訪問が25.9%、通所が20.3%となっている。
多様なサービスの内訳をみると、多くを「基準緩和型(サービスA)」が占めている。
訪問で89.6%、通所で67.6%だった。
一方で、住民主体のサービス(サービスB)はごく僅かしかない。
訪問が415ヵ所(3.7%)、通所が906ヵ所(9.0%)。
「従前相当」も含めた総合事業全体でみると、訪問は1.0%、通所は1.8%にとどまっている。
このほか、多様なサービスの実施主体は介護事業者、企業、社会福祉法人が多いことも報告されている。
濱谷老健局長はこれらを踏まえ、「多様なサービスの事業所は結構な数になっているが、介護事業者が少し安く提供している『基準緩和型』がほとんど」と分析。
「昨年4月に総合事業へ移行したばかり」とも述べ、これから好転させていきたい考えをにじませた。
「小多機はテコ入れが必要」
濱谷老健局長は講演の中で、複数の地域密着型サービスの介護報酬や運営基準などを見直すことの必要性にも言及した。
中・重度者を在宅で支えていく観点から、小規模多機能や看護小規模多機能、定期巡回・随時対応サービスなどの重要性がさらに増すと指摘。
「都市部では高齢者が急増していく。量を確保していくことを考えると、こうしたサービスはさらなるテコ入れが必要ではないか」と明言した。
このうち小多機については、「医療ニーズへの対応が課題の1つ。利用者の状態がかなり重くなると支えきれない」と指摘した。
시간이 흘러도 - Song Ha Ye
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