介護サービスの質をどのように評価するか... #インセンティブ改革



2017/01/04 19:00

政府は2016年12月19日、要介護度の重度化を予防する取り組みで成果をあげている市町村を財政面で優遇すると発表しました。

制度の枠組みを2017年末までに決め、2018年4月から適用する方針。

介護予防に積極的に取り組むインセンティブを与えることで高齢者の自立支援を促進しつつ、総額10.4兆円にも及ぶ介護費用の膨張を抑えるねらいです。


介護サービスの質をどのように評価するか、議論は迷走中

2015年6月、政府は「#骨太の方針(経済財政運営と改革の基本方針)」のなかで、「全国一律に一定の行政サービスを保障する仕組みのもと、コスト意識が希薄化している」などと指摘。

「#インセンティブ改革」を推進することで、「政府はもとより、国民、企業、自治体などが自らムダをなくし、公共サービスの質の向上に取り組む意欲を喚起し、その量的な増大を抑制する」と打ち出しました。

さらに、「要介護認定率や一人あたり給付費の地域差について、高齢化の程度、介護予防活動の状況、サービス利用動向や事業所の状況などを含めて分析し、保険者である市町村による給付費の適正化に向けた取り組みを一層促す」と書かれています。

これは、要介護認定率や一人あたりの給付費の少ない市町村が財政的メリットを受けられる仕組みについて言及したものですが、大きな課題に行き当たります。

それは、どのようにして介護サービスの質を評価するかということです。


評価モデルのうち「#アウトカム(結果)」指標は設定、評価が難しい

現行の介護保険制度では、要介護度が高いほど介護事業者に支払われる報酬が多くなるため、介護事業者が要介護度の改善に消極的になりやすいといった声も上がっています。

つまり、リハビリなどに注力し、要介護度を改善させた事業者ほど報酬が低くなるというジレンマがあります。

「インセンティブ改革」は、こうした課題を解消するための施策として注目されています。

とはいえ、介護事業者の成果をどのように評価するかが問題です。


現状、介護サービスの質の評価は、以下の通り、

「#ストラクチャー(構造)」

「#プロセス(過程)」

「#アウトカム(結果)」

という3つの視点から行われています。

この評価モデルは、アメリカの医師であり公衆衛生学者である #アベティス・ドナベディアンによって考案されました。


「ストラクチャー(構造)」とは、

医療を提供するのに必要な人的、物的、財政的資源のこと。

専門職および医療機関の数や規模、施設さらには医療提供体制や医療保険制度などが該当し、看護職員配置加算や夜勤職員配置加算などが具体例として挙げられます。


「プロセス(過程)」とは、

医療従事者と患者の間の相互作用を評価するもの。

医療内容の適切性や医療従事者の患者に対する接遇などが該当し、リハビリテーションマネジメント加算やターミナルケア加算などが主なものです。


「アウトカム(結果)」は、

医療によってもたらされた健康状態の変化のこと。

身体的生理的側面だけでなく、社会的心理的側面の改善や患者の満足度なども評価の対象となっています。

在宅復帰・在宅療養支援機能加算や事業所評価加算などが「アウトカム(結果)」指標のひとつです。

介護報酬上の主な介護サービスの質の評価(例)

このなかで特に問題となっているのは「アウトカム(結果)」。

「ストラクチャー(構造)」や「プロセス(過程)」は、人員配置を順守することなどで評価が可能ですが、「アウトカム(結果)」は、“健康状態の変化”を対象としたものであるため、評価が恣意的になりやすいという声も出ています。


高齢者は、身体や精神機能の悪化および改善を繰り返すことが多く、評価する時点によってまったく異なった判定になる可能性があります。

また、介護事業所の努力や責任の及ばない要因の影響(本人の努力など)により、健康状態が変化するケースも。この場合、要介護度が変化したとしても、提供される介護サービスによるものなのか一概には判断できず、評価につながらないという意見があります。


岡山市、川崎市などが国に先行して「インセンティブ改革」を実施

政府が評価基準を構築する前に、自治体独自で「インセンティブ改革」を実施している例もあります。

岡山市は、政府の「地域活性化特区」政策を活用し、「岡山型持続可能な社会経済モデル構築特区」を実施。

このモデルの柱となるのは「デイサービス等への成功報酬制度の導入」です。

これは、要介護度が改善した場合に、介護事業所に対し、別途報酬を加算する施策です。


デイサービス事業者のうち、この取り組みに賛同する事業者を対象に、全体の介護報酬のうち半分を成功報酬とし、要介護度が改善した場合は介護報酬を増やす、介護度が悪化した場合は介護報酬を引き下げる、といったように、インセンティブ部分とのトータルバランスを保ちつつ、介護報酬の抑制を図っています。


川崎市では「かわさき健幸福寿プロジェクト」を2016年から実施。

7月1日から2017年6月30日までの1年間を1サイクルとして、プロジェクトに参加する介護事業者が、利用者や家族の希望を踏まえて要介護度や日常生活動作の改善に取り組み、一定の成果を上げた事業所に対し、2017年9月にインセンティブ(報奨金や市長表彰、川崎市ウェブサイトへの掲示など)を付与するもの。

参加条件は、ケアマネジャーを中心にチームケアに取り組むことです。

成果目標は、要介護度および日常生活動作で、要介護度は、対象者のうち17%以上が改善するかもしくは一定期間要介護度を維持した者が65%以上であること。

日常生活動作は、対象者のうち50%以上が改善したこととなっています。


国民が納得できる評価モデルを構築するのは容易ではない

今後は、政府によって現行の「アウトカム(結果)」指標(在宅復帰・在宅療養支援機能加算や事業所評価加算など)の実績データなどが検証され、評価モデルが構築される見込みです。

しかし、要介護度の改善のみを評価項目とした、いわば“機械的な介護”がまかり通れば、利用者の人間としての尊厳を無視した介護が行われる恐れもあります。

そのため、評価指標は慎重に精査し、導入する必要があるでしょう。


いざ評価指標が導入されることで、介護事業者が高齢者を選別するクリームスキミング(儲かりそうな高齢者だけを受け入れること)が生じる懸念もあります。

介護は公共サービスであり、過度な儲け主義に傾かないよう国や行政が管理する必要もあります。

そうでなければ、利用者が安心して介護を受けることもできなくなる恐れがあります。

前述した評価モデルを基本として「インセンティブ改革」が導入されたとしても、高齢化の状況や世帯構成、地理的要因、自治体のマンパワー、地域住民の意識などによって成果に差が出ることは言うまでもありません。



한소아 Han SoA - 내 맘 훔친 너 My Heart Stolen You

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