【 #混合介護 】 <①> 介護サービスの価格自由化でどう変わる???
介護保険で賄われるサービスとそれ以外のサービスを組み合わせた、いわゆる「混合介護」。
多くの利用者がより柔軟に使える環境をつくるため、思い切って制度を見直してはどうかという議論が「 #公正取引委員会 」で行われている。
●公正取引委員会ホームページ
http://www.jftc.go.jp/soshiki/kyotsukoukai/kenkyukai/kaigo/katsudou.html
2016.9.7 公取委、混合介護とサービス価格の自由化を提言 株式会社の特養参入も
公正取引委員会が5日、事業者の健全な競争を促進する観点から介護分野の改革を促す報告書を公表した。
株式会社も特別養護老人ホームを運営できるようにすべきと提言。
保険内と保険外のサービスを柔軟に組み合わせ、公定価格より高い料金を設定できるようにする「混合介護の弾力化」も認めるよう求めた。
「引き続き唱導活動を行っていく」としており、制度の見直しをめぐる政府の会議などに議論が波及する可能性もある。
公取委は報告書の中で、介護分野に競争政策の考え方を広く取り入れていくことの重要性を強調。
公平で自由な競争が活発になれば、多様な事業者が参入してきて創意工夫を発揮する環境がつくられ、必要なサービスの供給量が徐々に増えていくとともに、その質の向上にもつながっていくと主張した。
市場原理をうまく機能させていくことにより、利便性を高めつつ事業の効率化を図れると呼びかけている。
「株式会社を排除する合理性は乏しい」
具体策として打ち出したのが規制緩和だ。
特養の待機者が多い現状に触れ、「開設主体の規制を撤廃し、医療法人や株式会社などが社会福祉法人と対等の立場で参入できるようにすることが望ましい」と意見した。
特養の運営は現在、地方公共団体や社会福祉法人などにしか許されていない。
重度の要介護者や低所得者を受け入れる公的な性格が強いため、事業の安定性・継続性を担保する必要がある。
倒産による撤退のリスクがつきまとう株式会社などでは、入所者を保護できなくなる懸念が拭えない。そうした考えに基づいている。
公取委はこれに反論。
撤退時のルールを事前に決めておくことなどで対応できるとして、「株式会社であることをもって参入を排除する合理性は乏しい」と断じた。
補助金や税制による優遇も改め、それぞれが平等に競い合える土壌をつくることも要請した。
「不適切な給付を招く」との慎重論も
保険内・外のサービスを組み合わせる「混合介護」にも言及した。
現行の制度では、原則としてそれぞれを明確に分けて提供しなければいけないとされているが、これを一体的に行えるようにしてはどうかという。
サービスの価格も自由化し、介護報酬を上回る値段をつけることを容認すべきとした。
具体的な例として、訪問介護の際に帰宅が遅くなる家族の食事もあわせて用意した場合に、通常より高い独自の利用料を取る形などをあげている。
こうした「混合介護の弾力化」により、事業者のアイデアによって様々なサービスが生まれるようになると説明。
利用者の選択肢を増やし、制度の使い勝手が向上するとした。
事業者の視点でみても、収入を増やせるチャンスが広がるためメリットが大きいと指摘。個々の経営が上向いていけば、介護職員の処遇改善にも結びつくとの見方を示した。
一方、検討の過程で有識者から慎重論が出たことも紹介。
「認知症の高齢者など合理的な判断が難しい利用者が増えており、不適切な給付を招く恐れがある」といった異論があったと付記している。
(平成28年9月5日)介護分野に関する調査報告書について
規制改革会議、主要議題に混合介護の弾力化 価格自由化の解禁を検討
混合介護の自由化、サービスを限定する案が浮上 事業者ら提言 ヘルパーの指名料も
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俎上に載っている改革の中身を整理した。
加えて、立場の異なる2人の有識者の評価を紹介していく。
想定されるメリット・デメリットは何か。もし本当に実行されると、現場にはどのような影響が及ぶのか。
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まずは今のルールだ。
民間の事業者による「混合介護」は現在、保険内のサービスと保険外のサービスを明確に区分して提供する、という前提のもとで容認されている。
例えば、緊急時の通報の対応や定期的な配食、個別的な外出の介助、ニーズに応じた時間の延長といったサービスを、給付とは別に用意する形が該当するだろう。
月々の限度額を超えてしまった後で、利用者に全額を負担してもらい必要なサービスを追加・継続する場合も、この決まりを逸脱していないとみなされる。
もっとも、保険内・保険外の仕分けがすべてクリアにされているわけではなく、その線引きは曖昧と言っていい。
「はっきり分けないといけない」という原則があるだけで、実際にどこまで規制するかという判断は地域によって違う。
多くの事業者は市町村の姿勢をうかがいつつ、「グレー」の領域に踏み込み過ぎないよう配慮して動いている。
こうした現状の再考を促しているのが、国の「公正取引委員会」だ。
5月に開催した意見交換会で、「新しい混合介護」の導入をテーマにあげた。
保険内と保険外の一体的な提供を広く認めたうえで、事業者がその価格を自由に決められるようにしてはどうかという。
保険外も組み合わせて満足度の高いサービスを行うとして、公定価格(介護報酬)を上回る値段を設定することを可能にする構想だ。
┌┌┌┌┌┌┌┌┌┌┌┌┌┌┌┌┌┌┌┌┌ 一例をあげる。 ┌┌┌┌┌┌┌┌┌┌┌┌┌┌┌┌┌┌┌┌┌
介護報酬が2000円のサービスに、事業者が独自に3000円をつけたとしよう。
自己負担が1割の場合、利用料は200円(2000円の1割)と残りの1000円を合わせた1200円。保険給付は1800円のまま変わらない。
「費用の混合」「価格の自由化」などと表現されている。
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意見交換会では有識者の見解が分かれた。
賛成の立場をとったのは、かつて「経済財政諮問会議」の民間議員も務めた昭和女子大学の八代尚宏特命教授。
一方で、社会福祉士やケアマネジャーとして現場を長く経験した淑徳大学の結城康博教授は、反対の姿勢を崩そうとしなかった。
2人に、その理由を詳しく語ってもらった。
八代尚宏特命教授「提供側のメリットが大きく、利用者も恩恵を受けられる」
価格の自由化を禁じている今の制度は、良質なサービスを求める利用者の選択肢を制限しており、産業の健全な発展の妨げにもなっています。
民間企業の参入を認めている以上、その創意工夫を活かした多様なサービスが広がっていくようにすべきでしょう。
それが介護保険法の本来の精神だったはずです。
今後は高齢者のニーズが確実に増えていきますし、介護のマーケットとしての将来性は極めて大きい。
規制でがんじがらめにするのはやめて、事業者どうしがより自由に競争できる環境をつくるべきです。
収益を伸ばせるチャンスが広がれば、サービスの量的な拡大、質的な改善にも自然と結びついていき、多くの利用者が恩恵を受けられるでしょう。
介護職員にとってのメリットも大きい。
事業者の経営が上向けば、賃金を上げられる余地が広がりますよね。
技術や知識を積み重ね、高い対価でも受け入れられるサービスを提供できるようになれば、より多くの収入が得られるでしょう。
豊富な経験を持つベテランは、きっと今より重宝されるようになります。
介護保険財政の厳しい制約のもとでなかなか実現しない処遇改善の突破口です。
他の人より頑張ったって給料は同じ。
いくら長く続けて研鑽を積んでも上がらない。そんな状況が変わり、やりがいはさらに向上するはずです。
仕事としての魅力が高まり、新たに参入してくる人も増えていくでしょう。
今後の高齢者の急増に備え、サービスを担う人材を多く確保していかなければなりません。
ただし、介護報酬を際限なく増やしていくのは困難です。
一方で、保険料や自己負担の引き上げにもやはり限界がある。
このまま今の制度を漫然と続けていくだけで、逼迫する財政と労働力の不足という重い課題をともに解決できるでしょうか。
本当に制度を維持していけるでしょうか。
サービスの価格を自由化し、保険内・保険外を柔軟に組み合わせられるようにする規制改革は有効です。
そうでなければもたない。
高齢者にはそれなりに裕福な人も多いですよね。
少し値段が高くても、質の高いサービスを選択する人はいるはずです。
それを画一的な福祉の発想で制限してしまうのはおかしい。
経済成長にも寄与するわけで、非常にもったいないことをしていますよね。
結城康博教授「根幹の理念が霞んでいき、やがて完全に有名無実となる」
介護保険がスタートしてから16年が経ち、制度はとても複雑になりました。
これから認知症や1人暮らしの高齢者がさらに増えていきますが、果たして彼らが消費者としての判断を的確にできるでしょうか。
認知症の症状が出ていなくても、80歳、85歳と年をとっていけば難しいものです。
今の制度でさえ、十分に理解しているとは言えない人がいます。
保険内・保険外の違いをきちんと把握していない人もおられるでしょう。
ここで価格の自由化を認め、用意されるサービスの形態・値段がさらに多様化していけば、ますます分かりにくくなってしまいます。
判断力の乏しい利用者に、少しでも高い値段で売りつけようとするケースが増えるのではないでしょうか。
言われたことを鵜呑みにしてしまう高齢者は少なくありません。
モラルに反する事業者が出てきて、非常に高額なサービスを使わせることも心配です。
一部の企業にとってはありがたい改革かもしれませんが、利用者が置いてけぼりになる可能性が非常に高いですよね。
介護保険というのは、体の衰えた高齢者の「御用聞き」の仕組みではありません。
本人の尊厳を守りながら、自立した生活を支えるためのものです。
利用者の満足のみを目的としたサービスを、何の線引きもなく組み合わせられるようにしていいのでしょうか。
制度の趣旨から考えると、あまり必要のない需要まで掘り起こされる懸念が拭えません。
保険外を多く使わせて稼ぐために、保険内を作為的に調整して誘導する。
利用者を巧みに囲い込む。
そうしたことはすでに行われていますが、さらに加速させる事態を招きかねません。
根幹の理念が徐々に霞んでいき、やがて完全に有名無実となるでしょう。
かえって給付費の増大を早めてしまうリスクが大きい。
保険外を多く使える人ばかりが優遇されたり、保険外の値段が高止まりしたりする恐れもあります。
一部のお金持ちだけが得をする制度にならないでしょうか。
ケアマネジャーなどの専門職がしっかりマネジメントをしていければ、問題のいくつかを小さくすることは可能です。
ただし、残念ながらあまり期待はできないでしょう。
今でさえ必ずしも十分に機能していません。
きちんと務めを果たしてこなかった厚生労働省の責任が大きいと思います。
介護職員の処遇改善につながるという期待もあるようですが、都市部の企業で働くごく一部に限られるでしょう。
介護事業者の多くは小規模で地域を軸にしており、生活にあまり余裕のない高齢者も多く相手にしています。
保険外のサービスをたくさん提供できるとは思えません。
人手不足を解消する効果も薄いと考えています。
八代尚宏特命教授「利用者を守るのは国の規制じゃない。健全な競争だ」
価格が自由化されると、高齢者があまり必要のない高額なサービスを買わされるようになる、という危惧があるようです。
医療ではその可能性があるでしょう。
医師が必ず必要だと説明すれば、多くの患者はそれに従うしかありません。
効き目のない治療まで受けさせられることになってしまう。
一方で介護の場合、そういう問題はないですよね。
そのサービスが必要かどうか、価格が妥当な水準かどうかは、個々の利用者が主観的に判断すればいい。
他の一般的なサービスと同じです。
「押し売り」のようなリスクは小さいのではないでしょうか。
確かに、消費者としての判断が的確にできない人もいます。
そこはしっかり守れる仕組みを作らなければいけません。
ケアマネジャーなどにきちんとチェックさせたり、事業所に情報の開示を義務付けたりすることも一案でしょう。
一方で、大部分の高齢者は自分で考えて選択できます。
判断力の乏しい一部の人のために、高齢者全体に制限をかけてしまうのはおかしい。
過剰規制です。
原則として価格の自由化を認めたうえで、例外として認知症の人などを保護する仕組みに変えるべきでしょう。
そもそも、政府が規制をかけないと利用者が守れないという発想には違和感があります。
私は健全な市場の競争が利用者を守っていくと強調しておきたい。
競争が活発になればなるほど、悪質な事業者は排除されていきます。
利用者を騙して搾取するようなことは続けられません。
それぞれが支持を得ようとしのぎを削る結果として、サービスの質は徐々に上がっていくんです。
良い事業者だけが生き残っていくんです。
それこそまさに、今の介護業界に求められていることではないでしょうか。
経済的に余裕のある人ばかりが恩恵を受けるとの指摘もありました。
高齢者はもともと暮らしの格差が大きい。
裕福な人は従来から、クオリティと値段の高い保険外サービスを使っていますよね。
すでに相当な開きがあるんです。
価格の自由化が認められれば、中所得層も介護報酬との差額分だけでより良いサービスが受けられるようになるので、ギャップはむしろ縮まるでしょう。
保険外の展開で事業者の収益が改善されていけば、さらに多く企業がチャンスを見込んで参戦してきます。
保険内のみの利用者にもメリットが及んでくるでしょう。
保険外の価格が高止まりする懸念も小さいとみています。
これは参入の自由度に依存するんですね。
入り口が厳しく制限されていると、当然そういう問題が起きてくるでしょう。
ただし、在宅介護の分野は参入がとても容易です。
規模の小さい事業者も、実際にどんどん入ってきていますよね。
保険内のみを扱うところも含め、割安なサービスを提供する事業者が不足するとは考えられません。
それでも心配だと言うのであれば、何らかのルールを設けてもいい。
例えば、一定の割合は必ず介護報酬と同じ価格のサービスを提供しなければいけない、といった案もあるでしょう。
過疎地や離島など事業者が少ない地域でも、実情に合った措置をとる必要がありそうです。
無駄な給付を増やしてしまうという指摘もありました。
他の問題提起も同じなのですが、私だって懸念が全く無いと言うつもりはありません。
ただし、それらはすべてクリアすべき課題だと捉えるべきではないでしょうか。
今後のより急激な高齢化を考慮すると、価格の自由化を認めるメリットは非常に大きいんです。
副作用が出るかもしれないからやらない、と言っていてはいつまで経っても改革はできません。
そもそも、指摘されている問題はほとんど既に存在しているものですよね。
価格の自由化によって新たに生じるわけではありません。
今の制度だって必ずしもうまくいってないんですから、この改革を機に改善を図ればいいんです。
過渡的には色々な問題が顕在化するかもしれませんが、長期的には良い方向に向かうのではないでしょうか。
結城康博教授「制度としての公正さ、平等さが損なわれてしまう」
今の制度もいろいろと問題を抱えていることは確かです。
だからこそまず、それらをひとつひとつ解消していくことに注力すべきではないでしょうか。
ここで価格の自由化を認めれば、より複雑化・深刻化して対応が難しくなりかねません。
新たな問題も出てくるはずで、現場が非常に混乱するのではないでしょうか。
当面は今の規制を変えない方がいい。
既に認められている混合介護の展開をみつつ、慎重に検討していくのが得策だと考えます。
制度を充実していくにはお金が足りず、報酬を上げていける見込みもない。
ゆえに規制緩和に踏み切るしかない。
そんな論理にも疑問を感じます。
財政は非常に重要なテーマですが、それはまた別の問題として幅広い視点から議論すべきでしょう。
他の社会保障制度、あるいは国の全体の歳出・歳入を含めて総合的に考え、必要な財源をきちんと捻出しなければなりません。
介護のために使える十分なお金はない。これからどんどん重要性が高まるというのに、それを動かぬ前提にするのはいかがでしょうか。
繰り返しになってしまいますが、私はやはり、消費者として的確な判断をするのが困難な人は多いとみています。
認知機能が少しずつ低下していく在宅の高齢者が、多様で複雑なオプションから妥当なサービスを選び取れるでしょうか。
できない人は決して一部の例外ではないと強調したい。
問題なくこなせるのが普通だと捉えるべきではありません。
価格の自由化が認められれば、事業者は今よりも営業に時間を割くようになるでしょう。
ビジネスとしての合理性ばかりが重視される傾向が強まります。
高齢者を巧みに口説き、なんとか財布を開けさせようとするところも出てくるはず。
お金儲けに長けた一部の人だけがいい思いをするでしょう。
保険内のサービスは、保険外を売り込むために都合よく使われます。
結果として、給付費の膨張にいっそう拍車がかかると指摘しておきたい。
そうなってしまえば、軽度者を中心に給付を縮小していく今の流れを加速させることになりかねません。
保険がカバーする範囲を、どんどん狭くされてしまうのではないでしょうか。
長年にわたって国の改革をみてきた経験からそう感じます。
保険外を使えない中・低所得の人が、一段と厳しい状況に追い込まれてしまう懸念が拭えません。
介護保険は多くの公費が投入されている制度で、低所得者を支援する福祉的な性格も持っていますよね。
高齢者の生活の状況を勘案すると、今後もそうした性格を保ちつつ発展させるべきではないでしょうか。
生活が苦しく保険外を使えない高齢者でも、最期まで尊厳を保ちながら生活できるような支援が受けられる。冷遇されることなくフェアに扱ってもらえる。
制度として確実に担保すべきことだと思っています。
価格の自由化はそうした考え方と相容れない。
制度としての公正さ、平等さが損なわれてしまう改悪です。
介護保険の理念に深刻な打撃を与え、その存在価値を大きく揺るがすと言わざるを得ません。
これは制度の存亡に関わる問題で、今後の議論の展開を注視していくべきだと考えています。
規制改革推進会議が始動 介護分野も俎上に 首相「一気にアクセルを踏み込む」
2016.9.12
政府は12日、「規制改革推進会議」の初会合を開催した。
経済成長を後押しする観点から規制のあり方を検討し、具体的な施策の展開につなげていく考え。ニーズの拡大が予想され、サービスの供給量の確保や質の向上、担い手の不足、厳しい財政といった課題を抱えている介護の分野も、主要なテーマのひとつになる見通しだ。出席した安倍晋三首相は、「ここで一気にアクセルを踏み込む。私が責任を持って実現する」などと語り、大胆な改革に挑戦する姿勢をアピールした。
全国平均より著しく高額な「福祉用具の貸与価格」を設定するには保険者の了承が必要に―介護保険部会
2016年10月13日|医療・介護行政をウォッチ
福祉用具貸与の価格透明化を目指して全国レベルの価格情報を公表するほか、不合理に極端に高額な貸与価格が発生しないよう、保険者の了解制度を創設する―。
こういった方針が12日に開かれた社会保障審議会・介護保険部会で固まりました
混合介護で介護保険にどんな影響が?
2016-09-26
公正取引委員会が、介護分野に関する調査報告書の中で「混合介護」についての提言を行ない、政府の「未来投資会議」でも「保険外サービスの組み合わせ」という、
いわば「柔軟な混合介護の提供」の必要性を打ち出しました。この論点を改めて検証します。
現状における混合介護はどうなっているか
現在の介護保険制度でも、居宅における「保険内外のサービス」の併用は不可能ではありません。
ただし、両者を明確に区分することが必要で、たとえば「訪問介護サービスにおいて、ヘルパーの指名料を利用者から徴収しつつ(指名という保険外の部分)、訪問介護(保険の部分)を提供することは原則としてできない」(公取報告書より)とされています。
もっとも、このあたりは、自治体によってルールが定まっていません。
ちなみに、公取の報告書では、「一体的に提供することはできないが、区分が明確になっていれば連続して提供することは可能」という自治体が80%を超える一方、「連続しての提供もNG」とする自治体も6%、また、「一体的・連続的ともにOK」というケースも約8%見られます。
公取報告書では、混合介護の弾力化を提言していますが、上記の分類でいえば「一体的・連続的ともにOK」というパターンをスタンダード化するということになると思われます。
混合介護がケアマネジメントにもたらすもの
介護現場に混乱をもたらす要因の一つであるローカルルールの統一自体は望ましいかもしれません。
しかし、混合介護の扱いを一気に緩和する点では、別の課題が絡んできます。
そもそも介護保険は社会保険制度の一つであり、適切なケアマネジメントに基づいた利用者の自立支援とQOL向上が制度上の軸となっています。
仮に保険内外のサービスの一体的・連続的な提供を可能とした場合、両サービスが相互に影響しあうことは必至で、「保険内のサービス」だけを切り取ってマネジメントしていくことは難しいでしょう。
つまり、「保険外」であっても、施策上は一体的なものとして考えることが必要になるわけです。
となれば、混合介護の弾力化を図るうえで、「保険外サービスをケアマネジメントにどう組み込むか」を介護保険上にしっかり位置づけなければなりません。
それが中途半端になると、たとえば「利用者への御用聞き」などがケアマネ業務の中心になりかねません。
もっと言えば、現場のサービス提供者が、自立支援や重度化防止という方向で足並みを揃えにくくなる場面も出てくる可能性があります。
たとえば、利用者側に「全額自費なのだから(本人のできる部分も含めて)全部やってほしい」という意向が出たとき、ケアマネとしてチームの足並みをどう揃えればいいのか、大きな迷いが生じることになります。
自立支援・重度化防止の視点での検討の場を
ちなみに、公的な医療保険でも、混合診療が一部認められる方向にあります(保険適用されない一部の先進医療などに限って、保険内診療との混合が可能)。
ただし、医師会などからは、保険外医療を迅速に保険適用させる方向を優先すべきという声が出ています。
これに対し、国は「保険適用させるための審査(先進医療会議)」というしくみを通じ、保険診療との併用や先進医療の保険適用に向けた検討を行なうという流れをとっています。
この点を考えたとき、同じ社会保険制度となる介護保険でも、個別の保険外サービスが「将来的に保険適用にふさわしいかどうか」を検討するしくみがとれないでしょうか。
もちろん、医療と介護には違いはありますが、自立支援や重度化防止という軸と照らせば、客観的な評価は決して不可能ではありません。
これによって「保険適用」サービスが広がれば、低所得の利用者も恩恵を受けますし、ケアマネジメントとの整合性もとりやすくなるでしょう。
「何を目指したサービスか」という評価の物差しを検討する中で、劣悪なサービスを排除するルールづくりの機会にもなります。
重度化防止への評価が明確になれば、介護保険財政の健全化とも矛盾しないはずです。単純な弾力化ではない知恵が求められます。
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