【 #混合介護 】 <④> 混合介護の争点...
推進派と慎重派で対立,,,
改革が進まない>>>問題点は?
2017/03/01 17:00
混合介護が2017年度中に豊島区で開始されるのを皮切りに、介護業界で解禁されようとしています。
介護保険サービスと保険外サービスが同時に利用できるようになれば、利用者の利便性、介護する側の生産性の向上など、従来の介護労働の現場にあった大きな非生産性の問題を改善することが期待できます。
同時に、介護職の給与アップにつながるものだと考えられます。
ニーズとしては、
訪問介護では掃除・洗濯・買い物代行・IoT機器による見守りなどに、
通所介護では買い物支援や外来診療支援などが想定されています。
しかし、保険点数をどのように配分するのか、一定時間内で保険内サービス、生活援助では頭割りの導入など、課題も多いのは事実です。
現在のところ、混合介護の推進派と慎重派の意見は、真っ向対立していますが、なぜ、ここまで改革が進まないのでしょうか。
混合介護、推進派と慎重派の意見が真っ向対立!!!
混合介護の推進派の意見とは
まずは、混合介護の推進派の意見を見てみましょう。
第一に、個別の生産性が大きく向上することが見込まれています。
これまで介護の現場では、要介護者と家族の食事等を一緒に作ることができないなどの問題がありました。
混合介護が解禁されれば、そういったこともなくなります。
追加のお金を払うことで、介護保険を使えないご家族の分まで食事や洗濯を提供できることになり、介護現場における生産性は大きく向上し、利用者の利便性も大きくアップします。
また、指名料を取ることができるようになれば、介護職員のスキルアップ向上につながりますし、インセンティブになり得ます。
介護職員のスキルアップにつながれば、賃金向上や離職率の低下にもつながると考えられます。
現在、介護保険ではサービスの価格が頭打ちになってしまい、事業者の売上向上につながりません。
介護労働者の賃金が低い理由の元凶は、この介護保険制度だけを使って介護サービスを享受せざるを得ないシステムそのものにあるのです。
混合介護の解禁は、この規制を撤廃するものです。
より市場原理にまかせ、自由で価格の柔軟性を持ったサービスを提供していくことこそが全体の幸福につながる、ということに、推進派の意見の大まかなものです。
混合介護、慎重派の意見とは
一方で、混合介護に対して慎重な意見を述べている人たちもいます。
例えば、厚生労働省の意見として、利用者の不当な負担やトラブルの救済、介護保険制度の自立支援の理念の阻害、給付費の増加、追加の行政コストなどが考えられます。
特に、介護保険制度は、利用者の自立を支援していくというものであって、利用者が自己負担で介護サービスを受けるようになると、自立を阻害してしまうのではないかという意見、それから、有償の介護サービスと介護保険のサービスが混合することによる事務コストの増大は見逃せません。
また、介護保険サービスとその他のサービスの線引きをどこで行うのか、いちいち介護職員がこれは介護保険、これはその他サービスと区分するのが大変で、すべて介護保険で賄ってしまうのではないか、現場の裁量に任されている点については問題がないのか、といった意見もあります。
総じて、自立支援の制度である介護保険の根幹を揺るがしかねないというのが、慎重派の意見です。
混合介護、法律上は直接的に禁止されていない!?
実は、混合介護は介護保険法上、直接的に禁止されているものではないのです。
介護サービスは利用者と事業者の間の契約に基づいて提供されるもののため、直接的に給付を禁止している法律はないのです。
しかし、2000年当時の厚生省からは、以下の課長通知が出ています。
「利用者と事業者との間の契約に基づき、保険外のサービスとして保険給付対象サービスと明確に区別し、利用者の自己負担によってサービスを影響することは、当然、可能である」
これが「明確に区分する」ことができないため、行政指導で保険内外の明確に区分できないサービスが事実上禁止されているのが現状です。
このため、保険外である家族のための家事ができなかったり、通所サービスの昼休みに介護職員が付き添って買い物をすることなどができなかったりして、保険外のサービスが受けられないことによって、保険内の分も介護保険でカバーできないという事態が生じていました。
これは混合介護が解禁されると、保険内の分が保険でカバーされるようになります。
すなわち、給付額が増えてしまうということにつながります。
しかし、これは従来、適正なサービスを受けられていなかったということになりますので、不当に給付額が増えるのではなく、適正なサービスを享受でき、正当な報酬が支払われたことになります。
混合介護で利用者負担が多くなるのは本当!?
実際には混合介護の解禁で、利用者負担が増えるとは限らないのです。
厚生労働省の目論見によると、混合介護が行われることによって、訪問介護サービス提供時に、同居家族分の調理・洗濯などを一緒に実施することができます。
それによって、現行の仕組みでは介護給付45分+保険外45分の90分だったものが、介護給付と保険外で60分程度と、まとめて調理・提供することで、時間短縮が見込めます。
家族分の負担は按分することによって、自己負担の額も減ることが見込まれています。
ヘルパーの業務時間が短縮され、介護家族の負担も大きく減少します。
保険外のサービスが同時に受けられるというと、自己負担ばかりが増えて利用者負担が大きくなるということが懸念されますが、厚生労働省の目指す方向性としては、全体の効率を大幅にアップし、きたる2025年の団塊の世代が後期高齢者になる超高齢化社会への備えとしていきたい考えです。
混合介護による今後の狙い
今後の狙いとしては、日本在宅介護協会によると、政府が推進する働き方改革とサービス業の生産性向上政策に資する取り組みとする、利用者満足度の向上と、介護サービスにおける働き方改革と生産性向上につなげていきたい考えです。
利用者の要望に対応するための介護職員の能力を向上させることは、個々の希望に応じた質の高いサービスの提供にもつながります。
スタッフによる利用者満足度を向上させ、パーソナルスタッフ制度(仮称)や時間帯指定制度を導入させることで、働き方改革と生産性の向上を目指していきたいと考えられています。
誰のための介護保険なのか、社会全体で共通認識をもつべき
これまで見てきたことをふまえて、混合介護は、誰のための介護保険制度かを考え直すべきときに来ているのではないでしょうか。
利用者目線に立ったサービスのあり方が、今、問われています。
厚生労働省の考えにあるように、ルールの明確化、保険内外の線引きの重要性など、ガイドラインの作成が急がれるでしょう。
豊島区でのサービス導入によって、さまざまな問題点が明らかとなるはずです。
急がなくては、2025年に間に合いません。改革を早急に進める必要があります。
慎重派の意見にも耳を傾けつつ、改善できるところはしていって、現場ベースでの改革が急がれます。
混合介護の解禁によって、利用者とその家族、そして社会全体の利便性が向上し、介護労働者の生産性も大きく向上し、介護保険サービスの自立の理念が果たされるためには、徐々に徐々に、改善を重ねながら、介護サービスの改革を進めていくしかないのではないでしょうか。
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