#特別寄与... #相続における介護の不公平... #遺産トラブル急増で相続法が40年ぶり改正!!!
介護した子の配偶者にも相続権が認められる「特別寄与」...
今年の7月、相続法制を見直す改正法案が参院本会議で可決成立され、これにより40年ぶりに相続法が改正された。
この改正では、被相続人が所有する建物に配偶者が住んでいた場合、一定の期間、あるいは終身でその建物を無償で使用することのできる権利となる「#配偶者居住権」の創設や、自筆証書遺言に添付する財産目録について、以前は自筆でなければ認められなかったところをワードソフトで作成したものや通帳のコピーでも認められるようになりました。
さらには、自宅で保管されたのちに紛失されることが多かった自筆証書遺言を、法務局で保管する制度が創設されるなどの法律上の変更がなされました。
この改正で注目されているものとしては、
被相続人の介護や看病に貢献した相続人でない親族に対しても、被相続人の財産の維持や増加に特別の寄与をしたとして、相続人である親族に対して、金銭を要求する権利が認められるという点。
改正以前は、被相続人の子の配偶者が看病したとしても、遺産の分配にかかわることができなかったため、不公平ではないかとの声が上がっていた。
今回の法改正により、初めて介護での貢献が、介護した人に直接利益のある形で、相続に関係するようになったというわけです。
そもそも「#寄与分」とはなにか?
改正法以前は、相続権のない親族が被相続人の介護を中心的に行っていた場合も、相続財産から分配を受けることは不可能でした。
そのため、相続人を通した寄与分による調整が実務的に行われる場合が多かったと言えます。
この寄与分とは、被相続人の財産の維持や増加に寄与した人物が相続人の中にいた場合、その貢献分だけ多く財産を相続するというものです。
例えば、親族が相続権を持っている人物の配偶者が介護で被相続人に貢献を行った場合は、それを相続人自身の寄与分として評価する手続きが取られることで、間接的に介護という貢献への見返りを作っていたということになります。
しかし、こうした方法の場合、介護をした人は直接財産を受け取れないうえ、相続人となる配偶者が被相続人よりも先に亡くなっている場合は、こうした手段も取ることができませんでした。
今回の改正では、その寄与分の範囲を親族にまで拡大することで、相続人でない場合も特別寄与者として相続することができるようになりました。
ですが特別寄与者は遺産分割に直接的にかかわることはできず、相続人に特別寄与料を請求できるだけである点と、特別寄与者は親族に限られるという点には注意しなくてはなりません。
相続における「介護の不公平」が遺産トラブルを産む
介護する人の10人に1人は相続権がない!?
こうした特別寄与が認められた背景には、日本の家庭における介護の形が関係しています。
2017年版高齢社会白書の「要介護者などから見た主な介護者の続柄」によると、要介護者の介護を行う人は26.7%の「配偶者」、21.8%の「子」に次いで多いのが、11.2%の「子の配偶者」でした。
また、厚労省の「国民生活基礎調査」の2016年によれば、ほとんど終日介護している介護者の場合、女性が71.5%と圧倒的に多く、そのうちの11.9%が義両親の介護をしていることがわかっています。
これらのデータから見てもわかる通り、法律的にはまったく義務ではないものの、とくに同居している場合は、義両親の介護を配偶者の女性が行うのが通例となり、それを断りにくい雰囲気が日本ではあります。
そのため、介護のために離職をする割合も女性が圧倒的に多く、介護生活が終わりを迎えた後の生活が難しくなりやすいのにもかかわらず、相続権を持たないためにその対価を受け取ることができない状況になっていたと言えます。
実に介護者10人の1人以上の割合で、こうした相続権を持たない人による介護が行われているという現状に対して、不公平を解消するために特別寄与という制度が創設されたということです。
法律で対応できない相続トラブルに終止符
改正前の制度でも、遺言により介護を行った人に遺産を渡す方法はありました。
とはいえ、これはあくまでも被相続人の善意として残すものであり、介護をした人間から請求をすることは困難でした。
また、こうした遺言による寄与に関しては、自筆証書であった場合に、その有効性を巡ってトラブルが多く起きていたという事実もあります。
これは、自筆証書遺言の場合、すべてが自筆である必要があったり、訂正する場合には押印が必要だったりと、厳格なルールが存在しているがゆえの問題だと言われています。
こうした事情に加え、相続を巡る訴訟がかなり増えて来ている背景もあり、それを解消する必要が叫ばれていました。
また、高齢社会が進展する中で老老介護も増えてきており、上記で説明したような「既に亡くなった相続人の配偶者が被相続人の介護を行っていた」など、現在の法律で対応できないケースも増加しています。
こうした状況を解決するため、現在ある問題点を整備し、解決するために行われたのが今回の特別寄与を含んだ民法改正です。
介護をしたら相続で有利に! しかし厳しい条件が
1年以上専業で介護しないと遺産はもらえない
上記で説明してきた通り、今まで認められなかった相続について、ある程度の不公平感を緩和できると目されている特別寄与ですが、現状ではこの「特別寄与が認められ、料金を請求できる」ハードルはかなり高いと言えます。
この介護での貢献が認められるケースというのは、「無償かあるいはそれに近い形で介護を少なくとも1年以上の長期間にわたり、ほかの仕事をすることなく介護に専念した」などの、多大な貢献をした場合にのみに限られています。
身の回りの世話や食事など、日常生活で親族が行うことが多いとされている行為に関しては、寄与について相続人が同意しないことが多く、入浴介助など、介護の領域に入った部分でのサポートについてしか特別寄与に値する貢献としてカウントされないという現状があります。
そのため、特別寄与を受け取ろうと思った場合は、どのような介護を行ったかということを毎日記録しておくなど、自分が介護においてどの程度の貢献をし、労力を払ったかについてつぶさに記録しておくことが大切です。
相続人にとってみれば、こうした特別寄与の請求は、自分の取り分を減らすものでしかありません。トラブルにならないようにきちんと準備をすることが重要です。
今回の法改正で遺産トラブルは減少するか
この法改正は今まで頻発したトラブルへの対応を目指した改正点が非常に多いものです。
中でも特別寄与に関しては、高齢化が進み、超高齢社会に突入する我が国において、現状を見据えたものであるとの指摘もあります。
事実、最高裁判所が発表している司法統計によれば、遺産分割を巡って家事調停や審判まで発展してしまった遺産分割裁判は、2002年には11,223件でしたが、2012年には15,286件と10年間で1.4倍まで増加している相続に関するトラブルを、カバーする形で制度が創設されたのです。
また、特別寄与に関しては、そうした高齢社会の中で、今までの相続法ではカバーしきれない人々に、最低限の権利を与える一歩になるものだと言えます。
しかし、新たな制度が創設される際に、また新たな形でのトラブルが増えるということも考えられることです。
そのため、基本的には相続は家族全員が元気なうちにきちんと話し合い、さらにその後家族の状況や社会情勢、法改正などに合わせて、定期的に見直すなど、トラブルを避けるように先を見越した対策を立てておくことが重要です。
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