#訪問看護師「暴力を受けた経験5割」... 暴言にセクハラに性的被害…
暴言にセクハラ、果ては性的暴行…。
1人で患者宅に赴き、看護や介護にあたることが多い訪問看護師が患者や家族から受ける被害が後を絶たない。
神戸市看護大が平成27年度に行った調査では、約5割が「暴力を受けた経験がある」と回答した。
対策の議論が進まない中、神戸市では1月、医療関係者や弁護士、大学教授らを招き、民間による訪問看護師を守るための対策を考える検討会が発足。
兵庫県も今年度から、2人以上で対応した事業所に対して、一定の補助金を支出する財政支援と相談の受け付け事業を始める。
被害を受けて傷ついた訪問看護師の離職を防ぐためにも対策は急務だ。
2017.4.28
薬物混入…もはや犯罪行為
「被害を受けた職員は動揺し、自分の力ではこれ以上、手の打ちようがないと感じたほどだった」
神戸市須磨区の訪問看護事業所長で看護師の藤田愛さん(51)は、訪問看護師の身に起こった5年前の出来事が忘れられない。
当時30代の女性看護師が患者宅から事業所に戻ってきた際、ふらふらの状態で意味不明な発言を繰り返した。
藤田さんはとっさに「意識障害だ。薬物をやられた」と直感。
女性は緊急入院し、薬物を解毒した。
警察にも通報したが、すでに解毒治療が終わった後で血液や尿から薬物混入の証拠が得られなかった。
関係者への事情聴取が行われたが、結局立件には至らなかった。
訪問先の患者宅には30代の息子がいた。
女性が訪問するたびに姿を現し、お茶を勧めた。
訪問先で飲食物をもらうことは禁止されているが、強く勧められて断りきれなかったという。
藤田さんは「ここまで危険な現場があるとは想像もしていなかった」と振り返る。
患者らによる訪問看護師への暴力について、日本看護協会が示す対策マニュアルでは「リスクが高い場合は複数で訪れる」「警察に相談する」といった内容が記載され、同事業所でもこれに準拠した対策を行ってきた。
それでも藤田さんは「対応にも限界がある」と語る。
どうすれば被害がなくなり、訪問看護師を守れるのか。一時は責任を感じて退職を考えるほど思い悩んだ。
表沙汰になるのは「氷山の一角」
訪問看護に従事する人たちは、看護師や准看護師だけでなく、保健師や助産師、理学療法士らも含まれる。最近では男性の看護師も増えてはいるものの、圧倒的に女性が多い。
厚生労働省などによると、27年の訪問看護事業所は全国で約8200カ所、訪問看護師らは約5万人。
患者も高齢化の進展などから、14年の約221万人から26年は約354万人と増加の一途をたどっている。
訪問看護は民間の事業所から、看護師らが病気や障害者の自宅を訪問し、一部の医療措置や生活の介助など療養生活を支援するサービスだ。
訪問看護師への暴力は表面化するケースは「氷山の一角」で、「相手は病人だから」と表沙汰にしない看護師らも多い。
そこで神戸市看護大は実態を調べるため、27年度に兵庫県内の事業所83施設の600人を対象にアンケートを行い、358人から回答を得た。
その結果、50・3%の人が「暴力を受けた」と答えた。
「素手で陰部洗え」…暴力の実態
アンケート結果の詳細をみていく。
暴力の主体は、患者71・1%、その家族や親族23・9%、両方2・2%。
年齢は60代が31・9%と最も多く、次いで40~50代と70代がそれぞれ25・5%だった。
内容(複数回答)も、威圧的な態度19・4%、侮辱する言葉17・9%、たたかれるなどの暴行11・3%などだった。
具体的には「つえでたたかれる」といった身体的暴力に加え、複数のカメラでの撮影、抱きつかれたり、体を触られたりするセクハラ被害もある。
中には「素手で陰部を洗えといわれた」「訪問中にアダルトビデオを見ていた」などの回答もあった。
一方で「ばか女死ね」「ぶっさいくやのー」「はさみで刺したろか」といった暴言を吐かれた“告白”もあった。
こうした身体的、精神的負担から、鬱病になったり、仕事を辞めたりする人もいる。
調査に関わった神戸市看護大の林千冬教授(看護管理学)は「結果からは暴力の要因や傾向までは分からない。
意識的なら犯罪だが、病気で治療が必要なケースもあり、訪問看護師を守るためにも状況に応じた対策が必要だ」と語る。
ただ、林教授や藤田さんによると、訪問看護の現場の暴力について、詳細に調べた研究は少なく、対策もほとんど議論されてこなかった。
その背景には、訪問看護師が1人で患者宅を訪れることが多く、被害の実態がよく分からなかったという事情がある。
実際、神戸市看護大の調査で、暴力を受けた際の対応について「相手の言い分をただただ傾聴した」(23・4%)、「我慢し、あきらめて何もしなかった」(14・7%)と回答している。
事例別の対応策とりまとめへ
「まず、現場の実情を把握しないと対策の取りようがない。
このままでは現場が破綻する」
藤田さんは労働環境の改善を目指し、県内外の事業所や医療関係者、弁護士、大学教授らに声をかけ、抜本的な対策を考えようと、民間による検討会の立ち上げを決意した。
民間での検討会設立は全国的にも珍しいという。
藤田さんによると、被害に遭った訪問看護師の中には、患者が認知症や精神障害で「病気だから仕方がない」と報告せず、患者や家族からの過大な要求やクレームに対しても「仕事の一部だから」と自分で抱え込んでしまうケースも多い。
「暴力を受けているという当事者認識さえ乏しい」と語り、放置して事件になることを懸念する。
実際に平成20~21年、大阪府内で寝たきりの内妻の介護に訪れた女性ヘルパーに、夫が睡眠剤を混ぜたコーヒーを飲ませて性的暴行を加えた事件が発生。
大阪地裁は23年1月、準強姦罪などで懲役16年の実刑判決を言い渡したという事例もある。
患者自身や支える家族もストレスなどから、訪問看護師につらく当たるケースもあるだろう。
ただ、暴言やセクハラなどは訪問看護師の心を傷つけ、病気や離職につながりかねず、身体的暴力や性的暴行は犯罪行為で放置はできない。
検討会では、県内の訪問看護師らから聞き取り調査を行うなど今年度中に実態を把握し、事例別の対応策をまとめる方針だ。
藤田さんは「病院では取り組みが進んでいるが、訪問看護の場合、実態調査や教育の機会は少ない」と強調する。
「負担軽減を検討すべきだ」
兵庫県も事業所と訪問看護師への支援に乗り出す。
被害を防止するには複数での訪問が効果的とされるが、患者や家族の同意がないと1人分の報酬しか出ない。
このため、県は29年度予算に約930万円を計上。
2人以上で訪問する必要があると事業者が判断したものの、患者や家族が同意しない場合、1回当たりの訪問看護に2540円を補助する。
訪問看護師本人や事業所などから相談を受け付ける専門の窓口を設け、事業所の管理者を対象にした研究会も開く予定だ。
県の取り組みに対し、林教授は「事業所は零細ばかりで自ら暴力に対応する余力もキャパもない。
行政がきちんとした相談窓口を整備するなどバックアップが必要」とした上で、こう提言した。
「訪問看護は24時間対応で、女性看護師が真夜中に患者の家に行くのは大変なこと。待機させるタクシーでの費用を補助するなどの負担軽減を検討すべきだ」
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