#認知症と生きる終活(4)... #認知症のその人の終末期について...
#認知症の自然経過(#ナチュラルヒストリー) #かかりつけ相談処
公益社団法人「#認知症の人と家族の会」代表理事である高見国生さんが、認知症の母親を自宅で看取った事例です。
高見さんが母親の介護をしていたのは30年以上も前のこと、
当時は認知症に対する社会的な理解も援助も皆無でした。
互いに励まし合い、慰め合う「認知症の人と家族の会」のような組織もありませんでした。
なぜなら、高見さんたちが中心となって日本で初めて「認知症の人と家族の会」を立ち上げたのですから、それ以前にはそのような組織は存在しなかったのです。
夜間不眠、徘徊、失禁など、ありとあらゆる認知症の症状を現す母親を、高見さんと家族は約7年間介護し続けました。
デイサービスもショートステイも、訪問介護サービスも、介護相談窓口すらなかった当時、孤立無援の中で修羅場のような介護が続いたと聞きます。
しかし、その母親も、上述のように最期は極めて穏やかでした。
ある訪問診療所では、
対象患者は、常時140名ほど、その約6~7割が認知症の症状を示してます。
また、在宅酸素療法、CAPD(持続携行式腹膜透析)、在宅人工呼吸療法、在宅IVH(中心静脈栄養法)、癌の疼痛緩和療法など、高度の在宅医療にも取り組んでいます。
患者・家族の希望と意欲があれば、どのような状態であっても最期まで自宅で過ごせるような援助を早くから行って、毎年50~60名を自宅で看取ってます。
認知症の人の看取りも少なくありませんが、
自然に衰弱して老衰として死を迎える患者もいれば、脳卒中、癌、肝硬変、慢性心不全、慢性呼吸不全などを合併して死を迎える患者もいます。
認知症の人の終末期は、癌があってもモルヒネを使った例はほとんどないと言ってよいほど、苦痛の訴えがないのが特徴です。
高見さんの母親のケースのように、認知症は終末期の苦痛や不安を、ベールを被せるように軽くする仕組みがあるのではないかと思えます。
●認知症の自然経過について
認知症になって3年目。
食事は簡単なものを作ったり、近くのコンビニで弁当や総菜を買ってくることができるため、独り暮らしの生活がなんとか維持できていました。
周囲の者が心配していたのがたばこの火の不始末です。
訪問診療をすると、畳やコタツの天板についた焦げ跡が目立っています。
家族がどんなに注意しても喫煙がおさまりません。
ある日、家族が訪問したら、くずかごが焦げていました。
灰皿と間違えてたばこをくずかごに捨てたようです。
独り暮らしは危険だと思い家族は施設入所を申し込みました。
●症状の理解と対応法
一般的に、認知症の人は、発病してから精神症状が多出する時期を経て、身体症状合併期、最後に終末期に至ります。
終末期に近づくにつれて医療的ケアが家族にとって深刻な問題となり、どの段階で入院治療を受けるのか、あるいは在宅でどこまでみていけるかを考えなくていけません。
在宅でみていく場合には、訪問診療や訪問看護による支えがあるかないかで在宅ケアの可否が決まると言えるでしょう。
以上のように、認知症の病状経過を考えると、およそ4つの病期に分けることができます。
一般的には、下記の4つの過程を通りますが、認知症の原因によって多少異なり、例えば、脳卒中発作後の認知症であれば初めから身体症状を合併することになります。
●認知症の自然経過(ナチュラル・ヒストリー)
・発病期
それまではしっかりしていた人に物忘れ、被害妄想などの症状が出現するため、家族など周囲の者は「とまどい・否定」の気持ちに陥り混乱する。
発病のきっかけとして環境の変化などの二次的要因に対する考察が重要である。
・精神症状多出期
記憶障害、見当識障害、被害的念慮、妄想、徘徊など、介護を困難とするさまざまな精神症状が出るのが特徴である。
身体的にはしっかりしているため、精神症状とのギャップに家族は振り回されることになる。
・身体症状合併期
活発だった認知症の人も動きが次第に鈍くなり、食欲や意欲が低下し、失禁などの症状が出てくる。
#膀胱炎や #気管支炎などの感染症にかかりやすくなる。
#筋力が低下して転倒し骨折などを起こしやすくなるのもこの段階である。
・終末期
いよいよ寝たきりとなり、食べ物もとれなくなって衰弱が進行する。
#呼吸器感染症を起こしやすくなって、咳や痰などが絡みやすくなる。
#褥瘡などができやすくなる。また、突然の変化を介護者が心配するようになる。
●認知症の終末期とは
「#認知症高齢者の在宅生活の継続を支える地域の医療支援システムに関する調査研究Ⅱ報告書」(NPO法人在宅ケアを支える診療所・市民全国ネットワーク、平成17年3月)
によれば、 #アルツハイマー型認知症の終末期を、
「病理的には大脳皮質機能が広範に失われた状態で、失外套症候群(例えば四肢の随意運動、発語、追視、表情がみられず、尿便失禁の状態)といえる。
(略)
この時期になると #嚥下障害(誤嚥)が見られ、経過と共にその頻度が増して、経口摂取が不能になる。
嚥下不能のため、経管栄養を行うことも多く、従ってこの期間は数ヶ月から数年と続くこともあり、期間を限定することはできない。
従って癌の末期とは定義が違うことになる」とされています。
つまり、不可逆的な嚥下障害が始まった時期以降を「終末期」ととらえてよいでしょう。
点滴、経鼻カテーテルや胃ろうによる栄養法、中心静脈栄養法(IVH)など強制的な栄養法をとらなければ、まもなく脱水、衰弱などにより死の転帰を迎えることになります。
在宅認知症の人の死因として、
肺炎36%、
突然死・事故死27%、
老衰25%、
心不全・腎不全12%(60例、苛原ら)の報告のように、合併症が原因で死を迎える者も少なくありません。
その場合には、それらの疾患の治療と終末期ケアが問題となるのです。
●認知症の終末期の特徴
認知症の人の場合、大部分のケースでは最期が穏やかであるといえます。
意識レベルと身体レベルがほぼ平行して衰弱が進行していくため、終末期では苦痛や不安を訴えなくなるからです。
癌を合併していても認知症の人に麻薬を使った例はまずありません。
しかし、意識のはっきりしている肺癌などの患者では、モルヒネによる鎮痛のみではなく、呼吸困難や恐怖感などの軽減のため強力トランキライザーも使って意識レベルを下げることが必要なケ—スがしばしばあります。
言い換えれば、人工的に認知症状態をつくるわけです。
したがって、認知症の人はターミナルケアをしやすい人であるとも言えます。
大井玄東京大学名誉教授は、都立松沢病院外科病棟の進行癌患者のカルテ調査で、
認知症のない患者(23名)では、
痛みの記載があるのは21例(91%)、
麻薬使用が13例(57%)
であるのに対し、
認知症のある患者(20名)では、それぞれ、4例(20%)、0例(0%)であった
ということです。
認知症高齢者の在宅終末期について...
最期を迎える場所に「自宅」を選ぶ人が過半数
2012年、全国の55歳以上を対象に行われた内閣府の調査によると、
最期を迎えたい場所を「自宅」と回答した人は、約55%で過半数をこえたと報告されています。
同調査では、「自宅で介護して欲しい」という方も多く見受けられ、ますます在宅での療養が増えていくことを示唆しています。
また、介護保険法や新オレンジプランから、認知症であっても、住み慣れた場所で生活・療養することや、最期を迎えることが望ましいと考えられています。
在宅療養の必要性は今後さらに重視されていくのではないでしょうか。
被保険者が要介護状態となった場合においても、可能な限り、その居宅において、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるように配慮されなければならない
参照元:介護保険法第2条第4項より
認知症の人の意思が尊重され、できる限り住み慣れた地域の良い環境で自分らしく暮らし続けることができる社会の実現を目指す
参照元:厚生労働省新オレンジプランより
重要になってくる家族への支援
今後、終末期に対する考えが浸透し、自分の意思を予め伝えたのち認知症になる方が多くなるのではと予想されます。
しかし、家族への予後予測説明が不十分であると、起こりうる変化に対し、家族はその都度突発的に対応しなければなりません。
その結果、心身の負担が大きくなり、家族の介護疲れも考えられます。
また、リビングウィル(※)が一般的に浸透していないことで、ケアの方向性について家族はどうして良いか分からず、看取り後も達成感を得られずに「これで良かったのだろうか」と悩み続けることもあります。
地域で行える支援
地域包括支援センターや介護支援事業所等の相談機関を活用し、ケアの方向性や終末期について相談することをおすすめします。
また、介護保険のような公的サービスだけではなく、ボランティア団体などの非公的サービスを組み合わせたサービスの活用も、視野に入れておく必要があります。
医療関係者が行える支援
認知症高齢者本人の身体機能低下につれて、外出が困難となります。
そのため外来受診が少なくなり、医療機関側で身体機能や病状を把握することが困難となります。
かかりつけ医が訪問診療を行っていないケースも多く、安心した在宅療養を送るためにはまだまだハードルが高い現状があります。
そこで、#24時間体制の訪問看護の利用も検討することをおすすめいたします。
その際は、療養や看取りの方法や意向を医療関係者と予め相談し、訪問看護利用中も常日頃から意思疎通を図っておくことをお勧めします。
容態急変時や一時的な入院、入所を行うことで、認知症高齢者の苦痛や家族の介護疲れの軽減が図れる事もあります。
これらに対応するためには、何でも相談ができる「#かかりつけ医」ならぬ「#かかりつけ相談処」を見つけておくことも大切です。
その他利用できるサービスについて
心理的負担を軽減する目的として「認知症の人と家族の会」など、ピアサポートを利用することも良いでしょう。
相談先が多岐にわたると新たな視点が生まれてくることもありますし、同じ立場にある方との交流は心の支えともなることも多いです。
関係者毎の役割を学ぶ
最近は認知症ケアに特化した施設(グループホームや認知症病棟等)が増えております。
人間らしく終末を迎えるために、終末期リハビリテーションが必要です。
しかし、実際の介護サービスでは、職員が全て介助してしまうのも見られます。
上げ膳下げ膳ばかりが介護ではなく、高齢者が持つ現存機能をできるだけ活かした介助が必要です。
これらは認知症高齢者本人だけではなく、家族、医療福祉関係者、それぞれの間でどのような終末期を望むのか、またその介護方法についてのスタンスを共有し理解する必要があります。
高度認知症においては意思疎通が非常に困難なことが多いですが、認知症高齢者ひとりひとりに人格があり、尊厳を守る事が求められます。
終末期であるからこそ、サービス提供者側は認知症高齢者の尊厳を重視していくことが求められます。
相談関係者
身体的なケアに医療の比重が高まってくることも想定し、かかりつけ医との連携、また急な状況変化に伴う家族及び本人からの相談に対応できるような体制、関係機関との連携が必要です。
介護従事者
食事、排泄、入浴、整容などの日常生活における基本的なケアが中心となりますが、褥瘡や拘縮の予防、保清等の清潔ケアが重要となります。
わずかな変化も見逃さず、医療関係者との連携を常に行うことが求められます。
医療関係者
介護従事者と連携し、褥瘡や拘縮などの予防、また治療が必要となります。
可能であれば24時間対応できる体制が望ましいです。
家族は予後に不安を抱えていますので、家族に対するケアも必要となります。
認知症高齢者の状況だけではなく、家族介護者の変化についても目を配ることが求められます。
在宅で看取りを行う場合の注意点
家庭内で死亡すると変死扱いになる場合があり、警察の現場検証と家族への聴取が行われます。
必ずしも警察の検視が必要というわけではなく、問題ないと分かってはいても、形式上家族への聞き取り(捜査)が必要なためです。
その後問題なければ、医師の死亡診断書記入となります。
筆者の聞いた話では、ドライアイスを入れて保管するまでに10時間程かかったという話もありました。
夏場だとゾッとするような出来事ですが、医師法第21条には死亡後24時間以内に医師による遺体の診察において、異状死(※)が認められる場合には警察に届けなければならないとあります。
■異状死とは…
犯罪に関わる死や、診療行為に関連した予期しない死亡及びその疑いがあるもの
引用資料:日本法医学会:異状死ガイドライン
悲しみに暮れる間もなく、警察からの聴取が行われるご家族の心情を察すると、何よりもスムーズに事が運ぶことが必要かと思います。
容態急変時に救急隊へ連絡を行うか、往診が可能なかかりつけ医に連絡を行うのか、あらかじめ医療関係者と十分に話し合う必要があります。
その結果、現場検証等におけるご家族の心労は軽減されるかと思います。
違法性阻却(いほうせいそきゃく)について認識する
認知症高齢者の看取りについて述べてきましたが、我々福祉医療に携わる者として違法性阻却という認識を改めて考えて頂きたいと考えます。
違法性阻却とは、違法と推定される行為について、特別の事情があるために違法性がないとすることです。
つまり、他人の身体に針やメス、薬の投与などを行うと傷害罪、医師法及び薬事法の違反となることもありますが、特別な事情があるために、医療者や介護士が行った場合許されるということです。
認知症高齢者に対し、介護看護の不作為により褥瘡を発生させたり、拘縮を発生させたりすることが違法性阻却では無いのです。
ご遺体にも人権が存在する(存在して欲しい)と考えます。
生のあるときに拘縮を発生させ、ご遺体が棺桶に入らない、死装束を着用させられない等といったことはあってはならないと思いませんか?
尊厳死について
尊厳死の法律が無いことで行われた裁判もございます。(川崎協同病院事件;横浜地裁判決 2005年3月25日)
本人の意思に基づき死期をただ延長させるだけの措置を断り、自らの意思において死を迎えることは、自己決定における最大の決定事項だと考えられます。
どこで最期を迎えるか、「病院(施設)のベッドの上で」「自宅の畳の上で」などの希望があるかと思います。
予め、自らの意思を示すことができたら良いでしょうが、認知症高齢者の場合は自分の意思を伝えることが非常に困難な状況であることがほとんどなのです。
Lee Seung Gi(이승기) _ Return(되돌리다) MV
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