よく考えたい... ある事例(5) #なぜ貧困世帯の子供たちは荒れるのか... #JKビジネス

国会でも安倍総理と民進党・蓮舫代表との間で議論が応酬され、注目を集める「子供の貧困」。


子供を貧困から救うには? まずは“認識”を改めるべし

なぜ貧困世帯には荒れる子供たちが現れてしまうのだろうか。

認定NPO法人もやいの理事長である大西連氏はその原因をこう分析する。

「幼少期に経験した貧困や虐待が原因でコンプレックスに苛まれ、心が廃れてしまった子供がいることは否めません。

例えばこの20年間、都内では約10人のホームレスが未成年者から凶器を使用したリンチを受けて死亡しています。

そして、逮捕された少年少女の多くは

『ホームレスはゴミだと思った』

『怠けているから社会のクズだ』

と供述しています。

残念ながら、そのなかには貧困家庭で育った少年少女が少なくありません」

 なかには一線を踏み越えてしまった子供もいたという。


「暴力団など反社会的勢力の一員に加わってしまう子供もいます。他には20代でメンタルを病んでしまったり、刑務所から出所したけど仕事のない人、刑務所と精神科病棟を出たり入ったりするケースもあるようです」


さらに社会の変化が問題をより複雑なものにしている。

「昔はドラマのような絵に描いたケースが多かったので、外から見ても子供の暴走の原因がわかりやすかった。

例えば母子家庭で母親の帰宅が遅い、鍵っ子、暴走族のメンバーといったものでした。

ところが、今は核家族化が進み、世間のプライバシー意識も高くなり、実態が見えにくくなっています」


また、東洋大学教授の藤本典裕氏は貧困の経験が子供の心身に与える影響についてこう語る。

「同志社大学が’14年に行った『#大阪子ども調査』によると、大阪の子供に自己肯定感について質問したところ『自分には価値がない』と答えた子供は小学生、中学生ともに約2人に1人という結果が出ました。

これだけでも衝撃的ですが、

特に教育にお金をかけられない貧しい家庭の子供のほうが『価値がない』と答える傾向にあるんです


そんななかで、我々大人が取るべき解決策として、藤本氏は「一人ひとりの社会的認識を改めるべき」と指摘する。

「NHKの番組を受けて、出演した“貧困女子高生”がスマホを持っていると騒がれ、バッシングが起きましたが、今や高校生にとってスマホは友達との関係を繋ぐ生活必需品。どんな家庭の子供でも所持していてもなんらおかしくはありません。これは食うや食わずの生活をしている『絶対的貧困』の問題と、その日の生活に困るほどではないが、進学や生活環境面で金銭的な不利益を被る『相対的貧困』の違いが混同されたまま理解されていることの現れです。今、なんとかすべきなのは後者だという認識を持つべきです」


また、大西氏は子供を守る場としての「コミュニティづくり」の大切さを強調する。

「大事なのは居場所がない子供を孤立させないこと。そのためにはコミュニティづくりと、それに加えて大人は地域の子供たちに関心を持つことが大事。休日は近くの公園で地元の子供と遊んだり、彼らに何か異変はないか気をつけたりしてほしいです。地元の面倒くさいおじさんを自任する気持ちが大事ですね」

「3000円、ラスト」立ちんぼ売春で生き延びる歌舞伎町の少女たち~19歳・リコ(仮名)の場合~

2017.03.03

昨年、貧困女子高生を取り上げたNHKの番組がきっかけとなり、注目されるようになった「見えない貧困」の中で暮らす少年少女たち。

「普通に生活しているようだが、実は貧困」という、一見すると分かりにくい子供たちの置かれた厳しい状況に、改善を求める声が相次いでいる。

 だが、一方で「見える貧困」の中で懸命に生きようとする子供たちは、その実態があまりにも悲惨すぎて、テレビなどの大手メディアが取り上げることは少ない。


わずか3000円で春をひさぐ19歳の少女リコ(仮名)

 新宿・歌舞伎町から大久保方面へ抜ける細い道路の両端に立つ、4~5人の少女たち。その前を横切ろうとすると、携帯に向けられていた視線をこちらに投げかける者、なにか言いたそうに足を踏み出そうとする者、そのまま携帯を見続ける者、と様々な反応を見せるが、一人の少女がボソッと放ったひと言が衝撃的なものだった。

「3000円、ラスト」

 19歳のリコ(仮名)は、東京西部の実家を飛び出して以来、3か月ほど歌舞伎町で暮らしている。

「ギャル」らしいメイクのリコだが、金髪に染められた髪の根元は黒い部分が目立ち、白いジャケットの襟部分は、ファンデーションか垢で薄黒く汚れているのがわかる。

いや、衣服の全てが汚れているか破れているかという状態で、爪は割れ、前歯の二本が抜け落ちていた。

いうまでもなく、彼女たちはこの通りで自分たちを買ってくれる男性を待つ街娼、いわゆる「立ちんぼ」だ。


新宿・大久保界隈といえば、韓国系や東南アジア系の立ちんぼが多くいることで知られていた界隈だが、2000年代中頃には日本人の立ちんぼが出没するようになった。


そんな怪しい界隈に、まだ高校を出たばかりの少女たちが現れるようになったのは、この7~8年のことだという。


「普段はイチゴーのホ別、一時間ラストまで。今日は腹減ってるし、ご飯食べさせてくれるなら3000円でいい。寒いし、お風呂も入りたいしね」


 筆者がそれとなく“取材”であることを告げ近くの中華料理店に入ると、リコは炒飯と牛肉と野菜の炒め物、餃子に揚げ春巻きなどを一気に注文する。

レモンチューハイのオーダーは、私が下げさせた。

外で引っ掛けた客とよく訪れるというこの中華料理店。

リコとは親しげに話す店主の老婆の視線は、私から意図的に外されているようだ。


「中学の途中から学校いかなくなって、定時制高校もほとんど行かずに中退。キャバのバイトで知り合ったホストの家に転がり込んで、風俗のバイトやって……。でもウチさ、当時未成年だったし歯もないじゃん(笑)。風俗の面接でも落とされっから、援交しかないよね、実際」

ご飯のつぶや野菜片を口からこぼしつつ、生い立ちを語るリコ。

言動には悲壮感を全く感じさせないが、この現代日本に、どこか遠くの貧困国家で暮らす“ストリートチルドレン”のような子供が存在することに戦慄を覚えた。

リコの周りの大人たちの無関心、リコを取り巻く社会が完全に機能不全に陥っているのではないか。


「補導されたこともあるし、児相(児童相談所)に入れかけられたこともあるけどね、逃げたよ。少し前までは、風俗店の寮に入ってたけど、殺人事件絡みで店が潰れて、追い出されちゃった。行くとこないよ、マジで」


 2014年、4人の女性が一人の女性をリンチし殺害するという事件が起きた。

リンチの様子を動画で配信していたという衝撃的な犯行が報道等でも明らかになっているが、その全貌はあまりにも救い難いもので、詳細を報じるマスコミは皆無だった。

事件の現場となったマンションは、一部屋に3人から4人ほどの女性が生活しているような風俗嬢の寮であり、リコも別フロアの部屋に、複数の女性と暮らしていたことがあったという。

「犯人のうち数人も、未成年のうちから立ちんぼやってたよ。ホスト狂いで風俗もやってた。被害者もやってたんじゃないかな。みんな生きるのに必死だからね、ちょっとおかしくなってんじゃん? ウチも人のこと言えないけどね」

中華料理店を出た私は、リコに取材の謝礼として5000円を手渡し、その場を立ち去ろうとしたが……。

「そういうの、マジでムカつくんだけど! ヤリてーんだろ?  いい人ぶってんなよ、死ねよ! 何が取材だよ、面白おかしく書くんだろ、クソが!」

取材なのでホテルまで行く必要はないし、買春する気もないと何度も説得するが、理性を失ったように罵声を浴びせかけてくるリコ。

やっとの事で解放された時、リコは私から2万円の現金をむしり取っていった。

「お前さ、ウチらのこと可哀想とか思ってんだろ? マジ失礼だから。買う気がねーなら、最初からメシなんか食ってんじゃねえよ!」

少女たちにとって「売春」は、その日を生き延びるための手段、そして仕事である。

彼女たちの置かれた環境が気の毒だと、大人や周囲が囃し立て、哀れみの目を向けるのとは対照的に、少女たち自身は、自分を悲しい存在だとは思っていない。

――ただその日を生きるのに精一杯なのだ。

「#JKビジネス」客引きの少女らを一斉補導 警視庁

2017年4月9日

女子高生の性を売り物にした「JKビジネス」を規制する都条例が施行されるのを前に、警視庁は8日、東京都内4地区で、関係する店の客引き行為をしていた少女たちを一斉補導した。

JKビジネスに携わっていたとして15~18歳の20人を補導し、働かないよう指導した。

 秋葉原地区では、午後4時ごろから捜査員やボランティア約80人が客引き行為をしていた少女たちに声をかけた。

昨年12月現在で、都内にはJKビジネスの店舗が190店舗あり、このうち約120店舗は同地区に集中している。

捜査員は、制服やコスチューム姿でチラシを配っていた少女たちの年齢などを確認し、18歳以下の少女たちを補導した。


 この日は、渋谷、新宿、池袋の各地区でも一斉補導を実施した。

 JKビジネスが性被害の温床になる可能性があるとして、政府は今月を被害防止月間としている。

店舗への立ち入り権限などを盛り込んだ都条例は7月に施行される予定。


春休みや進学が重なるこの時期、安易にJKビジネスで働く少女が増えることが懸念されるため、警視庁は警戒を続ける。(阿部朋美)





少年の荒れた貧困の実態

2016.10.28

そこで出会ったのが冒頭で紹介した良太さんだ。

東京近郊に住む彼の家を訪ねたところ、雑然とした一室で祖母が声を漏らす。

「今も後悔しているんですが……良太が警察のご厄介になったとき、とても抱えきれなくなって児童相談所に預けたことがあるんです」


ヤクザの怒号が響き渡ったある夜

 良太さんが祖母に引き取られたのは、2歳になる頃だった。離婚した両親の顔は覚えておらず、親権を持つ母親は「病気で入院している」と聞かされ、祖母が受給する最低額に近い生活保護費と児童手当の月十数万円のみで育った。

「でも基本、婆ちゃんが3食作ってくれたし、腹をすかせた記憶はないです。みんなが持ってるDSをねだったときも内職して買ってくれた。でも、中学に上がる頃かな? 晩飯が卵かけご飯だけとかカップラーメンが増えたのは」

その理由となった出来事がある。

深夜、ドアが乱暴に叩かれた。

「良太は寝てなさい!」と祖母に諭され、布団に包まると、母親の名を叫ぶ男の怒声がした。

「実は母親、ヤク中で薬物更生施設にいたんですよ。でも、退院したタイミングにツケで覚醒剤を買ったらしくて、ヤクザの取り立てでした。結局、婆ちゃんが内職で貯めたカネは残らなかった」

翌日、良太さんに自宅近くを案内してもらった。

かつて荒れた思春期に盗んだバイクで走り回っていたエリアで、胸にある和彫りの入れ墨もその頃のものだという。

「婆ちゃんから盗んだカネで買った脱法ドラッグをキメてツレとバイクを乗り回したりしてた。このタトゥーはいわば友情の証しだよ」

今も地元の友達とは「肉親以上」の関係。

道中では良太さんと同じ金髪でタトゥーを入れた少年が何人も親しげに声を掛けてきた。

「でも、カネが欲しくて盗んだバイクのパーツを売ったり、同級生に無理やりカネ貸して利子倍にしたり……あいつらにも迷惑かけたなぁ。今、婆ちゃんが宗教にハマったのも自分のせいだと思ってる」

祖母の孫に対する生活保護の扶養義務が外れる来年、良太さんは資格試験に挑戦する予定だという。

「婆ちゃんのためにもぶっちゃけ金持ちになりたい。でも俺みたいなヤツに仕事なんてないんだよな」


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