#シングルマザーの貧困 #官製貧困 【 #相対的貧困への理解を #貧困女子高生騒動 】
45歳東大卒シングルマザーの重すぎる試練
「激しいパワハラのせいで障害者になった」
2017年02月14日
この記事では、女性、特に単身女性と母子家庭の貧困問題を考えるため、「総論」ではなく「個人の物語」に焦点を当てて紹介している。
個々の生活をつぶさに見ることによって、真実がわかると考えているからだ。今回紹介するのは、東京都に住むシングルマザー45歳。東大で学んだ高学歴の彼女は、なぜ働けなくなってしまったのか。
井川優子さん(45歳、仮名)は大きな電動車椅子に背をもたれ、ゆっくりと私のほうを向いて会釈する。
過剰に暖房が効く部屋、膝には毛布がある。
電動式の背もたれは、45度程度の角度で半分寝た状態だ。声が小さい。
耳を立てながら近づくと、「今日はよろしくお願いしますね」と聞こえる。事前に体調が悪いと聞いていたが、そういう次元ではなく、やっと生きているといった状態だ。
「そんな驚いた顔をしなくても(笑)。カラダが動かないだけですから」
驚く私の表情をすぐ察し、笑いながらそう言う。
半分寝たきりの彼女は上品な淑女だった。
なんと東大文科III類、最終学歴は東大大学院前期課程修了という。
卒業後、臨床心理士として活躍する。
しかし2008年、特定疾患外の難病である慢性疲労症候群(別名:筋痛性脳脊髄炎)を発症し、ほぼ寝たきりにまで症状は悪化。
現在のような厳しい状況を迎えた。
全身の筋肉と自律神経の機能が低下して、体温調節ができず、全身を激しい痛みが襲い、カラダを満足に動かすことはできない。
寝返りや取材のために右を向くようなこともできない。
さらに、2人の子どもを育てるシングルマザーである。
公立高校と公立中学に通う兄妹。
半年前から、10年以上費やしてやっと抽選に当たった公営団地で暮らす。収入は年間200万円の障害年金だけ。
重症の井川さんは、1人で入浴も食事もできない、ほぼ全介助状態。
生活は毎日訪問するヘルパーに頼る。
本当に肉体的、精神的、そして経済的にも、「やっと生存している」といった状態だった。
「生活保護は子どもの進路が制約される」
「児童扶養手当の月4万7000円、それと児童扶養証書がもらえないことが本当に苦しい。病気で働けないから、支援団体と区役所から生活保護受給を何度も言われました。けど、生活保護では障害加算と母子加算、どちらかしか選べない。障害年金が認定されると自動的に児童扶養手当が受けられなくなって、その証書がないと一人親支援のメニューが利用できなくなる。なぜか、そういう制度で、非常に苦しい。子どもの大学進学が視野にあって、生活保護だと進路が制約される。だから生活保護を受けないで、踏ん張っています」
経済的に最も負担が大きかったのは、月9万円の家賃だ。
生活保護ではないので賃貸住宅を借りている。
収入の半分以上は、家賃と光熱費で消えた。
生活環境も悪く、10畳ほどの部屋に2台の介護ベッドがあり、狭すぎて2人の子どもが寝るスペースはなかった。
現在の公営住宅に引っ越すまで、長男は押し入れで眠っていた。
「家賃4万円の公営住宅にやっと入れて、少しだけ肩の荷が軽くなりました。それまで子どもの食べ物にも困る困窮状態でしたが、最近はやっと食べて、寝るという最低限の生活環境は確保できています。私の担当医や子どもの学校の関係で、絶対に地域からは離れられない。
新しい人間関係を作れるような状態ではないですし。人気の高い地区なので公営住宅は倍率700倍以上。生活の困窮に応じた抽選で、ようやく順番が回ってきました」
慢性疲労症候群が発症後、現住居に引っ越すまでの7年間は地獄のような日々だった。
1年間、一度も外出しない年もある。
前住居はエレベーターのない4階。車椅子で全介助に近い彼女は、とても外出することはできなかった。
「もう何年間も自分1人では生活できない状態。お風呂はもちろんですし、ご飯を食べたりもできない。こうしてカップを持てる日はいいけれども、1食を食べきる体力はないです。食べれば元気になる。でも、食べられない。体力落とす。その繰り返し。ちゃんと動く手と足が欲しい、そう毎日思っています。本当に情けないです」
日々状態が悪化して、7年前から手も足も満足に動かなくなった。
寝たきりに近い状態になり、清潔は保てない。
狭い部屋に介護ベッドを2台置き、汚れたら隣のベッドに移る。
食事と入浴はヘルパー頼り。最悪な生活環境を子どもたちに申し訳ないと思いながら、ベッドでじっと天井を見ているだけの日々を送っていた。
「カラダが動かないのは、本当に気が滅入ります。それに症状が本当に苦しい。今はちょっと落ち着いているけど、疼痛がある。鋭い痛み。私の場合は肩の関節にキリを入れて、ぐりぐりされているような。それが何時間も続く。何年間も痛みに苦しめられて、ここにきてちょっと緩和しました。やっぱり生きているのが、しんどいってなります。自殺して亡くなった人たちがうらやましいな、って思っていました。慢性疲労症候群の患者は自殺率が高い。私もやっぱり追い詰められて死にたいって時期は長かった」
発症のとき長男は7歳、長女は5歳。
家賃負担が重く、子どもたちは給食以外を満足に食べることができなかった。
空腹の中で、交代で母親の食事介助やトイレ誘導など介護を手伝った。厳しい生活だった。
「カラダが許すかぎり、子どもたちにできることはしました。子どもがいなかったら、もっと療養に専念でき、早くよくなるかもっていう考え方もある。けど、私の場合は子どもがいるから希望があって頑張れた。子どもがいなくて1人だったら、たぶん3~4年前に自殺していました」
井川さんは体力がない。長時間しゃべることも難しい。ここまでしゃべったところで息切れが始まった。少し時間を置く。
「東大卒」でも就職は厳しかった
手元のスイッチで背もたれを倒し、目をつぶって休む。30分間、小さな声で話をしただけ。体温調整ができず、少し震えている。どうして厳しい現状に至ったのか、足早に聞かなければならない。
東大大学院在学中から、臨床活動を始めた。
1998年に大学院を修了してからはフリーランスの臨床心理士になる。
各地の教育委員会、総合病院の精神科、大学の学生相談室、私立大学や大学院の非常勤講師など、活発に仕事をした。
「私たちの世代は、東大卒でも就職は厳しかった。非常勤掛け持ちが一般的で、今、高学歴女性の貧困が問題になっていますが、まさにそれです。私はたまたま単価の高い仕事をもらったので、月収は50万円ほど。それで1999年に結婚して、すぐに長男が生まれました」
友達の紹介で2つ年上の男性と結婚。
同じく大学院を修了して非常勤講師をする男性で、夫婦生活と家庭はそれなりに平穏だった。
結婚生活で初めての壁は不定期で仕事依頼がくるフリーランスの臨床の仕事と、育児の両立が難しくなったことだ。
「勤務先は私立大学の学生相談室で、校内でリストカットとか、あと“自殺します”って予告する学生が多かった。具体的な予告になると、目を離すわけにいかないので学生相談室で保護、親御さんに引き渡す。親御さんが地方から来るのを夜まで待つとか多かった。時間的に育児をしながらは無理と判断して、転職することにしました。省庁の外郭団体でした。天下りが多い組織です」
某省庁の外郭団体に転職する。そこから転げ落ちるように人生は暗転した。
「カラダがこの状態になったのは、パワハラが原因です。客観的に原因を考え続けましたが、それしか考えられない。組織ぐるみ、執拗に執拗に執拗にやられました」
冷静沈着な井川さんは、初めて少し大きな声を上げた。
「始まりは苗字でした。私は通称で仕事してて、結婚で苗字が変わった。研究者の側面もあって名前が変わると、業績が検索できなくなる。それまで仕事では旧姓を使っていました。
東京都教育委員会の仕事でも当時すでに通称を認めてくれた。
でも2005年にその外郭団体に入るとき、通称使用は絶対に認めないと追い詰められた。
どれだけ説明しても業務命令だから、苗字を変えろと。家庭裁判所に行けと。
すごまれた。
繰り返し恫喝されてペーパー離婚しました。
名前だけが理由です。
そうしたら旦那が古風な人で、ショックだったって。気持ちが離れてしまった。要するに私はフラれ、子どもは捨てられました」
世帯年収で1000万円は軽く超えていたが、離婚が原因で半減。
約束した月10万円の養育費は一度も払われなかった。
シングルマザーになって経済的、時間的に生活が苦しくなる。
勤務中に上司がワインをこぼして…
「恐ろしい職場でした。全職員の1割くらいが高学歴女性で、とにかく女性をイジメ抜く。ミスを女性に押しつける、時間内で処理が不可能な仕事量を課して恫喝する、男性上司が数人で囲んでののしるみたいな。最もひどかったのは、勤務中に自席で飲んでいたワインをこぼしてシミをつけた上司が近づいてきて“貴様を掃除係に任命してやる”と。500平方メートルくらいのワンフロアを日常業務しながら延々掃除させられて、それでちょっとのホコリや糸くずを持ってきて怒鳴るみたいな。その上司は総務部長でした」
年功序列が現存する公的機関は組織が硬直し、昔ながらの男尊女卑の意識が残りがちだ。
彼女が働いた団体は女性職員へのイジメ、パワハラが常態化して、それまで何人も退職している。
さらに女性というだけで正当な人事評価はされなかった。
「私の在籍期間、数人いた女性職員は5段階ある人事評価で全員まず1にされました」という。どんな結果を出しても女性職員の職位は上がることはなく、男性が著しく有利な男性社会だった。
2007年、転職して2年目、ストレスの多い日々を過ごしているうちに体調がおかしくなった。
「週末は頭痛とかで寝込んでいましたし、お腹が痛い。普通じゃない痛さ。医師の知人らに相談すると皆そろって胆のう炎ではないかと言う。お腹が痛いときは、必ず前兆で激しい頭痛が伴う。基本的に頭痛と腹痛はよくなることはなく、我慢しながら働いて2008年1月ごろから胆のうの辺りが本格的に痛くなった。休日はぐったり疲れきって、頭が痛くて動けなかった。子どもの授業参観も痛くて行けない。仕事以外、いつも寝ていました」
体調が悪くなっても、職場のパワハラは続いた。
上司や上層部は井川さんを集中的にイジメ続け、子どものために定時に帰ると勤務態度をののしった。
シングルマザーなので、辞めるわけにはいかない。頭痛と腹痛の前兆が出ていたが、肉体的にも精神的にも我慢に我慢を続けた。
「最終的に壊れたときのことは覚えています。総務部長に代休振替を頼んだ。“私の振り替え休日どうしたらいいでしょう? ”って尋ねた。“は、捨てろよ? ”と言われて、その瞬間に突然ポンって熱が出た。確か部長たちは大きな声でホステスとかゴルフの話をしていた。そんな話を聞きながら、スイッチを入れたように熱が出て倒れてしまったのです」
2009年3月。井川さんの健康は、その日から戻っていない。
「39度の熱が、いつまでも38度までしか下がらない。翌日、発熱を報告すると、組織最大の収入源の担当に任命され、無理に仕事を続けました。最初は運動不足と思ってジムに行ったり、ウォーキングしたり。それで、ますます悪化。羞明(しゅうめい)というけど、目がおかしくなってまぶしい光に痛みが走るようになって、運動しても筋肉がげっそりと落ちるばかりで、体温調節ができなくなったのもその頃です」
だんだんと筋力が落ち、手が使えなくなり、足も使えなくなった。手が震えて、ペンもコップも満足に持てない。悪化は続き、現在は長時間座位を保つのも難しい状態だ。入浴も食事も1人ではできない。頭痛と目痛、全身の痛みは治まらない。パワハラが原因と思った。悔しくていくら涙を流しても、壊れたカラダは戻ってこなかった。
170万円の「返金」を迫られた
2010年8月に倒れて休職し、そののち解雇。雇用保険の傷病一時金と児童扶養手当で生活をする。
しかし、いつまで経っても回復しない。
2011年に障害認定を受け、障害年金を受給する。
するとすぐ児童扶養手当、そして、だいぶ経ってから傷病一時金の返金を迫られた。
失業保険を頼りたかったが、就労できない身体状態とされ、支給されなかった。
「ギリギリの生活だったので、170万円の返納はパニックになりました。持つおカネを全部払っても足りない。私は1日1食だけにし、せめて子どもだけ最低限にと願っても、1つの菓子パンを3人で分ける、みたいな生活です。それと障害年金と児童扶養手当の併用ができない。それがここ数年の生活が苦しい原因です」
生活苦に涙を浮かべる。傷病一時金の返金はまだ終わっていない。
歩くことすらできない。
2人の子どもに親らしいことをしてあげられない。
謝ってばかりだった。
利用できるサービスがないかと区役所に問い合わせるたびに「子どもを施設に入れろ」と言われる。井川さんは何十回とその提案をされたが、拒絶を続けている。
「今の日本は一人親で病気になって、こんな全介助みたいになったら子どもは施設に入れろって社会です。カラダは動かないかもしれないけど、私はまだ考えられるし、感情もある。ヘルパーの方の手を借りれば、まだいろいろなことはできる。全身痛くて毎日、毎日苦しいけど、私が子どもたちにしてあげられることは、勉強を教えてあげること。長男が中学2年、長女が小学校5年のときから、私が勉強を教えてきました」
長男は都立最難関校に合格し、現在そこに通っている。
母親と同じ東大を目指しているという。
「毎日のように死のう、死にたいって思っていたけど、受験を乗り越えて子どもが元気になった。長男は希望の高校に進学してから、自信に満ちてきた。それまではいつも引っ込み思案で、自信がない僕っていう感じ、すぐに涙が出ちゃうみたいな。長男が元気になったら、長女も笑顔で頑張りだして、今は本当に子どもに励まされながら生きています」
行政の助言は「子どもを施設へ入れろ」ばかり
再びカラダが震えだした。
寒いようだ。
小さな声はさらに小さくなり、そろそろ限界だった。
自宅は徒歩圏だが、体力のない彼女がここまで来るのは大変な労力だ。この取材に応じたのは、おそらく制度に言いたいことがあるからだ。最後に聞く。
「子どもたちにとって、障害のある親が子どもを育てるサポートがほとんどゼロなこと。現在に至っても、児童相談所も子育て支援課のソーシャルワーカーも“子どもを施設へ入れろ”ばかり。障害がある親が子どもを育ててはいけないと、制度側の人たちは思っています。それはおかしい。障害のある親が子どもを育てると、苦しめられることばかり。私は全介助みたいな障害者だけど、子どもと暮らしたい、親として生きたいのです」
自分ではコートを着ることができない。
ヘルパーの女性がやって来て、慣れた手つきで着衣する。
湯たんぽを背中に入れ、背もたれを起して電動車椅子はゆっくりと動く。
公営団地まで20分ほどかかるという。
暴力ですべてを奪われた。
最後に残されたのは、一緒に生きる子どもだけ。
日本最難関の大学院を卒業した頭脳があっても、健康を取り戻すまで頼るものは社会保障しかない。排除しないでほしい、彼女はそれだけを言っていた。
日本の子供の貧困率はOECDで10番目に高い...
日本の子供(0~17歳)の6人に1人が貧困状況にあると聞いても「こんな豊かな世の中で?!」とにわかに信じられないかもしれない。
日本財団ソーシャルイノベーション推進チームの花岡隼人氏が
『週刊エコノミスト』(12月13日号)で、日本の「子供の貧困率」16.3%は「OECD(経済協力開発機構)加盟国では、34カ国中10番目に高い数値だ。
一人親世帯に限ると50.8%となっており、加盟国の中で最も高くなっている」と報告する。
ここでいう子供の貧困とは、衣食住すら満足でない絶対的貧困ではなく、世帯可処分所得が中央値の半分以下の「#相対的貧困」だ。
現在の日本でいうと、3人世帯の場合は約207万円未満。
親1人、子供2人の家族が毎月約17万円で暮らすイメージで「経済的困窮から、普段の生活や人生の選択に大きな制約がかかる」と花岡氏は指摘している。
具体的には「ゲームやおもちゃを買うことができず、友達の話題についていけない。
スポーツ用具が買えず、部活動を諦めざるを得ない。塾に行けず、他の子供と学力の差が開いてしまう。学費を工面できず、大学で学ぶことができない」などが起きているという。
貧困が学力に与える影響ははっきりしている。
同誌に掲載されているグラフ(お茶の水女子大学「全国学力・学習状況調査」)の中学3年生の数学Bの成績を見ると、
年収300万円の世帯と1000万円の世帯では、平均点で2倍近くも違う。
この学力、学歴の差は「賃金の差となって表れる。
つまり、貧困家庭で育った子供は、
将来、貧困になる可能性が高い」(花岡氏)。親世代の貧困が子供世代の貧困を生む「貧困の連鎖」がこの日本でいま広がっているのだ。
今年8月、NHK「ニュース7」にそんな女子高校生が実名で登場した。
自宅にエアコンはなく保冷剤で首筋を冷やす、
学校のパソコンを使った授業に置いていかれないために母親が1000円で買ってくれたキーボードだけでブラインドタッチを練習、
アニメの専門学校に進学したいが50万円の入学金を用意しなければならずあきらめた、と報じられた。
ある高校の校長先生からこんな話を聞いたことがある。
「学校の成績や進学は本人の努力次第という人がいますが、経済的に余裕のある家庭の生徒は小さいときから塾に通ったり、
家庭教師が付いていたりするのですが、余裕のない家庭の生徒はそれができません。そもそものスタートラインが違ってきてしまっているのです。
子供も家が苦しいことはわかっていますから、進学をあきらめてしまいます」
相対的貧困に対する無理解や偏見も強い。
「スマートフォンを持っている」「外食している」「アイドルのコンサートに行った」とあげつらって「あれで貧困といえるのか」というのだ。
しかし、いま高校生にとってスマホは友達とのコミュニケーションツールとして必需品で、ファミリーレストランでのおしゃべりも人間関係をつくっていく上で大切な時間だろう。
そんなときにも、いまの暮らしと将来に大きな不安を抱える子供が6人に1人もいる現状に、政府も世間も関心が高いようには見えない。
貧困当事者への中傷に抗議し、相対的貧困への理解を求める声明
反貧困ネットワーク:2016年8月31日 23:01 #hanhinkon
#反貧困ネットワーク
2016年8月18日にNHKで放送された「子どもの貧困」に関する特集番組について、参議院議員の片山さつき氏が自身のtwitterアカウントにおいて、ネットニュースのリンクの引用リツイートの形で、いくつかの発言をしました。
私たちは、この発言が貧困問題への誤った認識を拡大し、貧困状態にある未成年の当事者を侮辱するものであると考え、抗議するものです。
片山氏の発言は以下の通りです。
「拝見した限り自宅の暮らし向きはつましい御様子ではありましたが、チケットやグッズ、ランチ節約すれば中古のパソコンは十分買えるでしょうからあれっと思い方も当然いらっしゃるでしょう。経済的理由で進学できないなら奨学金等各種政策で支援可能!」
https://twitter.com/katayama_s/status/766895331401347072
「追加の情報とご意見多数頂きましたので、週明けにNHKに説明をもとめ、皆さんにフィードバックさせて頂きます!」
https://twitter.com/katayama_s/status/766913949526659072
「私は子ども食堂も見させていただいてますが、ご本人がツイッターで掲示なさったランチは一食千円以上。かなり大人的なオシャレなお店で普通の高校生のお弁当的な昼食とは全く違うので、これだけの注目となったのでしょうね。」
https://twitter.com/katayama_s/status/766986221893541888
国会議員が上記のようなツイートを行うことは、「貧困」への無理解を拡大しかねない非常に重大な事態と考えます。
「貧困」という言葉からは、飢えてしまう、住むところがない、着るものがなくて凍死してしまう、などのすぐさま生命の危険がある「絶対的貧困」をイメージする人が多いと思います。
しかしながら、その社会の標準的な生活を十分に送ることができない状態にあることも貧困と呼ぶべきです。
それを「 #相対的貧困 」と呼びます。
所得が真ん中の人の半分に満たない人の割合を指すのが「相対的貧困」です。
日本を含む先進諸国ではこの「相対的貧困」を貧困の指標にしており、日本の「相対的貧困率」は、16.1%と公表されています(2012年厚労省「国民生活基礎調査」)。
同調査によれば、貧困ラインは2012年時点で単身だと122万円/年(等価可処分所得)であり、月に約10万円しか使える所得がない計算になります。
2人世帯だと173万円/年(月に14.4万円)、3人世帯だと211万円/年(月に17.6万円)、4人世帯だと244万円/年(月に20万円)という数字になります。
つまり、日本では、この水準以下の生活をしている人が「貧困状態にある人」であり、そういう人たちが16.1%いるということです。
そして、子どもの貧困率は16.3%、シングルペアレント(母子・父子家庭)の貧困率は54.6%と、非常に高い数字となっています。
これは、日本政府が公式に発表している数字です。
日本の「相対的貧困率」は1980年代後半から右肩上がりに上昇を続け、貧困ラインは1997年をピークに下降を続けています。
貧困ラインが下降し、貧困率が上昇しています。
それはすなわち、日本の「貧困」が爆発的に拡大していることの証左でもあります。
「貧困」と聞くと、収入がなくなってしまうこと、働けない状態をイメージしがちですが、日本で(先進諸国で)一般的に「貧困」といった場合は、例えば、働いているが非正規労働で低所得である、
家族の介護などで満足に働けない、低年金で生活を維持するのが大変などのさまざまな背景や事情を抱え、所得が低い状態で生活している人たちのことを指します。
一見、普通の生活を送っているように見えても、生活は困窮しており貧困状態にあるということです。
片山氏の発言は、このことをまったく理解していないものでした。
社会の中にある貧困への無理解をさらに拡大する無責任な発言は重大です。
2013年には「子どもの貧困対策の推進に関する法律」が全会一致で成立しました。
与野党を超えてすべての国会議員が賛成し、子どもの貧困対策を行うべく、制度が少しずつですが整いつつあります。
民間の取り組みとしても、「 #子ども食堂 」と呼ばれる活動が全国に300カ所とも言われるほどの広がりを見せ、すべての子どもに学校給食の給食費の徴収をなくし無償化する自治体も100を超えたなどの報道もあります。
爆発的に広がる貧困への対策としては十分ではないながらも、貧困をなくそうという官民の取り組みが始まっています。
片山氏の発言は、貧困の拡大に対するこのような官民の取り組みにもブレーキをかけかねないものです。
さらに、片山氏が貧困報道をバッシングしていることも見過ごすことができません。
日本における貧困の存在は、長らく「ないもの」とされてきました。
広がる貧困を背景に、ようやく困難な中でメディア関係者の努力によって貧困報道が広がってきました。
日本の貧困の拡大を知らせるうえで、こうした貧困報道は重要な役割を担っており社会的にきわめて重要です。
片山氏は、貧困報道の内容をバッシングしNHKと「面会」までおこないました。
これは貧困報道に対する重大な圧力とも言えることであり決して許されることではありません。
片山氏の発言は、2012年にお笑い芸人の母親が生活保護を利用していたという、まったく違法でもなんでもない事例について、メディア等でバッシングが吹き荒れたこととを想起させるものでした。
貧困状態にある未成年の一市民に対して、国会議員が間違った認識にもとづいてバッシングするということはまったく異常な行為であり、勇気を出して出演された彼女に対する侮辱であり、到底許されることではないと考えます。
片山さつき氏による今回の発言は、以上のように、さまざまな問題をもつものであり、反貧困ネットワークとして厳しく抗議するものです。
また、今回のいわれなき攻撃によって、報道機関において貧困報道の現場が委縮するようなことや、ようやく始まりつつある政府の貧困対策が縮小されるようなことがないことを強く求めるものです。
反貧困ネットワークは、「貧困をなくしたい」と願うすべてのみなさんとともに、さらに活動を前進させる決意です。
#貧困女子高生騒動
「相対的貧困」への無理解も原因
今回の炎上を「貧困たたき」だととらえ、抗議するデモを行ったグループ「 #AEQUITAS ( #エキタス )」の原田仁希さん(27才)は相対的貧困とは、「選択肢を奪われること」だと言う。
あしたが見えない ~深刻化する“若年女性”の貧困~
2014年1月27日(月)放送
月収13万円、37歳女性を苦しめる「#官製貧困」...
東洋経済オンライン 9月8日(木)5時0分配信
子どもの貧困、ひとり親・非正規が強く関連...
大阪府調査
2017年1月19日00時15分
大阪府は18日、府内の子どもの貧困について把握するために昨年7月に実施した「子どもの生活に関する実態調査」の詳細な分析結果を発表した。
困窮度はひとり親家庭や非正規雇用の家庭との関連性が高かった。
さらに困窮度が高い子どもほど勉強時間が少なくなる傾向にあり、将来の進路にも影響がある可能性が明らかになった。
調査は、堺市、岸和田市、高槻市、東大阪市など府内30市町村で小学5年と中学2年の子どもがいる8千世帯に郵送し、約2600世帯から回答を得た。
昨年10月に調査結果の単純集計(速報値)を発表。
今回は子どもと保護者双方から回答があった2301世帯を詳しく分析した。
府は世帯所得などをもとに困窮度を四つに分類。
困窮度が最も高い「困窮度Ⅰ」の286世帯のうち、ふたり親は半数以下の138世帯で、母子家庭が128世帯を占めた。
最も困窮度が低い「中央値以上」の保護者は85・1%が正規雇用だったが、「困窮度Ⅰ」は正規雇用が35・7%にとどまった。
ログイン前の続き子どもへの質問で、どの学校まで行きたいかを尋ねると、「高校」と答えた子どもは「困窮度Ⅰ」で21・7%に上ったが、「中央値以上」は7・3%。
勉強時間について「まったくしない」は「中央値以上」の4・2%に対し、「困窮度Ⅰ」は12・9%だった。
一方、保護者への質問で、子どもに経済的にできなかったことを尋ねると、「服や靴を買えなかった」が「中央値以上」では2・3%だったが、「困窮度Ⅰ」は27・6%。
「学習塾に通わすことができなかった」は「中央値以上」が3・6%で、「困窮度Ⅰ」が35・7%だった。
「子どもの誕生日を祝えなかった」は、「中央値以上」が0・2%で、「困窮度Ⅰ」は6・6%に上った。
「子どもの将来のために貯蓄をしているか」という質問では、「貯蓄をしている」が「中央値以上」は78・8%で、「困窮度Ⅰ」は29・4%にとどまった。
「将来に希望が持てる」と答えた保護者は「中央値以上」層は37%いたが、「困窮度Ⅰ」層は半分以下の14・3%だった。
分析結果はこの日、府の有識者の部会で示され、委員から「母子家庭や非正規雇用の困窮が裏付けられた」「データをもとに企業や国にも働きかけて」などの意見が出た。
府は3月末までに府内全市町村のデータの最終まとめを発表し、来年度以降の支援策に活用するという。(矢吹孝文)
◇
大阪府の調査では、手取り収入などを世帯人数で調整した「等価可処分所得」によって、困窮度を四つの層に分類した。
OECD(経済協力開発機構)の貧困率の算出方法を参考に、回答世帯の等価可処分所得の中間の値だった274万円(4人世帯の場合、手取り収入約550万円)を基準に設定。
①この基準の50%未満の所得層を、最も困窮している「困窮度Ⅰ」
②基準の50%以上60%未満を「困窮度Ⅱ」
③60%以上基準未満を「困窮度Ⅲ」
④基準以上の所得がある層を「中央値以上」――と分類している。
<貧困と生活保護>
働いていても、年金があっても、保護を利用できる...
月額24万円で約3.5人が生活…
苦しい「シングルマザーの現状」とは
あなたのお宅は、お子さんと一緒にご飯を食べていますか?
高齢者の貧困化が社会問題になっていますが、ひとり親世帯の子どもの貧困も進んでいることはご存知でしょうか?
仕事に家事にと時間に追われがちなひとり親世帯では、子どもと一緒に食事をしたり、宿題を見てあげたりしたくても思うように時間がとれないのが現実。
今回は、厚生労働省が発表した、『 #平成23年度全国母子世帯等調査結果報告 』と『 #WooRis 』の過去記事を参考に、
“シングルマザーのお金の現状と、少ない時間でも子どもと深くコミュニケーションがとれる方法”をご紹介したいと思います。
■母子世帯の平均就労収入は“181万円”
『平成23年度全国母子世帯等調査結果報告』によると、ひとり親世帯の母親本人が困っていることは、以下の通りでした。
3位:「住居」(13.4%)
2位:「仕事」(19.1%)
1位:「家計」(45.8%)
1位は「家計」で、全体の約半数の45.8%にのぼりました。
シングルマザーにとって“お金の問題”が一番の困りごとのようです。
では、シングルマザーの年収はどれくらいなのでしょうか?
同調査によると母子世帯の場合の平均年間収入は“291万円”。
「おや、意外と稼いでいるのでは?」と思われそうですが、実はこのうち母親自身が稼いだ就労収入は、181万円。
差額の約110万円は、生活保護や児童扶養手当などの社会保障給付、別れた配偶者からの養育費、親からの仕送りなど、いわば“補助してもらっている”金額なのです。
■月額24万円で約3.5人が生活!?
では、この金額で何人の生活がまかなわれているのでしょうか?
母子世帯の平均世帯人員は“3.42人”でした。つまり、自分をのぞいて、およそ“2.5人”の子どもを養わなければならないということです。
公的扶助などを含めた平均年間収入(291万円)を1か月あたりにすると、約24万円になります。
この金額で約3.5人を養うとなると、住居費・食費・学費・医療費などの支払いで精一杯の金額です。
当然、子どもの習い事や洋服などに充てる余裕はなく、子どもに我慢をさせることが多い、追い詰められた生活になってしまいます。
このような金銭的な余裕のなさが、「子どもに対して申し訳ない」という気持ちにさせ、シングルマザーを追い詰める一番の原因になっているのです。
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