よく考えたい... あるケース(12) #トイレ法 #HB2 #トランスジェンダー #安全な公衆トイレの不足

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ケース①:

「トイレ法」に、トランスジェンダーたちが自撮り写真で抗議:それは本当の解決につながるか...


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ケース②:

のどが渇いても水を飲まない高校生がいます。

また学校で好きなアイドルの話をできない高校生がいます。

いずれも理由は、学校ではありのままの自分でいられないからでした...


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ケース①:

「トイレ法」に、トランスジェンダーたちが自撮写真で抗議:それは本当の解決につながるか...

アンチ・トランスジェンダー的な「トイレ法」に抗議するため、シスジェンダーで通る魅力的なトランスジェンダーたちの中には、自撮り写真を使って、自分のジェンダー・アイデンティティーに合わないトイレを使用しなければならないことの不条理さを訴えている人もいる。

だが、こうした画像をシェアするシスジェンダーの支持者は、「既存のジェンダーロール(性別役割)に従うかたちならばトランスジェンダーを支持できる」と表明することにならないだろうか。


ノースカロライナ州では、トランスジェンダーの人が自認する性に合った公衆トイレに入ることを禁止する州法「HB2」が成立したが、これを受けて多くのトランスジェンダーは、基本的な生理機能の規制だとして抵抗を続けている。

最近用いられて大きな効果を上げている抗議方法は、自撮りだ。こうしたトランスジェンダーたちは、法律上の性別に従った公衆トイレでポーズをとり、HB2(および、米国各地の他の似たような法)を成立させた論理の問題点を突こうと試みている。

この戦略の雛形になったのは、ジェームズ・シェフィールドが投稿したツイートだが、それ以前もそれ以降も、この戦術は採用されている。

非常に男らしい男性が、法的には女子トイレの使用を義務づけられるという現実を見た衝撃で、多くのシスジェンダーは、この法が馬鹿げていることを悟った。


そして4月中旬、新しいタイプの口コミ画像が登場した。トランスジェンダー擁護者のサラ・マクブライドが、ノースカロライナ州政府の建物の女子トイレでインスタグラムに投稿した自撮り写真がFacebookで拡散したのだ。

こうした自撮りのおかげで、ノースカロライナ州に住むトランスジェンダーたちの窮状は注目されるようになった。

しかし、適切なかたちで注目されているのかについては疑問が残る。

こういった投稿の多くは、支持者であるトランスジェンダーとシスジェンダーの両方から、励ましと賛同を得た。

ただし、「シスジェンダーで通用するトランス男性」が女子トイレにいる画像は特に、自分の妻や娘が男性とトイレを共有することを望まないシスジェンダー男性の恐怖をかき立てる、と指摘した記事も数多かった。

これは、以前からずっと存在する、「トイレで性犯罪を行うトランスジェンダー」という通説をはびこらせたパターナリズム(父権的干渉主義)的な恐怖に、驚くほどよく似ているものだ。

一方、見ただけではトランスジェンダーとわからない魅力的な白人女性が写っている、

マクブライドのような自撮り写真をシェアした多くの者は、女性として見える外見の者が女子トイレの使用を禁止されることに、軽蔑の念を示した。


だが、彼女がシスジェンダー女性と区別できないということは、ほとんどではないにしても多くのトランスジェンダーが公衆トイレで経験することを正確に表すものではない。


トランスジェンダーの闘いを人間味あふれるものにしようとするマクブライドの試みは、より幅広い人たちを納得させるものではあるが、こんな風に画像がシェアされると、「トランスジェンダーは、シスジェンダーと区別できない普通の立派な人間としてふるまった場合にのみ、安全にトイレを使用するに値する」という考え方を進めてしまう可能性がある。


実際のところ、トイレ法を適切に捉えることは、「トイレでのプレゼンス」という視点からは不可能だ。むしろ、最も完全に捉えるには、「トイレでの不在」という視点に立つことが必要だ。

トイレ法によって受ける影響が最も大きいのは、シスジェンダーで通るトランスジェンダーの人々ではなく、シスジェンダーとしては通用しないトランスジェンダーの人たちなのだ。


特に、有色人種の女性や、男女の性どちらにもあてはまらず、男子トイレでも女子トイレでも違和感を覚えるジェンダー・ノンコンフォーミングの人たち、公衆トイレの使用を全面的に避けている他のトランスジェンダーといった人々だ。


非常に女性らしい、あるいは男性らしい外見の自撮りがソーシャルメディアで口コミで広がり、タイムラインのトップに表示される場合、その画像が示す物語は、最も影響を受けるトランスジェンダーの生活にはほとんど影響を及ぼさない。

「シスジェンダーで通用するトランスジェンダー」によるトイレでの自撮りは、最良の場合は、トイレ法の落とし穴に関する議論のきっかけになるだろう。

しかし最悪の場合は、ふさわしい性別に「見える」者だけについて、選んだトイレを安全に利用できるようにすれば、トランスジェンダーによるトイレ使用の問題を解決できる、という通念をはびこらせる結果になる。


「私は1人の人間に過ぎません。私たちは皆、ただの人間です。平和に用を足そうしているだけです」とマクブライドは述べ、「こんなことは止めて。私達は善良な人間です」というメッセージで締めくくっている。マクブライドのインスタグラムが添付されたフェイスブックの投稿は、この記事を書いている時点で4万回以上シェアされている。


マクブライドは、ノースカロライナ州に住む多様なトランスジェンダーについて語りたいと願っている。

それを考えると、マクブライドがすべてのトランスジェンダーのために、差別との闘いに打ち込んできたのは明らかだ。

マクブライド自身、自身の投稿へのコメントで次のように書いている。

「自分が、公衆トイレの使用が禁じられていない場所に戻ることができる、恵まれた立場にあることも意識していたいと思います。こうした法が、若者や有色人種のトランスジェンダー、障害を持つトランスジェンダーに特に大きな影響を及ぼすことも意識していたいです」


マクブライドの画像は、本人が制御できないところでシェアされ続けている。

それでも、そのメッセージが届いた多くの人々が、外見が彼女のようではないトランス女性よりも、外見が彼女のようなトランス女性を女子トイレに迎えるほうが快適だと感じるのは明らかだ。

ソーシャルメディア上のマクブライドの画像に殺到した多くのコメントの中には、彼女の容姿を褒めているものも多い。

マクブライドは、シスジェンダーで通る、女らしい外見の若い白人のトランスジェンダーだ。

その画像は、シスジェンダーとして認識される生活を送り、邪魔されず、気づかれずに、公衆トイレを頻繁に利用できる一部のトランス女性たちを代表する、対決的ではないモデルになる。

マクブライドの画像に対する反応の多くは、単に美しさを褒めるにとどまらない。

他のトランスジェンダーをそれとなく、またははっきりと締め出している。

「サラ(マクブライド)は女性のように見えるのだから、女子トイレで用を足せるようにするべきだ」というコメントや、「あなたは性倒錯者に見えないし、男性にも見えない」という価値判断とともに支持しているコメントもあった。

こうしたコメントを投稿したシスジェンダーたちは、マクブライドがこれほど「女性らしい」外見でなければ、そこまで支持しない可能性が高い。それに、自分をこうした判断の裁定者と見なしているのは明らかだ。

「男性に見える」トランスフェミニン(「どちらかというと女性」と自認しているトランスジェンダー)は、女子トイレでは歓迎されない存在であり続けている。

それは、トイレ使用に的を絞った反LGBT法が相次いで制定される前からずっと同じだ。

カリフォルニア大学ロサンゼルス校ウィリアムズ研究所のジョディ・L・ハーマンは2013年、これまでで最も包括的な論文を発表した。

その中でハーマンは、トイレを利用しにくい点が、トランスジェンダーの人々の生活にすでに大きな影響を及ぼしていることを示している。


ワシントンDC地区のトランスジェンダー93人を対象にしたこの調査では、回答者の3分の2以上が、公衆トイレで言葉による嫌がらせを経験し、18%が利用を拒否されたことがあり、9%が暴行を受けたと回答した。

この調査から、ノンバイナリー(non-binary:性別を男女に特定しない人。

第三の性別とも言う)やジェンダークィア(ジェンダー・ノンコンフォーミングの別称)とされる人々は、公衆トイレでトラブルを体験する可能性が比較的高く、MtF(男性として生まれて性自認は女性)のトランスジェンダーは暴行を受けやすいことも明らかになった。

また、あるMtFトランスジェンダーは、男子トイレを利用しようとして性的暴行を受けたと回答した。


ハーマンによると、こうした体験はトランスジェンダーに広範な影響を及ぼしてきたという。

トイレ利用を拒否されたので、学校を休んだり仕事を辞めたりしなければならなかったと答えた者が複数いたほか、トイレを利用できるかが心配で公共の場に出かけるのを避けてきたと答えた者は半数を上回った。

これが、「安全な公衆トイレの不足」がトランスジェンダーの生活に日々与えている影響なのだ。

こうした影響は、トランスジェンダーがジェンダー・アイデンティティーに合ったトイレを利用することを認めない法のせいで大きくなる一方だ。


ノースカロライナ州のHB2のような法がどのようなかたちで執行されるのか、その詳細は明確でない。

同州の警察は、HB2違反者の特定や告発、処罰がどうなるのか明らかにしてない。

だが、執行状況に関係なく、HB2法案が提出された敵意ある環境は、トランスジェンダーに対して大きな悪影響を及ぼすのに十分だ。

シスジェンダーで通るトランスジェンダーが公衆トイレで自撮りをしても、トランスジェンダーの中でもいちばん弱い立場にいる人々の恐怖を伝えることはできない。

そうした自撮り写真の投稿者は、自分たちが恵まれた立場にあると認めている場合が多いし、皆の代弁者になろうとしているとは限らない。

それでも、こういった画像が投稿者の手を離れたところでシェアされ、コメントが投稿され続ける中で、画像に写っているような存在に対して支持を表明する人々の多くは、自分が支持できる条件は、既存のジェンダーロールに従うことだとはっきり述べることになる。


トラブルに巻き込まれる危険性がほとんどない状態でトイレを利用できるトランスジェンダーにフォーカスを当てることは、あるメッセージをシスジェンダーに送ることになる。

つまり、社会的に受け入れられるかたちで存在するトランスジェンダーこそが、安全と支援に値するトランスジェンダーだというメッセージだ。

だが、トランスジェンダーの多くは、そんな風にはなれない。


ジェンダー表現や、身体的な外見、自認するジェンダーを支持してくれるような医療措置を利用できないことなどが理由でだ。

シスジェンダーの恐怖心を煽ることも、あるいは、「善良な」トランスジェンダーという許容可能なイメージでシスジェンダーを安心させることも、トランスジェンダー全体が安全にトイレを使えることを保証するものではない。

ケース②:

のどが渇いても水を飲まない高校生がいます。
また学校で好きなアイドルの話をできない高校生がいます。いずれも理由は、学校ではありのままの自分でいられないからでした...


小学4年生の選択

待ち合わせ場所は名古屋市内。ショートカットの髪型にTシャツ、デニムで来てくれたのはユウさん(仮名)、いま高校生です。

ユウさんがトイレに行かなくなったのは小学校4年生の頃から。

水を全く飲まないか、飲んでも一口だけで登校していました。

水筒の水が減っていないことは、母親に気づかれました。

「あまりのどが渇かないんだよね」

そう、うそをついていました。のどが渇かないはずはなく、体育の時など何度か脱水症状になりました。

トイレに行きたくなかった理由はただひとつ、女子トイレに入ることが嫌だったからです。

トイレが男女に分かれた小学校に入学してそう思うようになりました。

入学してすぐ、ユウさんは自然と男子トイレに入りました。ところが…。

「男子トイレに入ったのを見た同級生に、『違うよ』と言われてしまったんです。それで、自分は『女の子』なのだとわかりました」

そこでしばらく女子トイレを使っていましたが、自分は男子だと思っているのに、女子であることを認めるような気がしたし、何より、恥ずかしかったのです。

恥ずかしさをおしてトイレに行くか、それとも水を飲まずに我慢するのか。どちらかを選ばなければならず、小学4年生のユウさんは水を飲まない方を選びました。


カミングアウト

“体は女性、心が男性”、自分が性的マイノリティーのトランスジェンダーなのだとはっきり認識したのは中学校の頃でした。

通っている学校の制服はセーラー服でした。着るのが嫌で学校を休みがちになりました。ユウさんはまた母親にうそをつきました。

「先生が嫌いで授業行きたくない」

だけど3年生になると、このままでは卒業ができないと言われました。留学したいという夢があったので、我慢をしてセーラー服を着ることにしました。

水着を着るプールの授業もありました。それは心を無にして出席しました。

高校は無事に合格しました。


“パニックになるから”

この頃、ユウさんは母親に隠し続けるのは限界だと感じていました。

「自分のことを男だと思っている」と打ち明けました。

母親を見ると泣いていました。

でも母親は高校に男子の制服で登校できるよう、交渉すると言ってくれました。

「俺の意志に母が協力してくれるとは思わなかったので、すごく嬉しかった」というユウさん。でも、母親が学校に相談するとしばらくして返事が来て、それは「生徒がパニックになるから認められない」というものでした。

ユウさんは女子の制服を3年間着続けることに耐えられるのか、母親と話し合いました。我慢するのは「とても耐えられない」という結論になりました。

すでに入学手続きは済ませていましたが、私服で通学できる単位制の高校に入り直すことにしました。そこは本名でなく、自分が決めた名前を通称として使うことも認めてくれました。

いまは男性にも女性にもとれるような中性的な名前で、好きな服を着て登校しています。


ようやく気づいた理由

ユウさんから話を聞いていたカフェで、オーダーを取りに来た店員にユウさんは「要りません」と言いました。

話を聞いていく中で、飲み物を注文しなかった理由に気づきました。「トイレに行きたくないからですか?」 私が聞くと「小学校の頃からの習慣になっちゃっているんです」。そう答えました。

私が注文したオレンジジュースはほとんどなくなっていました。

15歳の、まだあどけない表情から出るその言葉に、胸が締めつけられるように痛くなりました。


ユウさんが参加する場所

ユウさんの隣で「気づかなくてごめんね」と声をかけた人がいました。

大学3年生のりぃなさん(20)、レズビアンです。


りぃなさんはつらい思いをしている若いLGBTの人たちが自由に話ができる場・「名古屋あおぞら部」をおととし立ち上げました。

同性の女性を好きになることに悩み、高校時代には「死にたい」と考えていたりぃなさん。

かつての自分のような悩みを抱えている人たちが集まれる場所があれば、互いが互いを支えられるようになると考えたのです。

ユウさんもあおぞら部に参加しているメンバーです。


アイドルの話がしたい

あおぞら部には高校生を中心に毎回40人ほどが参加します。

「自分のセクシュアリティーは、明かしても明かさなくてもOK」が決まりです。

毎回、自由に話をしてもらいますが、好きなアイドルの話がよく話題になります。

それは例えば学校では好きなアイドルが同性だと言えないからで、あおぞら部に来て思い切り話をするのだそうです。


自分が素でいられる

あおぞら部がどんな場所なのか、参加した人たちに聞いてみました。

「ふだん相談できないことも相談できる、自分が素でいられる場所」(ユウさん)

「自分がいちばん自分らしくいられる場所」(ゆきさん)

「自分だけじゃないと思える安心感が得られる」(かのんさん Xジェンダー(16))

あおぞら部は明るい雰囲気で、参加者がつらい悩みを抱えているように見えません。

でも、学校は自分が自分でいられる場所ではないようでした。

通称使用が認められたユウさんも、先生に「トイレはどうすればいいですか」と相談したところ、「コンビニのトイレに行けばいい」と言われていました。

あおぞら部に来て自分を取り戻している気がしました。


私としては…

私としてはユウさんが「パニックになる」と学校に言われて男子の制服を着られなかったことがとても気になっています。

実際は若い世代ほど性の多様性を知っているし、LGBTの人たちを受け入れない生徒ばかりとは思わないのです。

学校のやるべきことは「パニックをおこさせない」ことではなく、「生徒にきちんと性の多様性を理解してもらう」ことだと感じます。

「行きたくないトイレに行かないといけない」

「着たい制服を着ることが認められない」

このようなことで青春時代にしか経験できない宝物のような時間を持てない子どもたちがいます。

そんな子どもたちにとって学校がありのままの自分でいられる場所になったら、毎日がどんなに生きやすいだろうかと思います。


[MV] Sam Kim(샘김), Loco(로꼬) _ Think About' Chu


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