改善なるか #放課後等デイサービス...
4月3日
障害がある子どもが、コミュニケーション力など、自立に向けた力を養う「放課後等デイサービス」。
5年前に国が制度を導入して以降、事業所の数は急増しています。
その一方で、サービスの質や運営に問題があると指摘される事業所が相次いでいます。
NHKの取材で、児童福祉法に基づく処分や指導を受けた事業所が、5年間で全国32の都道府県などで93か所に上ったことがわかりました。
国は今年度から、専門的な知識や経験がある職員の配置を義務づけることにしていますが、現場からは十分な対応ができるのか、不安の声も上がっています。
放課後等デイサービスとは
「放課後等デイサービス」は、民間などの事業所が、障害がある子どもを放課後や長期休暇に受け入れて、自立した生活を送るための力を養うもので、5年前に制度が導入されました。
利用料の9割が公費で負担されることや、大規模な設備投資が必要ないことから、企業などの参入が相次ぎ、事業所の数は、去年11月の時点で全国でおよそ9600か所に上っています。
身近な地域で支援を受けられる場としてニーズが高まり、14万3000人余りが利用しています。
難しい障害児の対応
東京・小平市にある事業所「#ゆうやけ子どもクラブ」には、小学生から高校生までおよそ20人が通っています。
取材したこの日は、特別支援学校の卒業式だったため、午前中から子どもたちが集まっていました。
昼食のあと、子ども7人に職員など7人が付き添って、近くの公園に野外活動に行きました。
施設を出たとたん走り出す子や、気になるものに集中して動かない子など、予測できない行動をとる子も少なくありません。
しっかり手をつないで歩きますが、道路の端を1列になって移動するのも容易ではありません。
横断歩道も声を掛け合いながら渡り、定期的な点呼が欠かせません。安全の確保にはとても神経を使います。
代表の村岡真治さんは、「子どもたちの気持ちにじっくり寄り添うには、粘り強く簡単ではないプロセスを踏んで理解しなくてはいけないし、十分な人数で対応しなくてはいけない」と話していました。
佐賀では子どもが一時行方不明に
佐賀市の事業所では、おととし(H27)1月、自閉症の男子高校生が、野外活動で訪れた公園で、職員が目を離した隙にいなくなりました。
男子生徒はおよそ8時間後に保護されましたが、当時の管理責任者は、「衝動的に走り出すことがある障害の特性を職員たちが十分に理解しておらず、行動を予測できなかった」と説明したということです。
男子生徒の母親は、「とても驚いた。命に関わるような事故につながらないように、知識は持っておいてほしい」と話していました。
この事業所は、これを機に、一人一人の障害の特性などを職員が共有し、理解を深めることにしました。
また、野外活動に行く際は、事前に下見をして危険な場所を把握したり、子どもたちを見失うことがない場所に職員を配置したりする危機管理マニュアルを作り、再発防止に努めているということです。
全国32都道府県などで93事業所に処分や指導
一方、事業所の運営をめぐるトラブルや不正も相次いでいます。
NHKが取材したところ、制度が始まった平成24年度以降の5年間に、子どもの人権への配慮に欠ける行為があったなどとして、児童福祉法に基づく処分や指導を受けた事業所が、全国32の都道府県と政令市それに中核市で、合わせて93か所に上ったことがわかりました。
内訳は指定を取り消されたり、一定期間、運営できなくされたりした事業所が40か所。改善勧告を受けた事業所が53か所でした。
大阪・堺市では、おととし7月、管理責任者の女性が、11歳から14歳の子ども3人を自宅に連れて行き、風呂場や犬小屋の掃除をさせていたことが明らかになりました。
この管理者は、子どもの前でほかの職員を大声でどなり、泣き出す子や食べ物を吐いた子もいたということです。
堺市は、子どもへの虐待にあたると判断し半年間、新たな利用者の受け入れをできなくする処分にしました。
この状況について国は
「放課後等デイサービス」の職員は、これまで、「指導員または保育士」と定められていました。
「指導員」は、特に資格は必要なく、障害についての知識や子どもの支援の経験がない人でもよいことになっていました。
しかし、不祥事などが相次いだことから、国は、今年度から基準を見直し、職員の半数以上を専門的な知識や経験がある児童指導員や保育士とすることや、管理責任者が、障害がある子どもの支援を3年以上経験していることを義務づけることにしました。
国の担当者は「制度の発足当初は、身近な場所で支援が受けられるように、事業所が参入しやすい基準が設けられたが、利用者数や事業所数が着実に増加した反面、支援の質が低い事業所や、適切でない支援を行う事業所があるという指摘もあり、質の向上が課題と考えている」と話しています。
現場からは不安の声も
新しい基準が導入される一方、障害に応じた手厚い支援をするには、多くの職員やスタッフが必要で、現場からは、事業所の運営を維持しながら十分な対応ができるのか不安の声も聞かれます。
東京・小平市の「ゆうやけ子どもクラブ」代表の村岡真治さんは、「ただ子どもの障害について知識があれば十分な対応ができるという訳ではない。
国の基準では、10人の子どもに対して職員が2人いればよいとなっているが、われわれのところでは、子どもが10人いれば、6人から7人の大人がついており、手厚く対応しようとすれば、人件費がかさんで運営が厳しくなるというジレンマがある。
子どもの内面にじっくり寄り添いながら活動することが、評価される仕組み作りを進めてほしい」と話しています。
「放課後等デイサービス」の問題に詳しい、一般社団法人日本発達障害ネットワークの市川宏伸理事長は「現状は、事業所の質が玉石混交の状態だ。非常に頑張っている事業所については、少し補助金を増やすとか、よりきちんとした支援をしていくことが重要だ。国は、もう少しきめ細かい対応が必要ではないか」と話しています。
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