老後の住まい(8)... #多摩川のリア充ホームレス村!!! #ハウジングファースト型支援の行方?
’16年1月に実地された厚生労働省発表の「#ホームレスの実態に関する全国調査」によると、全国のホームレスの数は6235人と報告されている。
ホームレスといえば、一文無しで路上をさまよう悲惨な姿をイメージしがちだが、東京・多摩川では真逆の優雅な生活を送っている「リア充ホームレス」が存在する集落がいくつも形成されている多摩川沿いだが、場所によって雰囲気もガラリと違う。
日雇い労働者の多いホームレスの集落では月収15万円強に達する者もおり、家電も超充実している。
地域でもっとも稼いでいるという伊藤浩二さん(仮名・50代後半)の橋の下に造られたロッジのような家
お邪魔すると、優に6万~7万円はするアクオスの40インチ液晶テレビをはじめ、発電機のバッテリー残量で使い分けるという24インチ、12インチの計3台が並んでいた。
「俺は他人のお古は嫌だから、必ず新品を買う。テレビ以外にもDVDレコーダーもある。酒やギャンブルはやらないから、カネが余ってしょうがないんだ(笑)」
それでもアパートを借りない理由は「自由に生きたいから」と伊藤さんは語る。
手には日雇い労働の仕事探しに必須という、他人名義のワケあり最新スマホを持ち、使用料は月1万9000円。「安いほうでしょ?」と笑いながら、予備のガラケーまで持っていた。
村田氏によれば「今はアルミ缶の相場はキロ100円前後。北京五輪時は200円まで高騰した」というが、3年半後の東京五輪に向けて、多摩川のホームレスタウンはますますセレブになる可能性すらある。
そう、彼らのホーム“レス”化は止められないのだ。
寝室と書斎、広大な庭を持つホームレスの草野茂さん
頬を切るような冷たい風が吹く年の瀬の多摩川某所。
多くのホームレスが根城にするこの極寒の多摩川沿いで、彼らはどのように年を越すのか。
まず記者が接触したのは、川沿いの竹藪の中に寝室と書斎、そして広大な庭を持つホームレスの草野茂さん(仮名・70代)だった。
「自転車や電化製品の修理、拾ったゴミから銅線を抜いて売って月10万円程度の収入になる」と語る草野さんの家は発電機をはじめ、電子レンジや19インチの液晶テレビ付き。
蛍光灯で照らされた室内は灯油ストーブが燃え続け、もはやホームレス的な雰囲気は皆無。
玄関の外に置かれた冷蔵庫にも電気が通っていて、中には青菜のおひたしや漬物など副菜がズラリ。
賞味期限切れの食べ物は一切ない。
その中にちょっとお高めな刺し身を発見したので「たまの贅沢に、刺し身で一杯やるのか」と聞くと「刺し身なんか贅沢でもなんでもねえだろ(笑)」と一笑に付されてしまった……。
事業の失敗、強制撤去……ホームレスたちの壮絶な過去
記者の家より圧倒的な冷蔵庫内の充実ぶりに愕然としつつ、外には広々とした猫用のケージまであるではないか。
事業の失敗でホームレスになったものの、猫とともに25年間もこの生活を続けてきたという。
「気楽な生活だと思われるかもしれないが、強制撤去されたり、増水の被害で何度も一瞬にして家を失ったよ。それでも社会のしがらみや煩わしさから離れられる“我が家”がいい。ゆっくりマイペースで余生を楽しみたいんだ」
藪の中には、ホームレスたちのそれぞれの壮絶な過去があり、人生がある。
猫を愛しそうに抱きかかえながら、静かにテレビを見て一日を過ごす草野さん。不法占拠と書かれた張り紙を複雑な気持ちで眺めつつ、その場を後にした。
行き場を失ったホームレスが都心から多摩川沿いに
もはやスラム街のように集落がいくつも形成されている多摩川沿い、なぜここまでのホームレスタウンが形成されているのか。
長年、ホームレスを追い続けるルポライターの村田らむ氏は「そもそも多摩川にリッチなホームレスが出現するようになった背景には、都心でのホームレス排除が影響している」と分析する。
「東京オリンピックを前にこれまで黙認されてきた上野公園や都庁周辺の管理が厳重になってきています。その結果、行き場を失ったホームレスは多摩川沿いに移住しているのです。
多摩川はホームレス界の中では珍しく“村社会”が形成されているのが特徴。
もともと東京都と神奈川、また市区町村の境界で管轄も曖昧だったり、規制を厳しくして都会に戻られても困るので、比較的取り締まりも緩いのです」
「毛布や段ボールに包まってビニールシートで雨露を凌ぐ……」というありがちなホームレス像ではなく、鉄パイプや木材でしっかりと基礎が組まれ、見た目は小洒落たログハウス風の小屋が散見。
さらに河川の増水に備えて、大半の住処は高床式で造られており、当たり前のように発電機も完備されている。
もはや、ホーム“レス”とは呼べない住宅事情だったのだ……!
川沿いは広範囲にわたって2mを超える竹やススキが覆い尽くしているため、外からは何も窺えない。
取材班が茂みを掻き分け、けもの道を突き進んでいると突然、辺り一帯においしそうな匂いが漂ってきた。
匂いの方向に歩き続けると、白い防水シートで覆われた6畳ほどの小屋に辿り着いた。
屋内を覗いてみると、グツグツと野菜や肉たっぷりの豚汁が煮込まれているではないか。
元料理人だという家主の森佑輔さん(仮名・50代後半)は20年以上、この多摩川沿いに住み、毎日、自慢の料理に腕をふるっているという。
「仕事が見つからず、その上、財布やあり金をすべて盗まれて夫婦で路頭に迷っていたとき、道端のホームレスが食事や寝床を貸してくれた。世間は冷たいもんだよ。国も何もしてくれない。ホームレスだけが優しかったんだ」
共にホームレス生活を送っていた妻は数年前に他界し、現在は空き缶拾いで生計を立てている。
月収はおよそ5万円強。
食費が大半を占めるが、2日に一度は近所の銭湯で汗を流したり、趣味の馬券を買う程度の余裕もあるという。
そして、さすが元料理人というだけあって調味料がぎっしり置かれた台所の充実ぶりが半端ない。
「煮炊き用や炒め物用、天ぷらやソテー用に使い分ける」というフライパンがずらっと並び、ホームレスの住処には到底見えない。
調味料もこだわりがあるらしく、ブラックペッパーとホワイトペッパーのストックが完備されていた。
「期限切れ弁当なんか食ったことない」という森さんの食生活に密着すると、栄養バランスを考えた野菜や肉、魚は近所の「ローソンストア100」で購入。
冬場は気温がマイナスになる軒下にスーパーの袋を簡易冷蔵庫として吊るし、夏場は発泡スチロール箱に氷を敷き詰めて使うなど保存も完璧だ。
取材2日目は「米は良い物を食いたい」という森さんこだわりの有機栽培・魚沼産コシヒカリの新米で、手際よくピラフを作ってくれた。
そして、3日目には近くで採った野草を使って、ヘルシーな熱々の天ぷらが食卓に並んだのであった。
ホームレス支援に取り組む「#つくろい東京ファンド」代表の稲葉剛氏は「国はホームレスの実態さえ把握できていない」と行政の対応を非難する。
「厚労省の調査では、ホームレス人口は’03年の調査開始以来、年々減少しています。ただ、公園や河川敷などに定住する従来型のホームレスを昼間に調査しているので、日中は日雇いで働いて終電後に駅周辺で眠る人を捕捉できない。ある民間団体が実施した調査では、行政が発表した3倍のホームレスが深夜に確認されています」
行政支援が「貧困ビジネス」の温床となることもある。
「仮に生活保護が認められても、窓口で紹介された民間の宿泊施設が劣悪で、路上に逆戻りしてしまう人が多い。宿泊費・食費の名目で入居者の生活保護費の大部分を天引きしておきながら、一部屋に20人を押し込めたり、虫が湧いたりする施設まで存在しています」
そこで現在、進められているのが欧米発祥の「#ハウジングファースト」型の支援だ。
「行政に指定された施設から路上に戻る人には、相部屋に適応しづらい障害や疾患を抱える人が少なくありません。そこで、民間主導で進められているのが『ハウジングファースト』型の支援。
ホームレスに最初から個室の住まいを提供し、スタッフが家庭訪問をしながら継続的にケアする方法です」
こうした「ハウジングファースト」型支援は近い将来、政府の空き家対策にも生かされるという。
「国土交通省では今、全国に820万戸ある空き家を高齢者や障害者の住宅支援に活用しようという動きがあります」
とはいえ、早急に対処が行われなければ、多摩川ホームレスはまだまだ増加し続けるだろう。
[MV] 정기고(Junggigo)X찬열(CHANYEOL) - Let Me Love You
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