820万戸の空き家が「単身・借家」住まいの高齢者へ... 活用が進まない理由? #住宅セーフティーネット

全国の空き家は820万戸!増え続ける単身高齢者への住宅セーフティネットはなぜ進まない?

国と自治体は増え続ける全国の空き家を使って、高齢者たちの住宅を確保する方針に打って出ました。

高齢者や障害者、低所得者、DV等の被害者、母子家庭、生活保護世帯など、住宅を必要としながらも家賃負担が大変な世帯を「住宅確保要配慮者」と位置づけ、住宅セーフティーネットを強化していきたい方針です。

住宅の確保を要する対象者向けに受け皿をつくるため、2017年2月、「 #住宅セーフティーネット法 」が閣議決定されました。

全国的に見ると、空き家は増加しており、国土交通省によると全国の空き家等は約820万戸にのぼります。

2017/02/22

それはひとえに、これまで一軒家で暮らしていた両親が亡くなり、住宅を空き家で相続しても、更地にするより土地に建物が建っていると、固定資産税が6分の1になるなどの空き家が特別措置法で守られていたからという理由もあるでしょう。


単身高齢者の増加と住宅確保が喫緊の課題

近年、全国各地に増え続ける空き家を使い、住宅セーフティーネットの拡充が求められていました。

特に問題となっているのは、単身高齢者の増加です。

今後10年で単身高齢者は100万人も増え、累計700万人を超えると見込まれています。

かつて高齢者は長男夫婦と同居するケースが多く見られましたが、現在では単身で住んでいるお年寄りが非常に多いのです。2035年には、762万人と、さらに増加する見通しです。


しかし、肝心の住宅供給の方はうまく働いていませんでした。

持ち家を持っている人はさておき、賃貸で暮らさざるを得ない高齢者も大勢います。


大家サイドに立ってみると、孤独死の問題や、保証人の問題などで、単身高齢者の入居には二の足を踏んでしまうというケースが非常に多いという実情があります。


民間に任せていると、増え続ける単身高齢者の住宅確保はどんどん困難になっていきます。

そこで、国と自治体が法律を改正し、賃貸住宅の確保に乗り出したのです。


まずは、自治体への空き家の登録からです。

住宅確保要配慮者への入居を拒まない賃貸住宅を登録してもらい、登録住宅の情報開示や賃貸人の監督などを自治体が行います。

そして、登録住宅のリフォーム費用は、住宅金融支援機構の融資対象に追加するなど、金銭面でもバックアップしていきたい構えです。


単身の高齢者でも、入居を許してくれて安心して暮らせる住宅の確保のために、登録制度を開始したのです。

入居を円滑化するためにも、居住支援法人などの指定を行います。


また、最近増え続ける生活保護の高齢者に関しては、住宅扶助費を本人に代わって自治体が直接、大家に支払うことで、家賃滞納を未然に防ぐなどの対策も講じられる見通しです。

また、2017年予算案では、地域の家賃実情に応じて、要配慮者の家賃債務保証料の負担や家賃低廉化に国や自治体が補助する要素が盛り込まれています。

つまり、空き家のオーナーに対して、国が家賃補助を行ういわゆる #住宅バウチャー制度 に近いものが想定されています。


2020年度末までに、17万5,000戸の確保を目指す

国と自治体は、空き家を活用した住宅セーフティーネット機能を強化して、住宅を必要とする人たちに住居の安定を確保したい見通しです。

2020年度末までに、17万5,000戸の登録住宅を目指したい構えです。

住宅を必要としているのは単身高齢者だけではないのですが、単身高齢者はどんどん増えている上に今後、収入アップの見通しが立たないため、喫緊の課題となっています。


国土交通省の調査によると、前期高齢者世帯は495万世帯、後期高齢者世帯は544世帯、合計で1038万世帯あります。

そのうちの77%が持ち家なのですが、23%は賃貸住宅や公営住宅に入居しています。


特に、単身世帯で賃貸住宅に入居している人は増え続けており、今後も増加する見通しです。

夫婦世帯は若干減っているにも関わらず、後期高齢者で一人暮らしをしているお年寄りの数も増えています。


また、収入が少ない世帯ほど、民間の借家に入居しているというデータもあります。

国土交通省によれば、賃貸住宅に居住する収入分位25%の世帯数は408万世帯にのぼります。



これらのことから、低所得者や高齢者向けの住宅確保はとても緊急性のあるものだといえるでしょう。


賃貸人、当事者へのサポートも課題に盛り込んで

国や自治体以外にも、NPOなどでつくる居住支援協議会によって、当事者への相談やサポートも後押ししていきます。

高齢者を受け入れる住宅は義務ではありません。あくまで、希望する人たちと、受け入れてもいいと考える住宅の持ち主とをマッチングし、住宅供給を促進するためです。


また、賃貸として貸す側の意識の問題もサポートしていくねらいがあります。


高齢者、母子家庭、生活保護世帯、外国人などに、大家さんが貸したがらないという気持ちがあり、拒否感が強くなり、入居が難しくなっています。


民間の賃貸への入居が難しいため、公営住宅への入居申し込みの希望は増えていますが、現実問題として、東京や大阪で10倍以上の倍率になるなど、現実的には入居したくてもできていない人が多くを占めます。

居住の水準が高いとはいえない公営住宅への入居希望者がこれだけいる背景には、民間賃貸住宅への入居の困難さが背景にあるのでしょう。

今後は意識の改善や、家賃補助などを行い大家側にもサポートし、借りる人と貸す人、双方へ支援していきます。


住み慣れた地域で安心して暮らすためには、住環境の整備が重要

これまで見てきたように、今後の日本は10年間で単身高齢者の世帯が100万人増加すると見込まれています。

高齢者が長年住み慣れた地域で安心して暮らしていくためには、医療・介護サービスを受けることができる住宅環境の整備が重要です。

なぜなら、高齢者と医療・介護は切っても切り離せない関係だからです。


そのためには、サービス付き高齢者向け住宅などの整備も欠かせないでしょう。

低所得の世帯や持ち家を持たない高齢者にも、安心して老後を送ってもらうためにも、全国に広がる空き家を整備することは大きな課題です。


今年、国と自治体はそれらの解消に向かって一歩を踏み出した形になります。


「#住宅セーフティーネット法」

増え続ける高齢者世帯に対して、国の住宅供給法制が追いついていくかどうかの課題はありますが、まずは現状、少しずつ進みつつあります。

誰もが安心して“最低限の生活”が送れるように、さらなる住宅セーフティーネットの拡充が求められます。

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