#困窮者支援法改正へ 「すべての相談を断らない」など8つの論点...

 2017年02月08日

厚生労働省の「生活困窮者自立支援のあり方等に関する論点整理のための検討会」(座長=宮本太郎・中央大教授)が1月23日に開かれ、論点整理案をまとめた。


すべての相談を受け止めることなど八つの視点を掲げ、地域共生社会づくりへ向けた方向性を示している。  

2018年の改正法案提出に向け検討会は、これまで浮かび上がってきた課題などを16年10月から議論。

これを受け、論点整理案は、八つの視点と個別論点を示した。  

自立相談支援機関における相談機能は、包括的な支援の入り口として、経済的困窮の課題を抱えるかどうかに関わらず、すべての相談を断らないことが基本だと強調。

税や公共料金の滞納者や、学校が把握する課題のある家庭など、自ら相談できないケースを把握した関係機関が相談機関につなげる仕組みも必要だとした。  

支援の支え手と受け手に分かれるのではなく、地域の住民が役割を持ち、自分らしく活躍できる地域コミュニティーの重要性など、地域共生社会の考えも盛り込まれた。  

さらに、現在は自治体の任意事業となっている就労や家計の支援については、全国的に充実させるべきだと指摘。

貧困の連鎖防止の観点から、子どものための世帯支援の強化も重要視した。  

会合では、「就労準備支援を必須化すべき」という指摘や、「長期的な人材育成を考えるべき」などの提言が出た。  

「困窮者支援が地域づくりであるという文言を入れてほしい」「地域に社会資源を増やすため、行政は支援の委託を推進する観点があっていいのでは」という意見も上がった。

視点・論点「生活困窮者の自立支援を進めるために」

2015年05月07日  中央大学教授  宮本太郎

 

2015年4月から生活困窮者自立支援法が施行されました。

この法律によって、福祉事務所のあるすべての自治体が、生活困窮者に対する自立支援に取り組んでいくことになります。

生活困窮者とはいかなる人々のことで、その自立支援とはどのようなことか。こうした制度がなぜ求められるのか。まず整理していきたいと思います。


今、日本では、所得が平均的な水準の半分以下の相対的貧困と呼ばれる層が16.1%に達し、とくに現役世代の単身女性は、3人に1人が相対的貧困となっています。


しかも、今日見られるのは、貧困が、支え合いやがんばりにつながるのではなく、逆に孤立やあきらめを生み、そのためにますます貧困から脱却できなくなるという悪循環です。

20歳から59歳までの未婚の無職者で、家族以外とのつながりがほとんどない人々が162万人にのぼり、そのうち4人に1人が生活保護の受給を希望しているという研究結果もあります。


急に家族の介護が必要になり、所得が減り、自分自身もストレスで参ってしまう。

このように複数の要因が連鎖すると、だれでも生活困窮につながる可能性があります。

ところがこれまでは、生活が著しく困窮したときに頼ることができる制度は、生活保護しかありませんでした。

生活保護は最後のセーフティネットつまり安全網です。

最低生活保障のためのたいへん大事な制度ですが、そこには困窮から脱却していくことを支援する仕組みはありません。

生活困窮者自立支援法は、この最後のセーフティネットのいわば手前に、もう一つのセーフティネットを張ろうとするものです。

それは、人々が元気を取り戻すことを支え地域社会と雇用へ繋ぎ直す、トランポリンのような仕組みです。

では、この新制度は具体的にはどのような支援をするのでしょうか。

困窮に陥っている人たちが直面しているのは、心身の障害、失業、家族の介護など、複数の問題が絡み合った状況です。

相談支援の窓口では、一人一人の事情に合った総合的な支援計画を作成します。

自治体の判断で、就労の支援、住居や食料などについての一時生活支援、子どもの学習支援、家計相談の支援など、法律に定められた新しい事業を開始することができます。

さらに、障害、雇用、介護など、既存の縦割りの制度を連携させた支援や、地域のNPOなどの活動とつなげた支援も期待されます。

なかでも重要なのは、就労支援の事業です。

これまで日本の自治体では、「福祉とは働くことができない人たちのもの」「雇用とは福祉を必要としない人たちのもの」という考え方がありました。

しかし、現在は、福祉的な支援があると就労を実現できる人たちが増えているのです。

こうして新制度は、新しいセーフティネットを目指していますが、そこには、住宅確保のための給付金を除くと、当面の生活を支える経済的支援はありません。

したがって、就労のための訓練を受けている間など、必要であれば一時的に生活保護を利用することも選択肢になるでしょう。


このように、新制度は生活困窮者支援を大きく前進させる可能性をもっています。

しかし同時に、法の施行に先立つ準備の状況などから、いくつかの課題も浮き彫りになっています。


第一に、生活困窮者支援を、地域と自治体全体の課題として位置づけ、取り組んでいく重要性です。

厚生労働省の調査では、昨年末の段階で、首長に新制度をまだ説明していないという自治体が2割ありました。

この制度の実施のために各分野の部局を超えた協議機関を設けている自治体は6割に留まります。

生活困窮者支援は福祉分野の特別な業務と見なされがちで、地域と自治体全体で取り組むという流れは必ずしも定着していません。


しかし、高齢化がすすむ地域で、これを支えていく現役世代が倒れてしまえば、地域の存続も危うくなります。

逆に就労機会を増やし、皆が本来の力を発揮できる条件が整えば、地域の力が蘇ります。

地方創生が課題とされるなか、まちづくりの視点から生活困窮者支援にとりくむことが求められます。


第二に、自治体が効果的な就労支援に取り組んでいく重要性です。

自治体によっては、法律が義務づけている相談支援の窓口は開くものの、一時生活支援や子どもの学習支援などの事業を実施しない場合も少なくありません。

とくに、就労支援の事業は、新制度の中心となるべき事業であるにもかかわらず、法の施行直前の意向調査では、実施を決めている自治体は28%に留まります。


自治体で雇用の部局と福祉の部局が積極的に連携し、地域のNPOや企業の協力も得ながら、就労支援を積極的にすすめるべきです。

就労支援で、高い効果が期待されるのは中間的就労です。

中間的就労とは、単なる訓練と一般的就労の中間という意味で、実際に働きながら、知識や技能を身につけたり、コミュニケーションスキルを磨いていくものです。


たとえば大阪府豊中市では、自治体が企業に働きかけてこの中間的就労の場を確保しています。

また、一般的就労についても、企業に生活困窮者が定着しやすい職場環境を考慮してもらって、多くの就労を実現しています。


第三に、支援が必要な生活困窮者を早期に発見していく重要性です。

生活困窮者は自ら支援を求めないことも多く、窓口でまっているだけでは地域の生活困窮の実態をつかめません。

モデル事業でも、人口10万人単位で見たとき、月平均の新規相談が25人を超えた自治体は1割以下にとどまっています。

生活困窮者支援は、早期に開始すると回復もスムーズですが、それが難しいのです。


滋賀県野洲市では、相談支援の窓口と税、保険・年金、子ども家庭の部局が相互のつながりを密接にして、税や保険の滞納があったり子育て世帯が経済的に行き詰まっている時、本人が希望するならば相談支援の窓口につないで早期に支援を開始することにしています。

その結果、支援をめぐる部局間の連携もスムーズになっているといいます。


生活困窮者自立支援制度は、福祉と雇用の連携、縦割り行政の克服など、これまでの自治体行政のあり方の転換を迫るところがあります。

それだけに、当面の課題は少なくありません。

自治体によっては、これから支援の事業を増やしていく必要もあるでしょう。

しかし、この制度は地域の活力を高める上で不可欠のものです。

排除される人がいない、皆が支える地域づくりのために、生活困窮者自立支援制度をどう活かすかを考えていくべきだと思います。 


自治体の生活保護費10年で5倍等という不都合な真実

2017年02月06日 08:44

先日、小田原市の生活保護担当職員が、「生活保護なめんな」と印刷されたジャンパーを受給世帯訪問の際に着ていたことが問題となり、大きなニュースとなった。


これを受け小田原市は、担当部署の部長以下7人を厳重注意処分とし、謝罪会見を行った。

社会福祉法では、ケースワーカーの配置は、受給者80世帯当たり1人を標準としている。

ところが、小田原市の場合、約2,320世帯が生活保護を受給しているため標準数は29人のところを、現在は25人となっていた。


1人が担当する世帯数が多く現場が疲弊していることも問題の背景にあるとして、市は新規採用や他部署からの配置転換などで、新年度には4人程度増員する方針を示した。


この「生活保護なめんなジャンパー」問題をニュースだけで見ていると、「なんて非常識な市役所なんだ!」「人権侵害も甚だしい!」といった声が多くの人から出てきそうだ。


もちろん、役所としてあるまじき問題であり、大きく批判にさらされるべきだと思う。

ただ、冷静になって考えなければならないのは、このジャンパーを着て受給世帯を訪問していた職員が「悪い」という話なのだろうか……。

ちなみに小田原市の職員たちはこのジャンパーを10年にもわたって着続けていたという。

この間、役所内部から異論や指摘が出なかったということ自体が大きな問題なのではないかと思う。


しかし、さらに深刻なのは、背景にある生活保護の現実である。


小田原市の生活保護費は10年で2倍に増加

2014年度の小田原市の生活保護費は55億45万円。

同年の一般会計予算規模が638億円なので、市の予算のじつに1割近くが生活保護に当てられているのだ。


自治体の負担は年々増えている。

ちなみに小田原市の場合、2002年の生活保護費は28億9,243万円しかなかった。2002年と2014年を比較すると、その差は26億802万円。割合にすると190.2%にも膨れ上がっているのだ。

市民1世帯当たりの生活保護費の負担額を見ると、年間6万5,398円にものぼる。こうした現実は、決して小田原市に限った話ではない。

全国順位で見ても、小田原市は、2014年度の生活保護費は200位、世帯当たりの負担額は193位、2002年からの増価額こそ123位だが、それも割合で見ると269位でしかない。

決して小田原市だけが極端なわけではなく、背景となる問題は、全国の自治体が一様に抱えていると言える。


大阪市の生活保護費は年間3,146億円!

これまで生活保護の実態は、まるで「パンドラの箱」のように、その内容について明らかにされることはなかった印象がある。

特定の自治体や国の生活保護費の推移に関するデータは見たことがあるが、少なくとも、全国の自治体を比較したデータなど見た記憶がない。


そこでこの問題についても考えるにあたり、まず、自らの住む自治体の状況を把握してみてはどうだろうかということで、総務省や厚労省の情報をもとに、基礎自治体を比較できるデータを作ってみた。


政策形成を考える際には、個々人が問題だと感じる1人称の課題も重要ではあるが、全体最適を考えれば、その前段となるエビデンスの共有が最も重要になる。


読者の皆さんには、ご本人が体感していることも含めて現場からの「虫の目」はもちろんだが、全体の中での位置付けを見る「鳥の目」、さらには時間や月日の流れの中でどういう傾向があるのかといった「魚の目」を意識をすることもご提案したい。

先日、自治体職員との集まりでも話をしたのだが、職員でさえも、自らの自治体の課題を解決する際に、他市との比較や全国での自分の自治体の位置付けを把握していないことがある。


そこで今回は、生活保護問題についても「鳥の目」に立った全国での各自治体が置かれている状況や、さらには時間の経過と共にどういったトレンドになっているのかといった「魚の目」の視点について紹介していこうと思う。


図表:自治体別生活保護費ランキングBest20(2014)

全国で最も生活保護費が多かったのは大阪市(大阪府)で、その額は年間3,146億3,813万円におよぶ。

次いで高かったのは、札幌市(北海道)の1,360億3,983万円で大阪市の約1/3。

3位が横浜市(神奈川県)の1,357億1,334万円。


以下、4位神戸市(兵庫県)900億8,519万円、5位名古屋市(愛知県)898億9,621万円、6位福岡市(福岡県)848億2,408万円、7位京都市(京都府)822億9,457万円と続いた。

自治体の名前を見れば分かるように、生活保護費全体の金額なので、政令指定都市や東京23区など人口の多い大規模自治体がそのほとんどを占めた。


地域性を見るために、この上位20自治体を都道府県ごとに分けると、東京都が5区、大阪府が3市、神奈川県、兵庫県、福岡県が2市、北海道、京都府、愛知県、広島県、埼玉県、千葉県が1市と都市圏に多いことも分かる。


10年で5倍以上に増加した自治体も

図表:生活保護費増価額(2014-2002)と生活保護費増加率(2014-2002)

生活保護については、「急増している」、「逼迫した状況」等といった話は聞くこともあるかもしれないが、データで見ると、自治体によっては生活保護費が10年で5倍以上にまで膨らんでいる実態が分かる。

増加額で見ると、最も増えているのは大阪市(大阪府)で、2002年から2014年までの間に1,094億4,791万円も増えている。

次いで、横浜市(神奈川県)の568億9,087万円増、3位が札幌市(北海道)の539億5,634万円増となっている。


一方、逆に生活保護費を減らしている自治体もある。

人口減少など外部要因の影響もあるのだろうが、最も生活保護費を減らしたのは、夕張市(北海道)で3億8,735万円の減少となっている。

次いで、歌志内市(北海道)の2億3,024万円減、3位が芦別市(北海道)の2億1,721万円減、4位が三笠市(北海道)の1億6,160万円減、5位が深川市(北海道)の1億5,953万円減、6位が赤平市(北海道)の1億3,724万円減。ここまでが全て北海道の自治体になっているのも特徴的と言えるかもしれない。


これを増加率で見ると、可児市(岐阜県)の533.5%を筆頭に、霧島市(鹿児島県)525.9%、久喜市(埼玉県)462.1%となっている。

合併などが行われている自治体もあるので厳密ではないが、トレンドやオーダーを知るという意味で、参考までにこうした状況についても押さえておいてもらえればと思う。


年間予算の1/4を生活保護費が占める台東区

図表:自治体別予算に占める生活保護費割合ランキングBest20(2014)

切実な財政状況をより明確にするために、各自治体における一般会計予算に占める生活保護費の割合についても調べてみた。

その割合が最も多かったのは台東区(東京都)の24.5%。

年間の自治体予算の約1/4もを生活保護が占めているという極端かつ悲惨な状況であることが分かった。


次いで、門真市(大阪府)の23.4%、3位が田川市(福岡県)の20.4%、4位が板橋区(東京都)の20.2%、5位が大阪市(大阪府)の19.2%、6位が東大阪市(大阪府)の19.0%、7位が足立区(東京都)の18.7%。


これを都道府県別に見ると、東京都が7区、大阪府が5市、福岡県が3市、北海道が2市、兵庫県、大分県、鹿児島が1市と、そのほとんどが東京都と大阪府に偏っていることが分かる。


世帯当たりの生活保護費負担が最も高いのは?

図表:自治体別世帯当たり生活保護費負担額ランキングWorst20(2014)

こうした行政ベースの数字は、比較で多い少ないは分かっても、市民の皆さんからすると実感として分かり難い。

そこで、自治体ごとの生活保護費の総額を世帯数で割り、1世帯当たりの生活保護費の負担を見てみることにする。

最も高かったのは嘉麻市(福岡県)で、1世帯で年間23万5,320円も負担していることが分かった。

こうして各家庭で、毎年毎年負担している額だと思うと実感が湧いてくる。

実際に、生活保護の方を支えるために、各世帯が負担する額として年間23万円というのはどう映るだろうか。


次いで2位が、田川市(福岡県)22万9,551円、3位が大阪市(大阪府)22万5,997円、4位が奄美市(鹿児島県)22万344円、5位が台東区(東京都)20万9,619円、6位が門真市(大阪府)19万5,383円と並んでいる。

上位20自治体を都道府県別に見ると、福岡県が5市、大阪府と北海道が4市、東京都と沖縄県が2市区、鹿児島県、高知県、兵庫県が1市となった。


世帯当たりの負担が少ない自治体は東海・北陸に集中

図表:自治体別世帯当たり生活保護費負担額ランキングBest20(2014)

ここまで生活保護費の多い、もしくは負担の大きい自治体を見てきた。

では逆に、負担の小さい自治体についても紹介しておこう。

世帯当たりの生活保護費負担額が最も安かったのは南砺市(富山県)で、1世帯当たりわずか7,292円だった。

最も高かった嘉麻市の23万5,320円と比較すると、嘉麻市の市民の方々は南砺市よりも1世帯当たりで32倍以上も負担していることになる。

自治体によって異なるのは当り前だが、そうはいっても、あまりにも差が大きいようにも思う。

負担額の安い自治体についてもいくつか紹介すると、2位が日進市(愛知県)7,480円、3位が射水市(富山県)7,882円、4位が恵那市(岐阜県)10,259円、5位が裾野市(静岡県)8,168円、6位が菊川市(静岡県)9,019円、7位が鯖江市(福井県)9,516円、8位が砺波市(富山県)9,560円、9位が瑞浪市(岐阜県)10,146円、10位が飛騨市(岐阜県)10,148円と、東海地方と北陸地方に集中していることも見えてきた。


神奈川県の受給世帯当たりの生活保護費は1,155万円?

図表:都道府県別受給世帯当たり生活保護費

ここまでは基礎自治体である市区の生活保護費について書いてきたが、読者の視点に立てば、「生活保護受給世帯はどれだけいるのか」、「実際、受給世帯当たりどれくらいの費用がかかっているのか」ということに関心が行くのではないかと思う。

そこで、厚労省が公開しているデータが都道府県ごとだったので、都道府県別の受給世帯数で、各都道府県内の市区の生活保護費の合計額を割った、都道府県別「受給世帯当たり生活保護費」を出してみた。

市区の生活保護費の合計額でいえば、最も多かったのは東京都の6,045億円。

次いで大阪府の5,896億円、神奈川県の2,903億円・・・となるのだが、人口数によってその順番は少し変わる。


受給世帯当たりの生活保護費が最も高かったのは、神奈川県の年間1,154万7,005円となった。

もちろんこれは受給額ではない。

生活保護にかかる行政計費も含まれるので、この中には市役所の担当職員の給与等も含まれる。


今回のデータの場合、市区のみが対象のため、町村のデータは含まれない。

にもかかわらず、受給世帯数は町村も含めたものだ。

ただ、そうはいっても生活保護世帯1世帯に年間1,154万円もかかっているという現実を皆さんはどう感じるだろうか。


この仕組みを維持するために先述の負担を市民たちは負っている。

本当にこの仕組みが今後も維持し続けられるのかについても考えていく必要がある。

ちなみに受給世帯当たり生活保護費が神奈川県に次いで高かったのは兵庫県で1,153万7,729円。

以降、岡山県1,092万7,650円、大阪府1,052万7,074円、京都府1,027万758円、広島県862万6,387円、愛知県816万5,408円、熊本県574万4,174円、宮城県558万8,423円、北海道532万6,095円となっている。


自治体の意識改革や法整備を考えるべき

冒頭の話に戻るが、生活保護費の額だけを見ても、小田原市で2倍になっていることから分かるように、生活保護の自治体負担はこの10年の間に極端に増えている。

その要因について簡単に背景を考えていくと、一つには経済状況がある、GDPが急激に上がる成長段階を終え、自治体現場における経済状況も悪化しているというのが現状である。


それ以上に大きな要因になっているのが高齢化の問題だ。

高齢者の場合、年金だけで生活できなくなると、この生活保護に流れてくる構造になっている。

詳細についてはまた別の機会に書こうと思うが、こうした大きな要因の中で、生活保護は社会保障の一つとして大きく増大化していく状況にある。


これをどうするのかが最も大きな問題なのだが、国政においても解決策があまりなく、むしろ触れてはいけない「パンドラの箱」になっている。

そのため生活保護の問題は一向に解決されない。


年金問題を中心とした税と社会保障改革に関しても、年金について支給年齢引き上げや支給額の引き下げ等の対応を行ったとしても、年金額よりも生活保護費の方が高い構造から、この改革によって生活できなくなった人たちが一斉に生活保護に流れてくる構造になっている。

年金改革を行う際には、この生活保護改革を同時に行わなければ、底の抜けた桶で水を汲むのと同じ状況になってしまう。


こうした意味でも生活保護改革は喫緊の課題であると言える。

ただ一方で、自治体現場では「国が変えてくれない」と文句を言っても、逼迫した状況から逃れられるわけではない。


市民の要求が現場を苦しめる悪循環

自治体現場に合わせて追い打ちをかけたのが、「職員定数削減」など住民や社会からの行政改革要求だ。

肥大化した自治体業務や適性人員の観点から見直しを図るべく、業務改善や行政改革はどんどん進めればいいと思う。

しかし、こうした行政改革のしわ寄せは、良い悪いは別にして、福祉現場にきている状況があるように感じる。

住民としても「良かれ」と思っての行政バッシングだろうが、こうした批判がもとで行政の仕事をオーバーワークにつなげている部分があることも考えなければならない。


生活保護部署においては、もう一つ大きな重荷になっているのが、「不正受給」の問題だ。

生活保護については、様々な噂が絶えない。


生活保護者の場合、家賃の取りっぱぐれがないため、むしろリフォーム費用をかけるよりもそのままの物件を生活保護者に貸そうという不動産会社が、市役所の目の前に店舗を構えて、「生活保護者歓迎」と看板を出す。


同様に、医療費についても、病院においては医療費の未払いは経営にとって大きな課題になる。

ところが生活保護者の場合、医療費が無料になる代わりに行政が税金から支払うことになるので、医療機関からすればむしろ医療費の取りっぱぐれがない。


そのため、生活保護者が頻繁に病院に通うようになる、薬を多めに出す、さらには生活保護者がその薬を転売する等という状況になって、病院側も生活保護者もwin-winになっている。などという噂がまことしやかに囁かれている。


生活保護者がベンツやBMWに乗っている、子どもは私立学校に通い、家族で海外旅行にも行ってる・・・等々、私が耳にしただけでも怪しげな噂は絶えない。


当然、こうした噂を聞いた市民は「不正受給を突き止めろ」と指摘する。

しかし、実際には職員の調査権限はほぼ皆無であり、担当職員は、真面目であればあるほど、市民の要求と実際にできることの狭間で苦しみ、また現場では、生活保護が支給されるされないは、まさに生きるか死ぬかの分かれ道でもあり、本当に壮絶な現場を日々体験することになる。


生活保護担当といえば一昔前の役所では、ある意味3K部署であり、人気がなく、役所によっては窓際部署のように扱っている所もあった。


しかし、現在では、2倍3倍のペースで仕事が増えながら、人員はほとんど変わらないという状況にある。

ある種の専門性を持たなければ仕事にならないケースワーカーたちが、日中、受給者の自宅を回り、17時に戻って、それからデスクワークをこなし、家庭によってはさらに夜間に訪問して対応するという、公務員の勤務規定からは考えられないような実態で回しているところがあったりもする。

2017.01.28

小田原市「生活保護なめんな」事件の背景とは? 総額約3兆7000億円のうち不正受給は0.47%

生活保護制度を支える理念は、憲法第25条にある。

「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」。

この生存権の理念に基づき、制定されたのが生活保護法だ。


 生活保護法の4原則がある――。

 ①無差別平等の原則:法の下の平等(日本国憲法第14条)に基づき、生活保護は、すべての国民に無差別平等に適用される。生活困窮に陥った理由や過去の生活歴や職歴は問わない(生活保護法第2条)。

 ②補足性の原則:生活保護は、資産(預貯金・生命保険・不動産)、能力(稼働能力)、援助や扶助を活用しても最低生活の維持が不可能な人に対して適用される(生活保護法第4条)。

 ③申請保護の原則:生活保護は、要保護者本人、扶養義務者、同居の親族の申請によって開始され、急病人などの申請が困難な人は、職権で保護される(生活保護法第7条)。

 ④世帯単位の原則:生活保護は、世帯単位の生活能力などを判定して決定する(生活保護法第10条)。

 このような理念に支えられていることから、被保護者(受給者)の権利と義務が生じる。つまり、受給者は、正当な理由がない限り、決定された保護を変更されないし、受給された保護金の課税や差押えを受けることはない。

 ただし、保護を受ける権利を他人に譲り渡せない。能力に応じて勤労に励み、支出の節約を図り、生活の維持・向上に努めなければならない。収入・支出の変動、居住地・世帯構成の変更があれば、速やかに届け出なければならず、行政の調査・指導・指示に従わなければならない。

 さらに、生活費に使える資力(年金など)があった場合は、定められた金額を返還しなければならない。2014年の生活保護法の改正では、ケースワーカーが必要と認めた場合、受給者は家計簿と領収書を提出する義務も追加されている。


受給者世帯は全世帯数の約3%、受給者は全人口の約1.7%

生活保護は、年齢、性別、健康状態、世帯の生活状況によって以下の8種類に分かれる。

 ①公費負担医療を行う医療扶助

 ②衣食など日常生活の需要を満たす生活扶助

 ③児童が義務教育を受ける教育扶助

 ④家賃などを補填する住宅扶助

 ⑤要介護・要支援者に行う介護扶助

 ⑥出産時に行う出産扶助

 ⑦生業に必要な資金などを給付する生業扶助

 ⑧葬儀時に行う葬祭扶助


受給者世帯は1,633,301世帯、受給者は2,163,394人(厚生労働省平成28年1月)。

全世帯数5641万2140世帯に占める割合は約3%、全人口127,094,745人に占める割合は約1.7%(総務省平成27年1月)。

#下流老人...  

ビートたけしのTVタックル 2016年5月15日 160515

박정현, 숨 멎게 만드는 가창력! ‘사람들은 모두 변하나 봐’ @신의 목소리 10회 20160615


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