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子どもが長年ひきこもっている。イライラを募らせ家庭内暴力をふるう。
こうした悩みを抱える家族に対し、「問題を解決し、子どもの自立を支援する」とうたう施設によるトラブルが相次いでいる。
「就労支援プログラムを受けられなかったのに500万円を請求された」、「アパートに監禁され、殴る蹴るの暴行を受けた」などと訴える声。
人々に寄り添うはずの“自立支援”ビジネスの実態と、トラブル防止に必要な方策とは。
全国で54万人といわれるひきこもりの人たち。
家庭内暴力や非行に走る若者。
こうした深刻な悩みを抱える家族に対し、問題を解決し子どもの自立を支援するというビジネスが拡大しています。
しかし、一部の施設でトラブルが相次いでいることがNHKの取材で明らかになってきました。
施設の元入所者
「お腹を殴られたり、羽交い絞めに。何度も何度もやられた。地獄。」
また、高額な料金を請求されるケースも。
息子を施設に入れた母親
「このまま向こうの言いなりになっていれば、全財産はたいて生活ができなくなっていた。」
わらにもすがりたい思いの家族にとって、救いとなるはずの自立支援ビジネス。
一体、何が起きているのか。
実態と背景に迫ります。
トラブル続出 “自立支援”ビジネス
20代の娘の自立を支援するという施設に預けたところ、アパートの一室に監禁され、1日一食しか与えられず、暴力を振るわれたとあります。
そして「私どものようにだまされる人が出ないよう、この問題を取り上げてほしい」と記されていました。
一体、何が起きているのか。
トラブル続出!? “自立支援”ビジネス
ファックスを寄せた、佐藤浩さん(仮名)です。
父 佐藤浩さん
「できるだけ多くの方に、こういうことが起こっていることを知っていただきたい。」
2年前、20代後半でアルバイト生活を送っていた娘との親子関係について悩んでいました。
妻 ゆみさん(仮名)
「家庭内暴力ということではないが、1回娘が私をたたいた。今までの家族関係の中では最悪の状態。」
当時、目にしたのが、ひきこもりや家庭内暴力の相談に乗るという自立支援施設のホームページ。
生活態度を一から指導し、さらには就職するまで支援を行うとうたっています。
実際に相談したところ、こう告げられたといいます。
妻 ゆみさん
「『お母さん、お金を残しても何もなりません。娘さんの未来を買いましょう。今できることをやらなきゃ後悔しますよ』と。なんというか、私がやらなきゃっていう気持ちになっていた。」
3か月間の入所で料金は合計570万円。
老後の資金を崩し、娘を預けることに同意しました。
若者の自立を支援する施設は今、全国に少なくとも400はあります。
佐藤さん夫婦が申し込んだのは宿泊型と呼ばれる施設。
共同生活を通して生活力やコミュニケーション能力を高め、就労のための訓練も受けられるというものです。
しかし、娘の一恵さん(仮名)が実際に入所した施設は、そうした自立支援施設とはかけ離れたものだったといいます。
“施設の職員が母親と共に自宅を訪れ、車に乗らざるをえない状況に追い込まれた。そして、アパートの一室で指導を受けることもなく食事すら満足に与えられなかった。”
一恵さん
「起きる時間やご飯の時間は全く決まっていなくて、ひどければ(一日に)一食。ずっと放置。外出は制限されていた。」
一恵さんは職員の目を盗んで逃げ出し、警察に助けを求めましたが、施設側が両親の同意があることを伝えると取り合ってもらえなかったといいます。
その直後、一恵さんは家族に手紙を書きました。
逃げ出したことを理由に、職員から暴力を受けたことが記されています。
一恵さん
「私は殴られたり蹴られた時に過呼吸になって床に転がって泣いていた。本当に、私はここで殺されるんだと思っていた。」
施設に入って3か月後、ようやく逃げ出すことができた一恵さん。
今もなお当時の記憶に苦しめられ、眠ることができません。
医師からは心的外傷後ストレス障害=PTSDと診断されました。
一恵さん
「やっと睡眠をとっても暴力の光景で飛び起きる。飛び起きた時に、この部屋がどこの部屋かが一瞬わからなくてパニックのような症状になる毎日。」
一恵さんが入所していた施設が、取材に応じました。
施設の代表は元警察官。
あくまで運営は適切だったといいます。
「車に乗らざるをえなかった」という一恵さんの主張について、現場で簡単に同意しないケースもあるが、最終的には本人にも同意を得ているといいます。
また、外出が制限されたという主張については、出入りを制限することはないといいます。
「脅し・暴力を受けた話も聞いているが?」
自立支援施設 赤座孝明代表
「その点については、ひとこと事実無根。それ以外コメントすることがない。暴力を受けたというような情報が現実にあったとするなら、それはセンターに対する言われなき中傷であるとか、あとは腹いせ的な、そういう内容に基づいた言動だと思う。」
食い違う両者の言い分。
施設の元職員2人が取材に応じました。
施設運営に疑問を持ち、退職したといいます。
元職員
「持ち上げまして、こうひねるんです、内側に。」
2人は暴行に加わったことはなかったといいます。
一方、入所者を拘束する方法は教えられていました。
元職員
「抵抗したり、逃げ出そうとしたときに使うようにと。」
施設には通常10人程度が入所。
アパートや一軒家に入れられます。
窓には特別な鍵がつけられ、中から自由に出られない仕組みになっていたといいます。
また、施設では就労訓練などを行うこともなかったといいます。
入居者
“何か仕事ない?”
職員
“何もすることない、テレビ見るくらいしかない。うちはプログラムとかないんで。帰りたい?”
入居者
“はい。”
元職員
「本当にこれでここから自立を入居者ができるのかと、ずっと思っていた。」
トラブル続出!? “自立支援”ビジネス
施設側は、中から出られないようにする特別な鍵については「今はかけていない」、就労訓練については「適切に実施している」としています。
佐藤さんは先月(4月)、施設に対して訴訟を起こしました。
両者の意見が対立する中、今後、裁判が開かれる予定です。
さらに取材を進めたところ、別の施設では高額な金銭トラブルに巻き込まれたというケースもありました。
トラブル続出!? “自立支援”ビジネス
関東地方で暮らす母子家庭の大田さん親子です。
30代後半の息子の良太さん(仮名)。
専門学校を卒業後、就職活動につまずき、10年以上ひきこもり生活を送ってきました。
母一人、子一人の暮らし。
誰にも相談できずにいました。
母 大田慶子さん(仮名)
「親戚とかそういう手前もありますし、あまり周りに知られたくない気持ちもあった。」
そのとき、たまたま目にしたのがこのパンフレット。
フィリピンで英語を学び、大学進学のサポートもすると書かれていました。
料金は、6か月に及ぶフィリピン滞在費や英会話のレッスン代職員によるサポート費など、合わせて600万円でした。
母 大田慶子さん
「いやあ、もうびっくりしたんですけど、もう息子がやる気になっていたので、個別支援だとこれぐらいかかるのかなと思って、しょうがなく、はいと言った。」
しかしフィリピンに渡ってみると、パンフレットにあるプログラムとはかけ離れたものだったといいます。
英会話の授業は一度も行われず、洋画のDVDが渡されました。
大田良太さん
「誰か教える人がいるわけでもなく、ただ見ろと言っただけ。勉強でもなんでもない。」
気晴らしになるといわれ、マリンスポーツを体験。
女性が接客するカラオケ店にも連れていかれました。
そして、6か月とされていた滞在は僅か半月で打ち切られ、残りの期間は名古屋のマンションで過ごすよう命じられたといいます。
不審に思った母親が途中で解約し、残りの期間の費用など288万円の返金を求めました。
そのとき、母親が施設側から取り寄せた領収書です。
フィリピンには半月しかいなかったにもかかわらず、3か月分の宿泊費が請求されていました。
また、本人だけではなく同行した職員の水着代やかばん代、さらにはカラオケ代も入っていました。
しかし、施設側は「宿泊施設の代金は前払いのため返金できない。職員の水着代は支援に必要」と回答。
カラオケ代も返金されませんでした。
288万円のうち、返ってきたのはおよそ半分の150万円でした。
母 大田慶子さん
「このまま向こうの言いなりになっていれば生活ができなくなっていた、母子家庭で。もうぞっとして、路頭に迷っていたかもしれない。」
別の自立支援施設で働いていた職員によれば、こうした多額の料金を請求されるケースが、ほかにも相次いでいるといいます。
別の施設の元職員
「ひきこもり家族は家が崩壊寸前。裕福であったり地元の名士であれば、そのことを近所に言えないし、立場が弱い。そういった意味では値段がつけ放題。社会問題化しているマーケットと考えたらすごいドル箱。大きなビジネスチャンス。」
トラブル続出!? “自立支援”ビジネス
ゲスト長谷川俊雄さん(白梅学園大学 教授)
ゲスト池上正樹さん(ジャーナリスト)
フィリピンで支援を行っているという施設側に取材しましたが、「個別の支援内容については、プライバシーに関わるため回答できない」としています。
鎌倉:VTRで、ある施設の元職員は「ひきこもりの問題は大きなビジネスチャンスだ」とまで言っていました。
内閣府の調査によりますと、ひきこもりの人の数は全国で54万人ほど。
これは39歳以下の人数で、40歳以上を含めると、さらに増えるとみられています。
では実際に、どの程度のトラブルがあるのか。
今回、番組では、ひきこもりの家族会にアンケート調査を行い、312人から回答を得ました。
支援施設などを利用したことがあるという人は、全体の84%、その中で、金銭トラブル、暴行、脅迫など、不適切な扱いを受けたという人は25%でした。
こうしたトラブルというのは、どれぐらい広がっている?
池上さん:すべてが問題あるわけではなくて、一部の民間施設の間では、自主的なガイドライン作りを進めると、そういう動きも今、起きているんですけれども、ただやはり氷山の一角だといえます。
こうした事例は後を絶たないですね。
(どんな事例が?)
成人の場合ですと、本人の同意がなくても親の同意があることによって、住居侵入罪というのが成立する可能性があるんですけれども、ところが施設側から「やっていない」と否定されてしまうということで、なかなか立証できない、ハードルが高いということで声を上げられない、隠されるということがあるんだと思います。
そういう違法行為だと認識できない社会になってるということが問題だと思います。
(こうした業者は増えている?)
ひきこもりとかでなくても、家族間トラブルという理由で、引き離すために利用されていると、そういうところでビジネスになってるということで、新規業者が次々に参入している構図があるかなという感じがしますよね。
家族の側は、なぜこうした施設を利用せざるをえない?
長谷川さん:現在でもなお、家族の問題は家族で解決しなければならないという思いがとても強いんじゃないでしょうか。
世間体や社会的な評価も気にされていることも影響されていると思います。
ひきこもりが長期化すると親御さんは不安や焦りを持ち、それが継続化します。
その不安や焦り、2つあると思うんですね。
1つは、お子さんが社会的な接点を持たずに社会的な孤立をするということ、もう1つは、親御さんの老後生活に扶養家族がいるということになりますので、経済的な問題がとても不安や焦りの原因になっているというふうに考えております。
こうした施設に対する法的な規制はないのか?
長谷川さん:行政側等には許認可権限はありますが、始まってしまうと、支援内容等を逐次チェックするという機能はありません。
したがって、その把握は難しいといえると思います。
そこの施設で行われている支援の内容やノウハウについては、公開化されない、隠されてしまうということがあるんじゃないでしょうか。
鎌倉:ではここで、トラブルにならないために、施設を利用するときにはどういう点に注意すればいいのか、こちらをご覧ください。
全国の施設を調査したこともあり、自身も40年にわたって施設を運営している、工藤定次さんに聞きました。
拙速に契約をしない、事前に必ず施設の見学をするべきということです。
それから、閉鎖的でないか。
例えば、地域の人や外部講師など、職員以外が定期的に施設と関わりを持っているかどうか。
さらに、「すぐ解決できる」ということばは要注意だそうです。
施設は特効薬ではないことを自覚したうえで相談してほしいということでした。
トラブルが起きている背景には、どうしたらいいのか分からないという家族の切実な思いがあります。
問題を解決するヒントとなる、地域ぐるみの取り組みを取材しました。
ひきこもり解決に成果! 地域あげて自立支援
大阪・豊中市にある、福祉なんでも相談窓口です。
ひきこもりや家庭内暴力などの問題を気軽に相談できるよう設けられました。
小学校の校区ごとに、全部で36か所設置されています。
まず、窓口で相談に乗るのは研修を受けたボランティアの住民。
ご近所のつながりを生かして話を聞き出します。
息子のひきこもりを打ち明けた母親
「(息子が)家でぶらぶらしてひきこもってるような状態で、そうしたら、いっぺんそういうところで相談したらどうかなって。」
寄せられた情報は、地元の社会福祉協議会に集約されます。
社会福祉士など専門的な知識を持った職員が訪問支援などの対応に当たります。
この日、訪ねたのは息子が10年以上ひきこもっていた親子。
母親との話し合いを重ね、1年後に、ようやく息子本人と会えるまでになりました。
息子
「料理。」
職員
「料理得意やもんね。お母さん喜ばすの好きやもんね。」
自立したいという意欲が湧いてきた人には、中間的就労というプログラムを用意しています。
パソコンの入力など、簡単な作業から仕事に慣れてもらいます。
こうした支援にお金はかからず、逆に2時間ごとに500円を受け取ることができます。
ひきこもっていた女性
「勧めてもらえたから『行ってみる?』と軽い気持ちで来られた。人と会って、普通に何でもないようなことをしゃべって過ごせるのが楽しい。」
さらに、地域の事業所と連携。
働きながら最終的な就職先を探していきます。
社会福祉協議会を軸に、行政・住民・企業が一体となった自立支援。
これまでに31人が就職を果たしています。
豊中市社会福祉協議会
コミュニティーソーシャルワーカー 勝部麗子さん
「とにかくいろんな問題、家族の問題含めいろんな問題があるが、その中で、できるところから一つずつ解決していくことを考えていく。
これは(地域が)しっかりタッグを組んでやっていかなければならない。」
ひきこもり どうする自立支援
鎌倉:豊中市社会福祉協議会では、「断らない福祉」というのを掲げています。
ひきこもり以外にも、家庭内暴力や精神疾患など幅広い対策に取り組んでいて、相談窓口も、市内に数多く設けています。
実は、こうした悩みへの相談窓口というのは、ほかの地域にもあります。
2年前に施行された「生活困窮者自立支援法」、この法律によって、家族のことで悩んでいる、病気で働けない、社会に出るのが怖いなど、ひきこもりの悩みを相談できる窓口というのは、全国の市町村に存在しているんです。
ですが、番組が今回ひきこもりの家族会に行ったアンケートからは、こんな答えがありました。
「どこに相談すればいいのか分からない」。
これが全体の半数近く、45%に上ったんです。
豊中市のような仕組み、ほかの自治体ではできないものなのか?
長谷川さん:とてもすばらしい実践ですよね。
しかし、豊中市の実践から何を学んだらいいのか、学んだことを自分の地域や自治体で、どのように取り入れていくのかという、そこがとても大事だと思うんですね。
委嘱は不可能かと思います。
(どういうことを学べばよい?)
先ほどVTRにもございましたけれども、地域ぐるみ、つまり地域福祉型の取り組みだと思うんですね。
すべての地域の構成メンバーがこの問題に関心を持って関わるというところがポイントかと思います。
(例えばどういう事例が?)
これ以外にも、宿泊型の施設であったとしても、その施設は地域になくてはならないような社会資源・施設である、あと地域住民の方々と交流をしている、そうした宿泊型の施設もあるわけです。
どうすれば、ひきこもりに悩む方々が安心して相談できるような社会になっていけるのか?
池上さん:やはり本人の目線で考える、みんなで考えていくことが大事かなと思います。
それはひきこもっていたとしても、生きているだけでもいいんだという空気を、周囲とか地域で持てるかどうかというのが鍵を握っていて、そこで安心感とかにつながったり、本人の側にとっても生きる意欲が湧いてくるかなということにつながるかなと思います。
(生きているだけでいいんだというのは、なかなか家族にとっては思いづらいところがあると思うが、それが大事?)
なかなか就労にすぐにつながらなかったとしても、やはり多様な関係性をどうつなげていくかっていうことが、社会に出ていくいろんなチャンス・可能性が生まれてくるっていうことですよね。
関係性を作るということが大事だと思います。
(仕事ができるようになるということが最終的なゴールではなく、もっと生きていくうえで、社会とどうつながりを持つかということで支援をしていく?)
そこで本人もそこに一緒に入って、一緒に仕組み作りをしていくっていう、本人の意見とか気持ちを考えていくっていうことが、プロセスの中でどう取り入れていくかということも大事じゃないかなと思いますよね。
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