#生活保護 (ドキュメント) #生活保護でパチンコ #生活保護への医療の闇
生活保護費は国民年金よりも高い。その事実をどう考えればいいのか。
生活保護の受給を勧めるものではない。
私は内田茂夫、60歳。
今、私は地中海の国々を豪華客船でめぐる旅の真っ最中だ。客はみな裕福そうな老人ばかりで、少しだが日本人もいる。船内では夜ごとパーティが開かれ、頼めばいくらでもうまい酒が出てくる。飽きればカジノでひと勝負。夢中になりすぎて気づけば朝……という日もあった。そうやって暇をつぶしていると、港に着く。するとそこには、見たこともないような美しい光景が待っている。もちろん、美しい女もいる。その女をどうするかは、自分次第だ。
私はデッキで酒を飲みながら、1年前の自分を思い出していた。
「生活保護を受けよう」還暦直前の決心
当時59歳の私は、とにかく落ち込んでいた。自営業なので定年もないが、細々と続けてきた小さな広告代理店は、ここ数年ほとんど開店休業状態だ。おかげで鬱気味になり、心療内科に通ったこともある。この状況で働き続けたところで、先は見えている。
「そうだ、60歳を私の人生の定年にしよう」
突然わいてきたこの思い付きに、私の心は久しぶりに躍った。仕事を辞めたら、旅行をして、好きな酒を飲んで……。あと1年だけだと思えば、仕事も少しは頑張れるかもしれない。
しかし、すぐに希望は絶たれた。一応払い続けてきたものの、私のような自営業者が国民年金でもらえる金額は微々たるものだ。夫婦2人合わせても大した額にはならない。そして、いくら私が「定年だ」と勝手に宣言したところで、年金の支給は65歳まではじまらない。繰り上げ受給することもできるが、そんなことをすればさらに金額はわずかなものになってしまう。となれば貯金を取り崩して生活することになるが、残念ながら「死ぬまで安泰だ」と言える額の蓄えはない。
私の財産は、現金1000万円と3LDKの中古マンション。そしてわずかな株と保険。両親は兄夫婦と同居しているため、介護の心配がない代わりに、遺産も期待できない。65歳までどうにかして働き、わずかな年金をもらいながら寿命いっぱい食いつなぐ人生が続くなんて、絶望的だ。
テレビで特集される「下流老人」を他人事のように眺めていたが、よくよく人生を棚卸ししてみれば、まさに私自身が「下流老人」まっしぐらのルートを辿っていたというわけだ。
私はしばらくの間、現実と向き合えずにいた。
ある日のこと、私は区役所にいた。ほったらかしにしていたマイナンバーの申請手続きを済ませるためだ。そして、衝撃的な光景を目にした。役所で金を受け取っている人がいるのだ。しかも、何人も。見れば、「生活福祉課」となっている。それは生活保護費を受け取る人の列だったのだ。
「国が生活を助けてくれるなんて羨ましいな」
最初はただそれだけの感想だった。生活保護にはどうしてもネガティブなイメージが付きまとう。受給してしまえば、「人生の落伍者」と言われたような気がする。
しかし、日を追うごとに私の考えは変わっていった。生活保護は国が提供するれっきとしたサービスだ。生活に困った人間の最後のセーフティネットだ。これまで私はきちんと税金を納めてきた。それを取り戻すチャンスじゃないか。後ろめたいなんて、とんでもない。捨てなくてはならないのは、なけなしのプライドだけだ。
「60歳になったら生活保護を受けて生活しよう」
私は、老後の生活を生活保護に頼ることに決めた。
調べてみると、生活保護を受給するための条件は思った以上にシンプルだった。国が定める「最低生活費(生活するために最低限必要な費用)」より世帯の収入が低ければ、その差額が生活保護費として支給される。収入がなければ、最低生活費と同額が支給される。
さらに、援助してくれる身内・親類がいないこと。現金はもちろん、家や車などの資産を持っていないこと。病気やケガ、年齢などによって働けないことも重要になってくる。
私の場合、60歳になればまず間違いなく収入はゼロになる。この先私が営業しなければ、今だってほとんどない仕事は必ずゼロになるからだ。妻はもともと働いていないから、今さら働けとは言われないだろう。体調面から考えても、私の鬱状態が悪化すれば、確実に働けなくなる。そして、繰り上げ受給でもらえる数万円の年金額は、もちろん最低生活費に満たない。
次に家族の援助だが、これは義務ではないようだ。つまり、家族に一応「援助してもらえますか?」と聞いてみて、断られればいいだけなのである。そもそも、年老いた両親に私を援助する余裕はない。仲の悪い兄に至っては相談にすら乗ってもらえないだろう。
問題なのは、なけなしの中古マンションと現金だ。これがある限り、私が生活保護を受けることはできない。「すべて使い切ってから来てください」というわけだ。
それなら、使い切ってやろうじゃないか。
その日から、私の生活は180度変わった。
まず私がしたのは、マンションを担保に借りられるだけの金を借りることだった。マンションを売ることも考えたが、私が住む東京都C区は生活保護受給者が少ないことで有名だ。聞くところによれば、受給者の数が少ないほど受給の難易度は下がるらしい。それならば、ここに住み続けるのが得策だと考えたのだ。
次にしたのが豪遊だ。働くことを完全にやめ、生命保険や株なども解約してすべて現金に換えた。フランス、スペイン、イタリア、アメリカ、ギリシャ……行きたかった国という国を旅してまわった。妻のことも誘ってみたが、「馬鹿なこと言わないで」と怒るばかりだ。どんなに説明しても、自業自得で生活保護が受けられるはずがないと言って信じない。
私は1人、毎晩のようにうまい料理を食べ、夜の街に繰り出した。
「内田さんって社長さんなの? お金持ちなんだねー」
娘ほど年の違うキャバ嬢は、高級なシャンパンをあける私を前にご機嫌だ。私がプレゼントしたブランド物のネックレスを身につけ、いつにも増して体を寄せてくる。まさかこの金が生活保護を前提に使われているとは思ってもいないのだろう。
「内田さん、アフターはどこ行く?」
「どうするかな」
今夜こそ、この女を落とせるかもしれない。私はニヤつきながらキャバ嬢の膝に手を置き、酒を飲んだ。
翌朝、家に帰ると家はもぬけの殻だった。妻は私の計画に心底呆れ果て、離婚届を残して出て行ったのだ。
離婚によって、私の資産は一気に半分になった。
貯金ゼロ、借金アリ、それでもダメな理由
不安になり、時々心療内科のお世話になることもあるにはあったが、この1年間はおおむね祭りのように楽しかった。離婚という誤算はあったが、仕方ない。でも、やりたいことはすべてやった。
そして今日、私は区内の福祉事務所にやってきた。貯金は全額使い切り、区内で自宅とは別にアパートを借りた。借金を相殺するために、家を失うことになると予想したからだ。貯金残高は10万円程度を残すのみ。もちろん、収入はない。どこからどう見ても明日の暮らしにも困る状態だ。
日本国憲法25条には「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」とある。こういう言い方もおかしいが、今の私なら自信を持って生活保護の申請ができる。
しかし、この考えは間違っていた。
「生活保護を受けたいんですけど」
受付でそう伝えると、私より少し年下だろうか。中年の女性職員が応対してくれた。「こちらにどうぞ」。
「生活に困ってるんです」
「わかりました。今、収入はどれくらいありますか?」
「まったくありません」
「まったくない? 働いていないってことですか?」
「小さな広告代理店をやってたんですが、仕事がなくて」
女性職員は小さくため息をつき、何事かを手元のノートに書き込んでいる。
「収入も職もない、と。それでは、資産は何かお持ちですか? 家とか車とか。もしあれば高級時計なんかも」
「家はありますが、借金があるのでそれを返すために売ることになると思います。それで今、区内のアパートに住んでいます」
「アパートの家賃はいくらですか?」
「15万円です」
「わかりました。貯金はありますか?」
「10万円ちょっとですね」
「あら、それくらいはあるんですね。年金はどうですか?」
「国民年金なので、繰り上げ受給すると4万~5万円になるかどうか……」
「手続きはまだなんですね。ご家族には援助を頼まれました?」
「両親は高齢で年金暮らしですし、妻とは離婚しています。兄ともほとんど連絡を取っていない状態で」
女性職員は「なるほどね」というようにノートを眺め、私に向き直った。私としては、このまま即受給できるくらいのつもりだったが、彼女の言い分は違っていた。
「それではまず、年金の繰り上げ受給の申請を行ってください。そして、ご家族にも一度お願いしてください。まだ貯金もあるようですから、対策を取られて、借金の問題をクリアにしてから改めてお越しください」
結果に驚いた私は、すぐにネットで生活保護について調べた。これでは本当に生活に困ってしまう。
そこで発覚した私のミスは、大きく3つ。まず、貯金10万円というのは「貯金がある」と見なされる。どうせ支給が始まるまでに使い切ってしまうのだから、引き出して現金として持っておくべきだった。2つ目のミスは、年金の繰り上げ受給をしていなかったことだ。そして、最大のミスは申請をせずに引き下がってしまったこと。申請権は誰にでもある。審査の結果、生活保護が受けられないことももちろんあるが、それはそれ。申請は何度でもできる。逆に、申請しない限り向こうから助けの手を差し伸べてくることはない。どちらかと言えば、私のように窓口で追い返すことを「裏マニュアル」として推奨している自治体もあるのだという。安易に受給を認めれば、財政は破綻してしまうのだから当然だろう。
数日後、年金の繰り上げ受給の申請を済ませた私は、再度福祉事務所に足を運んだ。言うべきことは完全に調べてある。自宅マンションは借金の返済でなくなること。今住んでいるアパートの家賃は払えないが、引っ越しをする金もないこと。そして、家族に援助を断られたこと。
家族からの援助が受けられないということは、生活保護を受ける際の必須条件ではない。しかし、いかに困っているかを主張するための材料として、一度家族に打診しておくことは重要なのだという。
数日前、私は意を決して数年ぶりに兄に電話をした。
「生活に困っているんだ。離婚して妻もいない。月20万円くらい送ってくれれば、生活保護を受けずにすむのだが」
こう伝えると、「どうしてそんなことに……」としばらく無言になった後、兄は「申し訳ないが、援助はできない。何とか頑張ってくれ」と言った。
それでいい。私も、家族に迷惑をかけたいわけではないのだ。
福祉事務所に入ると、私を見て先日の女性職員は少し驚いたような顔をした。
「どうされました?」
「生活保護の申請に来ました。あのあと、年金の手続きもしましたし、家族に援助も頼んでみましたが、断られてしまいました。たしかに現金は10万円ほどありますが、これは生活保護を受けるまでに必要な金です。早く引っ越しをしないと、このままではホームレスになってしまいます」
「ホームレス」という言葉が効いたのか、いくつかの質問のあと、申請用紙が渡された。そして約2週間後、資産の調査や家庭訪問などの厳正な審査を経て、いよいよ私の生活保護生活がはじまった。
国民年金よりいい生活保護ライフ
生活保護の金額は、住んでいる地域、世帯の人数・構成、それぞれの年齢、各世帯個別の事情(障害の有無・程度・家賃額など)によって決められる。私のように都内で一人暮らしをしている場合、大体13万円程度が「最低生活費」として支給される。昔は男性のほうが家事ができないぶん、支給額が高かったようだが、今はそうでもないらしい。こんなところでも「男女平等」というわけだ。
私は年金を受給しているので、その差額が生活保護費として支給される。新しい家は、区内の都営住宅に決まった。13万円の生活保護費ではそもそも15万円の家賃の家に住むのは不可能だが、仮に10万円であっても住み続けることはできない。生活保護を受ける人間が住んでもいい家賃には、地域ごとに上限があるからだ。その引っ越しに必要な費用などは、月々の生活保護費とは別に支給される。持ち家がある場合、資産価値によってはそのまま住み続けることもできるという。
生活保護のメリットはこれだけではない。生活保護を受けている限り、税金や年金保険料は全面免除。水道料金やNHK受信料、医療費などもタダだ。自治体によっては、交通機関の無料パスがもらえるところもあるらしい。
先日、現役時代の知り合いと酒を飲んだ。ちなみに、生活保護費の範囲であれば、酒を飲むのも自由だ。
彼は、同じような規模の小さな会社をやっていた男だ。いまだに働き続け、仕事のストレスから胃潰瘍を患っているという。
「入院したのか?」と聞くと、「金も時間もないから、そんなことできないよ。騙し騙しやっているんだ」と自嘲気味に笑っていた。可哀想に。実は私も胃にポリープがあったのだが、生活保護を受けてから、余った時間でひと通り体のガタを治すことができた。入院したってタダである。個室は「必要最低限」ではないから大部屋だが、私の資産なら生活保護を受けていなくたって大部屋だっただろう。
これから先、介護を受けるようになっても生活保護なら安心だ。必ず施設に入ることができるし、福祉事務所の人間は必ず受給者と面談をする義務があるから、話し相手にも困らない。わずかな貯金を切り崩しながら国民年金だけで生活するより、生活保護のほうがよほど快適だ。私のようにこの制度の穴に気付く人間が増えたら……日本はどうなってしまうのだろう。
(本稿はすべてフィクションです)
生活保護不正受給 約4万4000件 最多に
1月23日
去年3月末までの1年間に明らかになった生活保護の不正受給の件数は、全国でおよそ4万4000件となり、これまでで最も多くなったことが厚生労働省のまとめでわかりました。
厚生労働省によりますと、去年3月末までの1年間に全国で明らかになった生活保護の不正受給の件数は4万3938件で、前の年より917件増えて、これまでで最も多くなりました。
不正の内容では、
働いて得た収入を申告しないまま生活保護費を受け取っていたのが46%、次いで、年金を申告しなかったのが19%、働いて得た収入を少なく申告していたのが13%などとなっています。
中には、子どものアルバイトの収入を申告するのを忘れていたケースなどもあったということです。
一方、不正受給の総額は、前の年より4億8000万円余り減って169億9408万円となり、予算全体に占める割合は0.4%でした。
厚生労働省は「自治体が積極的に対策に取り組んだことで、より多くの不正が見つかり、早期に発覚したことで不正受給の金額も抑えることができたと考えられる。
引き続き、自治体と連携して、生活保護制度の適正な運営に努めたい」と話しています。
<生活保護>「施し」ではなく「権利」という常識 困窮の理由を問わず、誰でも困窮していれば保護を受けられる
1950年に施行された生活保護法は、自立できない怠け者の国民に施しを与える慈愛深い制度ではありません。健康で文化的な最低限度の生活を送るために、足りないお金を国家が補助する制度です。その仕組みを解説します。【NPO法人ほっとプラス代表理事・藤田孝典】
生活保護制度は、次の四つの原理で構成されています。
困窮する国民を国の責任で保護し、自立を促す「国家責任の原理」▽困窮の理由を問わず、誰でも困窮していれば保護を受けられる「無差別平等の原理」▽健康で文化的な生活水準を維持できる「最低生活保障の原理」▽利用し得る資産、能力その他あらゆるものを活用することを要件に保護を受けられる「補足性の原理」
◇8種類の扶助の合計が「生活保護」
「生活保護の金額は全員一律で、働かないでも大金が手に入る」という言説を信じる人の多さに、時々目がくらみます。国家が設計した制度がそう簡単であるはずがありません。
生活保護は法律に基づく総称で、その中身は8種類の「扶助」と各種加算で成り立っています。必要即応の原則に沿って、世帯ごとのニーズに合わせて現金と現物を支給します。扶助の内訳は以下の通りです。
(1)生活扶助=1類は食費、衣料費など、2類は光熱費、家具、家事用品など
(2)住宅扶助=家賃、補修費など
(3)教育扶助=義務教育で必要な学用品など
(4)医療扶助=医療費、通院費など
(5)介護扶助=在宅介護費用、介護施設入所費用など
(6)出産扶助=出産のための費用
(7)生業扶助=就労に必要な費用、高校就学費など
(8)葬祭扶助=葬儀に必要な費用
全員一律ではなく、地域や年齢、世帯人員に応じて項目ごとに金額が細かく設定されています。保護を受ける際の目安は、収入がその地域の最低生活費(生活扶助基準)を下回っているかどうかです。
私たちのNPO法人「ほっとプラス」があるさいたま市を例に、具体的な金額を出してみます。厚生労働省によると、首都圏の政令指定都市であるさいたま市は各種物価や住居費が高い場所とされ、「1級地-1」です。級地は3級地ー2までの6段階に分かれます。
◇さいたま市の1人世帯の場合は
さいたま市では、家賃がかかっていれば、住宅扶助費として上限月4万5000円(1人世帯の場合、2人世帯は5万4000円)が支給されます。生活扶助費は1類+2類でおよそ7万9000円(1人世帯)。これは年齢や世帯人員で違います。単身者が暮らすために、住宅扶助と生活扶助で計約12万4000円程度が支給されます。
病気の人は、福祉事務所で医療券を発行してもらい、生活保護法の指定病院で受診する時にそれを見せます。いわゆる医療の現物支給です。
また、身体障害者手帳を持つ人は、1~2級で約2万6000円の障害者加算があり、子ども1人の母子世帯では約2万2700円の加算があります。妊産婦加算、冬期加算もあります。
その地域の生活保護基準は、その他に必要な生活サービスを規定する指標にもなっています。どの自治体も、生活保護基準を就学援助制度の基準や、非課税世帯の認定基準にしています。保護基準の1.2倍~1.3倍の収入しかなければ低所得世帯とみなされ、支援対象になります。いろいろな制度の根幹となるものとして機能しています。
◇役所では相談ではなく「申請」を
生活保護は原則、申請主義です。本人が自分で、もしくは同居の親族が窓口に行き、「困っています」と申請しなければなりません。申請が可能でない場合は福祉事務所による職権保護もあります。
申請の際にもっとも注意してほしいのは、窓口で「申請に来ました」とはっきりと伝えることです。「相談に来た」と言うと、相談扱いで追い帰されることがあります。
申請意思を伝えるのは口頭で構いません。意思さえ明確に伝えれば、役所は申請用紙を出すことになっています。「生活に困っています。どうしたらいいですか」ではなく、「生活に困っているので生活保護を申請します」と言ってください。
申請の際は、シャチハタではない印鑑を持っていってください。できれば預金通帳と、賃貸住宅に住んでいる場合は家賃額が分かる契約書も持っていきましょう。困窮度合いが分かる書類を持っていくと話が早い、ということです。
申請書を書くとき、職員から困窮の度合いと理由を細かく聞かれます。手持ち現金も聞かれます。資産がないことを証明するためです。自治体によっては、書類を持ち帰って、いろいろ調べて記入して持ってきてくださいというところもあります。聞き取りと記入に1時間、申請し終わるまで3時間ほどかかることもあるからです。
◇家や車を持っていても受給できる場合がある
現金や預金があると、受給に至らない場合があります。1カ月の生活扶助費7万9000円を超える現預金があると、使い切ってから申請してくださいと言われます。困窮しているかどうかの基準です。
例えば、病気や仕事を失って収入がなくなった人の銀行口座に10万円の預金があると、生活保護を申請はできますが、決定後、初月は10万円を除いて支給されます。口座の10万円が収入認定されるからです。
持ち家や車については、その時点で収入がないなら、保有していても当然に申請は可能です。資産をすぐには売却できないからです。場合によっては、受給後に売却して保護を停・廃止し、返還することもあります。
車がないと生活できない場所に住んでいたり、通院や保育に必要という理由があれば、継続保有が限定的に認められます。持ち家も処分価値が低く、住み続ける方が活用価値が高くなる場合は、保有が認められています。
虚偽申請が発覚すると、停廃止になることがあります。支給額の返還を求められたり、不正受給として刑事罰を受けたりします。当たり前ですが、正しい内容で申請をしてください。
中田宏氏「生活保護でパチンコ」おかしい
自分のカネで遊べ
2016.11.11 07
“人権派”曰く、生活保護費でギャンブルに興じるのは「人として当然の権利」らしい。だが、前・横浜市長の中田宏氏は「自由と権利」が一人歩きする日本社会の風潮を疑問視する。
* * *
「生活保護費でパチンコ」を禁じる地方自治体の試みが潰されたことをご存じだろうか。
大分県別府市は昨秋、市の職員らがパチンコ店などを巡回。生活保護の受給者を見つけたらまず口頭注意、複数回繰り返した場合は書面での警告を経て保護費の一部の支給を1~2か月間停止していた。大分県中津市も同様の手順を経て、パチンコなどで遊ぶ受給者の保護費の一部を1か月分、減額していた。
この対応に「当然だ」「よくやった」との声がある一方、「パチンコは個人の自由だ」「人権侵害につながる」と猛反発したのがいわゆる“人権派”の面々だ。結局、厚労省が「受給の停廃止は不適切」との方針を示し、今年度から両市はこの施策を中止した。
日本国憲法第25条は、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と定める。生活保護制度は国民にとって最後の砦で、重要なセーフティネットであることは言うまでもない。
だが、判例がないので私の価値観に基づいて言うが、パチンコが「文化的最低限度の生活」に必要とは思えない。私の基準では、金銭の増加によって精神的な満足を得る行為、つまりギャンブルは憲法第25条の範疇に入らない。ゆえに映画や演劇に保護費を使うのはOKだが、パチンコや競馬はダメであり、「馬の走る姿が美しい」などと訴えても、保護費で馬券を買った時点でアウトなのだ。
生活保護法が定める制度の趣旨は、諸々の理由で生活が困窮した人を保護し、その自立を支援することだ。だが、困窮の度合いに応じて支給される生活費をパチンコに投入すれば、さらに生活が困窮する可能性が高い。これは元々の趣旨にもとる行為ゆえ、遊ぶなら公金ではなく自分のカネで遊ぶべきである。
私は、「生活保護受給者にパチンコは必要ない」との考えは常識だと思っていたが、世の中には違う考えの人もいることを今回の件で痛感した。受給者のパチンコ禁止を「人権侵害」と難じる人々は、「権力=悪」という強い思想を持ち、権力による市民の行動抑制に徹底して反対する。個人の「自由」を最大限に尊重する立場の人々である。
そもそも、「自由と責任」、「権利と義務」はワンセットであるはずだが、戦後の日本では、自由と権利がひとり歩きする。「国民の権利及び義務」を定めた日本国憲法第3章には「権利」が16回、「自由」が9回登場するが、「責任」と「義務」は各3回のみである。これ以上、人権派を跋扈させないためにも、この点が今後の憲法改正のポイントとなるだろう。
この一件で腹立たしいのは、厚労省が「生活保護費でパチンコ」の是非について何の枠組みも提示せず、ただ「受給の停廃止は不適切」としたことだ。生活保護費の4分の1を負担する自治体がせっかく「けじめ」をつけさせようと頑張ったのに、国の事なかれ主義が自立支援の道を閉ざしたのである。
本来、困った人を助けるはずの“人権派”と国が生活困窮者の自立を損ない、「生活保護依存症」を生み出しているとしたら、実に皮肉な話ではないか。
【PROFILE】中田宏/なかだひろし。1964年生まれ。神奈川県横浜市出身。青山学院大学経済学部卒業後、松下政経塾に入塾。細川護熙氏、小池百合子氏の秘書を務めた後、衆議院議員に転身。2002年から2009年まで横浜市長を務めた。『改革者の真贋』(PHP研究所刊)、『失敗の整理術』(PHPビジネス新書)など著書多数。
※SAPIO2016年12月号
生活保護を受けている加藤さん(34歳女性)
加藤さん(仮名)は、埼玉県内で暮らしており、生活保護を3年ほど受給している。生活保護費は、月額約11万円。そこから4万4000円のアパート家賃を支払い、6万5000円程度で月々の生活を送っている。
近くのスーパーマーケットに夕方以降に向かい、安い食材がさらに割引になるタイミングで買い込み、自炊しながら暮らしている。ある日の食生活を見ると、わずかな食費で何とか食事らしい食事をとろうと工夫して、やりくりしている様子がわかる。
食費1日260円ほどの生活が毎日続くことを、あなたは想像できるだろうか。
趣味の本や雑誌を購入することや映画を観ることもできていない。しかし、「やれる範囲でやるしかないし、生活保護を受けることで自分らしく生きることができていると実感しています」と明るく話してくれた。
加藤さんは仲間に支えられ、現在、弁護士とともに、首都圏の裁判所でいわゆる生活保護裁判を闘っている。相手は厚生労働省だ。2013年から3回にわたり、生活保護における生活扶助基準が段階的に引き下げられている。2015年7月からは生活保護における住宅扶助基準も引き下げられた。さらに冬季に暖房費などの名目で支給される「冬季加算」も減額された。北海道や東北地方など、寒冷地の生活保護受給世帯は心細い思いをしていることだろう。
生活保護に対するバッシングや批判をきっかけにした、このような引き下げはもう止めてもらいたいと彼女は主張している。自分が将来に希望を見いだせた生活保護制度を「劣化」させることを防ぎたいというのだ。
生活保護の“二重取り”は許しません
大阪府警逮捕の容疑者計1169人の支給を停止、約7000万円の過払い防ぐ .....
2017.1.9
大阪府警が逮捕・勾留した容疑者のうち、生活保護費の受給や受給の可能性が判明したケースが、平成26年7月から昨年10月までに1644人に上ることが8日、府警への取材で分かった。
府警の独自制度に基づき容疑者情報を通知された大阪市と東大阪市では計1169人への支給を事実上停止し、勾留中の“二重の生活保護”を防いだ。
ただ、残る475人は府警との間に通知の協定がない自治体から受給していた可能性が高く、大半が逮捕後も不要な支給が続いていたとみられる。
府警の制度は、勾留中に公費で食事や医療を提供される容疑者に対する生活保護費の「二重支給」を防ぐのが目的。
勾留中の容疑者が受給しているとの情報があれば、府警が協定を結ぶ自治体に通知する。
自治体は支給方法を口座振り込みから窓口払いに変更するため、容疑者が勾留中は保護費を受け取れない仕組みだ。こうした制度は大阪以外にはないという。
府警などによると、生活保護費の受給率が全国トップレベルの大阪市では、26年7月から通知制度を試行し、昨年4月から正式実施している。
試行当初から昨年10月までの2年4カ月間に府警から計1170人分の情報が提供され、うち受給が確認できた1138人の支給方法を変更。少なくとも約6400万円の過払いを防いだ。
また、昨年1月から試行し、今年1月から正式実施に移った東大阪市でも、施行当初から昨年10月までに31人分の情報が伝えられ、少なくとも約250万円の過払いを食い止めた。
一方、今年1月から試行が始まった堺市では、26年7月から昨年10月までに106人分の受給情報があったが、府警との間に協定がなく、情報が伝えられることはなかった。
同様に受給情報を生かせず、支給が続いたとみられるケースがほかに369人分あったという。
堺市によると、受給者の逮捕・勾留の情報は従来、報道のほか、勾留後に戻った本人から直接聞き取るなどしか確認方法がなく、返還を求める作業も手間がかかっていた。
堺市の担当者は「これまでは受給者が警察に逮捕されても、大部分は知らずに支給を続けていた。今後は警察との連携で、無駄な支給をすぐ停止できるはずだ」と話す。
大阪府警の担当者は「実質的な二重支給を防ぐという制度の効果は大きい。府内の全自治体に制度を案内しており、今後は府内全域に拡大していきたい」としている。
小田原市役所「不正受給は人間のクズ」マグカップやボールペンなど作成
神奈川県小田原市の職員らが、生活保護の不正受給は許さないという趣旨の文言が書かれたジャンパーを着て、受給者の家庭を訪問していた問題で、職員らは、ほかにも同じような文言が入ったワイシャツやマグカップなどを作っていたことがわかり、市は不適切だとして、再発防止策を検討しています。
この問題は、小田原市で、生活保護受給者の支援を担当する職員らが、生活保護悪撲滅チーム」という言葉をローマ字で表したという「SHAT」や「不正受給をしようとする人間はカスだ」という趣旨の英語が書かれたジャンパーなどを着て、業務にあたっていたものです。
この問題について小田原市は9日会見し、これまでの調査結果を公表しました。
それによりますと、職員らはほかにも同じような文言が入ったワイシャツ、フリース、携帯電話のストラップ、マグカップ、パソコンのマウスパッド、Tシャツ、ボールペンを作っていたということです。
業務中に職員が使っていたほか、人事異動の際の記念品として作られたものもあったということです。
[MV] 스타쉽플래닛(Starship Planet) _ Love Is You
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