2018年4月まで !? ... #地域生活支援コーディネーターの配置はなぜ進まない!?
2016/11/02 17:00
国は、団塊の世代が75歳以上となる2025年を目途に、住まい、医療、介護、生活支援、介護予防が一体的に提供される「地域包括ケアシステム」の構築を進めています。
この地域包括ケアシステムは、「自助」「互助」「共助」「公助」の4つがそれぞれ密接に関わり合うことで機能します。
「自助」とは、自分のことを自分で管理することを意味し、配食や見守りなど市場からのサービス購入も含みます。
「互助」とは、ボランティアや住民組織の活動のことで、文字通り、お互いに助け合うことを指します。
「共助」は、「互助」と混同しがちな言葉ですが、介護保険に代表される社会保険制度のことを主に指し、国民全員が相互に助け合うこと、「公助」は、税金による高齢者福祉事業のことで、生活保護や虐待対策などが該当します。
少子高齢化や財政難から、「共助」「公助」の大幅な拡充を期待することは難しいのが現状です。
今後、地域包括ケアシステムを進めるにあたって、「自助」「互助」の割合が次第に高まると考えるのが自然でしょう。
コーディネーターは責任重大。地域の多様な参画者と協働する
2015年の介護保険制度改正では「地域包括ケアシステム」の構築に向けた「地域支援事業」の充実が明記されています。
ここには「互助」メニューの強化にあたる「生活支援サービスの充実・強化」が盛り込まれており、NPOや民間企業、協同組合などが参画し連携を図る「協議体」の設置と「生活支援コーディネーター(地域支え合い推進員)」の配置が2018年4月までに各市町村に義務付けられています。
地域包括ケアシステムの推進には地域包括支援センターの機能の働きが書かせません。
センターにおける生活支援コーディネーターは、高齢者のニーズとボランティアなどの地域資源とマッチングさせることで、生活支援を充実させることが主な役割です。
「生活支援コーディネーター(地域支え合い推進員)」(以下「コーディネーター」と表記)の役割は3つあります。
資源開発
地域に不足する高齢者向けサービスを発掘することが中心ですが、そのサービスの担い手を育成することも業務のひとつです。
ネットワークの構築
地域包括ケアシステムは行政だけでなく社会福祉協議会や地域住民など多様な参画者がいて初めて成り立つもの。ここで重要となるのが関係者間のネットワーク構築で、ここにコーディネーターが関与します。
ニーズと取り組みのマッチング
地域に不足するサービスを発掘し、然るべき事業者に繋げるという役割です。
このようにコーディネーターの業務は多岐に渡りますが、どのような人が資格を持っているのでしょうか。
和歌山県橋本市の生活支援コーディネーター設置事業実施要綱によると「社会福祉士又は社会福祉主事任用資格を有する者」「地域活動支援業務の経験年数が3年以上ある者」となっています。
身分は嘱託職員や臨時職員など市町村によってさまざまです。
なお、市町村職員のマンパワーの過多などにより、コーディネーター業務の全部または一部を然るべき外部団体に委託することができます。
兵庫県西宮市生活支援コーディネーター設置事業実施要綱では「この事業の実施主体は、西宮市とする。
ただし、事業の運営の全部又は一部を、西宮市社会福祉協議会に委託するものとする」と書かれています。
コーディネーターの配置により、介護サービスを“住民主体”に切り替える
今回、コーディネーターが誕生したのは、高齢者の生活支援サービスを“行政主体”から“住民主体”へと移行させるためです。
すでに市町村、社会福祉協議会、地域包括支援センターなど多様なプレーヤーが生活支援サービスを提供していますが、高齢者の激増に直面して、介護保険財政のひっ迫はもはや明らかです。
そこで、行政だけでは介護保険サービスを提供することが難しいため、住民を巻き込んだ新たなサービスの開発をコーディネーターが担うわけです。
コーディネーターを配置することで、地域にどのような変化が起こるのでしょうか。
ここでは「訪問型サービス」を例にとって説明しましょう。
下記の表を見てください。
厚生労働省の資料によると、訪問介護はサービスの内容により今後全5種類に類型化される予定です。
現行の訪問介護では、訪問介護員による身体介護、生活援助が基本です。
しかし、前述の通り、介護保険財政はひっ迫しており、サービスを持続的に提供できない状況です。
こうしたなか、生活援助サービスを中心に提供する「訪問型サービスA」や住民主体の自主活動として生活援助サービスを提供する「訪問型サービスB」へと政府は徐々に軸足を移そうとしています。
「訪問型サービスB」に至っては、サービス提供者が“ボランティア”となっており、「あまりにも無償労働に頼り過ぎではないか」という意見も出ています。
進まないコーディネーターの配置。業務負担があまりにも大きいという声も
前述の通り、コーディネーターの配置には2018年4月という明確な期限があります。
ところが、コーディネーターの人数を十分に確保できていない実態が明らかになりました。
例えば福島県。
県内には全部で59市町村あるものの、コーディネーターを配置できた市町村はわずか13市町村に留まっています(2016年8月現在)。
配置が進まない理由は主に二つあります。
一つは「業務内容がよくわからないこと」です。
高齢者を支援する組織といえば、社会福祉協議会や地域包括支援センター、NPO法人などがありますが、これらとコーディネーターの役割分担が明確でなく、“やるべきこと”が何かわからずに足踏みしている市町村が多いようです。
もう一つは「負担の大きさ」です。
コーディネーターは前述の通り、「地域包括ケアシステム」の構築に向けて活動を行いますが、「資源開発」や「ネットワークの構築」などコミュニケーション能力と専門性が求められる業務を担当します。
嘱託職員または臨時職員であるコーディネーターに、「そのような高度な業務を負担させるのはあまりにも酷。それでは人は集まらない」という声もちらほら上がっています。
コーディネーターを配置し、ボランティアに介護を担わせることで介護費用の膨張を抑える
とはいえ、期限があるコーディネーターの配置。
人材難に直面している市町村では、各県を通じて、コーディネーターの業務内容などを説明する研修会を実施、人材確保に躍起になっています。
厚生労働省によると、2016年度の介護保険の総費用は10.4兆円まで膨張しています。
高齢者人口の増大に伴い、今後も総費用は増加し続けるでしょう。
確かに、介護サービスを持続的に提供するためには、どこかで総費用を削減することが必要となるのは想像に難くありません。
介護報酬の引き下げなどにより、介護事業者を中心に“痛み”が出ていますが、本格化するのはこれからでしょう。
「施設から在宅へ」「地域包括ケアシステムの構築」という御旗のもと、“無償労働”を前提としたボランティアが介護の担い手となるのは時間の問題です。
こうしたなか、コーディネーターが的確に役割を果たせるのか、そして、配置が全市町村で済むのか、今後の展開を注視する必要があるでしょう。
DAY6(데이식스) "I Loved You" M/V
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