#成年後見制度の課題は? #利用促進法 #後見制度支援信託 【 #認知症介護 】

高齢者の約4人に1人が認知症またはその予備軍と言われています。

高齢化の進展に伴い、2025年には認知症高齢者は約700万人にまで増加する見込み。

認知症にかかると、判断能力の低下から買い物といった日常生活だけでなく、遺言などさまざまな法律行為に支障をきたすようになります。


認知症や精神障害などで判断能力が十分でない人の生活を支えるため、財産の管理や契約などを第3者が代わりに行う「 #成年後見制度 」。


成年後見制度は、大きく分けると、法定後見制度と任意後見制度の2つがあります。

「任意後見」は、元気なうちに任意後見契約を交わす、いわば“転ばぬ先の杖”の制度です。もう一方の「法定後見」は、判断能力が既に低下した際に申立てをするという、いわば“善後策”の制度です。

法定後見制度とは、ある人(以下「本人」といいます。)の判断能力が不十分な場合に、本人を法律的に保護し、支えるための制度です。

例えば、認知症高齢者、知的障害者、精神障害者等の方が預金の解約、福祉サービス契約の締結、遺産分割協議、不動産の売買等をする必要があっても、本人に判断能力が全くなければ、そのような行為はできませんし、判断能力が不十分な場合にこれを本人だけに任せていたのでは、本人にとって不利益な結果を招く恐れがあります。

そこで、精神上の障害によって判断能力が十分ではない方のために、家庭裁判所が援助者を選び、援助者が本人のために活動するものが法定後見制度です。

法定後見制度は、本人の判断能力の程度によって、次のように区分されます。

  (1)本人の判断能力が全くない場合→「後見」

  (2)本人の判断能力が特に不十分な場合→「保佐」

  (3)本人の判断能力が不十分な場合→「補助」

任意後見制度は本人が後見人を決め契約しますが、法定後見制度は家庭裁判所に後見開始および後見人選任の申立てを行い、家庭裁判所が後見人を決定します。

後見人は家庭裁判所に報告義務があり、その監督を受けます。

【後見】

「事理弁識能力を欠く常況にある」人、すなわち、日常の買い物も一人ではできない程度の人を利用主体とします。後見開始の審判がなされると、成年後見人が付されます。成年後見人は、法律上当然に代理権及び取消権があります。

分かりやすく言うと、後見人は本人に代わって本人の財産を管理し、本人のために介護サービス契約を締結するなど、本人の為に本人に代わって法律行為をする権限が与えられています。また、本人(成年被後見人)がした行為は、日常生活に関するものを除き、すべて取り消すことができます。例えば、本人が不動産を購入しても、それを後から取り消すことができるわけです。

【保佐】

「事理弁識能力が著しく不十分な」人、すなわち、日常の買い物はできても、不動産の売買など重要な取引行為は一人ではできないというレベルの人を利用主体とします。保佐開始の審判がなされると、保佐人が付されます。

保佐人には民法で定められた特定の法律行為についてのみ同意権・取消権があります。例えば、本人(被保佐人)が不動産など重要な取引行為をするには保佐人の同意が必要となり、同意なく行った場合は取り消すことができます。同意という手段で不利益な取引を予防し、取消しによって不利益の回復を図るものです。

また、家庭裁判所の審判を通じて、保佐人に「特定」の法律行為について同意権・取消権を追加したり(同意権拡張の審判)、「特定」の法律行為について代理権を付与することができます(代理権付与の審判)。なお、同意権拡張の審判や代理権付与の審判を受けるには、本人の同意が必要となります。

【補助】

「事理弁識能力が不十分な」人、すなわち、不動産の売買など重要な取引行為を一人でするには不安があるという程度の判断能力の人を利用主体とします。

補助開始の審判がなされると補助人が付されますが、補助人には、当然には同意権や代理権がありませんので、家庭裁判所の審判を通じて、補助人に「特定」の法律行為について同意権や代理権を付与することになります(同意権付与の審判、代理権付与の審判)。

なお、補助開始の申立てをする際はもちろん、補助人に同意権や代理権を与えるには、その内容につき本人の同意が必要になります。つまり、被補助人は、まだ判断能力が多く残っているので、本人に対する援助の範囲を本人が選択できるのです。


成年後見制度は、判断能力が不十分なために、財産侵害を受けたり、人間としての尊厳が損なわれたりすることがないように、法律的部分や財産管理を中心とした生活面で本人を支援する身近な仕組みです


判断能力が既に衰えた後に利用する制度として「法定後見制度」がありますが、これは、本人の判断能力の低下具合(本人保護の必要性)によって「補助」・「保佐」・「後見」の三つの利用形態に分かれます。


以下にこの3つの利用形態ごとの法定後見人としての権限を分かりやすく簡単にまとめます。

1)後見人

   財産に何する全般的な代理権

     +

   取消権

2)保佐人

   民法第13条1項に記載された重要な法律行為の同意権

     +

   本人が同意し、家裁が認めた一定の法律行為の代理権

3)補助人

   本人が同意し、家裁が認めた民法第13条1項の一部の同意権

     +

   本人が同意し、家裁が認めた一定の法律行為の代理権


※上記3つの利用形態に共通する例外として下記の事項が挙げられます。

◆本人と法定後見人との利害が相反する行為には、法定後見人に代理権はありませんので、家庭裁判所に特別代理人選任申立ての手続きをする必要があります。

◆居住用不動産(自己所有物件・賃貸物件含む)の処分には、事前に家庭裁判所の許可が必要です。

◆日常生活に関する行為(スーパーでの買い物等)については、法定後見人でも取り消すことはできません。


成年後見人は家庭裁判所が、高齢者の状況に応じて適任者を選任します。

成年後見人は、高齢者本人の親族以外でも、弁護士や司法書士、社会福祉士といった法律、福祉の専門家のほか公益法人などの法人が選任されることもあります。


制度創設から約15年が経過し、徐々に認知度は高まっているものの、利用件数を見るとそれほどの伸びが見られません。


ドイツほか海外諸国では成年後見制度は一般的なもの。
日本では、なぜ成年後見制度が広まらないのでしょうか。


介護保険制度と同じ2000年度からスタートしたもので、その存在は少しずつ知られるようになってきている。

高齢化などで社会が大きく変化し、日々の自立した暮らしに困難を抱える人が増加していくなかで、制度により多くの役割を期待する声も強くなってきた。


こうした状況を踏まえた新たな動きがある。

今年4月、議員立法による「利用促進法」が国会で成立した。


使い勝手を改善して広く普及させる改革を、総合的かつ計画的に進めていくよう政府に求めるものだ。

地域で後見人を担う人材を育成・確保したり、本人が医療や介護をよりスムーズに受けられるようにしたり、家庭裁判所の監督体制を強化したりする必要があるとして、有効な対策を展開するよう促している。

成年後見制度の「利用促進法」の施行は普及の一手となるか!?

認知症高齢者が700万人を超える2025年までの道のりは険しく…


2015年の成年後見関係事件(後見開始、補佐開始、補助開始及び任意後見監督人選任事件)の申立件数は34,782件。

このうち、後見開始の審判の申立件数は27,521件でした。

前年比で6件増加したものの、2012年の28,472件よりも約1,000件減少しています。

この間、高齢者は確実に増加していますが、成年後見制度の利用件数は低迷しているとわかります。

申立人は、高齢者本人の子が最も多く全体の約3割を占めています。

次いで、市区町村長17.3%、高齢者本人の兄弟姉妹13.7%となっています。

市区町村長が申し立てたものは5,993件。

前年は5,592件で対前年約400件増加しています。

市区町村長による申立が増えている背景には、一人暮らし高齢者の増加や核家族化、高齢者の貧困化などがあります。

成年後見制度を利用したくても、身近に申し立てる親族がいなかったり、申立経費や後見人の報酬を負担できないなどさまざまな理由が高齢者にはあります。

そうした高齢者のために、特に必要があるとき(親族がいない場合や虐待などの理由により親族による申立が不適当な場合など)は市区町村長が申立できるようになっています。

申立の動機は「預貯金等の管理・解約」が28,874件とダントツに多い結果に。

次いで「介護保険契約(施設入所等のため)」が11,588件、「身上監護」が8,951件となっています。

成年後見人と本人との関係をみると、配偶者、親、子、兄弟姉妹およびそのほか親族が成年後見人に選任されたものが全体の約3割で対前年比6%減。

一方、親族以外の第三者が成年後見人に選任されたものが7割を占め、弁護士が8,000件、司法書士が9,442件、社会福祉士が3,725件となっています。

3者いずれも対前年比では8~15%増となり、親族以外の第三者が成年後見人に選任されるケースが増えています。

市民後見人の育成や成年後見制度の体制充実を目指した「利用促進法」が施行

今年5月、議員立法による「成年後見制度の利用の促進に関する法律」(通称「利用促進法」)が施行されました。

この法律は、成年後見制度の利用の促進のために不可欠な基本理念などを定めています。

ここでは、この法律が施行されたことによって期待できることを述べていきます。

基本理念は

「成年後見制度の理念の尊重」

「地域の需要に対応した成年後見制度の利用の促進」

「成年後見制度の利用に関する体制の整備」の3つ。

私たちの生活に特に影響が大きいと考えられるのは「地域の需要に対応した成年後見制度の利用の促進」と「成年後見制度の利用に関する体制の整備」です。


成年後見人

前者では、「市民後見人」の確保、育成を掲げています。

判断能力が衰えた高齢者が激増するなか、弁護士や司法書士、社会福祉士などの専門職だけでは増え続ける成年後見需要には対応できないと政府は考えており、これまで中途半端であった「市民後見人」の育成に本格的に乗り出す方針です。

市民後見人向けの研修を増やすことや自治体、社会福祉協議会、専門職などが協働し、市民後見人を支援することも想定されています。


後者では、「体制の整備」について言及。

高齢者を守るべき存在である弁護士や司法書士などの専門職が成年後見制度を悪用する事件が相次いでいることから、裁判所や行政、リーガルサポートなどの民間団体が密接に関わることを求めました。


施行後2年以内に、内閣総理大臣を会長とする「成年後見制度利用促進会議」および「成年後見制度利用促進委員会」が設置される予定。


ここでは、成年後見制度利用促進のための「基本計画案の作成」などが検討されます。

そして、政府において基本計画が策定された後、各市区町村においても地域の実情に応じて基本計画が策定されることなります。


超高齢社会を見越して、自治体レベルでも市民後見人を養成

2015年、高齢者人口が300万人を突破した東京都。

東京都内における成年後見申立件数は約35,000件(2011年)となり、年々利用実績は伸びています。

そこで、2005年に創設されたのが「 #東京都後見人等候補者養成事業 」。

来る超高齢社会において、成年後見人が不足すると見て、いち早く市民後見人の育成に乗り出した格好です。


この事業における後見人等候補者とは、「弁護士等の資格は有しないが、社会貢献的、ボランタリーな精神に基づき、後見人等の職務を全うするために必要な知識や技量、姿勢を身につけた上で、後見人等の候補者となる方」と定義されています。


日常生活の監護が主業務で、高額な財産の管理や親族間の紛争など専門性が求められるものは、業務範囲外となっています。

公募にて候補者を集めた後、年1回計5日間の基礎講習を実施、実習活動と家庭裁判所の審判を経て「社会貢献型後見人」として選任されることになります。

2005~2013年の基礎講習終了者の累計は590名。

年々基礎講習終了者は増加しており、今後の展開が期待されます。

認知症高齢者が激増するなか、弁護士などの専門職だけでなく市民後見人の活躍が望まれますが、解決すべき課題は山積です。


市民後見人が活躍するためには、養成後のバックアップ体制の整備が不可欠です。

現在、弁護士などの専門職によるフォローが行われているものの、地域により温度差があることは否めません。


また、「市民後見人はボランティア」とうい考え方に対して疑問を持つ人もいます。

市民後見人の報酬は、「無」または「低額」が前提。

しかし、今後もそれでよいのか、議論する必要があるでしょう。

実際、世田谷区後見支援センターは家庭裁判所に対する報酬付与を認めています。


成年後見制度は今、どのような課題を抱えているのか。

新たな法律のディテールはどうなっているのか。

介護職はどのように関わっていけばよいのか。

普及・啓発の活動や後見人の後押しなどを行う「成年後見センター・リーガルサポート」西川浩之専務理事が解説する。


旗振り役が不明確、制度が使いにくい


 ーー 制度の利用があまり進んでいないと聞きました。

そうですね。例えばドイツ。

8000万人超の人口に対して、同様の制度を使っている人はおよそ150万人だそうです。

日本の人口は今、1億2500万人くらいでしょうか。それで利用者は20万人に達していません。

ケタがひとつ違うんですね。

認知症の高齢者はすでに500万人を超え、2025年には700万人に達する見込みです。

もちろん、認知症の方すべてが利用するわけではないのですが、20万人弱というのはあまりにも少ないんですね。


 ーー どうしてでしょう?

幾つか指摘されているのですが、ひとつは旗振り役が明確でないということですね。

同じ方向を向いて積極的に推進していこう、という体制を国としてしっかり取れていません。

法務省の所管する制度ですから、高齢者や障害者のサービスを多く担っている厚生労働省などが、働きかけをやや遠慮している面もあるかと思います。

まぁ、どの役所も日頃からかなり忙しいですから、ある程度しょうがないのは分かりますが...。

縦割り行政の弊害というか、うまく足並みが揃っていないというか、そういう見方もできるでしょう。


 ーー 中心となる組織や役割分担がはっきりしていないんですね。

制度の使いにくさも要因でしょう。

例えば、法律の中身と実際のニーズのミスマッチがあります。


後見人の職務は基本的に、財産の管理と契約などの法律行為の代理。

医療に関する同意や身元保証・引受け、葬儀も含めた死後の様々な対応などは、本来的な役割ではありません。


もちろん、現場の方は様々な形で努力されていますよ。

でもやっぱり、家族のように何でも幅広くというわけにはいかないんですね、ルール上。

実際に必要性があったとしても、その全てに素早く対応できるわけではありません。

融通がきかない、大事なところであまり役に立たない、と言われてしまうこともあるんです。


 ーー 今のルールが良くないということですか?

制度に対する基本的な考え方の違いもありますよね。

もともと家の財産を守る仕組みとして始まったものが、時代の流れとともに少しずつ個人の権利一般を守るという趣旨に変わってきた経緯があります。

この制度で福祉的なニーズをどこまでカバーできるのか、あるいはすべきなのか。

これは議論のあるところで、有識者の間でも見解の相違があるんです。

今でも大きなコンセンサスができたとは言えない状況で、全体がいまいちまとまらない理由のひとつになっています。



家裁はパンク状態 監督体制が不十分


 ーー 制度を利用すると本人の権利が制限されることもあると聞きました。

それも使いにくさの要因です。

いわゆる「欠格条項」ですね。

実際に後見人をつけた人には、介護福祉士や医師、公務員、弁護士などの資格を認めないというルールが残っています。

そもそも財産の管理すらできないのだから、職務に欠かせない判断力も十分なレベルに達していないはずだとみなされているんです。

実際に仕事を失った地方公務員の男性が提訴する事態も起きました。

制度を利用しなければ特に問題がなかったのに、利用したらかえって不利益を被ってしまう。そうしたことも現実に起きているんです。


 ーー 後見人による不正も発覚しているようですが。

親族による財産の搾取が多く、中には専門職が横領を行うケースも報告されています。

ここでは監督の権限を持つ家庭裁判所が抱えている問題を指摘しなければなりません。

パンク状態なんです。

どこもすごく頑張っているんですけど、仕事が増えすぎて十分にこなしきれていない。

制度ができた当初から、監督の体制をきちっと整備しなければいけないと言われてきたのですが、16年たった今も依然として不十分なまま...。

マンパワーや予算を少し充実させる程度では、おそらく焼け石に水でしょう。


 ーー 家裁も厳しい状況なんですね。

ですからまぁ、ここまでいろいろと言ってきましたけど、制度が十分に活用されてこなかった原因を一言でまとめるとするなら、公的な推進体制が不十分だからということになるでしょう。

幅広く利用してもらうために必要な仕掛けや環境を、国としてきちんと用意してこなかった。なので使いにくい。それが大きな要因だろうと考えています。

司令塔を明確化 3年以内に具体策


ーー そこで「利用促進法」が成立しました。

はい。この法律では、内閣総理大臣をトップとする「利用促進会議」を設置して主導させるとしており、司令塔を明確に位置付けています。

ここで指針となる「利用促進基本計画」を策定し、その内容に従って取り組みを一体的・総合的に進めていくことになりました。

制度の使い勝手を上げる施策を政府が牽引して展開し、それぞれが連携して普及の拡大に努めようということですね。

計画をつくるにあたっては、有識者で組織する「利用促進委員会」へ諮問する決まりになっていますので、詳細な議論はここで行われます。

具体策は原則として3年以内を目処に講じる、という期限も設けられました。


 ーー まずは政府のイニシアチブや意思決定の仕組み、推進体制をはっきりさせた、ということですね。

利用を促進していくうえでの基本理念も3つ掲げています。ひとつ目は「制度の理念の尊重」。


ここでは「理念」として、


・ノーマライゼーション


・自己決定権の尊重


・身上の保護の重視


の3本柱を位置付けています。

ただ単に利用者を増やすだけでなく、これらを貫徹する制度に育てていくということですね。

本人の権利が制限されないようにする具体的な手段や、医療・介護をもっとスムーズに受けられるようにする支援のあり方、本人が亡くなった後の後見人の仕事の範囲などについて検討し、法制上・財政上の措置をとることとされました。


市民後見人を地域で支え、育てる


 ーー ふたつ目は?

「地域の需要に対応した利用の促進」です。

住民への情報提供や相談の対応などにも触れていますが、後見人になる人材の確保が特に重要な要素と言えるでしょう。


 ーー やはり担い手は足りないのでしょうか?

例えば司法書士は今、全国に2万2000人くらいいます。

皆それぞれ仕事を抱えていますので、成年後見業務との関わり方には濃淡があるんですね。

社会貢献の一環として本業の合間に少しだけ、という人も少なくないんです。

弁護士や社会福祉士、精神保健福祉士などにも頑張っている方はいますが、件数としてはそれほど多くない。

認知症の高齢者は既に500万人超ですかね。

1人暮らしの人はさらに増えていくわけですし、専門職は全然足りていないんです。

「市民後見人」もまだまだこれからの仕組みです。


 ーー 大きな課題と言えそうですね。

医療行為の同意や身元保証・引受け、葬儀も含めた死後の対応など、法律にもとづくルールがない役割を期待されることも影響しています。

いくらできないと言っても、やっぱり無視して放っておくわけにもいかないですから、何らかの形で関わらざるを得ない。

結果として負担が非常に重くなるんですね。その人の一生を背負うような責任がかかることにもなりますので、躊躇してしまう人だって当然いますよね。


 ーー 荷が重いと感じても不思議ではないです。

今後の検討に期待しましょう。

今回の法律では、市民後見人の育成に力を入れていく方向性も示されました。

研修の機会を増やすことなどが想定されています。

自治体や社会福祉協議会、専門職などが適切に関わり、市民後見人をバックアップしていく体制が非常に重要となるでしょう。

市民後見人を地域で支え、育てていく仕組みが、今はまだあまり普及していません。

親族の後見人を務めた経験がある人に、別の人の市民後見人になってもらうという発想もあります。

こうした取り組みを通じて、地域を支える人材の層が厚くなっていけばよいのですが。


 ーー 市民後見人を地域で支える仕組み...。なるほど。

そのほか、専門職への報酬も検討課題とされています。

もちろんこれは儲かるようにしようという話ではありません。

もう少し助成を出して、赤字やタダ働きにならない環境をきちんと用意していかないと、より多くの人が関わるようになりませんよね、実際。


「利用促進会議」の活躍に期待


 ーー 基本理念の3つ目は?

「体制の整備」です。

制度を運営していくにあたって、裁判所や行政、リーガルサポートのような民間団体などが密接に連携することとされました。

後見人の仕事の監督も、家裁に任せきりにはしないということですね。

「人的体制の整備その他の必要な措置を講じる」と記載されました。

横領のような不正が発覚していますので、高齢者がこれ以上搾取されないようにしなければいけません。


 ーー 今後、制度は良い方向に向かっていくでしょうか。

まだ分かりません。全く変わらないかもしれないし、劇的に変わっていくかもしれない。

私は「利用促進委員会」がカギを握ると思います。

具体的な議論を行うところなので、その役割はとても大きいんですね。

政府への答申がどんな内容になるのか。

これだけの課題があるなかで3年という期限もありますし、しっかりした人選・体制が必要になるでしょう。今後の動向を注視していきます。

「良い関係をつくれば良い支援ができる」


 ーー 現場の介護職は、この制度とどのように関わっていけばよいのでしょうか?

日頃から本人と接する中で様々なことを感じているでしょうから、ぜひ後見人をうまく活用していただきたい。

課題の解消につながることもあるはずです。

後見人がつくと、周りの人がサーっと引いていってしまうこともあるんですよ。

そうではなくて、色々と話していただければ。

我々の立場からすると、やはり情報が欲しいんですね。

介護職と後見人が良い関係を築ければ、より良い支援ができるのではないでしょうか。

とりわけ、多くの情報を持っているケアマネジャーは重要です。

ケアマネさんとうまく連携できないケースは、いつもかなり苦労するんですね。

★後見業務はかなりの手間と労力が掛かります。
それでいて無報酬・低報酬では、やっていられなくなり、「魔」も指し易くもなるでしょう。


どんなに必要な制度・仕組みでも、しっかりとしたバックアップや適宜な報酬が伴わなければ、浸透せず悪用され易く、それゆえに利用者候補は二の足を踏むと思います。
「専門職後見人には「失うものがある」という、最後のブレーキがあります。」
元業界さんが仰る通りかと。
父の後見をして頂いた弁護士さんは、法律事務所の代表かつ大学や警察学校で教鞭を取っており、
不正を働き発覚した際の「失うもの」が大きい方でした。
そこを見込んで依頼した、という事もありますが、誠実な後見業務を行って下さり、とても助かりました。


★民間に任せるよりも、行政、市役所等に専門部署を作って対応してほしい


役所の業務の一つとして市町村の職員が行ってくれた方が、講習を受けただけの民間人に任せるよりも余程信頼できると感じる。
というか、よく分からない人に財産管理を任せるなどあり得ないし、そうせざるを得ない状況に追い込まれている人の状況は深刻だと思う。


★親族が成年後見人に選任されてその親族が報酬の請求をしなければ費用は発生しませんが、成年後見人は決して楽な仕事ではありませんので、弁護士などの専門家が選任されれば毎月一定の報酬を支払うことになります。

財産にもよりますが、東京弁護士会では月2万円だそうです。

 ロクでもない親族が使い込むことが多く、裁判所が親族を後見人にしたがらないケースが増えている

◆平成23年-311件-33億4000万円
◆平成24年-624件-48億1000万円
◆平成25年-662件-44億9000万円
悲しいことですが、裁判所が発見した、後見人に財産をかすめ取られていた被害の件数と金額です!
 専門職後見人には「失うものがある」という、最後のブレーキがあります。業務停止等の懲戒処分を受けた場合の損失は数百万円どころではありません。横領したところで、割に合わないのです。それでも犯罪を犯す先生もいらっしゃいますが。

高齢者の財産不正防止に一定の効果。大きく注目される「 #後見制度支援信託 」とは?

2016/09/11 12:00

認知症高齢者の財産を守る成年後見人。

しかし、その不正が目立つことから「後見制度支援信託」を利用するケースが増えているとのことです。

お金を引き出すためには裁判所の許可が必要になるため、昨年2015年は結果として預貯金を着服する不正件数や被害額が半減しました。


この「後見制度支援信託」は、認知症などで判断能力が衰えた高齢者に代わり、親族などが成年後見人として財産を管理する場合、現金を銀行に信託するというもの。

たとえば、生活費を定期的な銀行口座に振り込むことは可能ですが、医療機関への入院や介護施設への入所、在宅介護のためのリフォームなどで、数十万円から数百万円のまとまったお金を引き出すには、家庭裁判所による許可に基づいた指示書が必要となります。


2012年に取り扱いを開始した時点では、98件・約42億円と発表されていましたが、不正に財産を使い込む事例が目立つようになってから、全国の家庭裁判所が利用を促していき、2014年は件数にして2,764件・約1,009億円、昨年2015年は6,563件・約2,209億円に急増。

成年後見人による不正な財産着服は2014年の831件から昨年2015年は521件まで減少。

被害額も半額程度にまで抑えられたことから、最高裁判所では一定の抑止効果があったと見ています。

大手の信託銀行だけではなく、今年2016年7月末から千葉銀行が地方銀行で初めて「後見制度支援信託」の取り扱いをスタート。

少しずつ広がりつつあることがわかります。

さらに同制度の周知が進んでいけば、高齢者の財産の保全も安全に使うことができるのではないでしょうか。

成年後見制度の利用促進へ有識者会議が始動 政府、年度内に施策を閣議決定へ

2016.9.26

判断能力が十分でない高齢者らの財産管理などを第3者が担う「成年後見制度」。

その利用の促進に向けた協議を行う有識者会議の初会合が、23日に内閣府で開かれた。

不足している後見人の確保や不正の防止など、山積する課題の解消につながる施策の立案に取り組む。年内に政府への提言をまとめる。


成年後見制度の利用者は、昨年12月の時点で約19万人。

認知症の高齢者が500万人超にのぼるなか、十分に活用されているとは言えないのが実情だ。

また、後見人が横領などに手を染めてしまうケースも報告されており、対策を講じて信頼性を高めることが求められている。


今年4月、議員立法による「利用促進法」が国会で成立。

首相をトップとする「利用促進会議」で改革の指針となる「基本計画」を定め、各省庁が連携してその遂行にあたることとされた。

「旗振り役が曖昧」「司令塔が不在」といったこれまでの批判を踏まえ、政府のイニシアチブを明確にした形だ。


政府は「基本計画」の策定にあたり、有識者などで組織する「利用促進委員会」の意見を聞く。

23日に始動した会議だ。出席した加藤勝信担当相は、「来年度から利用促進に本格的に取り組む。

集中的に検討して欲しい」と要請。今年度末には「基本計画」を閣議決定する意向も示した。

この日の会合では、地域のニーズを正確に把握したりPRの効果を高めたりする方策が論点にあげられた。

後見人の担い手については、住民などが務める「市民後見人」を育てていくことが重要なテーマとなる。

自治体などによる支援策も俎上に載る予定。

このほか不正の防止策では、

・家庭裁判所の体制の強化

・金融機関などとの連携のあり方

・福祉の現場で得られる情報を不正の発見へつなげる仕組み

などが話し合われる。

政府は今後、ワーキンググループを設けて詳細な議論を深めていく方針だ。

成年後見制度の利用促進へ有識者会議が始動 政府、年度内に施策を閣議決定へ of 介護のニュースサイト Joint

2016.9.26 ,likebtn,,{"twitter":true,"facebook":false,"mixi":false,"google":true,"mixikey":"","hatena":true,"pocket":true,"linkedin":false,"line":true,"tumblr":false,"pinterest":false,"sortItems":["twitter","facebookShare","google","line","pocket","hatena"],"facebookShare":true}判断能力が十分でない高齢者らの財産管理などを第3者が担う「成年後見制度」。その利用の促進に向けた協議を行う有識者会議の初会合が、23日に内閣府で開かれた。不足している後見人の確保や不正の防止など、山積する課題の解消につながる施策の立案に取り組む。年内に政府への提言をまとめる。 成年後見制度の利用者は、昨年12月の時点で約19万人。認知症の高齢者が500万人超にのぼるなか、十分に活用されているとは言えないのが実情だ。また、後見人が横領などに手を染めてしまうケースも報告されており、対策を講じて信頼性を高めることが求められている。  今年4月、議員立法による「利用促進法」が国会で成立。首相をトップとする「利用促進会議」で改革の指針となる「基本計画」を定め、各省庁が連携してその遂行にあたることとされた。「旗振り役が曖昧」「司令塔が不在」といったこれまでの批判を踏まえ、政府のイニシアチブを明確にした形だ。 政府は「基本計画」の策定にあたり、有識者などで組織する「利用促進委員会」の意見を聞く。23日に始動した会議だ。出席した加藤勝信担当相は、「来年度から利用促進に本格的に取り組む。集中的に検討して欲しい」と要請。今年度末には「基本計画」を閣議決定する意向も示した。 この日の会合では、地域のニーズを正確に把握したりPRの効果を高めたりする方策が論点にあげられた。後見人の担い手については、住民などが務める「市民後見人」を育てていくことが重要なテーマとなる。自治体などによる支援策も俎上に載る予定。このほか不正の防止策では、 ・家庭裁判所の体制の強化 ・金融機関などとの連携のあり方 ・福祉の現場で得られる情報を不正の発見へつなげる仕組み な

介護のニュースサイト Joint

0コメント

  • 1000 / 1000