変わる介護施設(1)!!! 介護療養に生活機能をプラスした施設類型を新たな介護保険施設の1つに。

介護療養病床や4対1看護配置などを満たさない医療療養の新たな移行先について、「医療内包型」施設を介護保険施設の新類型として創設し、「医療外付け型」施設を、医療機関と介護保険の特定施設などとの併設を認める―。


 26日に開かれた社会保障審議会の「療養病床の在り方等に関する特別部会」で、厚生労働省はこういった素案(叩き台)を提示しました。


 内包型施設は、入所者像に応じて

▼重篤な身体疾患を有する者・身体合併症を有する認知症高齢者などが入所する施設(I型)

▼容体が比較的安定している者が入所する施設(II型)―に分けられ、

「介護老人保健施設」

「介護療養型老人保健施設」

「新たな医療内包型施設のII」

「新たな医療内包型施設のI」という具合に、医療の必要度に応じた分かりやすい施設体系・区分となることが想定されます。


医療内包型の新施設、入所者の状態に応じて2類型を想定

 まず医療内包型施設について見てみましょう。

「療養病床の在り方等に関する検討会」で打ち出された、医療内包型の新類型(案1-1、案1-2)について、骨格をより明確にしたものです。


【案1-1】【案1-2】【案2】の機能を図示したもの。全く新たな施設類型である【案1-1】【案1-2】については、【案2】などとの組み合わせ(居住スペース)になる形態が多いのではないかと厚労省は見込んでいる


 施設の基本的性格は「要介護高齢者の長期療養・生活施設」とされ、介護保険施設の1類型となる見込みです。

現在、介護保険法では第5章第5節「介護保険施設」として、第1款「介護老人福祉施設」(特養ホーム)と第2款「介護老人保健施設」が規定されており、第3款として新類型が位置づけられることになりそうです。


 もっとも医療を提供するため、医療法の第1条の2第2項に規定される医療提供施設の中に、新類型も位置づけられることになるでしょう。

厚労省大臣官房の濵谷浩樹審議官(医療介護連携担当)(医政局、老健局併任)は、「現行の介護療養に生活機能をプラスアルファした施設」と大きなイメージを説明しています。


 医療内包型の施設は、入所者の状態に応じて2つに区分されます。

もちろん、それぞれの利用者像は「主に入所する者」をイメージしたもので、例えば【I型】施設から軽度者が退所しなければならないということにはなりません。


【I型】重篤な身体疾患を有する者・身体合併症を有する認知症高齢者など(現在の療養機能強化型A、Bに相当する者)が入所する施設


【II型】I型と比べて、容体が比較的安定した者が入所する施設


 それぞれの入所者像に照らして、厚労省は【I型】では介護療養病床相当(医師48対1・3人以上、看護6対1、介護6対1)、【II型】では老健施設相当(医師100対1・1人以上、看護・介護3対1・うち看護は7分の2以上)という施設基準を満たすことが必要ではないかと考えています。

もっとも、これらは最低基準であり、今後、介護給付費分科会などでより厳しい人員・設備基準(例えば療養機能強化型Aなどを勘案)が設定される見込みです。


 なお厚労省老健局老人保健課の鈴木健彦課長は、

「介護療養型老健施設(転換型老健)は、夜間の人員配置基準を既存の老健施設よりも手厚く設定した。

今回の【II型】は、療養機能強化型A、Bまではいかないものの介護療養型老健よりもさらに医療の必要性が高い方の入所を想定している」と説明しています。

ここから、

「介護老人保健施設」

「介護療養型老人保健施設(転換型老健)」

「新たな医療内包型施設II型」

「新たな医療内包型施設I型」という具合に、入所者の医療の必要性に応じた、分かりやすい施設体系が整備されることが期待されます。


 また入所期間の長期化を踏まえて生活機能を重視し、

【I型】【II型】の双方とも老健施設相当の「1床当たり8.0平米」といった面積基準が設定されることになりそうです。

ただし、現行施設からの円滑な転換を促すため、大規模修繕までは「6.4平米の多床室」も認められる見込みです。

 さらに介護保険施設の1類型であることから、

低所得者対策である補足給付(食費、居住費の一部が保険給付される)の対象となります。


なお同一施設の中に【I型】と【II型】の併存を認めるかについては、まだ議論されていませんが、現在の診療報酬や介護報酬の設定を見ると、どちらかを選択することになりそうです。



医療外付け型施設、医療機関と特定施設などとの併設を想定


 次に「医療外付け型」施設を見てみます。

これは「療養病床の在り方等に関する検討会」で示された外付け型の案2に相当し、「医療の必要性は多様だが、容体が比較的安定した者」が入所対象と想定されています。

【案1-1】【案1-2】【案2】の機能を図示したもの。全く新たな施設類型である【案1-1】【案1-2】については、【案2】などとの組み合わせ(居住スペース)になる形態が多いのではないかと厚労省は見込んでいる


 こちらは新しい施設類型を正面から認めるものではなく、「医療機関」と「居住スペース」の同一建物内での併設を認めるという形になりそうです。

例えば看護配置4対1を満たせない医療療養が、一部病棟を居住スペースにし、残りの病棟に人員を集約して看護4対1を満たせるようにする、といったイメージです。


 このうち「居住スペース」について厚労省保険局医療介護連携政策課の黒田秀郎課長は「介護療養からの転換となれば、入所者は要介護度4・5などの重度者である。そうした方にふさわしい居住スペースが必要である」とし、特定施設入居者生活介護の指定を受ける有料老人ホームなどを想定していることを明らかにしています。


 居住スペースについてはさまざまな形態が考えられますが、有料老人ホームなどの介護保険施設以外の類型を併設した場合には、低所得者に対する補足給付の対象とはなりません。

また「個室」であることが必要となっていますが、委員から「多床室」を求める声も少なくないため、今後さらに議論されることになります。



医療外付け型では、同一建物内でも医療機関と居住スペースの併設を認めることになる


新施設などへの移行期間をどの程度に設定すべきか


 介護療養などの開設者は、自院の入所者像(現在および将来)を十分に把握した上で、これらの施設類型や医療療養・介護療養型老健などを含めて、転換先を選択することになります。

 介護療養などの設置期限は2018年3月までですが、報酬水準や詳細な施設基準は直前の2017年2月(介護報酬改定)まで固まらないため、一定の経過措置が設けられることになります。

黒田医療介護連携政策課長は「第7期介護保険事業計画(2018、19、20年度)の3年間を活用して移行を進めてはどうか」と考えていますが、鈴木邦彦委員(日本医師会常任理事)は、「円滑な移行を進めるためには、介護療養などの開設者が自主的に転換することが重要である。そのため、3年後に再度検討し、さらに3年間、都合6年間の経過措置が必要である」と強調しています。



介護療養などから新類型に転換する場合でも、一定の転換のための経過期間が必要となり、厚労省は介護保険事業計画期間となる「3年」を一つの目安にしていると考えられる


 なお、看護配置4対1を満たさない医療療養についても、2018年3月で設置根拠が切れるため、こうした選択肢を含めた検討が必要となります。

ただし、看護配置4対1を満たさない医療療養については、「診療報酬の25対1療養病棟入院基本料をどうするのか」といったテーマとも密接に関連する問題があり、特別部会で議論を行うものの、最終決定は中央社会医療協議会で行われることになります。



25対1医療療養の最終結論は、中央社会医療保険協議会で得ることになる


一般病床からの転換や新設を認めるべきか、将来に向けて避けられないテーマ


 26日の特別部会では、こうした厚労省案に明確な反対は出されていません。もっとも経過措置などについて注文がついており、さらに具体的な姿を年末にかけて描いていくことになりそうです。

 委員から出された注文としては、「実際の転換は経過措置期間中に行うことでよいが、転換への意思表明をより早い段階で求めてはどうか」(田中滋委員:慶應義塾大学名誉教授)、「介護療養からの転換を優先した上で、一般病床などからの転換も検討すべき」(加納繁照委員:日本医療法人協会会長)などが目立ちます。


 とくに後者の「一般病床などからの転換」については、今後、必ず検討しなければいけないテーマとなります。

濵谷審議官は「新類型のうち医療内包型は法律(介護保険法)の本則に位置づけたい」との考えを示しており、これは「恒久的な施設類型」とすることを意味します。

その場合、一般病床などからの転換や新設を認めないことは、新規参入を阻害することになってしまうため、このテーマは避けて通れません。

この点について岩村正彦委員(東京大学大学院法学政治学研究科教授)は「介護療養からの転換が優先となるのは理解できるが、新設などを認めない期間は最大で3年程度であろう」と見通しています。


 なお介護保険制度を運営する自治体からは「人員配置を柔軟に設定すべき」といった指摘なども出されています。

新たな施設類型の創設、さらに一般病床からの転換や新設を認めることは介護保険財政にも直接影響してきます。

地方では人口減少も目に見える形で起こっており、将来を見据えた施設整備が求められます。

介護療養からの新たな転換先、現在の介護療養よりも収益性は向上する可能性―日慢協試算

 介護療養病床などからの新たな転換先(新類型)について、現行の介護療養病床相当・転換型老健相当の報酬が維持されると仮定した場合、医療内包型のIでは1か月当たり約181万円、医療内包型のIIでは約465万円、医療外付型(併設型)では約562万円の収支差が生まれ、現行の介護療養病床(機能強化型以外、約74万円)よりも収益性が向上する可能性がある―(いずれも50床当たり)。

 日本慢性期医療協会の武久洋三会長は、8日の定例記者会見でこのような試算結果を公表しました。

 社会保障審議会の「療養病床の在り方等に関する特別部会」では、介護療養病床などからの新たな転換先についての議論を重ね、7日に意見の取りまとめを行いました。

 ただし、今後の介護保険法改正、介護報酬の設定(2018年2月予定)などを待たなければ新類型の具体的な姿は見えてきません。

日慢協では、介護療養病床などを持つ医療機関の検討・準備に供するために、一定の仮定を置いて、「新類型の収益性」について試算を行ったものです。


 試算結果を見ると、50床・1か月当たりの収支差は、

▼現行の介護療養(機能強化型以外)では約74万円

▼医療内包型Iでは約181万円

▼医療内包型IIでは約465万円

▼医療外付型(併設型、居住スペースを特定施設入居者生活介護を受けた有料老人ホームとした場合)では約562万円

▼医療外付型(併設型、居住スペースを経費老人ホームとした場合)では約383万円―

となり、現行の介護療養から新類型に転換した場合に収益性が向上する可能性があることが分かりました。


【現行の介護療養(機能強化型以外)】:収支差・約74万円

▽収入:2194万円 【療養型介護療養施設サービス費1160単位(看護6対1・介護4対1、多床室、機能強化型以外、要介護4)、栄養マネジメント加算、サービス提供体制強化加算など、食費、居住費】

▽支出:2120万円 【人件費1360万円(医師48対1、看護6対1、介護4対1、医師・看護・介護の夜勤手当、PT・OT配置など)、材料費400万円、経費360万円】


【医療内包型I】:収支差:約181万円

▽収入:2194万円 【療養型介護療養施設サービス費相当1160単位(看護6対1・介護4対1、多床室、機能強化型以外、要介護4)、栄養マネジメント加算、サービス提供体制強化加算など、食費、居住費】(介護療養と変わらず)

▽支出:2013万円 【人件費1253万円(医師48対1、看護6対1、介護4対1、看護・介護の夜勤手当、PT・OT配置など)、材料費400万円、経費360万円】(医師の夜勤分、人件費が減少)


【医療内包型II】:収支差・約465万円

▽収入:1969万5000万円 【介護保険施設サービス費相当1043単位(療養型老健、看護オンコール体制、多床室・療養型、要介護4)、短期集中リハ実施加算、栄養マネジメント加算、認知症ケア加算など、食費、居住費】

▽支出:1505万円万円 【人件費1253万円(医師100対1、看護・介護3対1、介護2名の夜勤手当、PTまたはOT配置など)、材料費310万円、経費384万円】


【医療外付型(併設型、居住スペースを特定施設入居者生活介護を受けた有料老人ホームとした場合)】:収支差・約562万円

▽収入:1735万円 【特定施設入居者生活介護費(要介護4)730単位、機能訓練加算、医療機関連携加算など、事務費・生活費・管理費】

▽支出:1173万円 【人件費730万円(看護・介護3対1、介護1名の夜勤手当、施設長など)、経費443万円】


【医療外付型(併設型、居住スペースを経費老人ホームとした場合)】:収支差・約383万円

▽収入:2019万3200万円 【併設病院における介護保険サービス収入1519万円、事務費・生活費・管理費など】

▽支出:1636万円 【人件費1136万円(介護2名、施設長、併設病院スタッフなど)、経費500万円】


この試算結果を踏まえて武久会長は、「現在の介護療養のほうが収益性が高いということはなさそうである。

おそらく介護療養の多くは医療内包型IIにシフトし、医療内包型Iへの転換するところは少ないのではないか。

また重度者については、医療療養病床の人員配置を手厚くし、そこで受け入れることになるのではないか」と見通しています。

 

 なお新類型については「介護療養などからの転換を優先するため、一般病床からの転換・参入も認めるが、一定期間制限する」といった方向が見えてきており、法案策定過程において、その制限機関を3年とするのか、6年とするのかなどを決めることに。

この点について武久会長は、「一般病床でも急性期でなく、地域で苦労しているところもある。そうした病院には3年程度で門戸を開放してもよいのではないか」との見解を示しました。

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