地域包括ケア病棟!? 2025年に向け在宅復帰支援ネットワークが急務

地域包括ケア病棟がスタート。居宅介護と看護の橋渡し、あるいは介護の負担増加か!?

急性期の治療は急性期病棟で行われます。地域包括ケア病棟とは、急性期病棟で治療を終えた患者さんが、介護施設や在宅での生活が不可能なときに転院できる病棟としてスタートしました。開始は2014年4月です。病棟から転院するため、情報交換などがスムーズに行えるのが特徴です。そのため手続きなども少なく、リハビリだけでなく精神的なサポートなども得られるため、満足度の高いリハビリ治療が可能となりました。

高齢者のリハビリを支え、一般的な医療を受けることができ継続的な医療を受けつつリハビリを行うことができる大切な施設です。急性期の症状がでた場合は、また急性期病棟に戻る必要がありますが、リハビリが順調な場合は、そのまま退院し介護施設や在宅介護にスムーズに移行できます。

一般病棟から地域包括ケア病棟に転棟するには、医師からのすすめが必要です。医師が判断して、患者さんとご家族が了承すると、地域包括ケア病棟に転棟し、継続入院することになります。

入院は継続となりますが、医療行為は高度なものは行われず、血液検査・レントゲン検査・投薬治療などの基本的な医療に限られます。一般病棟で行われるような高額な医薬品の投与はできませんし、特殊な検査および手術もできません。

地域包括ケア病棟の3つの機能とは

これまでは、急性期病院の病棟から亜急性期病床を経由して、退院へとつなげていました。厚生労働省では、地域包括ケア病棟の3つの機能を使って、その架け橋になるよう定義しています。

1つ目は、高度急性期病院などから患者さんを受け入れる機能。入院患者さんの重症度や看護必要度の設定を行います。2つ目は、受け入れた患者さんを今後、介護施設や在宅での生活が行えるように支援する在宅・生活復帰支援の機能。3つ目は、施設や在宅で療養中の高齢者が、急に具合が悪くなってしまった時に緊急で受け入れる在宅療養支援としての機能です。

また、軽度の脳卒中、急性心筋梗塞、重症の肺炎、がんや整形外科の疾患などの高度急性期医療を受けられる患者さんは、急性期を無事に乗り越えても、機能回復やリハビリが必要です。そうした方々には、地域包括ケア病棟が最適です。


回復期リハビリ病棟は最長で180日入院できますが、地域包括ケア病棟は60日間が最長になります。

地域包括ケア病棟では、どのような方でも受け入れており、年齢や生活支援が必要になった原因は問いません。在宅で居宅介護を受けられている方などが肺炎や骨折での軽度もしくは中等症急性疾患および医療の必然性が高い方の入院を受け入れています。社会に対して、在宅と急性期医療の架け橋、橋渡しを行う存在として、新たにスタートしたものです。

60日の退院では不安はない?

地域包括ケア病棟は、原則として60日以内にリハビリを終えて退院することが義務付けられています。もともと、居宅介護や在宅でもやっていけるようにすることを目的としたリハビリ治療です。そのため、機能回復が目的となるのですが、ある程度の目標に到達した時点で退院となります。

60日間の入院では、不安になるかもしれませんが、地域包括ケア病棟は専従の社会福祉士とソーシャルワーカーをつけることを義務付けられており、生活面でのサポートを受けながら退院に向けてリハビリに励むことができます。

リハビリテーション・投薬料・注射料・処置料・検査料・画像診断料・入院基本料などはすべて含まれている定額制で、地域包括ケア病棟入院料を新たに算定していますので、75歳以上で支払いが増えることはほぼありません。また、施設は介護保険が適用されるのに対し、地域包括ケア病棟では医療保険が適用になります。施設への入所待ちの人も受け入れており、最大60日で退院ですが、待機中でも受け入れが可能です。

在宅復帰をめざしたリハビリがメイン

急性期治療が終わり、症状が改善した患者さんや、すぐに施設および在宅でのケアに移行するには不安がある患者さんに対して、在宅での治療に向けてリハビリを行います。

具体的には、急性期の治療が終わり、症状が軽快して在宅復帰へ向けたその間の期間や、身体の状況変化によって起こる、自宅環境が整うまでのつなぎの期間の入院、在宅復帰に向けてのリハビリがもう少しだけ必要なとき、もしくは、在宅での療養中、さまざまな理由で介護をする側の人が休養を取りたいと考える場合の一時入院などに使えます。

2025年の超高齢化社会に向けて地域社会へのコミットを

ますます求められる介護職と看護職の連携

地域包括ケア病棟は、医療と介護のあり方にも問いを投げかけています。今後は、団塊の世代が後期高齢者になる2025年問題を筆頭に、在宅でも医療機器や医療用具を必要とする、医療への依存度の高い患者さんが増えていくことが予想されます。そして、これまで院内にとどまっていた看護の分野が、地域全体に広がっていくことが大切になるでしょう。これに伴い、介護の現場でも、より看護との強い連携が求められます。

2025年には38万人の介護人口が不足するとされています。今後ますます加速する地域包括ケアシステムの構築に貢献するために、介護の現場が訪問看護ステーションと連携し、居宅介護のあり方を考えていくターニングポイントになるのではないでしょうか。

今後は在宅で医療依存度の高い患者さんが増え、介護もより複雑化していくことが予想されます。これまでは院内でケアしていた患者さんを受け入れ続ける余裕が、医療・看護の側になくなりつつあるのではないでしょうか。そこで、ますます介護職の負担が増えることが予想されます。

地域包括ケア病棟は、経営上の問題と、患者中心に考えたい看護・介護の現場とのあいだで、大きなせめぎあいがあります。どの病院でも地域貢献に関する理念を掲げています。よって、今後も病院の方向性としては医療依存度の高い患者さんを在宅で看るような方向性に行くことは間違いありません。

そんな中で、介護の現場に負担が高まらないようにするために、いま何ができるか考えていくことが大切ではないでしょうか。

病院の方向性と介護の方向性が異なっていては、地域貢献や地域包括ケア病棟の理念が台無しになってしまいます。

地域貢献という立場に立ってみて、今、何ができるか、考えることが急務となっています。



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