#がん検診受けるべきはこんな人... #命に関わらないがん... #がんの3年生存率平均71%,,,
「がん検診を受ければ、長生きできる」
一般の人だけでなく医師にも、そう思い込んでいる人が多い。しかし、そのような考えは、時代遅れになりつつある。
今年一月六日に、権威ある医学誌の一つ「BMJ(英国医師会雑誌)」に、「がん検診を受けても、総死亡率(あらゆる原因を含めたすべての死亡率)が下がる証拠はない」とする論文が掲載された。
たとえば乳がん検診を受ければ、乳がん死亡は防げるかもしれない。
だが、「命に関わらないがん」を多く見つけて、過剰な検査や治療を受ける人も増える。
そのため、がん検診の効果が打ち消されてしまうというのが論文の要旨だ。
がん検診のメリットは我々が思うほど大きくなく、治療が不必要な病気を多く見つける「過剰診断」の害を受ける可能性すらある。
だとしたら、論文の著者らも書くように、「検診を受けないことは、多くの人にとって合理的で賢明な選択」だと言えるだろう。
とはいえ、「検診を受けないのは不安」という人もいるはずだ。
そこで近年、医学界では新たな方法が模索されている。
それが「#がんリスク検診」だ。
すなわち、がんリスクの高い人に絞って検診すれば、より効果が高くなり、過剰診断も減らせるとする考え方だ。
どんな人が、リスクが高いのか。
その場合、どう対処すればいいのか、がん種別に専門家に取材した。
■胃がんと食道がん
よく知られているように、胃がんの発生の多くに、バクテリアである「#ヘリコバクターピロリ(いわゆるピロリ菌)」が関係している。
ピロリ菌の感染は井戸水などを介して広がったと考えられている。
そのため、感染率は高齢になるほど高く、七十歳以上だと八〇%以上にもなる。
ピロリ菌の感染によって、胃粘膜の萎縮が進むと、さらに胃がんのリスクが高くなる。
そこで、胃がんを見つける前にまず、ピロリ菌感染と胃粘膜の萎縮の有無によって、胃がんのリスクを評価する検診が研究されてきた。
それが「胃がんリスク検診(ABC検診)」だ。
ピロリ菌感染がなく、胃粘膜の萎縮もない人はA、感染のみの人はB、感染と萎縮のある人はC、ピロリ菌が住めないほど萎縮が進んだ人はDと評価される。
これまでの研究から、胃がん発生リスクはAに比べBで約五倍、Cで約十倍、Dで約十五倍高いことがわかっている。
感染と萎縮の有無を調べる検査は、血液を取れば簡単かつ安価にできるため、すでに検診に採り入れている自治体や企業もある。
この検診を推進する「日本胃がん予知・診断・治療研究機構」事務局長の笹島雅彦医師が解説する。
「この検診の目的は受診者本人に、自分が胃がんになりやすいかどうかを知っていただくことです。A評価でも胃がんになる人はいます。ですがリスクは低いので、一度は念のため胃がん検診を受けて胃粘膜の萎縮がないと確認できれば、症状がないかぎり、その後は胃がん検診を受ける必要はないでしょう。一方、BからDの人は定期的に胃の検査を受けたほうがいいということになります」
ABC検診を推進する医師が高リスクの人に勧めているのが、いわゆる胃カメラによる「内視鏡検査」だ。
国は長らく胃がん検診として、「バリウム検査」だけを推奨してきた。
だが、二〇一五年から、バリウム検査に加え内視鏡検査も推奨するようになった。
「バリウム検査も、胃がんを見つける技術が高められてきました。
しかし、これが始まったのは、胃の内部を直接見る技術がなかった六十年以上前の話で、胃粘膜を直接観察できる内視鏡検査のほうが優れているのは当然です。
X線被曝もあるバリウム検査にこだわる理由はありません。
飲むと顔が赤くなる人は要注意
ただ、内視鏡医の数がまだ少なく偏在しているので、対象者全員に一律に実施することは困難です。
ですから、集団検診で行う場合はリスクが高い人を優先して検査するのは当然だと思います。
その意味でも、胃がんリスクを評価できるABC検診は意味があると考えています」(笹島医師)
内視鏡検査を受ければ、食道がんの有無も同時にチェックできる。
食道がんは飲酒、喫煙と関連が強く、飲むと顔が赤くなる人はとくに要注意だ。
該当する人は食道がんのことも念頭に置いて、内視鏡検査を受けるといいだろう。
■大腸がん
日本人のがんで増えているのが大腸がんだ。
国立がん研究センターが公表した二〇一五年のがん罹患者数の予測値でも、大腸がんは肺がん、胃がんを抜いてトップだった。
それだけに、誰もが注意する必要はあるが、その中でもとくに大腸がんリスクの高い人がいる。
「大腸ポリープ診療ガイドライン2014」(日本消化器病学会編)の作成委員会委員長を務めた広島大学病院内視鏡診療科教授の田中信治医師が解説する。
「大腸がんを患った家族、親せきの多い人や、内視鏡検査でポリープがたくさん見つかった人は、遺伝的になりやすい可能性があります。また、潰瘍性大腸炎やクローン病など大腸が炎症を起こす病気の人も、罹患年数が長いほどリスクが高まります」
現在、国は大腸がん検診として、採取した便の中に血が混じっているかどうかを調べる「便潜血検査」を推奨している。
欧米で実施された臨床試験を統合して解析した研究で、便潜血検査には大腸がん死亡率を一六%減らす効果が認められた。
ただし、冒頭のBMJの論文では、大腸がんでの死亡を防ぐ効果はあるが、総死亡率を減らす効果はあってもかなり小さいと指摘されている。
だが、田中医師は、「それでも便潜血検査は受けてほしい」と話す。
「この検査を千人が受ければ百人が『要精密検査』となり、その中で数人に大腸がんが見つかります。
つまり、これによって大腸がんリスクが高い人を絞り込むことができるのです。
それに、この検査で陰性なら、無駄な内視鏡検査をしないで済みます。
つまり便潜血検査は、リスク評価をしているとも言えるのです」
自分のがんリスクを知るという意味で、便潜血検査を受けることは意味があるかもしれない。
この検査を受けて要精密検査とされた人や、冒頭の高リスクに該当する人は、医師と相談して、定期的に内視鏡検査を受けたほうがいいだろう。
■乳がん
生涯、十二人に一人が罹患するとされる乳がんだが、この病気も高リスクの人がいるとわかっている。
まず、遺伝的にリスクの高い人がいる。
その可能性があるのが、若いうちに乳がんや卵巣がんになった家族、親せきのいる人だ。
また、すでに乳がんになった人では、両乳房にできた人、片方に二回以上できた人、男性なのになった人が、遺伝性の可能性がある。
日本人の乳がんの約一〇%が遺伝性と推測されている。
遺伝的なもの以外では、初潮が早かった人、閉経が遅い人、出産経験のない人や初産年齢の高い人、授乳経験の少ない人、肥満の人、ホルモン補充療法を五年以上受けた人も、疫学調査で乳がんのリスクが高いことがわかっている。
過剰診断が多いとされる乳がん
現在、乳がんは乳房専用のX線装置「#マンモグラフィ」による検診が推奨されている。
かつては、乳がん死亡率を減らす切り札のように言われてきたが、ここ数年、欧米の臨床試験で総死亡率どころか、乳がん死亡率すら減らないとする報告が相次ぎ、効果に疑問符が付き始めている。
とくに乳がんは過剰診断が多いとされている。
なぜなら検診を実施すると「非浸潤性乳管がん(DCIS)」と呼ばれる早期がんが多数発見されるのだが、その中に相当数の「#命に関わらないがん」が含まれる可能性があるからだ。
昭和大学病院乳腺外科教授の中村清吾医師によると、過剰診断を避けるために、非浸潤性乳管がんをすぐに治療せず、経過観察する臨床試験が国内外で行われているという。
また、欧米では非浸潤性乳管がんを「がん」と呼ばず、「上皮内新生物」と呼んで区別すべきだとする声もあるそうだ。
ただし、非浸潤性乳管がんの一部には、放置すると周囲に広がり(浸潤し)、命取りになるものもある。それだけに、浸潤するかどうかを見分ける技術の開発が不可欠だろう。中村医師によると、実は米国では、そうした検査がすでに実用化されているという。
「十三種類の遺伝子を調べることで、将来、浸潤がんになるリスクが高いかどうかを調べる検査があり、米国では自費で検査できるようになっています。
こうした技術の研究がさらに進めば、見つかった非浸潤性乳管がんが放置してもいいものか、それとも早く取ったほうがいいか、区別できるようになるかもしれません」(中村医師)
日本でも組織を米国に送って検査を受ける人がいるが、自己負担で数十万円の費用がかかる。
乳がんが不安で、やはり検診を受けたい人はどうすればいいだろう。まず知っておくべきことは、マンモグラフィ検診は絶対ではないということだ。とくに二十代、三十代は「受けるべきではない」と中村医師は断言する。
「よく『雪の中の白うさぎを見つけるようなもの』とたとえられるのですが、マンモグラフィを撮ると、若い人ほど乳腺が発達しているため白色が濃く映り、腫瘍を見つけにくいのです。
四十代でも乳腺が発達している人は、見逃される可能性があります。
ですから、若い人や乳腺が発達している人は、エコー(超音波)で調べてもらったほうがいいのです」
それに、若いほど放射線の影響を受けやすく、遺伝的に高リスクの人は、マンモグラフィを頻回に受けると、がんを誘発しやすいとする研究もある。
なので、若い人は、自分で乳房を触って、気になるしこりがあったときだけ、専門医を受診し、エコーを受けるといいだろう。
たまたま見つけた人より、毎月一回意識的に触っていた人のほうが、小さいうちに見つかるという研究データもあるそうだ。まずは自分の乳房の健康に関心を持つことが大切だ。
■子宮頸がん
この病気は #ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染が原因だ。
HPVには百種類以上のタイプがあり、その中に発がんリスクの高いタイプが十三種類ある。
したがって、まずは自分が高リスクのHPVに感染しているかどうかを知ることが重要だろう。
現在、国は子宮頸がん検診として、子宮の出口(子宮頸部)から組織をこすり取って、細胞の状態を顕微鏡で調べる「細胞診」を推奨しているが、実は高リスクHPVに感染しているかを調べるHPV検査も、すでに実用化されている。
現在、このHPV検査は、がん検診などで「ASC-US=意義不明な異型扁平上皮細胞」と診断された一部の人だけに保険適用とされているが、産婦人科などに行けば、誰でも自費で四~五千円で受けることができる。
この検査を検診に全面採用すべきと主張する医師が少なくない。
HPVに詳しい金沢医科大学産婦人科主任教授の笹川寿之医師もその一人だ。
「HPV検査を検診で実施すると偽陽性(がんではないのに、異常ありと診断されること)が増えて、女性に不安を与えるという理由で反対する医師がいます。
しかし、感染が事前にわかれば、細胞診も丁寧にしますから、逆に見逃しが少なくなるはずです。
実際にそのような論文も一流雑誌から出ています。
また、HPV検査で感染していないことがわかれば、五年間は細胞診を受ける必要がないとされています。
そうしたことから、米国ではすでに、細胞診との併用で、HPV検査を先にしようという流れになっています」
二十五歳以上の女性は一度受けて、陽性の場合は産婦人科医に相談するといいだろう。
また、子宮頸がんは喫煙によってHPV感染後の発がんリスクが上がるという研究もある。
「命に関わらないがん」も多い
■肺がん
タバコと言えば、喫煙で肺がんリスクが高まることは言うまでもない。
国立がん研究センターの疫学研究によると、喫煙者は非喫煙者に比べ、男性で四・四倍、女性で二・八倍高くなる。
国は胸部X線検診(喫煙者など高危険群は喀痰細胞診併用)を推奨しているが、欧米の研究では有効性が証明できなかった。
そこで、より小さな肺がんを見つけることができるCT検診が国内外で試みられてきた。
米国では、喫煙者を対象にCT検診の効果を調べる臨床試験が実施され、胸部X線検診に比べ、肺がん死亡率が約二〇%減るという結果も出ている。
肺がんCT検診認定機構代表理事・(公財)東京都予防医学協会 保健会館クリニック所長の金子昌弘医師はそのメリットを強調する。
「国内でも、CT検診で肺がん死亡率が減ったとする研究があります。それに、CTを撮れば肺がんだけでなく、肺の健康状態がわかり、それをきっかけに禁煙する人が少なくありません。タバコをやめれば、心筋梗塞や肺気腫で苦しむ人が減ります。したがってCT検診にはがん検診だけでなく、総合的な健康診断的価値があると考えています」
ただし、CT検診には注意点もある。
それは、「すりガラス状陰影」という淡い影のように映る病変がたくさん見つかることだ。
以前は「早期がん」とみなされ、積極的に手術される傾向があった。
ところが、あまり大きくならず、転移もしない「命に関わらないがん」が多いこともわかった。
そのため最近では、小さくて影の淡いものは、経過観察する場合も増えている。
とくに手術の合併症が起こりやすい高齢者は、あわてて治療しないほうがいい。
肺のCT検診にもメリットばかりでなく、治療の不必要ながんを多く見つける過剰診断があることを知っておくべきだろう。
また、CT検診だけでなく他のリスク検診も、本当にがん死亡率や総死亡率を減らす効果があるかどうか、検証はこれからだということを理解して受けてほしい。
従来のがん検診では、十分な科学的評価を怠ってきた結果、無益などころか害さえある検査法が漫然と採用されてきた。
リスク検診についても、関係者は利益ばかりを強調するのではなく、有効性を科学的に検証して、その結果を率直に国民に伝えるべきだろう。
岡田正彦・新潟大学医学部教授 長生きしたければがん検診は受けるな!!!
早期発見・早期治療で寿命は延びない。それどころか、CTなどの検査にはこんなに害がある
3人に1人ががんで死亡する時代。
恐怖に駆られ、多くの人が検診へ急ぐ。だがその検査に、治療に、寿命を左右しかねないほどのリスクを伴うと知ったら---あなたはそれでもがん検診を受けますか。
肺がん検診で肺がんになる
ここ数年、「がんの見落とし」に関する裁判が急増しています。
患者側は「どうしてくれるんだ!」と激怒して病院を訴えますが、私は、見落とされてかえって良かったかもしれないと思うんです。
へたに発見されて激しい治療を受けていたら、もっと苦しい思いをして、寿命を縮めてしまう可能性があるからです。
私は過去20年にわたって、世界中で発表された検診の結果に関する論文を読んできました。
睡眠時間、体重、生活習慣、過去に受けた医療行為など、あらゆる条件を考慮した上で、がん検診を受けた人と受けない人が十数年後にどうなっているか、追跡調査した結果にもとづく論文などです。
その中で最も衝撃的だったのが、20年以上前にチェコスロバキアで行われた肺がん検診の追跡調査です。
そこでは、検診を定期的に受けていたグループは、受けなかったグループより肺がんの死亡率が圧倒的に多く、それ以外の病気による死亡率も明らかに多いという驚愕の結論が出ているのです。
その後、欧米各国でより精密な追跡調査が行われてきましたが、その多くが同様の結果でした。
つまり、「検診を受けようが受けまいが、寿命が延びることはない」のです。
肺がんだけでなく、他のがん検診やその他の検診でも、同傾向の結果が出ています。
肺がんの検診を受けると、なぜ死亡率が高くなるのか。理由の一つはエックス線検査にあります。
国や専門家たちは、「エックス線検査には放射線被曝というデメリットがあるけれど、それ以上にがんの早期発見というメリットの方が大きい。だから害は無視できる」と主張します。
しかし、これには科学的根拠がありません。
私はありったけの関連論文を読んできましたが、放射線を浴びても、それを上回るメリットがあるということを科学的に証明した論文は、1本もなかったのです。
イギリスの研究チームが、医療用エックス線検査で起こったと考えられるがんを調べたデータがあります。
その研究では、日本人のすべてのがんのうち、3.2~4.4%はエックス線検査が原因だと結論づけています。
残念ながらこのレポートは、日本では話題にされることはありませんでした。
新潟大学医学部教授の岡田正彦氏(65歳)は予防医学の第一人者で、現代医療の無駄の多さ、過剰さに疑問を呈し、健康のために真に必要なものは何なのか、独自に調査・研究を進めてきた。
胸部エックス線検査でさえこれだけ有害なのですから、被曝量がその数十倍から百数十倍もあるCTを使った検診が身体にどれだけ大きなダメージを与えるかは、火を見るより明らかです。
CTが原因でがんが発症するというデータは年々増えています。
アメリカには、CTを繰り返し受けると、がんが十数%増えるというデータもあるのです。
ところが、日本では全く問題になりません。
それどころか、日本のCTの普及率は、2位以下を3倍も引き離す、ダントツの世界一なのです。
それでも、CTを使って数mmのがん腫瘍を早期に見つけることができれば、手遅れになる前に手術で切除して命を繋ぐことができる。
だからCTは素晴らしいものだと、多くの人は思ってしまうでしょう。
でも、一概にそう言えるでしょうか。
手術となったら、肺にしろ、胃にしろ、肝臓にしろ、組織をごそっと取り去ります。
しかも、がんはリンパ管を通って転移するので、近くのリンパ節も全部取らなくてはいけない。
大変な肉体的ダメージを受け、免疫力が大幅に落ちます。
手術後には何度もエックス線写真を撮りますし、抗がん剤治療も必ず行われます。
放射線療法をする可能性も高い。
なおかつ、人間の身体にとって最もハイリスクな寝たきり状態を強いられ、何重もの責め苦を負うわけです。これで健康でいられるわけがありません。
そうは言っても、やはりがんは悪いものなんだから除去すべきだという反論が必ず返ってきます。
しかし、「がん=悪性」というイメージは、もはや古い認識です。
治療しない方がいいがん
動物実験で人工的にがんを発症させて、経過を調べたデータがあるのですが、がんの大多数は大きくならず、身体に悪影響を与えないタイプのものでした。
近年、世界的な研究が行われ、人間の場合も生涯大きくならないがんが相当数あることが分かってきました。
そうしたがんは、へたにいじらない方がいい。
それに、もしタチの悪いがんなら、早い時期に全身に転移するので、早期発見した時には手遅れの場合が多く、予後はそれほど変わらないというのが私の考えです。
だとすると、検診で微細ながんを見つけ出し、激しい治療を施される不利益の方が、放置しておくよりもむしろ大きいかもしれない。
これ一つをとっても、がん検診の有効性には大きな疑問符がつくのです。
そのことを考えるのにもってこいの、前立腺がんに関するデータがあります。
死亡後、解剖によって初めて見つかる前立腺がんは非常に多いのですが、彼らはがんを抱えたまま天寿を全うしたことになります。
もし彼らが前立腺がんの有無を調べるPSA検査を受けていたら、必ず手術になっていたでしょう。
その場合、果たして天寿を全うできたかどうか・・・。
治療の弊害で早く亡くなっていたかもしれません。同じことが、すべてのがんについて言えるのです。
がんの発症人口が増えている中、近年、急激に死亡者数が減っているのが胃がんです。
多くの専門家は検診の効果であると口を揃えますが、胃がん検診が普及したのはごく最近で、胃がんが減り始めたのはもっと前。
実は胃がんの死亡者数が減少した本当の理由は、日本人の塩分摂取量が減ったことが大きく関係しているんです。
私の計算では、胃がん検診は、胃がんを減らすどころか、むしろ増やしている可能性があります。
肺がん検診はエックス線写真を1枚撮れば済みますが、胃がん検診ではバリウムを飲んで検査をしている間、ずっと放射線を浴びなくてはなりません。
その被曝量は、肺がん検診の100倍近くも高くなります。
そもそも胃がん検診をやっているのは、世界中で日本だけ。
日本は、大規模な追跡調査をやらない国なので、胃がん検診が有効だということを実証する証拠は一切ありません。
にもかかわらず国が推奨しているのが、私は不思議でならないのです。
大がかりな検診は意味がないという認識は、すでに欧米の研究者の間で広まっています。
アメリカ人の医者千数百人を対象にしたアンケート調査のデータでは、大部分のドクターは、「検診はやった方がいい。
ただし血液検査や尿検査があれば十分で、レントゲンや心電図までは必要ない」という意見でした。
人間ドック、脳ドックも
ところが日本では、いまだに検診は有効だと盲信され、国を挙げて推奨されています。
それはなぜかというと、ひとつはビジネスマター、つまり金儲けをする手段として検診がもてはやされているということ。
もう一つは「検診は有効だ」という、人々の深い思い込みによります。
なくてもいいという発想そのものを持っていないのです。
医者の側にも問題があります。
医療が細かく専門化した結果、自分の領域しか知らない医者ばかりになり、検診が他の領域に及ぼす影響まで思いが至らなくなっているのです。
また、医者はこれまで自分のやってきたことが正当だったと信じたいため、検診に否定的な論文を目にしても、それは例外だと自分自身にも言い聞かせ、患者さんにもそう伝えるのです。
だから、がん検診を受けても寿命は延びないし、かえって苦しい思いをしたり、がんを発症させたりする可能性があるという事実が、患者側には一切伝わってこないのです。
こういったケースは、がん検診だけに限ったことではありません。
人間ドックに入れば、ありとあらゆる検査の中で何らかの病気が見つかりますが、その中には無理に治療が必要でない微細な病気も多く、結果的に過剰医療に繋がって身体にダメージを与えてしまう恐れがあります。
そもそも、人間ドックという言葉があるのは日本だけ。推奨している国も他にはないのです。
また糖尿病の検査にも身体に悪いものがあります。
ブドウ糖負荷試験という検査方法で、75gのブドウ糖を飲んで血糖値を計るのですが、これは5g入りのコーヒー用スティックシュガー15本分の糖分に相当します。
これを一気に飲むのですから、糖尿病体質の人にとっては、発病の後押しをするようなものです。
そもそも、この検査をしなくても早朝空腹時の血糖値を計れば必要なデータが得られるということは、外国の調査研究で15年も前に明らかになっています。
脳ドックも毎年多くの人が受診しています。
検診を受けた結果、小さな脳動脈瘤が見つかり、手術で取り去ることができた---そう聞いたら、それは良かったと思うでしょう。
脳動脈瘤が破裂すれば、命にかかわるということは広く知られていますから。
しかし、'03年に世界13ヵ国の医師と研究者が5年間放置した脳動脈瘤が破裂した割合を調査したところ、動脈瘤の大きさが7mm未満で0・2%、7~9mmで0・5%、9mm超で3・1%だけという結果でした。
一方で、破裂を予防するために手術を行った場合、1年後に2・7%が治療そのものが原因で亡くなり、半身麻痺などの障害を加えると、じつに12%が死亡もしくは障害を受けていたことが明らかになったのです。
日本政府が熱心に進めてきたメタボ健診も、有効性は認められません。
健診では特に腹囲が重視されますが、欧米の研究で、腹囲の大小と寿命は無関係ということが実証されていますし、メタボリックシンドロームという病気自体、そもそも存在しないのでは、と思っています。
最初にこの言葉を使い始めたWHO(世界保健機関)も、'06年以降は使わなくなりました。
検査が余病を引き起こす
メタボ健診の大罪は、血圧が少しだけ高いと判定された人にも降圧剤が処方されてしまうことです。
調査の結果、降圧剤を飲んでも飲まなくても、5年後、10年後の死亡率そのものは変わらないか、飲む薬によっては増えるということがわかっています。
降圧剤を飲めば、確かに血圧は下がります。
しかし、心筋梗塞を誘発したり、思わぬ余病を引き起こすことがあるのです。
要するに、早期発見・早期治療をしても結果が変わらないということを、様々なデータが示しているのです。
検診に大金を費やすより、予防に力を入れるほうが、国民の健康保持にとってはるかに有効だと私は思います。
がんも、8割方予防できると考えられます。
遺伝によって起こるがんは全体の5%ほどだけで、残りの80%は原因が分かってきましたから。
その一つには、前に述べたエックス線検査があります。
そして、今深刻な問題となっている放射能。
それ以外にも、よく知られたところでたばこや塩分の取りすぎ、野菜や果物不足も、がんの発症の大きな要因となっています。
それらを解消すれば、がんの半分以上は防ぐことができるのです。
最近では、手軽に野菜の栄養素を摂取できると謳ったジュースやサプリが売られていますが、それでは野菜を食べたのとイコールにはなりません。
成分を分解してしまうと、がんを抑制する抗酸化物質が作用しないため、意味がなくなってしまうんです。
野菜はぜひ、生で食べるようにしてください。
生活習慣のちょっとした工夫で、病気は改善されます。
薬や手術では、効果があっても微々たるもので、生活習慣を改善した方が、その1・5倍もの効果があります。
50%も違うということですから、これに匹敵するような医療行為は他にありません。
人間の身体は、余計な手を加えずとも、自然に沿った生活をすることで、健康が保たれるようにできているのです。
検診大国・日本で健康に生きていくために、過剰検査・過剰医療の恐ろしさをよく理解することが大事なんです。
国立がん研究センターは12日、がんと診断された人が3年後に生存している割合を示す「3年生存率」を初めて公表した。
2018年9月12日
全てのがんの平均は71・3%。膵臓(すいぞう)がんは15・1%と差があり、治しにくいがんについて、新たな治療法の効果を5年を待たずに評価できるようになると期待されている。
全国のがん拠点病院や国立病院機構などの330施設のうち、生存率を9割以上把握できている268施設のデータを解析。2011年にがんと診断された約30万人を追跡、ほかの死因を除き調整してまとめた。
対象者は70歳代が最も多く、約9万7千人(32%)、次いで60歳代が約8万8千人(29%)。手術や内視鏡によってがんを切除した人の生存率は88%だった。部位別に見ると、膵臓が15・1%、肺49・4%、食道52・0%、肝臓53・6%。胃74・3%、大腸が78・1%、乳房(女性のみ)95・2%だった。
これまで治癒の一つの目安とされてきた、診断から5年後の生存割合「5年生存率」についてもまとめた。今回は08~09年に診断された約50万人のデータを分析した。5年生存率は10%程度のがんもあり、5年よりも早く、有効な治療法かどうか評価できる目安が求められていた。同センターの若尾文彦・がん対策情報センター長は「5年生存率に3年生存率が置き換わるものではないが、速報値としてがん治療の様子を確認することができる」。東尚弘・がん登録センター長は「いち早くデータが分かれば、難治がんについて、より現状に近いデータで対策を議論することができる」と話す。
17年度からの国のがん対策の指針「第3期がん対策推進基本計画」は、膵臓がんやスキルス胃がんなど難治性がんの有効な診断・治療法の開発推進を目標の一つに掲げる。
静岡がんセンターの山口建総長は「がんは、再発するかどうかの経過観察が必要な病気。データが今後蓄積すれば、がんの種類によっては3年たてば治癒の予測ができるようになる可能性がある」と話す。
#部位ごとのがん生存率
3年 5年
全体 71.3% 65.8%
胃 74.3% 71.1%
大腸 78.1% 72.9%
肝臓 53.6% 39.6%
肺 49.4% 40.0%
乳房(女性) 95.2% 92.7%
食道 52.0% 43.7%
膵臓(すいぞう) 15.1% 10.0%
子宮頸部(けいぶ) 78.8% 75.6%
子宮体部 85.5% 82.5%
前立腺 99.0% 98.4%
膀胱(ぼうこう) 73.5% 70.9%
※診断は3年生存率が2011年。5年は08~09年。国立がん研究センターの報告書から
#がんの進行度別の3年生存率(%)
全体 1期 2期 3期 4期
胃 74.3 96.1 74.4 55.3 14.1
大腸 78.1 96.7 92.9 83.6 30.3
肝臓 53.6 76.4 62.8 22.7 5.9
肺 49.4 88.0 59.4 33.6 11.8
乳房(女性)
95.2 100 98.0 88.3 54.4
食道 52.0 88.1 59.3 31.9 15.8
膵臓(すいぞう)
15.1 54.8 29.4 11.8 2.6
子宮頸部(けいぶ)
78.8 96.0 86.5 70.5 30.1
子宮体部
85.5 98.2 94.2 81.4 29.4
前立腺 99.0 100 100 100 72.6
膀胱(ぼうこう)
73.5 92.2 65.2 54.6 26.0
診断は2011年。国立がん研究センターの報告書から
Dang Shin Eun Na Neun Ba Bo Ib Ni Da - Stay
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