#特別養子縁組と #里親制度は どう違う?

自分の実子ではない赤ちゃんや子どもを家庭に迎え入れるケースがあります。

たとえば、自分たち夫婦に子どもができない場合や、独身者でも子どもがほしい場合などです。

このような場合、特別養子縁組を利用する場合や里親制度を利用する場合があります。

血のつながっていない子どもや赤ちゃんを家庭に迎え入れる場合に利用する制度にはいくつか種類がありますが、その中に特別養子縁組と里親制度があります。


特別養子縁組と里親制度は、どのような違いがあるのでしょうか?

この点、この2つの制度には、根本的な違いとして、目的の違いがあります。


特別養子縁組では、実の親が子どもを虐待しているなどの事情で、実親が子どもを育てられない場合などに、子どもに新しい家庭を与えることが目的とされています。

特別養子縁組をする場合には、子どもは養親と一生続く親子関係を作って生きていくことが予定されているのです。


これに対して、里親制度は、実親が子どもを育てられない場合などに、一時的に養親が子どもを預かって育てるための制度です。

里親制度を利用する場合には、将来子どもは元の家庭に戻ることが予定されているのです。


このように、特別養子縁組では、養親と子どもとの関係が本当の親子のような取り扱いになり、基本的に永遠に続くことが予定されているのに対し、里親制度では 養親と子どもとの関係は一時的なもので、子どもと里親が「親子」になるためのものではないことを、まずは理解しておく必要があります。


親子関係が続く期間の違い

特別養子縁組と里親制度とでは、養親(里親)と子どもとの親子関係が続く期間も異なります。


特別養子縁組の場合には、養親と子どもは実の親子と同じような関係を作ることになるので、親子関係に期限はありません。

どちらかが亡くなるまで(あるいは亡くなった後も)親子関係が継続します。


これに対し、里親制度の場合には、里親は子どもを一時的に預かるだけです。


里親が子どもを預かる期間(子どもの養育期間)は、基本的に子どもが18歳になるまでの間です。

それ以降は、親が里子を預かって養育する義務はなくなります。

ただ、里親制度は、子どもが20歳になるまで延長することができるケースもあります。


また、季節里親などのケースもあります。

季節里親とは、夏休みや冬休みなどの長期休暇の間だけ、里子を預かって育てる里親のことです。


このように、里親制度は、特別養子縁組と比べると、子どもの養育期間が非常に限定されています。


戸籍の違い

特別養子縁組を利用した場合と里親制度を利用した場合には、戸籍の表記も全く異なります。


養親(里親)と子どもとの関係の記載

特別養子縁組を利用すると、養親と子どもは実の親子と同様の取り扱いを受けます。

よって、子どもの戸籍の表記は、養親の「長男」「長女」などと記載されます。

この表記を見たときに、養子縁組をしたとわかることはありません。

完全に本当の親子と同様の記載になるのです。


これに対して、里親制度の場合には、戸籍は書き換わりません。

よって、子どもの戸籍は元の家庭に残ったままですし、里親の戸籍にも何らの記載もされません。

里親制度は、法律上の「親子関係」を作り出すものではないからです。


親と子の姓について

特別養子縁組をした場合と里親制度を利用した場合とでは、親子の姓の取り扱いも異なります。

特別養子縁組をした場合には、子どもは養親の実の子どもと同様に取り扱われて、養親の戸籍に入ることになります。

よって、この場合、子どもの姓は養親と同じ姓になります。

対して、里親制度を利用した場合、里親と里子は親子関係にはならないので、姓が変わることはありません。

子どもは元の家庭の姓のままとなり、里親の姓とは異なることになります。


親権者について

特別養子縁組と里親制度とでは、子どもの親権者の取り扱いも異なります。

特別養子縁組の場合には、子どもと実親との関係が切れて、子どもと養親との新しい関係が作られます。

よって、子どもの親権者も養親に移ります。


対して、里親制度の場合には、法律上、子どもは元の親の子どものままです。

よって、元の親が子どもの親権者のまま変わることがなく、里親には親権は認められません。


養親(里親)の条件の違い

特別養子縁組と里親制度とでは、養親(里親)の条件も異なります。以下で、具体的に見てみましょう。


年齢制限

特別養子縁組にも里親制度にも、養親(里親)になろうとする場合には年齢制限があります。

特別養子縁組の場合には、養親となる夫婦の一方が25歳以上である必要があります。

また、夫婦が双方とも20歳以上である必要もあります。

里親制度の場合には、里親となろうとするものは25歳以上65歳以下である必要があります

夫婦であることが必要か

特別養子縁組の場合、養親になるためには、夫婦である必要があります。

独身者は、特別養子縁組で養親になることができないのです。

このことは、特別養子縁組が子どもに恒久的な家庭環境を与えるという目的をもっていることに関係があります。


特別養子縁組は、事情があって実親と一緒には暮らせない子どもに新しい家庭を与えることを目的としていますが、その際、子どもに与える家庭はできるだけ安定している必要があります。

そのためには、養親は父母がそろっている方が良いという判断があるのです。

対し、里親制度では、里親は一時的に子どもを預かるだけなので、特別養子縁組の場合ほどは家庭環境について厳格に判断されません。

一定の要件を満たしていれば、独身者でも里親になることは可能です。

このように、夫婦であることが必要かどうかも、特別養子縁組と里親制度が大きく異なる点です。


子どもの条件の違い

特別養子縁組と里親制度の違いとして、子どもの側の条件も異なります。

特別養子縁組では、子どもと実親との関係が切れて、養親との新しい関係が作られます。

このように、実の親との関係を完全に断ち切ることは、子どもに対しても 影響が大きいです。

あまり子どもが大きくなっていると、実親との別れが子どもにダメージを与えてしまうおそれがあります。


そこで、特別養子縁組を利用するためには、子どもが6歳未満である必要があります。

ただ、子どもが6歳未満のときから継続して子どもを養育してきた場合には、子どもが8歳未満までの間、特別養子縁組をすることが認められます。


対して、里親制度には、このような子どもの年齢についての厳しい制限はありません。

里親制度自体が、子どもが18歳になると終わってしまうので、子どもが18歳までの間なら利用することができます。


手続き方法の違い

特別養子縁組と里親制度は、その手続き方法も大きく異なります。

特別養子縁組を利用する場合には、家庭裁判所に申立をして、特別養子縁組を許可してもらうための審判をしてもらう必要があります。

この審判手続きでは、特別養子縁組の条件を満たしているかどうかや、養親の家庭に子どもを迎え入れた場合に問題が起こらないかなどを調査されて、最終的に特別養子縁組を許可するかどうかが判断されることになります。

特別養子縁組を許可する審判がおりると、養親と子どもとの間に法律上の親子関係が成立します。


対して、里親制度を利用する場合には、児童相談所から委託を受けることによって里親と里子の関係が成立します。

この場合も、児童相談所から、里親の用意出来る養育環境などが調査されて、里親として認めるかどうかなどの判断をされることになりますが、これは裁判所による審判とは別個のものです。

あくまで児童相談所から「委託」を受けるだけで、裁判所による調査などはありません。

また、自動相談所から委託を受けて里子預かっても、里子との間で法律上の親子になるなどの効果はありません。


親子関係の解消方法の違い

特別養子縁組と里親制度とでは、親子関係の解消方法も異なります。

里親制度の場合には、親子関係を解消するのは簡単です。

解消をしたい場合には、児童相談所と相談して、養育関係を解除すればそれで終了します。

子どもはまた児童相談所に戻ることになります。


特別養子縁組は、原則として親子関係の解消はできません。

裁判所で審判をしてもらっていったん法律上の親子関係を発生させてしまった以上、そう簡単に親子関係を断ち切ることはできないのです。


特別養子縁組の解消が認められるのは、養親が子どもを虐待したり養育放棄したりして、親子関係の継続が子どもの利益にならない場合や、子どもの実父母が子どもを育てられる状態になった場合のみです。


この場合、離縁するためには家庭裁判所で審判をしなければならず、その審判の申立ができるのは、子ども自身か子どもの実親、検察官だけです。

つまり、養親は離縁の請求ができないのです。


このように、親子関係解消の方法も、特別養子縁組と里親制度には大きな違いがあります。いったん特別養子縁組をすると、基本的には一生解消はできないものと考えた方が良いでしょう。


行政からの手当の違い

特別養子縁組と里親制度には、行政からの手当についての違いもあります。
里親制度の場合には、里親は毎月都道府県から手当の受給を受けることができます。


その金額は、里親の種類によっても異なりますが、

養育里親では月額72,000円~75,000程度、

専門里親は123,000円程度となっています。


これにプラスして食費や衣服などの一般的な生活費として、養育費の支給も受けられます。
その金額は、乳児の場合で月額55,000円程度、乳児以外では48,000円程度となっています。


これに対して特別養子縁組の場合には、これらの手当は一切ありません。

養親の資力だけで子どもを育てていく必要があります。


この差が発生するのは、やはり、特別養子縁組と里親制度の制度目的の違いによります。


特別養子縁組では、本当の親子関係を作ることを目的にしているので、子どもの養育について行政から手当を支給される理由はありません。


対して、里親制度の場合には、あくまで里親は、他人の子どもを預かっているだけという扱いになるので、行政からの手当が支給されるのです。


どちらの制度を利用するか

このように、法律上の親子関係を作ろうとする特別養子縁組と、一時的に子どもを預かることを目的とする里親制度には根本的な違いがあるので、どちらの制度を利用するかについては、慎重に検討する必要があります。

どちらの制度を利用すべきか迷うこともあるでしょう。


里親制度には、養子縁組里親という種類の制度もあります。
これは、将来養子縁組を希望する場合の里親制度利用方法です。


特別養子縁組を成立させるためには、6ヶ月以上にわたって子どもを実際に養育監護してきた実績が必要になります。


そこで、その実績を作るために、まずは里親となって子どもの養育に携わるのです。

問題がなければそのまま特別養子縁組の手続きをすすめて、子どもと養子縁組をすることができます。


このようにステップを踏めば、子どもとの関係もスムーズに作っていくことができます。

もし、里親にするか特別養子縁組にするかで悩んでいる場合には、一度養子縁組を視野に入れて、養子縁組里親の制度を利用してみても良いでしょう。


再婚で認められるには厳しい条件、特別養子縁組 !!!


子連れ再婚をする際、条件は厳しいのですが、子供の戸籍に関しての選択肢として特別養子縁組があります。


特別養子縁組というのは、6歳未満の未成年者の福祉のために特に必要がある時に、未成年者と実親との法律上の親族関係を消滅させ、実親子関係に準じる安定した養親子関係を家庭裁判所が成立させる縁組制度です。

つまり、再婚相手の本当の子供により近づけることになります。


特別養子縁組によって実の父親との縁が完全に切れることにもなります。

特別養子縁組をした場合、実の父親が子を養育する義務も消えますし、実の父親から子への相続権も消えます。

なので、養育費の取り決めをしていたとしても実親の支払い義務がなくなります。


特別養子縁組をするには、条件があります。

子供が6歳未満であることです。

ただし、ずっと一緒に住んでいるなどの理由があれば8歳までという条件です。


養子の実の両親が同意していることも条件です。

その他の条件として、養親となる者は25歳以上であること。配偶者がいること。

夫婦共同で養子縁組をする必要があるということ。

また、離縁は原則的に禁止という条件もあります。


申立て人は養親になる者、申立て場所は養親となる者の住所地の家庭裁判所です。

特別養子縁組は、普通は1組の夫婦が他人の子と養子縁組して、新たな父と母になります。

ただ条文上は、夫婦のどちらかが実親でも良いことになっています。


そのため、再婚の際に連れ子が6歳未満の場合、特別養子縁組をして実父との関係を絶ち、再婚相手のみを父としたいと考える人もいるようです。

しかし子連れでの再婚の場合、家庭裁判所では基本的に特別養子縁組を認めません。

子連れ再婚で特別養子縁組が認められるのは、実親の監護が著しく困難または不適当であるという特別な事情がある場合のみで条件はかなり厳しくなります。

通常は再婚での特別養子縁組が認められることはありません。


子連れ再婚の場合は通常の養子縁組で十分目的が達成されると考えられているので、特別養子縁組を認める必要がないのです。

裁判所の判断の条件はあくまでも子供にとって幸せかどうかということです。


そもそも特別養子縁組というのは、児童福祉のための縁組制度で、適切な環境に置かれない乳幼児が別の家庭で養育を受けることを目的に設けられたものです。
子連れ再婚での特別養子縁組が認められる条件が厳しいのはそういう理由なのです。


本当に特別養子縁組の手続きが必要なのか、普通養子縁組でいいのか、

条件をよく考えて子供の将来に最もよい選択をするのが、子連れ再婚をする親の役割です。



事例:2歳1ヶ月の子どもを連れての再婚です。どうしょうか・・・

2歳1ヶ月の子どもを連れての再婚です。

どうしても特別養子縁組を組みたいのですが、どうしたらいいか教えて下さい。

また、そのご経験がある方がいらっしゃればそれも教えて下さい。

ほぼ、産まれてから、一緒に生活したことはなかったのですが、1歳1ヶ月から正式に別居し、1歳7ヶ月で離婚しました。

原因は、元旦那の家庭放棄でした。

今月で子どもも2歳になり、ずっと支えてくれていた人と来月再婚を考えています。

子どもは、本当の父親とは、ほとんど関わることなく、離婚する事になってしまいました。

現在、お付き合いしている彼を物心ついたときから、父親だと思い、たくさん愛情を注いでもらっています。

子どもを、特別養子縁組を組み、実子と同じ様に育てたいと思っています。

前の父親からは、たまに2万円の養育費が振り込まれました。養育費は、どちらかが再婚したら、振込は終了すると言っていたので、もう振り込まないでいいです。という事以外連絡はとっていません。彼にも、早くいい人を見つけ、子どもに父親を作ってと言われ離婚しました。

元旦那は、家にもほとんど帰って来ることは無く、私には手をあげていました。

まだ、おっぱいを飲んでいる子どもを抱いている私に向かって物を投げつけたりもしました。子どもが、まだ、口も利けず、必死に這いつくばって、そばに寄っていっても、テレビが見たい、寝たい、メールがしたい・・・そういう理由で、子どもを部屋のから出したり、振り払っていました。

子どもを虐待とまでは、いかなくてもその予備軍でした。

今の彼は、子どもを私の連れ子ではなく、ちゃんと1人の人間として見てくれています。

しっかり向き合って愛してくれています。そんな彼と、子どもの姿を見ていると本当の親子だと感じます。でも、戸籍上は、養子となってしまい、それが、とても悲しいです。

法律などを見ると、連れ子の特別養子縁組は難しいと書いてあり、子どもの不利益が多いからとなっていますが、前の夫が万が一、子どもへ多大な財産をわけてくれたとしても、そんなことより、愛してくれる人と家族として生きていける方が何倍も幸せなことと思います。

そして、その万が一の可能性は、本当に0.00001%とかでも、その為に、養子・養親としていかなくてはいけないのでしょうか?

勝手なことを言っているのかもしれませんが、どうしても実子として家族になりたいです。何か知恵を貸して下さい。お願いします。       2011/6/23


Ans:

特別養子縁組の要件は役所の戸籍係に聞くことではなく、家庭裁判所が認めるか認めないかによります。

年齢的には6才未満であてはまっていますが、要件はどうですか?

まず養親は婚姻していないと無理です。まだ結婚していないなら認められません。

養親の年齢は25才以上と決まりがありますが片方は20才以上でも構いません。

実父母の同意があること。これは大丈夫そうですね?

次にお子さんの家庭状況です。ここが重要です。

実の父母による監護が著しく困難、または不適当であること。

その他特別な理由があることが認められ、子供の利益のために実親とは縁を切った方がよいと認められて初めて特別養子縁組が成立します。

お母さんに離婚歴がありますし実親からの遺棄や虐待もない、実の父親は養育費を払う気があり、あなたから断ったと書いてあるのでこれは簡単には認められないでしょうね。

再婚するからって特別養子縁組を認めていたら、世の中特別養子縁組だらけになってしまいます。

実父がろくでもない男であっても連続放火事件の犯人とか、大量虐殺の犯人、国家転覆を企てた犯人というわけでもないし、縁を切る理由が弱いような気がします。

普通養子縁組を嫌がりますが、養子縁組すると彼にとってお子さんは正当な嫡出子になるんですよ?

将来、自分を愛情いっぱいに大切に育ててくれたお父さんが実は養親だと分かる日が来ても、お子さんにとってはお父さんに変わりはありませんよ?

戸籍の続柄にこだわると、大事な物を見失いますよ? 

彼が続柄にこだわっているなら、大切なことを忘れているような気がします。


「同性カップルの里親」はこうやって誕生した !!!

立役者が語った「舞台裏」

2017/04/30

大阪の同性カップルが「里親」と認定され、子どもを育て始めた——。

そんなニュースがこの4月、全国を駆け巡った。

突然、降ってわいたように見える話だが、その背景には、あるNPOの活動があった。

LGBTを里親と認めるよう活動してきた一般社団法人「レインボーフォスターケア」の藤めぐみ代表に話を聞いた。


大きな誤解

私は2013年、「同性カップルも里親に」と掲げ、レインボーフォスターケアを立ち上げました。

そのとき、一番多かった反応は、「法律を変えなきゃ無理だよ」「どうせ法改正をするなら、同性婚の実現をめざす方がいい」というものでした。

LGBTが里親として子育てをすることに、おおむね賛成という人たちですら、そうした認識でした。

これは大きな誤解でした。

実は、もともと法律上は、同性カップルも里親になれるんです。

過去に児童虐待をした人はダメとか、養育についての熱意がないとダメといった法令はあります。

でも、同性カップルがダメとはどこにも書いていないんですね。

だから私としては、LGBTの里親認定は、現場の意識さえ変われば、すぐにでも実現できると考えました。


あまり知られていなかった「里親」制度

でも、「法改正が必要」という誤解をとくのは、簡単なことではありませんでした。

いくら「法律上は大丈夫ですよ」と説明しても、なかなか信用してもらえない。

日本を見渡しても、私の他にそういう活動をしているNPOはありませんでした。

そうした議論をしている法律家もいませんでした。

そもそも里親は、日本ではそこまで一般的に知られている制度ではありません。


「特別養子縁組」との勘違いも多い。


里親は、18歳になるまでの一定期間だけ、子どもをあずかって育てる制度。

特別養子縁組は、生まれたときの親との関係をたち切って、新たな親子関係をつくるもの。かなり違いますよね。


だから里親の要件は、養子縁組よりも緩やかです。

シングルファザー、シングルマザー、成人した子と母の組み合わせなど、いろんな里親が子どもを育てています。


変化

それでも、活動を始めると、さまざまな情報が寄せられるようになりました。

里親になろうとした同性カップルからは、

「役所に行ったら、『夫婦であることが条件』と断られた」

といった声が寄せられました。


中には、差別的な態度で断られたというケースまでありました。

そんな風に言われ、「法律を変えなきゃ無理だな」と諦めている当事者もいました。


こういう状況下で私が考えたのは、「もしかして、自治体側も『法律を変えなきゃダメ』と思い込んでいるのではないか?」ということでした。


厚労省は「家庭的養護の推進」を掲げ、里親を増やそうとしています。

差別や思い込みによって、同性カップルが里親になれないのは、大きな機会ロスです。


わたしは「法改正しなくても、運用を変えるだけで里親認定はできると、広く伝えるべきだ」と考えるようになりました。


同性カップルの子育てって?


私の周りには、離婚した後、自分の子どもを同性パートナーと一緒に育てている人もいます。
また、女性カップルが、精子提供を受けて出産した子どもを育てているケースもあります。
彼らは、ごくごく普通の子育てをしています。
同性カップルだから、子育てが他人と違うわけではありません。
ごく普通に、子どもに愛情を持ち、子どもとぶつかり合いながら、子育てをしている。
何がどう違うかということもない。


片方に親権がないというような違いはありますが、これは同性カップル側の課題ではなく、早急に解決すべき国の課題です。


私がシアトルで会った女性カップルは、里親として、心に傷を負った子どもたちを何人も育て上げ、地域で尊敬されていました。

彼女たちに育てられている子どもと会いましたが、とても安心して暮らしている様子でした。

私はその姿に、深く感銘を受けました。

かっこいい人たちだな、こういう人が日本にも増えればいいのに、と思ったんです。

アメリカでは、LGBTの子どもをLGBTが預かるケース、男性を怖がる女の子を女性カップルが預かるケースもあると聞きました。


そうしなければいけない、というわけではなくて、「いろいろな子どもがいるのだから、里親の候補としても、いろいろな大人がいたほうがいい」と確信しました。

つまり、子どもの選択肢を増やすべきだと思ったんです。


難解な方程式

では、どうしたらいいのか。法律改正なら、まずは国会議員に働きかけることになります。

しかし、自治体の運用面での問題となると、ブラックボックスです。

個々の自治体に聞いてみるまで、何が起こっているかはわかりません。

「断られた事例」を集めて、問題提起をしようとしましたが、なかなかうまくいきませんでした。

こういう時の社会運動はどう進めればいいのか。

悩ましかった。この難解な方程式をどう解くか。


モデルケース

里親事業を行っている自治体は全国に69もあります。

すべてに働きかけるのは、手が足りません。


そこで、どこかの自治体に「同性カップルも里親になれます」と、広報してもらえないかと考えました。

自治体が呼びかけていれば、当事者も他の自治体も耳を傾けてくれます。

そこで私は、大阪市淀川区に足を運びました。

区長がLGBT施策に熱心で、2013年に「LGBT支援宣言」を発表していたからです。


里親制度の管轄は、都道府県(もしくは政令指定都市)ですから、淀川区のみで運用を変えることはできません。

それでもLGBT支援に前向きなところに話を聞いてもらえれば、何か突破口が開くかもしれないと考えたのです。


淀川区の本気度

淀川区の「支援宣言」はどこまで本気なのか、一抹の不安もありましたが、それは榊正文区長や職員さんに会ったとたん、吹き飛びました。

榊区長、職員さんは性的マイノリティについて知識があり、問題意識もあった。

社会的養護についても勉強されていたので、すぐにわかり合えました。


私が強く要望したのは次のことです。

「LGBTも里親になれると、広報してください。ウェブサイトに一行載せるだけでもいいんです」


大阪市と……2時間の激論

といっても、直接的に里親制度を担うのは、淀川区ではなく大阪市です。

次のステップは、大阪市こども相談センター職員との意見交換会でした。

淀川区に話をしてから、意見交換会の実現まで、約1年という月日がかかりました。

その場で与えられた時間は、2時間。センター職員とは激論を交わす場面もありました。

でも、最後はわかりあえたと感じました。

最後に効いたのは、LGBT当事者、児童養護施設の職員、里親、さまざまな人たちの意見を集約して作った資料だったと思います。


それが、この「#さとおやオピニオン」です。

「LGBT当事者を排除することは絶対にありません」


その数週間後、淀川区のLGBT支援事業ニュースレター「虹色ニュース!」2015年9月号で、次のようなセンター側のメッセージが発信されました。


・里親として適任者であれば、差別や偏見でもってLGBT当事者を排除することは絶対にありません。

・わたしたち(こども相談センター)を信用してください! 

・まずは、直接、相談に来てください!


これは「サイトに一行でいい」という、当初の私の要望を大きく上回るものです。

自治体がLGBTの里親に扉を開いた、画期的な瞬間でした。


大阪の「男性カップル」

その呼びかけに応じたのが、今回報道された男性カップルでした。

扉が開いていれば、当事者は手を挙げやすくなります。

大阪市がメッセージを出し、同性カップルが手を挙げ、実際に子どもが預けられた。

あらたな「家庭」が生まれた瞬間を目の当たりにして、「運用が変わる」とはこういうことだ、と体感できました。


東京都

ただ、全国的には、大阪のようなケースばかりではありません。

現在、東京都には、里親候補から同性カップルを実質的に排除する基準があります。


私は2016年、LGBT当事者と東京都とが開いた意見交換会で、「東京都はなぜ、同性カップルを『里親認定基準』から排除しているのか」と質問しました。

残念ながら、そのときの東京都の回答は、淡々と基準を読みあげるだけの、冷たいものでした。


毎日新聞は4月16日、「全国の自治体に調査したところ、東京都だけが同性カップルを実質的に里親に認定しない基準を設けていることが分かった」と報じています。


東京都はこの記事で、毎日新聞の取材に「民法で結婚が認められないなど、まだ社会制度の整備が進んでいない。子どもの受け止め方や成長過程での影響が分からないため、慎重に検討したい」と回答しています。


何度でも言いますが、里親は結婚とは無関係です。

里親には、結婚をしていない人もいますし、「親子で里親」という人もいます。

東京都は「影響が分からない」と言い放つのではなくて、こうした現状に目を向けて考えてほしい。


今回の件については、厚生労働大臣が「ありがたい」と発言しました。

今後、自治体の運用は、大きく変わる可能性があります。


何と言っても、今回いちばん良かったのは、多くの人が、社会的養護の下で暮らす子どもに思いを馳せ、新しい家族のあり方について考えたことだと思います。


同性カップル、同性カップルの家族たちが、地域で信頼され、特別視されることなく社会に溶け込み、当たり前に生活を営む日が一歩近づいたように感じています。


最初の重たい扉は開きました。ただ、これで終わりではありません。

親元で暮らせない子どもたちを取り巻く環境を良くするために、多様な人たちが安心して暮らしていくためには、どんな制度が必要なのか。

次の扉を開くために、あきらめずに、声を上げ続けたいと思います。



IU(아이유) _ Only I didn't know(나만 몰랐던 이야기) 

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