「#生涯未婚の原因」は本当におカネか!?
...「分厚い中間層」が消滅した現代 ... #生涯未婚率
2005年に人口減少局面に入った日本では、少子化対策が喫緊の課題であることは言うまでもない。
少子化の理由は複合的なものだが、そもそも結婚まで行き着かない男女が増えている問題が指摘されている。
国立社会保障・人口問題研究所の調査によると、50歳の時点で1度も結婚をしていない未婚の人を示す割合である「生涯未婚率」は、2015年の時点の推計で男性が24.2%、女性で14.9%となっている。
男性の約5人に1人、女性では約7人に1人が結婚しないということだ。
「結婚したい人」の割合は、大きく変わっていない
一方、18歳以上35歳未満の未婚者男女ともに、9割弱が「いずれは結婚するつもり」と答えており(国立社会保障・人口問題研究所「出生動向基本調査」)、約30年前からこの数字に大きな変化はない。
「結婚離れ」といわれる現象が起きているわけではないのだ。
それでも生涯未婚率が上昇しているのは、男性が以前よりも稼げなくなってきていることで、金銭的に結婚することが難しくなっているという考え方は有力だ。
しかし、ニッセイ基礎研究所の天野馨南子氏は、この考え方は思い込みの要素が強いのではないかと指摘する。
2016年9月に公開した天野氏のレポート(未婚の原因は「お金が足りないから」という幻想)は、大きな注目を集め、通常レポートの3~4カ月分相当のアクセスを、1カ月で叩き出したという。
「このレポートは、独身未婚の読者からも共感の声を多数いただきました。
相手がいるけどおカネがない、なら理屈としてわかるのですが、最新の調査では男性の7割はそもそも相手となる恋人がいない。
おカネがあってもなくても結婚に至らない人は至りません。
本当の問題は別のところにあるのではないでしょうか」
注目すべきは、未婚者が結婚で必要と考える費用と、未婚女性が相手に対して求める収入の額の関係である。
天野氏のレポートでも触れられているが、明治安田生活福祉研究所が行った最新調査(「2016年 20~40代の恋愛と結婚」)で、20代から40代の男女が「結婚生活を送るために最低必要だと思う世帯年収」の回答が示されているのだが、これを見ると、実際に結婚生活をしている既婚者と、まだ結婚生活の経験がない未婚者の間に大きな開きがある。
既婚者の回答は、1位が400万〜500万円で23.5%、2位が300万〜400万円で21.1%。
約半数弱が300万~500万円に収まっている。
一方、未婚者は1位が400万〜500万円で23.6%と既婚者とほぼ変わらないのだが、2位が500万〜600万円で20.1%となっている。
つまり、未婚者のほうが、既婚者よりも必要と思う年収ゾーンが約100万円ほど高い。
そして、未婚女性が相手に対して求める収入の額を見てみると、20代未婚女性の57.1%、30代未婚女性の67.1%が、結婚相手となる男性に対して最低400万円、またはそれ以上の年収を求めている。
つまり、未婚女性が男性側に求めている年収が400万円で、必要だと感じている「世帯年収」も400万~600万円ということになる。
ということは、男性の稼ぎで生活を維持できることを期待している割合がかなり高い(個別の人の考え方については、もちろん別問題である)といえるだろう。
「世帯年収」は共働きによって生み出してもよいはずだが、その負担が男性に偏る傾向は変わらないようだ。
「年収400万円」で足切りは、しんどい
しかし、現代における男性の収入は、以前と比べて厳しくなっていることは、客観的事実として指摘されている。
厚生労働省が2015年に出した「賃金構造基本統計調査」では、40歳を超えた男性の賃金でも300万円強だ。
これまでのような年功賃金の慣習が残る多くの会社では、結婚適齢期の20代の男性は、まだまだ賃金水準が高くないことがほとんどで、20〜24歳の役員ではない男性の賃金は、200万円超という数字も出ている。
1997年においては、20代の男性でも所得300万~400万円台の雇用者の割合が、約25%と最も多かった(総務省「就業構造基本調査」)が、現在では200万〜300万円台が主流になっていて、かつて存在した「分厚い中間層」は消滅している。
結婚適齢期の男性に対して、「400万円」という足切りを課すことは、かなり高いハードルとなってしまう。
しかし、男性もこの基準を前提にしてしまうと、「今のままの収入では結婚はムリ」と思い込んでしまい、悪い意味での幻想ができあがってくる。
「女性が男性に現実を度外視した収入要求を持っており、未婚者は男女とも既婚者よりも生活に必要な収入額を大きくとらえてしまっている」というのが、天野氏の指摘だ。
「こうした風潮が続くと、男性は女性に選ばれる基準がおカネばかりだと思い込み、出会いの場に出向くことにさえ自信をもてなくなっているのではないでしょうか。
結婚の問題は、経済的に大成功を収めれば解決するという問題ではなく、本来はコミュニケーション能力の問題であるということに気づいてほしい。
男女ともおカネの問題を建前にして、まずは人間関係をきちんと築いていくことから逃げる傾向になってしまうならば問題です」(同)
かつては、男性は「マジメに会社勤めをしている人」になりさえすれば、結婚するチャンスがたくさんあった。
そもそも、高度経済成長期の一般的なモデルであった、長期安定雇用を前提とした日本型雇用のスタイルでは、通常、出産のない男性しか継続的に働けない。
女性の多くは、結婚して家庭に入ることが生きていくうえでの大前提。
男性は男性というだけで、経済力で優位となり、女性から「話していてつまらない」「共感力に乏しい」と高度なコミュニケーションを求められず、さらに「年収400万円でないと……」などと言われるすきを与えることもなく、結婚を考えさせる武器を持つ立場だったといえる。
女性は能力があったとしても、そうした社会構造を実際に突破することまでは容易ではなかったはずだ。
ところが、今はそうではない。「女性活躍」が推進されれば、女性がより労働市場に進出し、かつてのように「稼げる男性」の立場は特別なものではなくなる。
ところが、女性が稼げるようになっても、本質的な意識はまだ変わっていない部分も多い。
婚活支援事業を行うIBJの調査では、男性の年収が500万円を超えると、女性からの「申し込まれ数」が女性への「申し込み数」を一気に上回る、という結果が出ており、成婚率もここを境に大幅にアップする。
「年収500万円といえば、日本の平均世帯年収549.6万円にかなり近い数字。『自分が出産・育児で仕事を辞めても生活ができるレベル』を求める女性の堅実な考えがうかがえる」(IBJ広報室)というが、まだまだ女性の働きやすさに課題が残る今の状況では、やむをえないことなのかもしれない。
統計上、日本人は絶滅危惧種?
天野氏は「生物学的には、女性は男性よりもこだわりが弱いといわれています。ですので、『彼もいいけれど、彼もいいかもね』という好みの条件緩和は女性のほうがしやすいかもしれません。まずは女性が、男性は経済力ありきと思い込みすぎず、男性をすてきと考える基準を多様化させることが、出会うための早道ではないでしょうか」と話す。
ただ、個人の自由を尊重するのであれば、結婚をすること自体もあくまで選択肢の1つであることが原則で、当事者の意識まで含めた少子化対策を進めていくと、ライフプランに介入することに対する拒否感も出てくる。
しかし、天野氏は「個人のライフデザインの応援の枠を踏み外さないことが前提」としつつも、次のように危機感をあらわにする。
「ヨーロッパ的な人口増強策を取らないと、統計上、日本人は絶滅危惧種になりつつあるといっても過言ではありません。国益というものを考えると、各論と総論は一致しないことがある。個人のライフスタイルとしてはさまざまな正解があるが、社会全体で考えると、長期にわたる少子化を打破することは喫緊の課題です」
日本の婚外子の比率は2%程度と諸外国に比べて少なく、結婚をしなければ出産に至らない傾向が根強いことは変わらない。
「分厚い中間層」が消滅した現代では、「結婚はハードルを越えなければできないもの」という発想を転換する必要があるはずだが、まだ社会の変化に人々の意識が追いついていないともいえる。
「一人口(ひとりくち)は食えぬが二人口(ふたりくち)は食える」という格言もあるように、互いに協力関係が築ければ、独身でいるよりも世帯をもったほうが生活の経済効率性は上がり、将来の出産への蓄えもしやすくなるという面もあるだろう。
しかし、日本人は「自分はこう考える」と個性を出す教育を受けておらず、まわりの意見が常識と考える傾向があることは否定できない。
世間に漂う雰囲気に流されて、女性は「年収400万はないと結婚相手の候補として見れない」、男性は「まだ自分は結婚できるほど稼げていない」と思い込んでしまって、お互い機会を逃しては本末転倒だ。
マッチングの段階で先に進めなくなってしまうと、いくら出産や子育てを支援しても、少子化対策の効果が発揮されないという事態が起こりかねない。
「必要な世帯年収」に対する幻想の打破は、解決の突破口として見直されるべきではないだろうか。
生涯未婚の男性23%、15年 女性14%、最高更新!!!
2017/4/5
50歳まで一度も結婚をしたことのない人の割合を示す「#生涯未婚率」は2015年に男性23.37%、女性14.06%だったことが4日、厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所の調査で分かった。
10年の前回調査より男女とも3ポイント超伸びて過去最高を更新した。
生涯未婚の人は男性のほぼ4人に1人、女性のほぼ7人に1人となり「結婚離れ」が鮮明になった。
人生の選択が多様化する一方、非正規労働者が約4割に増え金銭的な理由で結婚をためらう人も多く、少子化の流れに歯止めはかかりそうにない。
非正規の処遇改善など結婚を後押しする対策が急がれる。
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