本当に幸せなのか? #家庭連合(旧統一教会)の国際合同結婚式...
恋愛のプロセスを経ずに、結婚式で初めてその相手と出会い、夫婦生活をスタートする。
「あなたの相手は、この人です」と、結婚相手を指名される。
新婚カップルの多くは、結婚式のわずか数か月前に紹介で出会い、恋愛のプロセスを経ずに結婚に至る。
そんな経緯で一緒になった4組の夫婦に話を聞いた記録です。
2016.04.09
#国際合同結婚式、式典は有名だが、どんな人たちが参加しているのかはほとんど報じられてこなかった。
そこで2016年2月、韓国で開催された国際合同結婚式に参加した新婚カップルのインタビューを紹介(http://nikkan-spa.jp/1060188)したところ、その独特な結婚観や家庭観に対して大きな反響を得た。
以前は、教祖が目の前で初対面同士を結婚相手として結び付けたり、写真だけで組み合わせを決めたりしていたという。
結婚式の場で初めて出会った二人が、本当の夫婦生活をスタートさせるのだ。
教団側は、こうしたシステムで結婚した家族の出生率が第二次ベビーブーム並みの2.1人、離婚率はわずか1.7%だと胸を張る。
「○~○歳の日本の人、来て下さい」
「次は、△~△歳のタイの人(フィリピンの人)~」
そんな声に呼び出された男女が円形になって整列する。
アジア人が混合している状態だ。
その真ん中には教祖の姿。
彼はまず一人の男性を立たせた後、女性を順に見て、「はい、この人」と指名する。
その間、約10秒。
①~Yさん夫妻・2005年に結婚~
2005年に結婚したのがY・Kさん(夫32歳)とAさん(妻31歳)の夫婦。
共に日本人だが、本人同士が話をする前に相手を指名されるため、お互いの国籍も分からない。
「どこの国の人ですか?」と韓国語で聞いた妻に、夫は「日本人です」と日本語で答えた。
「国際結婚をイメージしていたので、(日本人の)伴侶が決められた時は、キョトンとしました」と夫はその時のことを振り返って笑う。
相手がどんな人か、いや、どこの国の人かもわからずに、結婚相手として受け入れるというのは一体どういう心理状態なのだろうか。
疑問を投げかけると、夫はごく自然なこととでもいうように言った。
「結婚するという時点で、どんな人でも愛し貫き通します、という決意をしていますから」
彼らの信仰では、結婚相手は神から与えられるものと位置づけられており、全てを委ねたところで、自分に最もふさわしい相手と出会うと考えている。
それがどんな相手であっても、神の導きということのようだ。
結婚当時、夫は22歳、妻は21歳だった。
――結婚、早くないですか?
妻「早めに結婚して子供を生みたかったんです」
結婚相手が決まり、合同結婚式に参加しても、彼らはすぐには共同生活を始めない。
Yさん夫妻は7年の交際期間を経て一緒に暮らし始めた。
――恋愛することなく結婚相手が決まって、すぐに相手を一生の相手と見られるものですか?
妻「彼の両親に挨拶した時、ものすごく喜んでくれて、マフラーをプレゼントしてもらったのです。私もそれがとても嬉しくて、本当にいい人が天から与えられたと思いました。その時の余韻が1~2年続きました」
――結婚してみて、イメージと違ったことは?
妻「子供にも恵まれて、特にこうしてほしいという思いはなかったのですが、パパ(夫)が協力的に取り組んでくれます。子供の成長や将来の話もしてくれます。子育てでやることをチェックリストにまとめてくれたりして、子供のために、自分がなかなかできないことをやってくれます」
――相手が決まった時、「キョトンとした」と言いましたが、イメージと違ったことは?
夫「家庭を持つと身近になるので、宗教以前に人間としてぶつかることもあります。実は思いの他、ぶつかりました」
――どんなことが難しいですか?
夫「私が怒ると、妻は黙ります。最初はなぜ黙ってしまうのか、よく分かりませんでした」
妻「なんで怒っているのかな?間違ったこと言うとまた怒らせてしまう、と心配してしまうんです」
夫「私は一人っ子で、妻は5人の兄弟姉妹の末っ子。何かあったとき、末っ子の彼女は、家の中で静かにするというのが習慣になっていたのです」
――よく気づきましたね
夫「私たちにとっては、伴侶は天から受けたもので、何とかしようという意思がはたらきます。他人のせいよりも自分に原因があると考え、内省する期間を持ちます。ケンカの時も、相手の背景を考えて、言いたいことが言えないことを理解しました。そうやって少しずつお互い向き合って話せるようになってきたと思いますし、距離が近づいて来ているな、という気はします」
――どう変わりました?
妻「がんばって言おう、と思うようになりました」
夫「それを聞いて、なんだー、そんなことを考えてたの? 違うよー、という具合に、すれ違いがどこで起きたのかが分かるようになりました。そこにたどり着くまでが大変でした。大きな声を出すと、黙ってしまう、というのを繰り返してましたから」
――世の中には、「こんな結婚でうまく行くのか?」と思っている人がいます
妻「真(まこと)の愛があるからやっていけます。私たちの結婚では、真逆のタイプの人同士が夫婦になるという考え方です。結婚して1つの家庭を築くことで神に近づき、理想的な姿になっていく。共通の信仰、信念をもって、お互いに努力し協力することが前提になっていますね。祝福家庭(家庭連合の儀式で結ばれた家庭)だから幸せになれるのです」
――信仰に疑問を持ったことはないのですか?
妻「たまに教会に行きたくないこともありますけどね。生後8か月から親に連れられて教会には行っていたのですが、部活などでしばらく離れていた時期がありました。それが、教会ですばらしい人たちに出会い、自分はこういう人になりたいな、と思ってまた行き始めたんです」
夫「私はもともと、神様とか言うけど、見えないのに、体験しないと信じられないと考えるタイプでした。だからそんな体験を自分で求めたことがあるんです。海外でボランティア活動していた時、あることで大先輩からものすごい剣幕で怒られました。それはもう殺されそうな勢いで、私は絶望状態になりました。自分自身、どうしたらいいのか分からなくなって、勉強会に参加したんです。そこでの祈りを通して、霊界を感じて心が満たされ、涙が止まらなくなるという経験をしました。その体験が原点としてあるので、今は信仰がゆらぐことはないと思います」
――信仰心が篤いんですね。お子さんが小さいですが、ケガや病気の時に宗教的な理由で病院に連れて行かない親がニュースで報じられたりすることがありますが、あれは共感できますか?
夫「内的原因と外的原因を考えることはあります。目に見えるもの以外にも影響を及ぼしているものはあると思います。船に乗ろうとした直前に足が止まり、乗る予定だった船が沈没した、みたいな話は聞きますね。インフルエンザでも宗教活動をやっていれば治るとか言っていた人も以前はいました。でも、今は、お祈りだけでは限界がある、という認識の人が多いと思います。心の姿勢も大切ですが、治療は治療でちゃんとしてあげてほしいです」
②「合同結婚式でなけば結婚していなかった」
~K・Wさん、Y・Tさん夫妻・2004年に結婚~
夫は韓国人、妻は日本人。
今は妻の両親と一緒に暮らす。
結婚したのは二人が共に19歳、大学生の時だった。
「男の人は面倒くさくてイヤだったんです。一般学生なら恋愛は普通あると思いますが、私にはなかった。理想的な人があまりいなかったんです。それで、同じ信仰観を持った人の方が愛を育めるかと思いました。だから別に強要された訳でもないですよ」
なぜそんなに若くして結婚を?と聞くと、妻はそこまで一気に答えた。
「むしろ祝福(旧統一教会の合同結婚式)を受けなかったら、結婚しなかったと思います。一般の男性は結婚してもすぐ浮気とかしそうで、イヤだったんです。結婚にあこがれはありませんでした。それで結婚の絶対条件として、浮気をしない、お互いを愛する、お互いが自分よりも相手よりも夫婦よりも家族をより大切にする、そんな人となら、ということを考えていました」
そんなイメージを一体どのように実現したのか。
「申込書に希望する相手の国を書く所があり、日本人はイヤだったのですが、何も書きませんでした。日本人じゃない方がいいと思っていたので、相手が韓国人で良かったと思いました」
二人は、写真によるマッチングで紹介を受け、結婚式の2~3週間前に初めて家族同士で会った。
その時、夫の母親が妻を見て、涙をボロボロ流し始めたという。
聞けば、家族によく似ていて驚いたのだそうだ。
妻はその体験が印象的で嬉しかった。
さらに、初めて会う時、夫は妻に渡す手紙を準備していた。
「私たち夫婦がうまくいくことで、国を越えて世界のために生きていきましょう」という内容だったという。韓国語で書かれていたため自分では読めなかったが、教会で翻訳をしてもらった。その時の手紙が今でもずっと心に残っていると言う。
それをきっかけに、妻はまず韓国語を学んだ。
1年間、韓国に留学して、できるようになったと言う。
――日本人の妻を希望したのですか?
夫「自分が決める立場じゃないと思っていました。日本人と言われて、どうしよう、うまくいくかな、という不安はありました。どうなるかわからない。でも、相手が日本人だからうまくいくとか、いかないとかいうものではないと思っていました。家庭というものは自分たちで作っていくもので、努力するしかないですからね」
――親戚の反応は?
妻「最初は、どうして朝鮮人なの? と言われました。でも、連れて行って紹介すると、彼は感じがいいので、彼に会う前と会った後で反応はすごい変わりました。披露宴でアリラン歌うか、とか、韓国がなかったら仏教も入ってこなかった、とか言い出したんです。その時、知らないから偏見があるんだと思いました。本当に、顔を合わせて食事をしたら大きく変わったんです」
――韓国ではどうですか?
夫「最初、母に怒られました。祝福を受けて、相手が日本人になったのに、日本語も勉強しないの?何もしないの?と。 妻となる人は一年に何度も来て、勉強してるのに、本当に祝福を続ける気はあるの?と厳しく言われたんです」
妻は一人娘で、両親が高齢だったことから、夫婦は日本で生活することを選んだ。
夫は日本語ができなかったので、アルバイトをしながらまず日本語を学んだ。
妻「お婿さんというより、子供みたいな感じでした。最初の言葉の先生は母で、テレビのスポーツ中継を一緒に見ながら解説していました」
――妻の両親との暮らしは気を使いませんか?
夫「みんなで生活した方が、オトクです。私は家事もあまりできません。私がやってあげることよりもしてもらうことの方が多い」
日本での妻の両親との暮らしも十年を越えた。今では流ちょうな日本語を話し、韓国との貿易関係の仕事をしている。二人の間には小2と小5の子供たちがいる。
③「先祖で誰かに悪さをしたせいで、『子供を産む機能を止められている』と言われました」
~Iさん夫妻・2007年に結婚~
日本人の夫I・Sさん35歳と、ハンガリー人の妻Gさん33歳。
写真によるマッチングで決まった結婚相手だった。
夫のSさんは結婚当時26歳。
結婚まで英語は一切話さず、特に海外志向だったわけでもなかった。
ただ、世界の問題を解決するには国際祝福――という教えが妙に印象的で心に残ったことから、「国際」を希望して相手が決まった。
それでもハンガリー人だと知らされた時は驚いたと言う。
「完全に想定外でした。縁もゆかりもありませんでしたから」と夫は当時を振り返って話す。
対照的に妻は冷静だった。
「私は、夢に見ました。3つの国が出てきて、1つはドイツ人、2つめがスロバキア人、3つめが日本人で、とてもリアルな夢だったんです。教会で出会った日本人の印象は良かったので、不安はなかったです」
――会ってみて、どうでしたか?
夫「韓国での国際合同結婚式の場で、初めて会いました。第一印象は、優しそう、穏やかそう、親切そうに思いました」
妻「やさしい人だと思いました。初めて会った時、手にトラベルガイドを持っていて、ハンガリー語を勉強しているのが分かりました。会話は英語で、、、流ちょうでしたよ」
夫「普通に会話できちゃった、と驚きました」
――言語も違う、初めて会った相手と結婚する。一体どんなこと話すのですか?
夫「お互いの生い立ちとか、ハンガリーと日本、お互いの国のこととかですかね」
妻「日本料理とハンガリー料理のことも」
夫「教会でどんな生活をしていたのか、も話しましたね」
――いつからどこで生活するというのはスムーズに決まったのですか?
夫「30歳までに家庭を持ちたかったことと、夫の国に妻が引っ越してくることが前提だったので、自然に日本に」
妻「ハンガリーは適当な人が多くて、ハンガリーはもうヤダと思ってました。私は繊細な方でハンガリー人のストレートな態度が苦手だったところもあります。教会で知り合った日本人はやさしくて丁寧な人がたくさんいたので、日本に来るのを楽しみにしていました」
――両親はビックリしたでしょう?
妻「ビックリしました。でも、彼と会った時に安心したようです。それで日本に行っても大丈夫かな、と思いました。父が初対面で彼のほっぺにキスをしたんです」
夫「それにビックリして硬直しました。でも受け入れてもらえたんだと感じました」
――生活でのギャップは?
夫「家でパソコンに向かって集中して作業していると、怒ってるの?と聞かれたりします。はじめはその意味が分からなかった。でも、あ、パソコンに集中してるだけだから、気分悪くさせたのなら、ご免なさい、というやりとりがありました」
――難しいハードルはありませんか?
夫「2013年にそろそろ子供がほしいと思った時、検査を受けたら、精子なしという診断を受けました。東京の名だたるクリニックに行きましたが、子供は諦めた方がいいと言われました。残された手段は、手術で取り出すというもので、ちょっと覚悟がいります。その頃に、霊視ができる人に見てもらったら、先祖が悪さをして、その先祖に恨みをもった人たちが私たちに悪さをしている、と言われたんです。子供を産む機能を取られていると」
家庭連合の教えでは、結婚して家庭をもったうえで、子供をたくさん産み育てることに重きを置いている。その信仰を持つ人たちにとって、子供が授からないというのは、それだけで大きなプレッシャーを感じることは想像に難くない。
――それで、どうしたんですか?
夫「霊的な部分も、体も、両方見ていく必要があると考えていた時に、40日の修練会に出てみないかと声をかけてもらいました。それで社長に頼み込んで、休みをもらって行ったんです。2014年と2015年のGWの2回です。韓国で悪魔を取り払う行事だったのですが、帰国して検査を受けても、やっぱり精子は見つかりません」
――祈りは通じませんでしたか
夫「強力なマカを飲み始めました。アメリカのやつです。さらに、社長が買ってきた高そうな高麗人参茶が会社に置いてあったので、それも1日3回飲みました。そんな日々の中で、家のすぐ近くに不妊治療専門のクリニックがあるのを知って、見てもらったんです。そしたら、精子ありますよ、と。顕微授精しますか? 切る必要ないです、助成金も出るしと言われ、なんとかできるかと希望を取り戻していたところ、2015年の末ごろに受精したことが分かりました」
――不妊治療はつらくなかったですか?
夫「つらいです。ゴールが見えないから。信仰あるなしに関わらず、お金もかかるし、体も気力もキツイですね。ただ、子供ができなかったことは最大のハードルでしたが、それがきっかけになって二人は近づくことができたと思います」
――お互いのギャップを乗り越えるためにどんな努力をしていますか?
夫「会話を大切にしています。思ったことを素直に話す。言わないと積もり積もって爆発するので。不快に思ったことでも正直に話します」
妻「やさしくね」
夫「そう、やさしく。時間をおいてあの時はこうだったとためこまずに話します」
――何語で?
夫「三カ国語(日・英・ハンガリー語)ごちゃまぜで」
――こんな結婚の仕組みでうまくいくはずないと思っている人は少なくないですが、メッセージはありますか?
妻「判断する前に知ってほしいです」
夫「私たちも教会に来なかったら、こんな素晴らしい人に出会わなかったと思います」
妻「一般の結婚と家庭連合の結婚には違いがあると思います。多くの一般の人たちは、自分の幸せのため、自分のことを先に考えます。スタートが恋で、相手の全部をいいと思って結婚しますが、あとで悪いところが気になるでしょう。私たちは、先に相手のことを考えるという価値観で、結婚でもまず相手を幸せにすることで、自分も幸せになる、という考え方をします。夫は妻のために、妻は夫のために、と考えています。自分はこうありたい、というのが先に立つとうまく行かない気がします」
――ご自身は相手のために何を変えましたか?
妻「料理を作るのが上手じゃなかったですが、新しいレシピを覚えて日本料理も作ってみようとなりました。作るのは楽しいですよ。心からの愛で作った料理をどうぞ、と出しています」
夫「女性は話を聞くことが大切なんだと分かりました。話を聞いて共感する。疲れてても聞くようにしています」
妻「あ、愛の言葉」
夫「そう、二人で何をすれば愛を感じるかを話し合って、スキンシップを大切にしています」
今、妻のお腹には間もなく生まれる赤ちゃんがいる。
④まさか夫がアフリカ人になるとは考えなかった
~Eさん夫妻・1992年に結婚~
最後に話を聞いたのは、西アフリカにあるベナンから来たE・Aさんと日本人のYさんだ。
共に51歳の夫婦の間には4歳になる娘が一人いる。
マッチングを受けるにあたって相手の希望を提出する際、アフリカ人の可・不可を書く欄があった。
妻のYさんは最初、それを不可にして出したところ、相手が決まらなかった。
「それで教会長に言われたんです。これはアフリカ人かもしれないよ。それが神様の願いなのかもね、と」
妻は当時のやりとりを思い出しながらそう話し始めた。
「まず自分が決心することが大切と考え、祈りました。ボランティア支援などで行くことはありましたが、自分の夫がアフリカ人になることは考えられなかったですね」
当時の統一教会では、アフリカ人を「可」とするには、親にも許可をもらう必要があった。
許可というのは、OKか、黙認か、のどちらかだ。
親には信仰を明かしていたと言う。
二人が国際合同結婚式に参加した92年は、ちょうど歌手の桜田淳子さんらが参加した時で、同時に霊感商法も問題視され、統一教会は社会的にも大きな注目を集めていた。
「親には隠し事をしないので、信仰については明かしていました。大変なところに行ったと大騒ぎでしたが、今に飽きるだろう、しようがないと言っていました。でも、実家は米軍基地のある岩国という土地柄、外国人には拒絶感がありました」
それでも、と意思を伝え、アフリカ人を可として再度申込みをすると、すぐに決まった。
一方で、夫は自然に受け入れた。
夢を見て、相手がアジア人だということ、それはきっと中国だろうと感じていたのだと言う。
夫はまた、祖父が以前、自分の子孫が遠いところに行くことになると予言していたこと、親に彼女の写真を見せたところ、とても喜び、はやく来てほしいと言われたことを記憶している。
そうして二人は結婚し、日本に来た夫は地図を見て声を上げた。
「何で中国地方って言うんだ!」
妻は、中国地方・広島県の出身だった。夢で見た「中国」はこれのことなのかと驚いたと夫は振り返る。
――会話は?
妻「英語と仏語のちゃんぽんと、二人だけで分かる言葉ですね。仏語では他の人には通じないのに、なぜか夫にだけは通じました」
――言葉はハードルになりませんか?
妻「ケンカになると、言葉のことが出てきます。でも、細かいことが通じないので分からない、と言うと、そうじゃないあなたの性格だ、というやりとりになります。習慣の違いが大きいですよ」
――習慣の違い?
妻「全てが違ってました。たとえば、色の概念です。日本では青は男性、赤は女性、のような違いがありますが、ある時、彼が赤の箸で食べている。それ私のよ、と言うと、なんでだーって言うとかね」
夫「色で男女の差をつけることは、あまりないんです」
妻「どこか外でもらってきたネズミを夫からプレゼントされたこともあります。罠にかかっていたものだと思いますが。あと、ゴキブリを平気で手で捕まえるとかもありました。紙につつんで、お雛様みたいに顔だけ出したゴキブリを渡されそうになったこともあります」
――仲良くなる工夫は?
夫「愛がないと越えられないですね」
妻「話し合います。夜中までお互いに納得するまで。窓を閉めて。激しかったですから。それでお互いに出しきって、この人の性格だから仕方がない、こんな考え方もあるのかと受け入れます。自分とは真逆のことも多いですけどね」
夫「自分の世界だけなら変われないです。発展性がない」
妻「そうやって、見習うことができるようになりました」
――そういえば、お子さんが小さいですね
妻「ずっと二人でした。子供が出来なくて」
――教義的にも、プレッシャーがあったのでは?
妻「できないものは仕方ないと思っていました。でも、実際に子供ができてみると、白黒だった世界がカラーになった、みたいなことが言われますが、それがよく分かります」
夫「アフリカではすごくプレッシャーあった。いっぱい子供できてほしいという文化だから。子供ができないと、奥さんは自分で他の奥さんを紹介するような所なので。でも、私の父は妻が一人で、それはとても珍しいことだった。だから余計に母から子供がほしいほしいと言われてました」
――子供に対する希望は?
夫「日本とベナン、両方の記憶を持てた方がいいね。もう少し先にベナンに行って生活してほしい。自然たくさんあるし。パパイヤやマンゴーを自分で取って食べられるし。畑やってみたりね」
――子供はどこの国の人と結婚してほしいとかは?
夫妻「特にないですねえ」
――今後は?
夫「お金を貯めて、ベナンに帰るのが夢です。貧しい人たちに水をあげたり、電気のないところに光を届けたい」
妻「現地に行って生活環境が厳しく、体調を崩して帰国した経験があるので、私はずっとイヤだったんですが、夫の戻りたいという気持ちが変わらないので、最近は自分がもしベナンに行ったとして何ができるのかを考えるようになりました。ちょっと変わってきましたね。娘が小学校に入るまでに、という話をしているので」
ベナンは西アフリカの周辺国と違い、内戦がなく平和で危なくないのだと言う。
夫「現地で生活できないことはないです。両親は農業で子供たちを育てました。先祖から受け継いだ土地をどうするかとかの問題もあります。ずっと海外にいるとその世話もできません」
合同結婚式への最初の一歩
結婚を希望する信者は、家庭部長に代表される教会の世話人と面談をする。
ここで結婚が自分たちにとって重要な宗教行事であり、軽い気持ちではいけないことを話すという。
そしてその人物の性格や長所、仕事内容などをよく知る。
結婚希望者は、申請書(※写真参照)、戸籍謄本、健康診断書、最終学歴証明書、お見合い用の写真(顔、全身)、そして告白文を提出する。
書類にはそれぞれ明確な役割がある。
戸籍は離婚歴が分かるし、学歴などにもウソがないかを確かめる必要がある。
病気があれば診断書を求め、エイズ検査も実施している徹底ぶりだ。
話の内容が本当かどうかを書類でもきちんと確認するようにしている。
――提出書類にある告白文とは何ですか?
「誰にも言えない罪や負債などの情報を書いて封印したものです。誰にも見せないことを前提に書いてもらいます」
――宇田川さんも見ないのですか? その後、どうするのですか?
「見ません。これは自己と真面目に向き合うために必要なのです。終わった後にシュレッダーします」
シュレッダーなのか。
「あ、お祈りしてから、ですね」
お祈りしてから、シュレッダーなのか。
――それにしても、随分チェックが厳しいのですね。
「ほとんどの場合、他の教会に在籍している信者とのお見合いの形になりますので、所属の教会が身元保証をすることになりますし、結婚相手を選ぶうえでお互いの確かな情報を求めるものですからね。情報に漏れがないかなども細かくチェックします」
写真館できちんとした写真を撮ってくるのも基本だという。
結婚相手として真面目に検討してもらえるような服装やメイクについて具体的な指導もある。
不慣れな人にはどこの写真館に行けば良いかまでアドバイスする。
――写真は、やはり重要なんですか?
「あまりに実物と違うと問題ですが、それ以外は、お見合いにふさわしいこと、その準備がきちんとできていることを見せることが大切です。たとえば女性の場合、服とタイツの色がアンバランスで本部の登録チェックが通らないこともあります。また、以前、男性で羽織袴姿の写真を提出した人がいました。私はスーツのほうが良いですよと言い、本部もやはりスーツがいいと言ったのですが、本人がどうしても、いやこれでと主張してそのまま通しました。が、結果的にその方は決まりませんでした」
書類が全て揃い本部のチェックを通過すると、紹介システム(マッチングサイト)にプロフィールと写真が公開されて「相手待ち」状態になる。
――ふさわしい人物かどうかはどうやって分かるのですか?
「最初に出てくるのは顔写真、年齢、所属教会の情報だけです。その中から、『この人どうかな?』と思ってクリックすると、細かな情報が見られるようになっています。その情報をもとに、相手の世話人となっている所属教会の家庭部長などに連絡をとり、先方の人物像や希望などを確認します。お互いの世話人同士が良い組み合わせだと感じたところで、こんな人がいるけど会ってみませんか? とそれぞれの教会で、本人に話がいきます」
世話人に大きく依存したシステムのよう。
会うかどうかを決める前に「相手のプロフィールなどの資料を持って帰ってもらっている」と宇田川さんは言う。
そしてこの人が結婚の相手となる人かどうかを知らせてほしいと、3日間本人にお祈りをしてもらうのだそうだ。
信仰を持っているからといって、相手が誰でもいいという人ばかりではない。
生理的に受け入れられない場合もあり、無理せず会わなくてもいいものとしているという。
本人同士が会ってみようということになると、男女とそれぞれの世話人の4人で会う。
本人たちが結婚の合意をするまではお互いの連絡先を伝えることもない。
もう一度会いたいかどうかも世話人を通して伝えるという。
結婚すると決めるまで、早い人でも3~4回はこの4人の面談の機会を持つらしい。
一連のプロセス全てにおいてこのように事細かく相談に乗りケアをするため、世話人は一度に5人までしか対応しないのが決まりだ。
Eru(이루) _ 지우란 말 MV
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