#過剰投与 #副作用の危険 #ハイリスク患者さん
< #抗精神病薬 > #知的障害児の1割に処方… #自傷防止
毎日新聞 12/4(日) 9:00配信
◇過剰投与、副作用の危険
主に統合失調症の治療に使われる抗精神病薬が知的障害児の約1割に処方されていることが、医療経済研究機構などのチームが健康保険組合加入者162万人を対象に行った調査で分かった。人口に対する統合失調症患者の割合よりはるかに高く、うちほぼ半数で年300日分以上も薬が出ていた。チームは「大半は精神疾患がないケースとみられ、知的障害児の自傷行為や物を破壊するなどの行動を抑制するためだけに処方されている可能性が高い」と警鐘を鳴らす。
チームは、健康保険組合の加入者162万人の診療報酬明細書(レセプト)のデータベースを使い、2012年4月~13年3月に知的障害と診断された患者2035人(3~17歳)を1年間追跡調査。その結果、抗精神病薬を期間内に1回でも使った人は12.5%いた。年齢別では、3~5歳が3.7%▽6~11歳が11%▽12~14歳が19.5%▽15~17歳が27%--と、年齢が上がるほど処方割合が高くなっていた。
また、2種類以上の薬が31日以上継続して処方される「多剤処方」の割合も年齢と共に増加していた。
統合失調症患者は人口の0.3~0.7%とされ、発症も10代後半から30代半ばが多い。患者の大半には抗精神病薬が処方されるという。
知的障害児の行動障害の背景に精神疾患が認められない場合、世界精神医学会の指針では、まずは薬を使わず、環境整備と行動療法で対処するよう勧めている。抗精神病薬は興奮や不安を鎮めるが、長期服用により体重増加や糖代謝異常などの副作用があるほか、適切な療育が受けられない恐れも出てくる。
チームの奥村泰之・同機構主任研究員(臨床疫学)は「国内でも指針を整備し、知的障害児に安易に抗精神病薬が処方されないようにすべきだ」と指摘する。【河内敏康】
100錠以上の向精神薬、催眠薬を服用後に寒冷下で昏睡状態、まさに生死をさまよった40代の男性...
数年前の真冬に北海道で体験した出来事。
生活保護を受けていた40代男性は独居中で、2年前より統合失調症の治療のため精神科外来で向精神薬と催眠薬などの薬物を処方されていた。
ある寒い夜に自殺企図して、これらの薬(フェノバルビタールやハルシオンなどの催眠薬、テルネリンなどの向精神薬)を、貯金ならぬ貯薬して、合計100錠以上服用した。
その後、暖房設備のない台所で5日間、絶飲食状態で寝込んでしまった。
緊急入院で人工透析、27日間入院
知人がこの男性宅に電話したが、応答がなかったため、不審に思って、家主に連絡して、呼びかけに応答しない男性が発見された。
付近には服用薬の空包が多数散乱していたという。
救急車で病院に搬入されたときの血圧は82/48 mmHg、体温は34.2℃とそれぞれ低下しており、光に対する反応も鈍かった。
採血結果では、横紋筋融解症、急性腎不全で高い値を示すCPKが4,710 IU/L(正常値は300以下)、ミオグロビンが7,000 ng/mL(正常値は200以下)、尿素窒素は167.7 mg/dL(正常値は20以下)、クレアチニンが15.3 mg/dL(正常値は1.0 mg/dL以下)と著明に増加していた。
また血液ガス検査では、体内はかなりの酸性に陥っていたことも判明した。
搬送時の患者さんの状態は、横紋筋融解症によって誘発された急性腎不全であった。
横紋筋融解症とは筋肉の細胞が溶けて壊死が起こり、筋肉成分のCPKやミオグロビンが血液中に流れ出てしまう病気で、特にミオグロビンが腎臓に取り込まれて、尿が出にくくなって、急性腎不全に進展してしまう。
症状としては、手足のしびれ感、全身がだるくなり、歩行不能となることもある。
また尿の色がワインのような赤褐色に変色する。
1日尿量は僅か100mLと減少していた。
直ちに血液透析を開始したが、腎臓の機能はなかなか回復せず、連日5日間、その後隔日で3回継続施行した。
腎臓の機能が完全に回復するのに実に24日を要している。
この患者さんは27日間入院して、精神科へ転科となった。
注意したい向精神薬、催眠薬の大量・長期間の処方
このケースのように大量の向精神薬、催眠薬を服用し、その後長時間に渡って昏睡状態で放置され、低体温状態にさらされれば当然のことながら生命の危険がある。
海や山での遭難、溺水事故、あるいは泥酔状態で寒冷下の野外に身を置くなどの状態にて発症する<偶発性低体温>と同じように生死をさまようことになる。
特に体温が30℃以下に低下すると、呼吸抑制、重篤な不整脈、脳の酸素消費量不足、腎臓、肝臓など諸臓器への血流低下が出現し、また肺炎などの感染症も併発し、生命の危険度は非常に高くなる。
一刻の猶予はならず、早期の集中治療が必要である。
適切な酸素療法、輸液による体内水分管理、呼吸管理などに努め、体温上昇させる復温(電気毛布、赤外線ヒーター、ウオームマット、温浴などによる治療)処置が必須である。
また本症例のように、急性腎不全を併発した際には、血液透析療法が必要な時もある。
精神科に外来通院している患者さんの服薬管理は非常に難しい問題である。
患者さんは、処方された薬を貯め込んで、一度に大量服用して、自殺企図することが多く認められる。
独居者、若年者では特に危険性が大である。
精神科医はこれらの「#ハイリスク患者さん」の見極めが必要で、向精神薬、催眠薬の一度に大量・長期間の処方を控えること、また何度も大量服用した患者さんに対しては、入院治療を行うなどの、きめ細かな対応が是非とも必要になるのである。
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