#高齢者の多剤服用防止で処方見直し!!! #コンプライアンスからアドヒアランスへ!!! #減薬へ厚労省方針...

高齢者が医薬品の多剤服用(ポリファーマシー)から健康被害を受ける問題があるとして、厚生労働省が減薬を念頭に医薬品の処方を見直すよう医療機関などに求める方針を決めたことが分かった。

同省作成の「#高齢者の医薬品適正使用の指針」追補版骨子を3日入手し、判明した。

同省は指針について、年末にも骨子を文章化し、年度内に正式決定したい考えだ。


 骨子は(1)外来・在宅医療(2)急性期後の回復期・慢性期の入院医療(3)その他の療養環境(常勤の医師が配置されている介護施設など)-の3部で構成。

65歳以上の患者を対象にしているが、75歳以上の高齢者に重点を置いている。


 厚労省の平成28年の統計によると、同一の保険薬局で調剤された医薬品の種類数は、75歳以上の約4分の1が7以上、4割が5以上で、75歳以上でポリファーマシーが顕在化していた。


 ポリファーマシーによって高齢者に起きる頻度が高い「老年症候群」として、ふらつき、記憶障害、抑鬱、食欲低下、便秘、排尿障害などの可能性が指摘されている。

医薬品が多いと、飲み忘れてしまう問題があるほか、医療費増加にもつながる。


 骨子では「全ての使用薬剤に対して薬物治療の必要性を適宜再考する」とし、急性期の病状が安定してきた患者や長期通院中の患者らを対象に「処方の優先順位と減量・中止」を行うよう求めた。

 

同時に「自己判断による断薬や減薬の危険性に関し注意喚起する」とも記した。

見直しにあたっては、医師、歯科医師、薬剤師、看護師、管理栄養士、理学療法士らによる専門家でチームを作り、処方変更の効果や健康被害を定期的にフォローアップしていく。


 骨子ではこのほか、患者が積極的に治療方針の決定に参加し、決定に従って治療を受けることを意味する患者主体の「#服薬アドヒアランス」の改善や、「生活の質」を意味するクオリティー・オブ・ライフ(QOL)を向上させる視点の必要性も盛り込んだ。


#服薬治療はコンプライアンスからアドヒアランスへ!


コンプライアンスとは

コンプライアンス(#Compliance) は、法令遵守と訳されますが、医療の場では患者が医療者の指示通りに、処方された薬を服用することを意味します。

例えば、調剤薬局での薬歴に「コンプライアンス良好」と記入されていたら、その患者さんは医療者の指示通りにきちんと薬を飲んでいます。

つまり、薬の用法用量を守り、飲み忘れや中断することなく服用できているということです。

反対に「コンプライアンスが悪い」と書かれていたら、その患者さんは医療者の指示通りには薬を飲んでいないということになります。


コンプライアンスの問題点

コンプライアンスの概念では、治療やその計画を行うのはあくまでも医療者であって、患者はその計画をしっかり守り、従う必要がありました。

しかし、この考え方だと、患者が頻繁に飲み忘れたり、あるいは自己判断で服薬を中断したりして病気の再発可能性が高いことが問題となっていました。

この理由としては、薬剤の服用の不快感、副作用への懸念、治療に対する意欲低下などが挙げられています。

いずれも患者が服薬の意義や内容を理解しないままに治療を受けていることに起因しています。

コンプライアンスの考え方では、患者はあくまで医療者の指示に従うという関係性のため、患者は治療決定に対して受動的です。そのため、服薬内容への理解も不足しているケースが多いのです。

このコンプライアンスにとってかわり生まれた考え方が「アドヒアランス」という概念です。


アドヒアランスとは

アドヒアランス(#Adherence)とは、患者が積極的に薬剤の決定に参加し、その決定に従って治療を受けることを言います。

これは、患者の治療への積極的な参加が治療成功の鍵であるという発想から生まれた概念です。

従来の「患者は治療に従順であるべき」という患者像から脱する考え方になります。

アドヒアランスでは、医師と患者がコミュニケーションを取りながら薬剤を選択し、患者は医師、薬剤師から提供された薬の情報に納得した上で服薬を行います。

患者は、薬の効果や副作用の説明を十分うけたうえで薬の決定をし、服薬するわけですから、自己判断による服薬中断や飲み忘れが減ります。


WHOでは、9種(喘息、癌、うつ病、糖尿病、てんかん、HIV、高血圧、喫煙、結核)の疾患にこのアドヒアランスを取り入れた研究レポートを発表しています。

#WHO|  Adherence to Long-term Therapies -Evidence for Action-

では、実際に薬剤師はアドヒアランスをどのように服薬指導に取り込んでいけばよいのでしょうか。


アドヒアランスの尺度項目 (服薬指導におけるチェックリスト)


服薬アドヒアランスは、大きく4つの項目に分けられています。

1. 服薬における医療従事者との協働性

2. 服薬に関する知識や情報の入手と利用における積極性

3. 服薬遵守度

4. 服薬の納得度と生活との調和性


1. 服薬における医療従事者との協働性

薬について医師などの医療従事者と自分の思いや目標を共有できている

薬について医師などの医療従事者と自分の今までの治療の経過を共有できている

薬について医師などの医療従事者に自分の質問を気兼ねなくしている


2. 服薬に関する知識や情報の入手と利用における積極性

自分の薬に必要な情報を探したり利用したりしている

薬を継続するための対処をとっている(日常生活での工夫など)

薬の副作用・アレルギー症状、いつもと違う症状について報告している

自分の使用している薬やその必然性について知っている

自分の使用している薬についてわからないことを尋ねている


3. 服薬遵守度

この三週間、薬を一日の指示された個数・回数通りに使用している

この三週間、薬を指示された時間通りに使用している

薬を自分だけの判断でやめることはない


4. 服薬の納得度と生活との調和性

薬の必要性について納得している

薬の使用は食事、歯磨きのように自分の生活習慣の一部になっている

薬に対する声かけをしてもらうなど、家族や周囲の人の助けを得ることに抵抗がない


内服遵守に対する用語はcompliance(コンプライアンス)からadherence(アドヒアランス)に変わりつつある. 

コンプライアンスは医師の指示による服薬管理の意味合いで用いられるが, アドヒアランスは患者の理解, 意志決定, 治療協力に基づく内服遵守である. 

治療は医師の指示に従うという考えから, 患者との相互理解のもとに行っていくものであるという考えに変化してきたことが, 内服遵守における, コンプライアンスからアドヒアランスという概念の変化につながっていると考えられる. 

さまざまな要因によってアドヒアランスは低下し, それによって病状の悪化をもたらすだけでなく, 治療計画にも影響し, 医師-患者間の信頼関係を損なう. 

医師-患者間で治療同盟をつくること, 十分なインフォームドコンセントにより情報を共有すること, 患者が方向性を選択できるような治療を行うことがアドヒアランス向上にとって不可欠である.


高齢者の服薬、副作用防止の指針案が完成!増え続ける調剤費抑制の機能も果たすか?

2018/02/27

高齢者の”薬漬け”問題について厚労省が初の指針作成

副作用が生じた場合は薬の切りかえ・減量を医師に要請

2月21日、高齢者が複数の薬を同時に飲むことで起こる副作用の問題に対処すべく、厚労省の有識者会議は、新たな指針案をまとめました。

新指針案では、1人の高齢者が他にどのような薬を飲んでいるのかを総合的に把握することが重要であると指摘。

その上で医師らに対し、適宜処方を再考して必要があれば見直しを検討するように呼び掛けています。

現状、高齢者の多くが複数の持病を抱え、病気ごとに別々の医療機関から何種類もの薬を処方されている人が少なくありません。

今回の指針案においては「めまい、ふらつき、記憶障害」といった副作用としてみられやすい症状が生じた場合、別の薬への切り替え、もしくは薬の減量・中止の検討を医師らに要請しています。

また、処方内容をチェックする時期については、例として“介護施設に入居したとき”“在宅医療の受診を始めたとき”“医療機関に入院したとき”などが挙げられています。

ただし、薬の変更や中止によって高齢者の心身の状態に与える影響は小さくないということから、判断は慎重に行うべきとの見解も指針案の中に合わせて盛り込まれました。


薬を服用しすぎると、いったいどうなるのか

高齢者が薬を複数服用することで起こる副作用はさまざまなケースが報告されています。

厚生労働科学研究の調査(65歳以上の男女700人が対象)によれば、多剤服用によって起こった有害事象としてもっとも多いのは「意識障害(9.6%)」「低血糖(9.6%)」「肝機能障害(9.6%)」です。



意識障害では「寝ている本人を揺り動かしても目が覚めない」「起きているはずなのに反応が鈍くなっている」「すぐに眠りに落ちる」といった症状が発生。また、肝機能障害が起こると「疲れがとれない」、「体を動かすのがつらい」といった自覚症状が起こるほか、食欲が減退する、足がむくむ、お腹が張るといった症状もみられます。

そして低血糖は血糖値が急速に低下することで起こる症状で「手指のふるえ、顔面蒼白、動機、頻脈、発汗」などが強く現れます。これらに加え、副交感神経への影響で“強い空腹感を覚える”こともあるようです。

もし身近に複数の薬を併用して飲むことでこれらの症状が日常的にみられる高齢者がいる場合は、速やかに主治医に相談するよう勧める必要があるでしょう。


高齢者にとって薬の副作用はキツイ…

高齢者は薬の成分を分解する機能が弱っている

通常は、薬を服用すると胃もしくは小腸にて吸収され、血液を通して全身に循環していきます。その後は時間とともに肝臓などの器官で代謝・分解されて腎臓から排せつされていくので、薬の効き目は次第に消えていくわけです。

しかし高齢になってくると、肝臓などの代謝器官の働きが衰えることから薬の代謝・分解が遅れてしまい、必要以上に効き目が長く持続するようになります。

それに加えて、排せつ器官である腎臓の機能低下の影響で薬の排出がスムーズに進まず、体に影響を与える物質がいつまでも体内に残ってしまうということも。若い人にとっては問題のない量を飲んだとしても、高齢者には薬の飲みすぎになってしまう恐れがあるわけです。

薬が効きすぎると多剤を併せ飲むことで起こる悪影響も強く現れ、複数の臓器を巻き込む重篤な副作用を引き起こすようになります。

高齢者が安全に薬を服用していくためには多すぎる薬を少しでも減らし、多剤併用による副作用のリスクを極力回避していくことが重要になると言えるでしょう。


複数の疾患を抱えている高齢者は薬も増えます

厚労省は2014年、ある県に住む75歳以上の高齢者を対象として薬の服薬状況を調査し、対象者のうち20.2%が10~14種類、7.1%が15種類以上の薬を飲んでいる実態を明らかにしました。全体の3割に近い高齢者が10種類以上の薬を飲んでいるわけです。


加齢とともに、人間はどうしても高血圧や糖尿病、動脈硬化など複数の疾患を抱えるようになっていきます。

人間の心身状態は人によって多少の差異はあるものの、老化や衰弱は避けられません。

運動能力の衰え、免疫力・抵抗力の低下が進むと、結果として何かしらの病気に直面することになるでしょう。70代、80代と年を重ねるにつれ、日々飲まなければならない薬がある程度増えるのは、やむを得ないことだと言えそうです。


しかし、東大病院老年病科の入院データベースによれば、薬を常時6種類以上服用している高齢入院患者において「副作用の頻度が高まる」という芳しくない結果が出ています。

飲む薬の種類が増えるほど、副作用の危険性は高まっていくのは事実なのです。


6種類、ましてや10種類、15種類も飲むようになると、胃腸の整腸薬など成分・薬効がかぶっていることも多くあり、その場合はいわば同じような薬を大量に飲んでいることにもなるわけです。

大量摂取している薬・成分によって生じ得る副作用も重大なものになるため、処方の際は十分配慮する必要があることは明白です。


高齢者の薬漬け問題は経済にまで影響!?

年々増加する傾向にある医療費を圧迫する調剤医療費

2015年度における国民医療費の額は42兆3,644億円ですが、そのうち約2割にあたる7兆8,746億円が調剤医療費です。

調剤医療費は年々増加傾向にあり、2009年度は5兆8,695億円でしたので、6年間の間におよそ2兆円も増えているという計算になります。


また、処方せん1枚当たりの調剤医療費も、2009年度が8,034円だったのに対して、2015年度では9,560円と1,500円以上も高くなっています。

高齢化が進む中で日本の薬剤費は急速に増加しており、放置できない問題となりつつあります。


こうした現状に対し、国を挙げて取り組みが進められている政策の1つが、新薬(先発医薬品)の3~7割ほどの費用で済むジェネリック医薬品(後発医薬品)の普及です。

政府は2018年度から2020年度末までの間にジェネリック医薬品のシェアを80%(数量ベース)まで伸ばし、調剤医療費を年間1兆3,000億円削減する目標を掲げています。


生活保護受給者ならばジェネリック医薬品という規定

また、政府は2月9日、生活保護の受給者はジェネリック医薬品の使用を原則とするという生活保護法の改正法案を閣議決定しました。

現行法においては「生活保護者受給者にジェネリック医薬品の使用を促すこと」という医師に対する努力義務のみが規定されていますが、その内容をさらに強め、「医学上問題がなければ原則ジェネリック医薬品を処方すること」という形へと見直しが図られたわけです。


生活保護受給者を対象にジェネリック医薬品の導入を進める背景には、受給者の45.5%が65歳以上の高齢者である(2015年度)という実態があります。

生活保護受給者は医療保険の被介護者とはならず、医療費の全額は「医療扶助費用」という形で国が負担。調剤費関してもすべて公費によってまかなわれているのが現状です。

生活保護を受けている高齢者の中にはいわゆる「#薬漬け」となっている人も多く、その薬に係る費用を少しでも抑え、国の負担を減らすことが今回の法改正の目的となっているのです。

第422回は厚労省の薬の副作用防止に関する指針作成について取り上げ、高齢者が直面する服薬についてのリスク、そして日本の調剤医療費の実情について考えました。

薬漬けは副作用という形で高齢者に負担を課すだけでなく、超高齢者という現実も相まって調剤医療費増という形で国民全体に負担をかけることにもつながります。

高齢者の多剤併用を巡る問題は、今後さらに議論を呼んでいくことになりそうです。

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