医療、介護に就職した高齢者は過去10年で68万人も増加! #生涯現役社会
医療、介護に就職した高齢者は過去10年で68万人も増加!安倍内閣が推し進める「生涯現役社会」にどう向き合う?
2016/10/25 17:00
厚生労働省は先月、2016年版「労働経済の分析( #労働経済白書 )」を公表しました。
今回の労働経済白書では、「高齢者の就労」について多くのページを割き、「労働力不足の減少に対応するには、今後増え続ける高齢者の就労が重要」と結論付けました。
この記事では、労働経済白書を読み解きながら、高齢者就労の現状と課題について考察します。
現役世代と同程度に消費する高齢者。
高齢者の就業促進が日本経済の発展に寄与する
現状、60歳未満の就業者は、1997年の5,680万人をピークに漸減傾向にあり、2015年は5,112万人。
一方、60歳以上の就業者数は、2005年は937万人でしたが、2015年は1,264万人にまで増えています。
高齢者の増加に伴い60歳以上就業率も右肩上がりに上昇、2015年には29.9%となっています。
2015年における「60~64歳」「65~69歳」「70歳以上」の就業者以外人口は約3,000万人。
人口減少社会のなかで、就業者以外人口の一部が就業する方向に向かえば、日本経済にとってのインパクトは少なくないといえます。
また、65歳以上層における消費支出を見ると、勤労者世帯の場合、45~64歳層世帯の消費支出額には及ばないものの、35~44歳層世帯と同程度の消費支出額となっています。
このことからも、高齢者が就業することは、日本経済の成長発展にとって不可欠なものと言えそうです。
過去10年で60歳以上の高齢者68万人が医療、福祉に就業
それでは、就業している高齢者はどの産業に多いのでしょうか。60歳以上の産業別就業者数は、男性では製造業、卸売業、小売業、建設業が、女性では卸売業、小売業、医療、福祉、農林漁業が多くなっています。
さらに、2005年から2015年にかけて60歳以上就業者数が増加した産業を男女別に見ると、男性では建設業が、女性では医療、福祉がトップを占めています。
医療、福祉では、男女計68万人も就業者が増加しました。
#職業安定業務統計(2015年実績)を見ると、
社会福祉の専門的職業(福祉相談・指導専門員、保育士など)は、他の年齢層と比較して就職率にほとんど差がないため、高齢者が比較的就職しやすい職業だとわかります。
非正規雇用者が中心だが……。経験を生かして起業する高齢者もいる
ここからは、「働く理由」や「雇用形態」などを見つつ、「高齢者の就業促進のための方策」について考えていきましょう。
高齢者が働く主な理由は男女とも「経済上の理由」がトップ。
次いで「いきがい、社会参加のため」となっています。
女性や65歳以上の高齢者の場合、「経済上の理由」を働く主な理由とする割合は低下し、「いきがい、社会参加のため」とする割合が高まっていることに気づくでしょう。
年金支給年齢の引き上げや年金不安によって、「60~64歳」の高齢者の多くは就労を選択、来る“老後生活”に備えている様子が垣間見えます。
とはいえ、企業に正規に雇用されバリバリ働く傾向は高齢者にはないようです。
実際、「自分の都合のよい時間で働きたい」「家計の補助、学費等を得たい」などの理由から、非正規雇用で働いている高齢者が多くなっています。
労働経済白書によると、就業時間が長くなるにつれ、職業生活に対する高齢者の満足感は低下する傾向にあるといいます。
現状、柔軟な時間設定のなか働ける非正規雇用のほうが高齢者に合っていると判断できそうです。
一方、雇用形態に捉われない働き方を選択する高齢者も増えています。
それが「起業」です。
起業を希望する60歳以上の高齢者は年々増加えており、厚生労働省のデータによると、「60~64歳」8.9万人、「65~69歳」4.9万人となっています。
「60~64歳」の起業人数は、「30~34歳」を上回っており、高齢者の起業意欲の高さがよくわかります。
高齢者の起業で特徴的なのは「開業時に顧客を確保している」ことです。
これまでの職業経験の蓄積が、起業時の顧客確保につながっていると示唆されました。
50歳台で「社会参加活動」や「自己啓発」を行うと60歳以降、収入がアップする可能性も
労働経済白書は、「50歳台の過ごし方」が60歳以降の職業生活を大きく左右すると言及。
58~67歳時点での仕事の有無を確認すると、50~59歳時点でボランティアをはじめとする「社会参加活動」を行っている人は、行っていない人と比較して仕事をしている割合が高くなっています。
50歳台で構築した人間関係が高齢期の職業生活の礎となっていると示唆されました。
また、50歳台で能力開発に積極的であると、60歳以降で所得が増加する可能性もあります。
54歳から63歳当時に能力開発を行った場合、58歳から67歳の1か月の平均収入額は47.8万円ですが、行っていない場合は34.6万円に留まっています。
技術の進歩が早く、市場が急激に変化している昨今、時代に的確に対応している高齢者はどの企業にとっても頼りになる存在だと言えるでしょう。
企業の約4割は「募集しても、応募者ない」。
定年延長など「内部調達」に転換する企業も
独立行政法人労働政策研究・研修機構「人材(人手)不足の現状等に関する調査」によると、「人手が不足している」と回答した企業は49.4%ありました。
人手不足を緩和するための対策は、大別すると2つです。
ひとつは中途採用を中心とした「外部調達」。
もうひとつは社内人材の配置転換や定年延長、再雇用などの「内部調達」です。
多くの企業は「外部調達」を試みているものの、約4割もの企業が「募集しても、応募がない」状態。
賃金ほか処遇の低さが起因している可能性もあるでしょう。
しかし、労働人口が減少するなか、対象者自体が少なくなっている可能性も考えられます。
そこで「内部調達」の強化へ方向を転換している企業も多数登場しています。
「人手不足のために実施している対策」を見ると、「定年の延長や再雇用による雇用延長を進める」と回答した企業は31.9%ありました。
労働市場から人材を新たに調達することが難しい現状、企業内で経験を積んだ高齢者を活かしたいという意図が見えてきます。
安倍内閣の「 #働き方改革 」により「 #生涯現役社会 」が到来する!
高齢者の就業を促進するためには「再就職支援」と「内部調達の強化」が重要です。
「再就職支援」は、定年などにより退職した高齢者に対し新たに教育を施し、特定の業界へ再就職を支援することも含みます。
政府は、中高年齢者(50~64歳の男女)を介護人材として活用するため、各都道府県を通して介護に関する入門的研修を実施中。
前述の通り、医療、福祉に就職している高齢者は増加しており、介護人材不足解消の一助となるか注目されています。
「内部調達の強化」は、定年延長などの人事施策を講じることにより、人手不足に対応、企業経営の円滑化に役立つもの。中小企業を中心に求人を出しても応募者が集まらない企業は多数存在しています。
企業に長年勤めている高齢者は貴重な戦力。高齢者が気持ちよく働けるよう環境を整備することも必要でしょう。
安倍内閣は「生涯現役」をキーワードに「働き改革」を断行します。
年齢に関係なく働く時代はそこまで来ています。「高齢者の就業」は、高齢者本人だけではなく、私たちにとっても大きな関心事のひとつです。
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