「 #相続トラブル 」の実態と対策 【 #老後 #相続法制見直し 】

高齢化社会が進むにつれ、相続手続きに直面する人は増える一方。とりわけ都会在住の地方出身者は、突然親が亡くなったとき、自宅と実家の間を往復することになり、疲弊してしまう。また、人によっては相続を巡って親族との仲が悪くなり、人生に大きな禍根を残すこともある。いつ「そのとき」が来るかは誰にも予想できない。

(取材・文/池田園子、編集協力/プレスラボ)

ヘタをすると生活が犠牲になる
ある日突然やって来る「相続」

平和な家族にも、ある日突然訪れるのが「相続トラブル」だ


「父の葬式が終わるか終わらないかのうちに、3人の兄弟間で始まった相続の話し合い。

結局、長男である自分が代表相続人となり、実家を全部整理し、父の生前の預金通帳のとりまとめから不動産の処分まで、ほとんどの手続きを1人でやるハメになりました。

その大変さは尋常ではなかったです」


 こう語るのは、東京都在住で福井県出身の会社員Bさん(45歳)。

昨年、実家で1人暮らしの父親(78歳)が急死し、期せずして「親の相続」との格闘が始まった。

 凍結された父の預金口座から現金を相続する手続きだけでも、苦労は半端ではなかった。親や兄弟の戸籍など、地元の役所でしか取得できない公的書類、兄弟の署名と実印の捺印を施した遺産分割協議書など、窓口で提出を求められる書類が想像以上に多かったのだ。


 Bさんは半年間かかって何とか相続の道筋を付けたが、その間、東京の自宅で地元の役所、金融機関、不動産関係者らとやり取りした電話や封書は、膨大な量に上った。

時には、東京で勤務している会社の仕事と折り合いをつけながら休暇を取り、東京と地元、さらには他県に住む弟たちの元にも何度か足を運んだ。


 あまりの疲労とストレスを紛らわすため、酒の量が増えたBさんは、相続が終わってみたら体重が5kg以上増えていたという。

「亡くなった親の供養のため、と念じながら何とか頑張りました。

しかしこれは……ヘタをすると自分の生活を犠牲にしてしまいますね」とBさんは疲れた顔で笑う。


このエピソードを聞いて、「他人事ではない」と感じた読者は少なくないのではないか。


高齢者人口が増え続ける日本では、足もとで高齢者の大量死が始まっている。

相続手続きに直面する人は増える一方だ。

しかし、たいていの人は相続のノウハウに明るくないため、いざというときに途方に暮れてしまう。


 とりわけ都会在住の地方出身者は、突然親が亡くなったとき、Bさんのように自宅と実家の間を往復することになり、疲弊する可能性がある。

幸いBさんは兄弟仲がよかったため、人間関係のトラブルは経験しなかったが、人によっては相続を巡って関係者の仲が悪くなり、人生に大きな禍根を残すこともあるだろう。


相続税は富裕層だけにかかるもの
という考えは、もはや通用しない

いつ「そのとき」が来るかは誰にも予想できない。

始めに、相続に関する最新のトピックを紹介しよう。

この1月に改正された相続税法について、改めておさらいしておきたい。

平成26年までは相続税の基礎控除額が「5000万円+1000万円×法定相続人の数」だった。

替わって

27年からは「3000万円+600万円×法定相続人の数」に引き下げられた

端的に言うと、基礎控除額が従来の6割になったということだ。


 たとえば、4人家族の主人に相続があった場合で考えると、

26年までは基礎控除額が8000万円となる。

この場合、相続財産が8000万円以下であれば、確実に相続税は発生しなかった。

一方、今年からは基礎控除額が4800万円となる。

つまり、4800万円を超える相続財産があれば、相続税がかかる可能性があるということだ。


「今回の相続税法改正により

『相続税は富裕層だけにかかるもの』といった既存の常識は通用しなくなったと言えます。

都心にマイホームがあり、預貯金が少しという標準的な家庭でも、相続税が発生するケースが出てきているのです」と話すのは、「野田美和子税理士事務所」代表で、共著に『「経理・財務」実務マニュアル上・下』『法人税実務マニュアル』などがある税理士・野田美和子氏である。


野田氏によると、今まで相続税がかかる人は全国的な割合で4%と言われていたが、今後は6%程度になり、地価の高い都心部では10%を超えてくるという試算もあるという。


これは相続のノウハウを知る前に、大前提として知っておきたい知識だ。

少子高齢化の影響で増加する
兄弟相続、叔父・叔母相続とは?

ここから、最低限知っておきたい相続トラブルとその回避法をQ&A方式で紹介していく。

その前に相続手続きの基本を押さえておきたい。


「リーガルアクセス司法書士事務所」代表で、サイト「実家のたたみ方(R)」を開設し、地方の相続・不動産問題を取り扱う東京・渋谷の司法書士・辻村潤氏は、基本的な不動産の相続手続き・名義変更の一連の流れを以下のように示す。


1、相続人と不動産の調査/確定

2、相続手続き後の売却・贈与などの検討(※注1)

3、遺産分割協議(※注2)

4、相続登記申請

(※注1)この項目は辻村氏の事務所が独自に提案しているもの。

必ずしも行う必要はないが、相続後にすぐ不動産を売却などすると、実家を相続しなかった人から異論が出て関係が悪くなるケースもある。

特に代々続いてきた田舎の実家は、慎重に検討してから遺産分割協議を行うことを勧める目的があるという。

(※注2)遺言書がある場合は遺言書が優先するため、この流れにはならず、遺産分割協議は必要ない。


 相続は被相続人の配偶者と子どもによって行われるのが一般的だが、子どもがおらず両親も亡くなっている場合は、兄弟姉妹が相続人になる(なお、配偶者は常に相続人)。

これについて辻村氏は、「亡くなった方の兄弟はそれなりに高齢なため、自分で手続きをするのも難しい上、どこに手続きをお願いすればいいのかインターネットで調べるのも難しく、情報が不足しているケースが多いです。


ただ、今後も少子高齢化が進み、

“兄弟相続”や独身の叔父、叔母の家を相続することになる人は増えると考えられます」と指摘する。


 では、具体的なQ&Aに移ろう。

「節税したい」「支払いできない」
相続税改正で発生する悩みへの対策は?


 Q1 相続税改正で思わぬ負担が増える人もいると思うけど、なるべく相続税を減らしたい人向けの対処法にはどんなものがある? 

た、すぐに相続税が払えない場合はどうすればいい?


 A1 「相続税を減らす方法はいくつかありますが、不動産を貸地にして評価減を狙う、現金を減らす、生命保険に加入するなどが考えられるでしょう。

すぐに相続税を払えないときには、物納、延納という方法もあります」


 こう語るのは、『わが家の相続を円満にまとめる本 新訂版』(実務教育出版)『葬儀後の手続・相続・贈与の方法』(大和出版)などの著書がある、「小堀球美子法律事務所」の小堀球美子弁護士。


生前贈与」もよく知られた方法だが、

そのうち「年間110万円までの贈与」が最も手軽にできると話すのは、前出の野田氏だ。

1人につき年間110万円までの贈与を行う場合、贈与税が発生しないため、計画的にコツコツと行うことで十分な対策になるという。


「このとき注意しなくてはならないのは、贈与が形式上行われたものでなく、正しい手続を踏んで行われたものであると、税務署に対して証明できるようにしておくこと。

具体的には贈与契約を結んだり、お金は現金でなく振込で行うなどの手続をしておきましょう」(野田氏)


持ち家がある人も対策が必要になる。

「相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」という特例では一定の要件を満たす必要はあるが、相続で取得した土地のうち、200平方メートルまでであれば土地の評価額が50%減額される。


1月からは限度面積が240平方メートルから330平方メートルまで拡大した。


戸籍の取り寄せが面倒で煩雑すぎる
不動産の相続はプロに任せるべし


 Q2 親の不動産はどうやって分ければいい?

 A2 遺言がある場合は、遺言の内容に従って、受取人が登記手続きを行えばいいことはわかる。

「遺言がない場合は、法定相続人間で遺産分割協議を行うことが必要です。具体的な分け方としては、A不動産を甲に、B不動産を乙にというように、現物で分割する方法(現物分割)、甲が不動産を取得し、乙に代償金を払う方法(代償分割)、法定相続人全員で売って売却益を分ける方法(換価分割)があります」(「小堀球美子法律事務所」の小堀球美子弁護士)


 不動産の調査では、不動産の名義を確認する。

このとき、亡くなった人の前の世代のまま名義変更されていないことも少なくないという。

基本的に戸籍は、亡くなった人の生まれたところまで遡る必要があり、婚姻時に本籍を変更していると昔の戸籍を取り寄せることも必須。

さらに兄弟相続になると、亡くなった人のみならず、その親の生まれたところまで遡り、他に兄弟がいないか探さなくてはならない。

 スムーズに進むと名義変更は1ヵ月ほどで済むが、取り寄せる情報が多くなればなるほど、当然期間を要する。

手続き内容の量や慣れない作業のため、相続手続きのプロである司法書士に頼むのがよいだろう。

 司法書士事務所に相続登記業務を依頼すると、必要な全ての戸籍を集め、ネットで登記簿を確認して登記申請を行ってくれるので、非常に楽だ。

しかし、意外と誤解されているのは「実家付近の司法書士に頼まなければ手続きできない」というもの。


「不動産の状況や場所がわからない場合は、現地に出向く場合もありますが、どこの土地を相続するかわかった上での依頼であれば、司法書士は現地に行くことなく名義変更できます。

特に争いがなければ、家の近くや通勤時に立ち寄れる場所など、依頼者(相続人)にとって便利なところで事務所をやっている司法書士に頼むといいでしょう」(「リーガルアクセス司法書士事務所」代表の司法書士・辻村潤氏)

預金の相続で「最大の壁」は銀行?
生命保険の受け取りに分割協議は不要


 Q3 親の生命保険はどうやってもらえばいい?

 A3 「生命保険は受取人が被相続人とされていない場合には、受取人固有の権利として受け取ることができます。遺産ではないため、遺産分割協議は不要。受取人が手続きをするだけでOKです」(小堀氏)


 Q4 親の死後、預金口座が勝手に凍結されるって、本当?

 A4 親が亡くなると、親名義の銀行口座は凍結されてしまう。地方によっては、新聞のお悔やみ欄を銀行が毎日チェックし、遺族から報告を受ける前に口座を止めるケースも(本来、これには預金者の財産を保護する目的がある)。

「そうなってしまうと預金を引き出せないため、葬儀費用などの捻出に困るだけではなく、親が銀行口座から自動引き落としの手続きをしていた水道、電気、ガス、新聞、電話などの料金が引き落としできなくなります。早急に口座凍結解除の手続きを行わなければ、諸々の料金の督促状が実家に山のように舞い込むでしょう」(小堀氏)。放っておくと、実家の電気、水道、ガスなどは止められてしまう。


 事業者にその都度連絡して、自身の口座から引き落としができるよう変更手続きをしたり、新たに振り込み用紙をもらって、銀行口座からの引き落としができなかった期間の料金をコンビニや金融機関から振り込んだり、といった作業が必要となる。

本来の相続手続きとは無関係なこうした細かい手続きによって、大きな労力を強いられることは間違いない。


 Q5 親の預金を相続するにはどうしたらいい?

 A5 口座凍結を解除して親の預金を引き出すには、銀行で預金の相続手続きを行う必要がある。「相続手続きには、遺体検案をした病院で受け取る死亡証明書、銀行の通帳と届出印、役所で受け取る親の住民票の除票、戸籍(新しい様式になる前の改製原戸籍を含む)、親が生前に残した遺言書など、取得・発見するのが大変な書類を、たくさん揃えて持参しなければなりません」(小堀氏)


 しかし、各種書類を抜け漏れなく集めたところで、最後の難関は銀行そのものだ。

たとえ親の遺言で定められた遺言執行者であっても、「当然の権利だ」と単独で手続きを行い、親の預金を引き出すと、それを不服に思った兄弟姉妹などから銀行に対してクレームが寄せられることがあるという。


ヘビークレーマーが珍しくなくなった現代において、遺族間の騒動に巻き込まれるのを避けるためか、「親の遺言書を持参した場合でも『別途遺族による遺産分割協議書もつくって提出しないと、口座凍結解除や預金の引き出しには応じない』と渋る銀行もあるほどです」(小堀氏)。冒頭で紹介したBさんが、銀行の窓口で悪戦苦闘した理由もわかるというものだ。


「親の遺言がない」「仲の悪い兄弟がいる」
相続が遅々として進まなくなるケースも


 Q6 親の遺言書がないと相続はどうなる?

 A6 「遺言がない場合は、兄弟全員の署名と法務局で印鑑登録済の実印を押した遺産分割協議書をつくらなければ、相続手続きはできません。協議内容は誰が何を相続するかという取り決めですが、日頃から仲の悪い兄弟がいたり、遺産の取り分を巡って争いが起きたりすると、合意・書類の作成が進まず、いつまで経っても相続手続きを開始できないケースも」(小堀氏)

 もちろん遺言書がある場合は、そこに記載された「遺言執行者」(長男か長女であるケースが大半)が他の兄弟の承諾を得ることなく、相続手続きを行う権利を持つことになる。


 Q7 親の遺言書の効力は形態によってまちまち?

 A7 「遺言は大きく分類して、公正証書遺言、秘密証書遺言、自筆証書遺言があります。公正証書は公証役場で公証人が遺言する人の話を聞いて作成するため、間違いが少なくそのままで効力があります。その他の遺言は家庭裁判所の検認手続きを経なければなりません。自筆証書は全文を自筆で書くため、形式に間違いが起こり得るという弱点があります。いずれの遺言も効力は同じですが、形式的要件を満たしていることが前提です」(小堀氏)


 Q8 想定外の人物に相続金を持っていかれることもある?

 A8 遺産相続のタイミングでは、片親の違う兄弟や音信不通の甥姪のような、何年も音沙汰のなかった親戚が突然集まってきて、自分の取り分を主張し始めることもある。さらに厄介なのは、死んだ親の隠し子が登場するケース。口を出してくると厄介なことになる可能性も。「そのような人々も民法上の法定相続人であれば相続権があり、取り分が生じることもあると、民法の規定で定められています」(小堀氏)。


うっかりしていると後で首を絞められる!
住宅ローンや保証債務なども相続財産

 Q9 親の負債などのマイナス財産を相続放棄する際の手順・注意点は? また、親が他人の借金の連帯保証人になっている場合は、それも子どもが相続しなければならないのか?

 A9 「親が住宅ローンを組んでいる場合、親が団体保険に入っていれば、契約者が死亡した時点において、保険金で完済されることもあります。そうでない場合は、借金も相続財産となるため、もし相続したくなければ、親が死亡したことを知ったときから3ヵ月以内に、家庭裁判所に相続放棄の申述をしなければなりません。相続放棄には期限があることを覚えておいてください」(小堀氏)


 Q10 その他に見逃しがちな相続財産にはどのようなものがある?

 A10 「とかくプラスの財産に目が行きがちですが、マイナスの財産はもちろん、住宅ローンや保証債務なども相続財産で、うっかりしていると債務超過になってしまうこともあります。株券や国債などの有価証券、生命保険、死亡退職金、ゴルフ・リゾート会員権、自動車、骨董品なども相続財産です。これらも遺産分割の対象であり、相続税が課される対象となります」(小堀氏)


 Q11 逆に、相続財産にならないものとは?

 A11 「遺骨や位牌、お墓などは相続財産ではありません。そのため、これらは遺産分割協議とは別個に、承継の協議がなされるべきです。遺産を多く受け取るからといって、祭祀財産についても多く承継すべきだ、とはなりません」(小堀氏)

소유(SoYou) X 정기고(JunggiGo) - 썸(Some) feat. 긱스 릴보이 (Lil Boi of Geeks)


0コメント

  • 1000 / 1000