#窃盗症(#クレプトマニア)の患者の行く末は……逮捕された2割が離婚する現実!!!
「ものを盗む」という衝動に逆らうことができず、窃盗を繰り返してしまうという病気「窃盗症(#クレプトマニア)」――。
東京都が2017年3月に発表した調査『#高齢者による万引きに関する報告書』によれば、特に高齢者の万引きが年々増加しており、2010年には高齢者が約2割だったものが、2016年には3割に増加。
さらに、再犯率も高く、万引きで捕まった高齢者のうち58.7%が過去に万引きを含む犯歴があったという。
では、自分の家族や親しい人が窃盗症(クレプトマニア)となった場合、どう対応していくべきか?
東京都内で唯一窃盗症(クレプトマニア)の患者のための専門外来がある大森榎本クリニック(東京都大田区)の精神保健福祉士・社会福祉士である斉藤章佳氏に、窃盗症(クレプトマニア)の患者家族の現状や、突然その立場になったときの対応について訊いた。
配偶者がいても「身元引き受け人」を実家の親・兄弟に求める患者たち
「『日常性の喪失』――。これは私がいつも窃盗症(クレプトマニア)の患者家族の方々に逮捕時の気持ちを説明し、振り返ってもらうときに使う言葉です。
患者の家族は、彼らが捕まったときに、初めてその人が万引きをしていたことを知ることがほとんどです」
「まさに青天の霹靂ですが、確かに夫や妻の細かい買物や持ち物など、把握していないのが普通ですから、それもある意味当然です」
もっとも、配偶者がいる患者の場合では、最初から身元引き受け人として配偶者を呼ぶよりも、本人の希望で実家の兄弟や親が呼ばれるケースが多いそうだ。
配偶者を呼ぶと配偶者の親族にまで話が及ぶことと、もし知られたら離婚されてしまうのではないかという強い不安感があるからだという。
それだけに、何回か逮捕を繰り返していよいよ配偶者が呼ばれた時、配偶者は今までくり返していた事実に一層驚くことになる。
「いちばん家族が理解できないのは、経済的に困窮しているわけでもないのに、なぜ捕まる危険を犯してまで数百円~数千円の品物を盗むのかということです。
窃盗症(クレプトマニア)の患者の特徴として、お金がないことが犯行の理由ではない――ことが挙げられます」
本人としては、ほとんど無意識のうちに商品をカバンやポケットに入れて持ち出しているケースもあるというから厄介だ。
「昨日まで普通の生活をしていた家族が、突然の逮捕によって『日常性を喪失』し次にさらされるのが、『周囲のまなざしの意識化』です。
家族が逮捕されることで、そのことが周囲に知られてしまっているのではないかと、自分をとりまく視線が気になり始めます」
「街中で顔見知りの奥さん同士が立ち話をしていても、自分たち家族のことを話しているのではないかと思ってしまったり、新聞やインターネット、SNSに名前や住所が載っているのではないかと過剰に気になります」
「ひどい場合は、誰かが後をつけて来てるのではないかと被害的になったり、抑うつ状態や不眠で精神科を受診するケースも珍しくありません。実際には、警察官や官僚など公務員のような特定の職業の人以外は、万引きで新聞に載ることはほとんどないのですが」
「病気」という概念を受け入れることで和解も
逮捕されると家族は面会に行かなければならないし、私選または国選の弁護士に弁護を依頼しなければならない。
心理的に一番近い配偶者は、ショックで思考停止に陥り、患者の子どもや親が駆け回って対応するケースが往々にしてあるという。
当クリニックの場合、逮捕をきっかけに離婚するケースは2割ほどで、残りの8割はこれまでの家族のあり方を見直しながら夫婦関係を続けようとする。
そういった人たちの通う場所となっているのが、大森榎本クリニックで開かれている窃盗症(クレプトマニア)の家族のための家族支援グループ(KFG:Kleptomania Family Group-meeting)だ。
「裁判が一段落して執行猶予判決が出たり、略式起訴で罰金を払うことで終了したりすると、患者の家族も新たな日常を再構築していくことになります。専門治療の模索は裁判中から始まることも多いですが、果たして精神科に通わせる必要はあるのか、一方もし窃盗症(クレプトマニア)という病気であれば治さなければ、という気持ちの間で揺れ動くことになります」
「また実刑判決が出た場合も喪失感はありますが同様です。出所後、再犯しないためにはどのように治療を継続していけばいいか悩みは尽きません」
「実際には、病気だったということが分かって、それならば許せるという気持ちを持つようになる家族は多いです。善悪の区別はつくが特定の状況や条件化で万引きをしたいという衝動が制御出来ない窃盗症(クレプトマニア)という病気だという概念を共有することで、家族が同じ方向を向き、和解するきっかけとなっていくのです」
窃盗症(クレプトマニア)の家族、特に配偶者は、本人がそのような行動をくり返すのは自分のせいではないか、あるいはそのような人と結婚したのは自分の選択が間違っていたのではないか、と自分を責めがちだ。
窃盗症(クレプトマニア)という病気について知ることは、家族にとってもひとつの救いになる。
窃盗症(クレプトマニア)の多くが高齢女性!
やめられない「快感」の原因は「孤独」
平成28年版の『犯罪白書』によれば、「窃盗」は認知件数において刑法犯の7割を超える、最もケース例の多い犯罪で、その件数は年に80万件を超えている。
そのうち「万引き」が占める割合は14.5%であり、これは近年、減少傾向にあるというが、相当に高い割合であることは間違いない。
万引きをしては捕まって刑務所に入り、出所してもすぐまた万引きをして刑務所に再び入る──。
このような「常習累犯窃盗」と呼ばれる人も多く、深刻な社会問題になっている。
「窃盗症(クレプトマニア)」とはどのような病気か?
こういった人は単なる「軽犯罪者」ではなく「窃盗症」という疾患を患っているとも考えられる。
「窃盗症」は別名「クレプトマニア」とも言うが、これはどのような病気なのだろうか?
東京で唯一、窃盗症(クレプトマニア)のための患者のための専門外来がある「大森榎本クリニック」の精神保健福祉士・社会福祉士の斉藤章佳さんはこう話す。
「クレプトマニアは、国際的な診断基準である『DSM-5(精神障害の診断と統計マニュアル第5版)』や『ICD-10(国際疾病分類第10版)』にも記載されている世界共通の疾患です。
世界や日本にどのくらいの患者数があるかというと、しっかりしたデータはありません」
「日本の窃盗犯事例のうち、クレプトマニアに該当する数の推計もなかなか難しいのが現状です。
しかし、平成27年の犯罪白書では、万引きで検挙された者のうち窃盗の前科をもつ者は20%を超えています。」
さらに斉藤氏は、その「診断基準」について以下のように補足する。
「診断基準としては、『DSM-5』には『個人的に用いるためでもなく、またその金銭的価値のためでもなく、物を盗もうとする衝動に抵抗できなくなることが繰り返される』『窃盗に及ぶ直前の緊張の高まり』『窃盗に及ぶときの快感、満足、または解放感』などの項目が掲げられています」
「ただし、現実には盗んだ品物をまったく自分で使わないということはなく、この『個人的に用いるためでもなく』という箇所はやや厳密にすぎるきらいがあり、実際の臨床場面での診断はもう少し柔軟に行なうべきだと我々としては考えています」
患者の半数以上が50代以上の女性
斉藤氏によれば、万引きにもいろいろな種類があり、必ずしもそのすべてが窃盗症(クレプトマニア)に該当するわけではなく、特に生活苦によるものや転売目的のものはその範疇ではない。
窃盗症(クレプトマニア)に該当する人は、金銭的な価値のためでなく、衝動的にスーパーやコンビニで商品を盗むことを繰り返すのがその特徴だという。
「取った瞬間は快感や達成感を覚えるのですが、その快感はあまり持続しない。
家に帰って商品を見たら、なんでこんなものを取っちゃったんだろう、と感じるようです。
それでも、逮捕されなかったらずっと続けていただろう、という人がほとんど」
「実際に当クリニックの患者さんは、刑事手続きの段階で窃盗が繰り返していることがわかって担当の弁護士から紹介された人が多い。当院を受診して、初めてクレプトマニアという病気を知ることになります。このタイミングで治療が始まるのが特徴的です」
そして、その年齢層・性別であるが、大森榎本クリニックの受診者のデータを見ると、
50代以上が半数で、女性が半数以上の53%を占めている。
全体的には65歳以上の女性の割合が多くなっているのが特徴だという。
「当院にも女性の高齢の方が次々と来るのですが、見た目や服装、話し方も上品で、『なんでこの人が万引きを?』と不思議に思うような人たちが多いです。
共通する傾向としては、ご主人を亡くされるなどの喪失体験を経験した後に万引きが始まっているケースが少なくない、ということ」
「75歳くらいでご主人に先だれたものの、遺族年金で生活にゆとりはあり、お子さんもお孫さんもいる――そんな人が万引きで捕まり、家族がビックリするケースもあります」
高齢の女性が万引きに走るのは「孤独」が原因
なぜ、高齢の女性が万引きに走るのか。斉藤氏は、そのキーワードは「孤独」だと話す。
「それまでまったく万引きなどしたことがなかったのに、50代を過ぎて突然始まるというケースが多い。そのきっかけとして一番多いのが、パートナーとの死別や離婚なんです」
「<寂しいから万引きをする>という深層を分析するのは、なかなか難しいことです。
ただ言えるのは、そこに<失ったものを取り返す>という意味合いがある。
そして、万引きで捕まることで、連絡が途絶えていた親族と触れ合う機会が生まれる――。
このことをどこまで自覚しているかは分からないが、結果的に患者の孤独感は一時的に癒されます」
万引きで捕まり、刑事手続きの過程で、初めて医療や福祉サービスにつながる人も少なくない。
話し相手もおらず、行く場所もない孤独が、高齢女性を万引きに走らせるのだろうか……。
孤独から逃れる唯一の手段が、万引きだということだとしたら、あまりにも寂しい老後の風景ではある。
日本の高齢者を支えるコミュニティや人とのつながりが、それだけ途絶えてしまったということなのかもしれない。
万引き、窃盗症(クレプトマニア)の治療~すべての依存症に共通の「再発」2大リスク
これまで「万引き問題」は、「犯罪」と「刑罰」という視点でのみ捉えられることが多かった。
薬物依存症のプログラム「SMARPP」を参考に
「当クリニックで行っているのは、<認知行動療法>を中心としたワークブックを使ったプログラムです。12セッションで1クール(半年間)、内容は『再発の予測と防止』と『リスクマネジメント』が中心です」
そのプログラムで参考に用いたのが「SMARPP」。
国立精神・神経医療研究センターの松本俊彦氏が薬物依存症患者を対象に考案したプログラムだ(参考:薬物依存で<人里離れた施設に隔離>は古い?~街中でも治療可能な「SMARPP=スマープ」http://healthpress.jp/2016/11/smarpp.html)。
「当院のクレプトマニアの治療プログラムは、まず<万引きをする引き金>や<万引きのリスクや衝動への対処>などを具体的に検討します。
最後に再発防止計画(リスクマネジメントプラン)を作り、患者そしてその家族と共有します」(斉藤氏)
治療プログラムに加えて、患者にとって大きなメリットは「同じ問題を抱えた仲間が集う居場所がある」というとだ。
「孤独」が引き金となって始まりやすい窃盗症(クレプトマニア)にとって大切なことなのだ。
通院パターンは、週に6回もあれば3回、あるいは1回など再発リスクに応じてさまざまだが、<通院>という習慣を変える行動そのものも治療のひとつに違いない。
実はさまざまな依存症に共通する再発の2大リスクがある。
すべての依存症に共通する<再発の2大リスク>
「実はさまざまな依存症に共通して言えることは、
『①やることがなくて退屈をもてあます』
『②睡眠時間がきちんと取れなくなる』が、代表的な生活習慣の中での2大再発リスクなのです」(斉藤氏)
では、この2大リスクを回避するには、どうすべきか?
「朝、目が覚めて、<行くところがある>というのがポイントです。また、我々の専門外来を訪ねれば、同じ悩みをもつ人と体験を共有できます。そして「やめ方」を学ぶことができます。更に、クレプトマニアを克服しようとしているのは自分だけではない――と前向きな気持ちにつながります」
「また、通院して治療プログラムを受けている――という姿から、治療に真剣に取り組んでいることを家族も感じ取り、家族支援グループ(KFG:Kleptomania Family Group-meeting)への参加率も上がり、病気に関する理解や治療への協力が得られるようになる。
家族の関係性も、よい方に向かうことが多いようです」(同)
治療のスタートは万引きで捕まってから
ところが、クレプトマニアの患者は、最初から治療プログラムを自主的に受けることは少ない。
患者の多くは窃盗(万引き)で捕まり、刑事事件として刑事手続の過程において、保釈されてから通院するケースがほとんどだ。
ならば、通院が裁判を有利にすすめるための単なるアリバイに陥らないか――
そこで、大森榎本クリニックでは、裁判終了後も1年間の継続通院を患者と家族に誓約書に同意してもらってから治療を開始している。
「治療プログラムの過程では、安全な日は『青色シール』、万引きをしそうになったら『黄色シール』、もし万引きしたら『赤いシール』、それらを各人がプログラムで用いるカレンダーに貼って、自身の<悪循環のパターン>を見つめ直します」
「通院中の再犯は、これまで発覚したケースは1件。その方は、翌週に裁判を控えた中で再発しました。
それも店員の目の前で万引きしています。
我々は、このようなケースを『反省が足りない』『意志が弱い』という見方ではなく、それだけ重症であると判断します」
「このような患者を断ることなく受け入れていけば、当クリニックの患者の再犯事例は増えるかもしれません。
しかし、<居場所>や<受け皿>は絶対に必要です。特に高齢者のクレプトマニアは<孤独が最大の引き金>ですから」(同)
高齢者の万引きが社会問題に……
斉藤氏によれば、たとえ数百円の万引きであれ、常習累犯窃盗で裁判を受けて刑務所に入ると、刑事手続きにかかる人件費も含めて、2~3年で2000万円以上の税金が使われることになる。
窃盗症(クレプトマニア)患者が受刑しても、治療せずに再犯を繰り返せば社会的損失は甚大だ。
そこに使われるのは、紛れもなく我々の納める税金である。
2025年には、日本の人口の20%が「後期高齢者」。
高齢者の万引きは大きな社会問題になることが予想される。
「逆説的ですが、依存症の人は他人に頼るのが下手。
<依存できる相手>、つまり、相談できる仲間や複数のつながりを持つ人は、依存症に陥りにくい。クレプトマニアも同じことが言えるでしょう」
「万引きは許されない」と観念論をふりかざすだけでは、この問題は解決できない。
医療モデルと司法モデルが連携して対応策を考え、全国に受け皿を作る必要がありそうだ。
비비안(BBAHN) - 날 사랑한다 말해
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