変わる福祉用具(2)!!!  #福祉用具価格の地域差は最大3割…

介護保険でレンタル業者は大儲け?

一人あたりの貸与額には地域差も...

2018年10月、財務省は軽度者向けの介護サービスの適正化に向けて改革が必要だとの方針を打ち出しました。


今回は、福祉用具の貸与のあり方について考えていきます。

福祉用具とは、利用者が日常生活を送る上での自立を支援し、介護に携わる人の負担を軽減するための用具です。

介護保険サービスには福祉用具貸与といって、要介護度に応じて1割、一定の所得のある人は2割の自己負担のみでレンタルすることができる便利なサービスです。


地域差が見られることが明らかに。福祉用具の販売価格を上回る事例も

厚生労働省と総務省のデータによると、都道府県別の平均実質貸与額は3,611円です。

ところが、沖縄県の平均貸与額4,092円と新潟県の3,112円には3割以上の差が生じていることが明らかになりました。


なぜ、ここまでの地域差が生じてしまうのでしょうか。

現在のところ、福祉用具のレンタル料は事業者の裁量に委ねられています。


しかし、財務省が調査したところ、大きな問題点が浮き彫りとなりました。

平均貸与額が8,803円の介護用ベッドに対して、最高10万円の価格で貸し出されていたところもあったのです。

その差はなんと、11.4倍にのぼります。



このように、現在の介護保険制度には一般的な水準から著しく乖離したレンタル用具の高額品が出回っているのです。


明らかに制度の欠陥をついた商売のため、厚生労働省も規制に乗り出しました。

2018年度の介護報酬改定のタイミングに合わせて、レンタル料に上限をもうけていく構えです。


まだ詳細はこれから詰める段階ですが、レンタル料に上限がもうけられることによって、著しい高額の福祉用具はなくなり、相場に近づいていくものだと考えられます。

(正確には、入浴や排泄時などに使われる肌に直接触れる製品は、使い回しが効かないためレンタルではなく購入費が補助されます。)


軽度者の利用割合に大きな差が生じていることが発覚。重度者よりも高価格品を利用している事例も

その他の要因としては、下記の図のように車いすを利用する軽度者の割合にも差が見られる、といったことがあります。

山形県や新潟県などのように軽度者の利用がほとんどない地域もあれば、大分県や宮崎県などのように軽度者の割合が8割超となっている地域も散見されることが明らかになりました。



また、手すりなど一部の品目においては、重度の要介護者よりも要介護2以下の利用者のほうが高価格品を利用していることが判明しています。


自由価格を伴うのであれば、自由競争を

介護の世界のみならず、資本主義の世界では自由価格・自由競争が基本です。

では、なぜ完全自由価格ではダメなのでしょうか。

本来ならば価格に制限をもうけず、自由価格の上で自由競争させるべきです。


これが、介護保険を使わずに、完全に自由競争の世界になったらどうでしょうか。

そのほうが、価格は市場価格に近づいて適正化されるのではないかと考えられます。


日本人も、いつまでも国の再配分に頼らず、自力でビジネスを起こし、自力で介護サービスを探し、自己負担で受けるといった方針を考え直してみるのもひとつの思考実験として面白いかもしれません。


とはいえ、やはり介護保険という国民皆保険がある以上、国の規制は必要なのです。 

日本の国民皆保険は世界に誇るべき福祉のひとつでもあります。


ここは見直しが難しいところですが、あまりに極端な価格決定を今後も税金で負担していくとなると、現役世代への納税負担があまりに重すぎるのではないでしょうか。


介護保険の半分は税金でまかなわれている

介護保険制度は、40歳から64歳までの第2号被保険者と65歳以上の第1号被保険者に分かれています。

皆で支え合って、介護サービスをまわしていこうという仕組みですが、実は、毎月収める介護保険料だけでは、介護サービスはまかないきれていないのが現状です。


半分は税金が投入されており、それは、全世代で負担していることを意味します。

法人税も消費税も所得税も全部あわせて国庫ですので、国庫負担のある介護保険制度を支えているのは、40歳以上の方だけではないのです。


とはいえ、介護保険制度には課題がまだまだあります。

その一つに、介護は規制が多すぎて、自由なサービスが妨げられているという問題があります。


その一方で、介護の納付金に対する総報酬割の導入には、まだまだ議論の余地があります。

総報酬割によって、これまで年齢で区切られていた介護保険料の導入が、報酬に比例して行われるようになるのです。



早ければ、今年の8月には総報酬割に移行する予定。

財政力の豊かな人には、より高い納付額で負担してもらわないことには、制度がもたないと考えられているのです。

今でさえ、介護サービスを十分に受けられない高齢者が増えています。

総報酬割による負担増、実質的な増税は、避けられないものでしょう。

総報酬割は、これまで一律であった介護保険料の納付が、収入の低い人にはそれなりの低負担で済むことからも、のぞましいといえます。


しかし高額介護サービス費については、

高額療養費制度と同水準の利用者負担まで、月額料金を引き上げるべきだという指摘もあります。


今のところ、給付が多すぎて偏りがあるというのが全体的な見方でしょう。

しかも介護保険制度は2000年に発足していますので、それ以前に高齢者だった方々は、実質的に介護保険料を負担していません。

これではあまりに“不公平”といえます。

このままいくと、2025年問題に対応できないことは明らかでしょう。

2025年問題とは、国民の世代の中でトップクラスに人口が多い団塊の世代が、後期高齢者に突入する大介護時代の到来のことです。


利用者負担の増大には反対も多い

新たな利用者負担の増大には、反対も多いです。

当然です。

所得税、住民税、消費税、国民健康保険、国民・厚生年金まで上がっているのですから、介護保険料まで上がってしまっては、暮らしへの影響はとても大きなものとなってしまいます。


軽度の人に対しての利用者負担を引き上げると、より重度の要介護認定を引き起こすというおそれもありますので、むしろ予防介護やケアマネジメントの標準化等によって対応すべきとの意見もあります。


介護保険制度は、発足して18年が経とうとしていますが、まだまだ課題の多い制度です。

このまま見直しが続かなければ、2025年の前に破綻してしまい、国民負担がより多くなってしまいます。せっかくの制度をうまく活かすためにも、改革が必要なのです。


介護保険制度の見直しのとき?

介護保険制度は、3年に一度の見直しが行われています。

それ以上のスピードで増えていく高齢者に対応するためにも、よりスピーディで柔軟な対応が望まれるのではないでしょうか。


2015年8月から、一定所得以上の方については2割負担となりました。

実際のところは高齢者で一定所得のある人は少なく、焼け石に水になりかねません。

国の改革といえば医療費の負担についても万事がこの調子で、高齢者の資産ではなく所得に目を向けているため、いつまでたっても根本的な解決が実現できないのです。


日本の資産の大半を持っているのは、65歳以上の高齢者であることを考えると、年金受給者の多い低所得高資産の高齢者の所得に目を向けるのではなく、資産をはき出してもらう仕組みを考えるほうが、より公平な社会負担に近づくのではないでしょうか。


法人税や所得税など、何かと現役世代への負担ばかりが着目されますが、“取りやすいところ”から税金を取っているのが現状です。


しかし今後は、介護は必要だけれども十分な資産を持っているというような高齢者が、自ら進んで介護サービスにお金を使ってもらえるような自由な介護報酬制度への転換もセットで考えなくてはなりません。


現行の介護報酬制度の見直しは、増税ではなく改革とセットではじめて成し遂げられるものなのです。


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