【#人手不足】#異常に安い賃金で働く日本人!!!
オックスフォード大学で日本学を専攻、ゴールドマン・サックスで日本経済の「#伝説のアナリスト」として名をはせたデービッド・アトキンソン氏。
退職後も日本経済の研究を続け、『#新・観光立国論』『#新・生産性立国論』など、日本を救う数々の提言を行ってきた彼が、ついにたどり着いた日本の生存戦略をまとめた『#日本人の勝算』が刊行された。
東洋経済オンライン / 2019年1月
人口減少と高齢化という未曾有の危機を前に、日本人はどう戦えばいいのか。
日本には「永遠の賃上げ」が必要不可欠だ...
日本経済を成長させるためには、「賃金を永遠に上げ続ける」しかない。
これが、約30年間の日本経済研究を経て、私がたどり着いた結論です。
シンプルすぎると思われるかもしれません。
しかし一般論として、分析は深めれば深めるほどロジックと焦点が整理されて、結論がシンプルになる傾向があります。私の結論も、さまざまな仮説を立てては潰していった結果、非常にシンプルなものになりました。
「永遠に賃上げを続ける」と言うと、「ばかなことを言っている」という反応を受けることがあります。
しかし、人類の歴史を長いスパンで見ると、賃金はずっと増え続けてきました。
たとえば、平安時代と比べれば、今の日本人がもらっている給料は天文学的な水準です。
「団塊の世代」と呼ばれる世代の人たちの初任給は、せいぜい数万円だったそうです。
歴史的に見れば、賃金が減っているこの数十年のほうが「異常事態」なのです。
平安時代から続く本来のトレンドに戻るべきなのは明らかです。
最近よく聞く「#生産性向上」や「#技術革新」などは、よくよく考えればただの方法論で、最も本質的・根本的な視点は給料を引き上げることです。生産性向上など、ただ単に給料を上げるための道具にすぎないのです。
もちろん、これを実行するのは決して容易なことではありません。
実現のためにはさまざまな複雑な問題を解決しなくてはいけません。
しかし、これは日本に課せられた使命であって、決して避けて通ることの許されない道であると理解すべきです。
そうしなければ、日本経済を成長軌道に乗せることはできないのです。
この連載ではいくつかの問題と解決策を紹介しますが、一つひとつを解決していかないと、経済は成長しません。
一つひとつに、「いや、それは日本では難しいでしょう」というのであれば、賃上げはできず、経済が縮小して、国家は破綻します。
日本にはもはや、「日本型資本主義」などと言って、非現実的・非合理的な歪みを正当化する余裕はないのです。
改革を断行しないといけない理由は明確です。
人口減少と高齢化です。
実は人口減少と高齢化の悪影響が日本経済に本格的に襲いかかってくるのは、これからなのです。
構造的に需要が減少するという大問題
資本主義の歴史は人口増加の歴史でもあります。
要するに、今の資本主義は人口増加を前提とした経済モデルなのです。
これからその基礎となる人口増加が減少に転じますので、「人口増加資本主義」というパラダイムを、人口減少にふさわしい資本主義に作り変える必要があります。
今後、日本では、どの先進国より早いスピードで、かつ大規模に人口が減ります。
人口が減るということは、消費者という需要者が減ることを意味します。
有効な対策を打たなければ、消費の総額が減ります。
需要が減れば、物もサービスも需要と供給のバランスが崩れ、供給過多になります。
このことに異を唱える方はいないでしょう。
さらに、日本では他国よりも早いスピードで、高齢化がますます進展します。
総人口に占める高齢者の割合がこれから数十年間、ずっと増え続けるのです。
人間は年を取ると、若いころに比べて消費する金額が減ります。この現象は、日本のみならず、どこの国でも確認されている疑う余地のない事実です。
老人も若者も同じ1人の国民ですが、先ほども説明したように若い人と高齢者の消費額は違うので、仮に総人口が減らないとしても、高齢化が進んで高齢者が総人口に占める割合が増えれば増えるほど、総需要は減るのです。
日本銀行は需要を喚起するために、かつてない規模で量的緩和を続け、銀行に資金を提供し、流動性を高めようとしています。しかし、日本ではなかなか期待していたような成果につながっていません。
日本では人口が減少しているうえ、高齢化が進むので、お金を借りる人は減る一方です。
お金を使う人の数も減っていますので、構造的な減少要因が拡大しています。
量的緩和は、しないよりはしたほうがいいのですが、日銀の狙いであるインフレを引き起こせるほどの効果は期待できません。
実は、人口が増加し、若い世代が多い経済でないと、量的緩和では需要が喚起されづらく、効果が出づらいのです。
この傾向は全世界で確認されて、いくつかの論文も発表されています。
人口が減る以上、賃金を上げないと経済は縮小する
日本経済、すなわち日本のGDPの半分以上は個人消費で構成されているので、個人消費を刺激するのが、経済を成長させるのに最も効果的なのは明らかでしょう。
しかし、日本ではすでに人口が減少し始めており、今後も数十年にわたって減り続けると予想されています。
人口が減る以上に消費を刺激するには、どうしたらいいか。
一人ひとりが受け取る賃金を増やすしか方法はありません。
少し極端な例ですが、人口が2人しかいない国があるとしましょう。
2人の収入はそれぞれ年間100万円で、2人とも全額を消費するとします。
この場合、200万がこの国の個人消費総額になります。
この国にも人口減少の波が押し寄せ、1人減り、総人口が1人になってしまいました。
この状況で何もしなければ、個人消費総額は200万円から100万円に減ります。
こうならないようにするためには、残されている1人の年収を200万円にする、つまり賃上げするしか方法はありません。
もちろん、現実の世界では、ここまで極端な例は存在しませんし、対策もここまで簡単な話で済むわけではありません。しかし、究極的な本質は、この例と同じです。
実は今のGDP規模を維持するためには、生産年齢人口1人当たりのGDPを現行の724万円から、2060年には1258万円に上げていく必要があるのです。
冒頭でも説明したとおり、人類の歴史を長いスパンで見ると、人々が受け取る賃金は右肩上がりで大きく増えてきました。
一方、短いスパンで見ると、日本では1990年代に入って以降、次第に給料が減っているのがわかります。ちょうどその頃から、日本では消費者物価の上昇率がマイナスに転じるなど、デフレの様相を呈し始めました。
私は、日本経済をデフレに陥れ、抜け出せなくしている最大の原因が、給料の低下であると分析しています。
日本の失われた25年は、給料低下がもたらした不況の結果だと言っても過言ではないのです。要するに、「#労働分配率の低下」がもたらした不況でした。
経済成長には、大きく2つの要因があります。
1つは人口増加要因で、もう1つが生産性向上の要因です。
今まで50年間における世界の経済成長の半分は、人口増加要因によりもたらされたものです。
生産性向上要因の一部も、実は人口増加に依存していることがわかっていますので、人口増加要因の影響はより大きかったと判断することができます。
これから日本では人口が減ります。
そのため、日本では人口増加要因が経済成長にマイナスに働きます。
ですので、何もしなければ、日本経済はどんどん縮小していきます。
人口が減少するのであれば、生産性を高めなければ、経済成長を果たすことができません。
しかも、生産性向上要因が人口減少のマイナス要因を上回ってはじめて、経済は成長するので、日本はどの先進国よりも生産性を向上させなくてはいけないのです。
生産性の水準と所得水準の間には、極めて強い相関関係があります。
生産性が上がれば、給料も上がるのが道理です。
逆に考えると、所得が増えなければ、生産性は継続的に上がらないはずです。
つまり、給料が上がらなければ、日本経済は絶対に成長しないのです。
ですので、冒頭でも書いた通り、日本経済の成長は賃上げにかかっているのです。
この件に関しては、議論の余地はありません。
残る問題は、「どうやって賃上げするか」だけです。
具体的にどうやって賃上げを実行すべきか、また、実現するためには何をするべきかの説明は、追って別の記事で紹介することにして、ここでは1つ重要なポイントがあります。
それは、「最低賃金を上げ続けなければならない」ということです。
継続的な最低賃金の引き上げが日本を救う
計算上、日本経済を継続的に1%成長させるには、日本人の最低賃金を毎年4~6%、継続的に上げる必要があります。
これを実現することができたら、日本にはこれまでとは違うまったく新しい時代が訪れます。そうなってこそ、ようやく失われた25年からの脱却が果たせるのです。
上記の場合、2040年の最低賃金は2059円となります。
政府の一部には最低賃金を1000円にするという人がいますが、それでは到底足りません。
ここまで上げないといけない理由は、社会保障です。
労働者1人・1時間あたりの社会保障費負担額は2020年に約824円ですが、今の制度が変わらないと仮定すると、これが2060年には2100円を超えてしまうのです。
国が主導し、賃上げ政策を実現させれば、税収が増え、年金と医療の問題も次第に解決されます。
また、国の借金問題も解決に向かい、少子化問題も解決されます。
同時に、女性活躍も進むことでしょう。
■賃上げ圧力は高まりつつある
「『永遠の賃上げ』が最強の経済政策である理由」では、日本経済復活のために賃上げがいかに重要かを説明しました。
生産性についてはこの数年、かなり理解が進んでいるものの、生産性向上の目的は「賃上げ」だということに気づいていない方が多い印象を受けます。
これまで日本が約30年にわたって苦しんできたデフレの主因は、規制緩和が悪用され、労働分配率が低下したことであり、逆に賃上げに方向転換させれば、日本も再び経済を成長させられるというのが、私の分析の結論でした。
賃上げは人口減少に伴って生じるさまざまな問題とも深く関わっています。
日本ではすでに人口減少が始まっており、労働市場の需給バランスが崩れ、供給側、すなわち労働者側に有利になってきています。
その結果、賃上げの圧力がだんだんと強くなりつつあります。
この傾向は大いに歓迎するべきものです。
人があふれていた時代は終わり、労働者は貴重な資源に変わりつつあります。
今、日本は新しい技術を広く普及させ、生産性を高めて、高生産性・高所得の経済モデルにシフトする大きなチャンスを迎えているのです。
人口が減少するため、表面的な経済成長率はそれほど高くはなりません。
しかし、このチャンスをうまくつかむことができれば、国民1人当たりの所得を高め、皆が豊かになり、社会保障制度や国の財政を健全化することも可能です。
■「人手不足」は「悪い労働条件」の結果でしかない
しかし、近視眼的な日本の経営者たちは、今の状況がチャンスであることに気づいていないのか、国に対して極めて危険な訴えをしています。
それが、「人手不足」を理由にした安易な外国人労働者の受け入れ枠の拡大です。
そもそも日本は世間で騒がれているほど、本当にひどい人手不足の状況にあるのでしょうか。このこと自体に、非常に強い疑問を抱いています。
人手不足が深刻になっているのは、いわゆる3K(危険、汚い、キツイ)業種だと言われています。
そのこと自体の真偽はともかくとして、飲食業や宿泊業、営業、医療でも人手不足が叫ばれているのは事実です。
人手不足がひどいと言われている多くの業種には、ある共通の特徴が存在します。
それは労働条件が過酷であることです。
特に、非正規労働者が多く、賃金水準が非常に低い業種ほど人手不足が目立ちます。
今後はさらに人口が減るので、日本ではこのような過酷な条件でも働きたいと考える人はどんどん減っていきます。
労働市場がタイトになれば、よりよい条件で仕事が見つかりやすくなるので、今のような過酷な条件で働かなくてはいけない人が減るからです。
その裏付けは、直近の求人倍率を見ると確認できます。
たしかにここ数年、日本では求人倍率は上昇傾向が続いています。
それをいいことと評価する人がいますが、求人倍率は決して健全な形で上がっているわけではありません。
求人倍率のデータを精査すると、企業の規模が小さいほど求人倍率が高くなっている一方で、規模の大きい企業の求人倍率はあまり改善していないのがわかります。
たとえば社員数300人未満の企業の大卒求人倍率は、2013年の3.27から2019年には9.91まで上がっています。
一方、社員数5000人以上の大企業では、同じ期間に0.60倍から0.37倍へと、むしろ下がっているのです(リクルート調べ)。
企業の規模が小さくなればなるほど給与水準が低くなるのは、日本だけではなく世界中で共通してみられる傾向です。
つまり、求人倍率が上昇しているのは、日本人労働者が給料水準の低い企業から、次第にいなくなっているという現象の表れなのです。
■不足しているのは「人手」ではなく「経営者の能力」
「それこそ人手不足ではないか」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、一概にそうとは言い切れません。
たしかに、規模の小さい企業の経営者は今の状況を人手不足だと感じるかもしれません。
たとえば、今までは10人で仕事をこなしていたある会社で、人口が減ってしまったため、8人しか集められなくなると、その会社の経営者にしてみれば2人分の人手不足が起こっているように見えることでしょう。
しかし、それは今までの仕事のやり方を変えず、そのまま継続しようするから、そう見えるだけです。
その企業のビジネスモデルを変えることによって、10人でやっていた仕事を8人でやれるようにすればいいだけです。
安い賃金でたくさんの人を雇えた状況が変わった今こそ、これまで導入する必要がなかった技術を導入するべきです。
今まで10人でやっていた仕事のうち、技術を導入すれば8人でやれるケースは多いはずです。
行政や銀行などの無駄な書類、ネットで対応できるのにいまだにアナログでやっている仕事も含めてです。
現在、日本の生産性は世界28位という極めて低い水準にあります。
現在の水準が低いということは、伸びしろが大きいという見方もできます。
現段階では生産性が低い企業でも、生産性を高めるために設備投資をしたり、仕事の付加価値を高めるなどの経営努力によって、無駄をなくし、より高い給料で人を雇うことが可能になるので、人手不足の問題も緩和することができるはずです。
たとえば観光戦略を見ても、団体客対応のためにできた施設をそのままにして、安くても泊まりたい客が減る一方の宿泊施設も多いです。
こういった宿泊施設は時代遅れなので、どんなに頑張っても、いつまでたっても需要は戻りません。
だから、従業員の給与を安く押えないと存続できないけれども、そこで働きたい人はいない。これを「人手不足」と定義していいでしょうか。私にはそうは思えません。高齢化に伴って需要の中身が変わったのであれば、それに対応する努力をすべきです。
もちろん、こういう努力を怠り、ただ単に今まで通りのやり方を継続したい、生産性向上なんかしたくないというのであれば、人口減少によって大変な人手不足の問題に悩まされることでしょう。
言い方を変えれば、人手不足を問題視し、政府に対策を求める姿勢こそが、多かれ少なかれ日本の経営者の無責任さを物語っているのです。
■「低すぎる賃金」が日本企業の「無駄」を助長した
今までの日本では、企業経営者たちは優秀な人材を数多く、しかも世界的に見ると異常なまでに安い賃金で調達することが可能でした。その水準はまさに異常です。
例として、日本とイギリスを比較してみましょう。
日本人の生産性はイギリス人の98%です。
一方、日本の最低賃金はイギリスの3分の2です。
そして、この異常に安い最低賃金で働いている日本人が、今も増えているという悲しい現実が存在します。
逆の見方をすると、日本企業は数多くの優秀な人材を安く調達することができたからこそ、生産性が低くなってしまったとも言えるでしょう。
この発想を持って、今までの日本的な問題と言われてきた特徴を再検証する価値は高いです。
たとえば、何人も何人もの人間が雁首そろえて長々と話しても、何も決まらない会議。経営者にしてみれば、労働者の時間単価が安いから、どんなに会議が長くて無駄が生じても、気にもならないのでしょう。いっそのこと、賃金を倍にしてみたらどうでしょうか。
女性の活躍が日本でなかなか進まないのも、原因は同じところにあります。
世界的に見ても、最低賃金で最も多く雇われているのは女性です。
日本の最低賃金で女性を雇って、年間2000時間働いてもらっても、年間の賃金は200万円にもなりません。
大した給料を払っていないから、客観的に見てあまり必要がない仕事でも頼みます。
給料が安いので、技術を導入する必要もないし、会社のあり方を変える必要もありません。
逆に給料が安いから、仮にその人が優秀であっても、能力なりの仕事を頼みづらい。
つまりは、安い給料で人材の調達が可能だから、無駄が蔓延してしまっているのです。
仮に女性社員の賃金が今の3倍だったら、社長も女性社員にもっと活躍してほしくなるはずです。
安い賃金で人を雇い、その人の能力以下の仕事しかさせないのは、無駄以外の何物でもありません。
ただ、経営者としては、無駄かどうかはあくまでも給料とのバランスで決まります。
年間150万円しか払っていない人にお茶を入れてもらったり、銀行に行ってもらったりすることは無駄に感じませんが、その人に300万円を払わないといけないなら、やってもらう仕事の内容をもっと考えます。
このように「無駄に使ってきた日本人労働者が減るから人手不足だ」と考えるのは、あまりにも短絡的だと言わざるをえません。
なぜなら、仕事を効率化して、より生産性の高い仕事に変えるという選択肢もあるからです。生産性向上による緩和策を打てば、その分だけ人手不足は解消されます。
当然、完全には解消されませんが、それでも今言われているほどには、人手不足が深刻にならないのは確実です。
■「外国人労働者受け入れ」の裏にある経営者の甘え
このように人手不足を解消するためにやるべきことは山積しているのですが、一方で、最も安易で危険な外国人労働者の受け入れ枠の拡大が実現しようとしています。
政策を実行に移すにあたって、政府は自分たちの意図だけではなく、企業の経営者がどのようにこの新しい制度を使うか、キチンと想定しておかなくてはいけません。
今回の場合、なぜ企業は人手不足を理由に、外国人労働者の受け入れ枠の拡大をいきなり訴えてきたのか、政府はしっかりと認識しておかなくてはいけません。
先述したように、日本企業の多く、特に規模の小さい零細企業は優秀な人材を安い賃金で雇うことを企業存続の原動力にしてきました。
生産性の水準を考えると、もったいないくらい優秀な人材を、安く雇うことができたから、普通であれば存続することが困難な企業でも生き残ることが可能だったのです。
日本の社長たちは、この恩恵を長い間受け続けてきました。
このような背景があるためか、会社を支えてきた安く使える優秀な人材が減ってしまうにもかかわらず、生産性向上の努力をする気のない経営者が少なくありません。
こういう経営者なら、少なくなる日本人に代わって、低賃金でも過酷な労働条件で働いてくれる外国人の受け入れを求めてきても、不思議ではありません。
より高い生産性を達成するのが難しい、小さい規模の会社の社長たちは特にそう考えるはずです。
こうした企業経営者の声に呼応するように、先日、外国人労働者の受け入れを拡大するための出入国管理法改正案が国会を通過しました。
ですので、政府の意図はともかく、経営者の意図は、多かれ少なかれ、人口減少によって労働者の立場が強くなり、賃上げの圧力が強くなっているのを緩和したい。
その賃上げ圧力を緩和することによって、改革を先送りすることができると意図しているのでしょう 。
■途上国からの受け入れは明らかに「低賃金」狙い
政府は受け入れの対象者を技能者などに限ると言っていますが、受け入れの対象としている国はミャンマー、フィリピン、ベトナムなどの、いわゆる途上国にしていることにポイントがあります。
もちろん、これらの国々の出身者を見下すつもりは毛頭ありませんが、途上国なので、これらの国々に高い技能を持つ労働者が多くいるはずもありません。
これらの途上国からやってくる外国人労働者を、日本人以上に安く雇うことができるから、今までのやり方を変える必要もなく、経営者たちは既得権を温存できます。
一方で、今でさえ世界一厳しい状況にある企業間の過当競争が激化して、デフレをさらに深刻にするでしょう。
安い賃金で働く人が増えれば増えるほど、経済全体にとっては、生産性を抑制することにもつながり、高生産性・高所得経済への移行は夢に終わってしまいます。
たしかに外国人の受け入れを増やせば、需要者が増えるという意味で、人口が減ることによる経済への悪影響は多少緩和されます。
しかし、一方で、日本で働く労働者全体の所得レベルの低下を招くことも十分に考えられます。
ある一定期間の滞在の後に、外国人労働者が皆帰国してくれればいいのですが、その後も日本に住み続けることになれば、所得の水準の低い人が増える分だけ、今まで以上に社会保障の健全性が棄損する結果につながります。
極めて短期的に考えれば、外国人労働者の受け入れ拡大は、日本経済にとっての特効薬に見えるかもしれません。
しかし、実際にふたを開けた途端、歴史に残る大間違いに終わる可能性は極めて大きいと懸念せざるをえません。
やはり、外国人を簡単に受け入れる前に、もっと真剣に生産性向上に取り組むべきです。ほかにもやるべきことはいくらでもあるはずです。
同時に、労働者は安く雇って無駄に使うのが当たり前だという、世界的に見て非常識な日本企業の経営者のマインドを変えることも必須だと感じます。
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