#社会福祉法人制度改革(2) ... #社会福祉法人の公益的な取組み #障害者の働きたい、地域で暮らしたい願いかなえる
東京の特養ホーム、困窮者を受け入れ 社会復帰に向け働く場を提供
2016年10月21日 福祉新聞編集部
東京都社会福祉協議会は9月21日、東京都地域公益活動推進協議会を立ち上げた。
加入した社会福祉法人が連携し、困窮者や引きこもりの人などを福祉施設で受け入れるなど、地域における公益的な活動を推進する。
同日の設立総会で、初代会長に就任した品川卓正・村山苑理事長は「社会福祉法人のイメージアップにつなげたい」と決意を示した。
今年成立した改正社会福祉法は、社会福祉法人が地域で公益的な取り組みを実施する責務を規定。
社会的孤立の問題など市場で安定的に供給できない支援の提供が期待されている。
一方、近年、社会福祉法人には「余剰な資金がある」といった厳しい指摘もあった。
こうした現状を背景に、東社協は推進協議会を発足させ、社会福祉法人の公益的な取り組みを後押ししたい考えだ=表。
設立総会で、品川会長は「今後も社会福祉法人が社会福祉事業の主たる担い手として存続発展するためには、株式会社がやることと同じと思われてはならない」と危機感をにじませた。
その上で、「存在意義を高めて社会福祉法人のイメージアップを図っていこう」と呼び掛けた。
同日までに推進協議会に加入したのは、216法人・784事業所。
年内までに1000事業所の加入を目指すという。
年6000円の基礎会費のほか、法人規模に応じて活動会費が必要となる。
今後、推進協議会は東京都全域で、困窮者やニート、引きこもりの人などを対象に、社会復帰に向けた最初の居場所として福祉施設を提供。
具体的には、特別養護老人ホームや障害者施設での掃除などの間接業務を想定している。 また、市区町村ごとに、種別を超えた社会福祉法人のネットワークもつくる。
社協を中心に社会福祉法人が集まる場を設けて地域ニーズを発見し、複数法人が連携して解決するシステムを目指す。
さらに推進協議会は、社会福祉法人がそれぞれ行う地域公益活動に関する事例を収集。
情報提供することで、それぞれの活動を後押ししたい考えだ。
設立総会後、松田京子・東社協福祉部長は本紙の取材に対し、「社会福祉法人、各地域、東京都全域という3層で支援するところが、推進協議会の大きな特徴。
同じ東京の中でも、都市部と地方では地域課題や社会資源が異なっており、それぞれの地域に合った柔軟な支援ができれば」と語った。
社福法人が空港で立ち飲み屋 地酒「獺祭」や特産品を販売(山口)
2017年01月27日
山口県宇部市の社会福祉法人南風荘(西重國隆理事長)は山口宇部空港内で、特産のワタリガニを使った煎餅を販売し、立ち飲み屋と地酒販売店も経営している。
障害者の「働きたい」「地域で暮らしたい」という願いをかなえるため、さまざまな仕事に挑戦する取り組みは、地域活性化にも貢献。
空港の「おもてなし役」となっている。
就労継続支援B型事業所「セルプ南風」「セルプ岡の辻」など6事業所を運営する南風荘は、1954年に聴覚障害者の職業自立を支援するために設立された「県聾唖連盟」を母体とする法人。
その後、重度身体、知的などさまざまな障害者を支援するようになり、それに合わせて作業内容もウエス加工、観賞魚のリース、印刷事業など増やしていった。
食品の加工・販売は、2002年に県の「障害者等地域モデル協働事業」に応募して、地元企業や行政などと一緒に地域活性化のための名産品づくりに着手。
2年かけて特産のワタリガニを使った「おごっそ蟹せんべい」を開発したことから始まった。
煎餅は、地元企業が開発したプレス機で生のワタリガニの身を搾り、残った殻をミキサーにかけて蟹ソースを抽出。
これにデンプン、キビ糖などを加え混ぜた後、2度焼きする。
蟹のプレスから焼き、袋詰めまで工程の大半を6人の利用者が担う。
煎餅(9枚入り360円)は空港の土産物店やキヨスク、スーパーなどで販売し、「蟹の風味いっぱいで、おいしい」と大好評。
県特産品振興奨励賞を受賞するなど市を代表する名産品になり、売り上げも10年度に1800万円になるなど地域振興に一役買った。
煎餅を通して築かれた地元企業や行政との関係は、全国の空港で唯一の立ち飲み屋「角打鍋島」と、社会福祉法人唯一の地酒販売店「地酒鍋島」へとつながっていった。
「角打鍋島」は、閉店した立ち飲み屋を引き継ぐ形で08年に開店。
職員の「やりたい」という声に応え、法人役員が空港関係者などに働き掛けた。
最初は赤字続き。
接客技術を向上させ、メニューを工夫するなど営業努力を重ねたことで徐々に売り上げが伸びた。
売っているのは6種類の地酒とビール、かまぼこ、エビの佃煮などのつまみ、うどんなどの軽食。
2人の利用者が調理・接客補助で働いており、売り上げは年1300万円を超える。
空港内の飲食店が午後7時に閉まる中、最終便の到着まで開けている同店は、出張帰りの地元企業社員などにとって有り難い存在になっている。
「地酒鍋島」も閉店した土産物店の後を受けて10年に開いた。
開店に際しては一般酒類小売業販売免許を取得する一方、西重理事長らが地元酒造メーカーをまわり、酒を卸してくれるよう依頼。
その結果「獺祭」「貴」「雁木」「五橋」などの銘酒を販売できるようになった。
利用者1人が販売補助で働いており、年間売り上げは5400万円を超えるという。
地元企業や行政との連携を図りつつ、作業項目を増やしている南風荘。
平均月額工賃は、煎餅づくりや縫製作業のセルプ南風が1万5000円、「角打鍋島」などを経営するセルプ岡の辻が2万6500円、ウエス加工のセルプ藤山が3万2000円と、全国平均を大きく上回る。
セルプ南風の工賃がやや低いのは重度・高齢者が多いことと、煎餅の売り上げが最盛期の半分以下に落ちたためだ。
そこで南風荘は、煎餅の塩分を減らすなど味を改良するとともに、新商品として「揚げ」を開発。
最盛期と同様の売り上げを目指す一方、行政や企業などからの仕事を受ける「共同受注」にも力を入れている。
「空港の仕事は休みがなく、立ち仕事でつらい。職員の負担も大きい。利用者の高齢化も進んでおり、個々に合った仕事を確保しないといけない」と話す西重理事長。利用者の「働きたい」「地域で暮らしたい」という願いをかなえる取り組みが止まることはないようだ。
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