2018年度の診療報酬・介護報酬の同時改定... #かかりつけ医制度



2018年度の診療報酬・介護報酬の同時改定、来年初頭から集中的に検討へ 厚労省方針

2016.12.21

厚生労働省は21日、2018年度に控える6年に1度の診療報酬と介護報酬の同時改定に向けて、来月にも本格的な議論に着手する意向を示した。

中医協(*)の総会で、「平成29年当初から集中的に検討を始める」との方針を説明。

増大していくニーズに応えられる体制をつくるため、医療と介護の連携を深める施策などを俎上に載せる考えだ。

介護給付費分科会(*)と中医協の足並みが乱れないように進めるとした。

共通の課題について調整するため、双方の委員が参加して意見を交換する場を新たに設けるという。

厚労省の担当者は、「どのような形にするかは協議中」としている。


* 中医協

中央社会保険医療協議会。主に診療報酬を議論する厚生労働大臣の諮問機関。


* 介護給付費分科会

社会保障審議会・介護給付費分科会。主に介護報酬を議論する厚生労働大臣の諮問機関。

厚労省はこれまでの中医協で、今後の「主な検討項目」を提示している。


詳細はこれからだが、

・ かかりつけ医機能とかかりつけ歯科医機能
・ 看取りも含めた訪問診療、訪問看護
・ 外来や通所、地域におけるリハビリテーション
・ 患者や家族への情報提供や相談支援
・ 認知症患者への質の高い医療
・ バイオテクノロジー、ICT、AI(人工知能)といった新たな技術への対応


などをあげている。

「同時改定は大きな節目。極めて重要な意味を持つ」と位置付けており、その動向に注目が集まりそうだ。内容が固まるのは来年末の予定。



超高齢社会で「かかりつけ医」制度はどこまで広まるか。過去最高額を更新した41.8兆円の医療費を削減するための方策とは?

2016/12/20 17:00


今年10月、一般社団法人日本経済団体連合会(経団連)は、「医療・介護制度改革に関する経団連の考え方」を公表しました。

このなかで「外来受診について、頻回受診の防止や保険財政の健全化を促す観点から、現行の定率負担に加え、一定額を患者が追加的に負担する制度を導入すべき。『かかりつけ医』の機能を明確化したうえで『かかりつけ医』以外を受診した際に定額負担を求めること」を提言しました。


「かかりつけ医」は、医療だけでなく地域医療にも貢献する存在

「かかりつけ医」とは、日本医師会・四病院団体協議会によると「なんでも相談できるうえ、最新の医療情報を積極的に学び、必要なときには専門医、専門医療機関を紹介でき、身近で頼るになる地域医療、保健、福祉を担う総合的な能力を有する医師」をさします。

主な役割は以下の2つ。医療のみならず、健康相談や行政活動への参加なども含まれ守備範囲は広大です。


医療的役割

日常診療において、患者の生活背景を把握し、自己の専門性に応じた医療を提供する。自己の専門性を超える場合は、さまざまな診療科へ医療機関への紹介を行い、患者にとって最良の解決策を提案する。医師側の都合で自己の役割を規定することはしないで、患者の持ちかける保険、医療、福祉の諸問題に広範囲に対応する医師として対応する。


社会的役割

日常行う診療のほか、地域住民との信頼関係を構築し、健康相談、健康診断・がん検診、母子保健、学校保健、産業保健、地域保健などの地域における医療を取り巻く社会的活動、行政活動に積極的に参加ことはもちろん、保健・介護・福祉関係者と連携する。

また、地域の高齢者が少しでも長く地域で生活できるよう在宅医療にも関わる。


「かかりつけ医」には誰でもなれるわけではありません。

「認定かかりつけ医制度」を有する鹿児島県医師会の資料によると「かかりつけ医」の要件として、日本医師会生涯教育講座を受講し、地域保健医療活動(学校医、産業医、在宅医療の提供、介護保険認定審査委員、平日夜間、休日当番医など)に2~4つ従事している医師。

もちろん、鹿児島県内で医療を提供していることも求められます。

そして、3年に一度、「かかりつけ医」にふさわしいか見直しが行われます。


医療費の抑制に貢献する「かかりつけ医」は先進諸外国では一般的なもの

今年4月に日本医師会は、「かかりつけ医」の能力向上を図る目的で「日医かかりつけ医機能研修制度」を開始しました。

この制度は、「基本研修」「応用研修」「実地研修」と3つの研修で構成されており、3年間で下記表の要件を満たした場合、都道府県医師会より修了証書または認定証が発行される仕組み。

政府に対して発言力を有する日本医師会が「かかりつけ医」の能力向上に乗り出した形です。


日本医師会が「かかりつけ医」に熱心になる背景には「医療保険財政のひっ迫」があります。

厚生労働省は、2015年度の医療費概算は過去最高額の41.5兆円になると発表しました。

40兆円を超えたのは2年連続です。


一般的に、患者は医療機関を受診しても納得できる答えが得られるまで医療機関を探す傾向にあります。

地元の医療機関を受診しても本当に大丈夫か不安に思い、都市部の大病院にセカンドオピニオン(場合によっては、サードオピニオン、フォースオピニオンもあり得る)を求めることもあります。

日本の医療制度では安心を買うために患者が医療機関を“はしご”することが可能で、こうした「頻回受診(はしご受診)」や初診時にかかる費用(「選定療養費」といい、初診に対応すると診療報酬が上乗せされる)の積算が悪影響をもたらしていると考えられています。 


実は、「かかりつけ医」は、先進諸外国では一般的なものです。

以下では、各国の「かかりつけ医」制度の概要をご紹介します。

イギリス

住民は、あらかじめ登録した診療所で診療を受け、必要に応じて「かかりつけ医」の紹介のもとに病院の専門医を受診します。ただし、住民は、自由に診療所の住所を変更できます。

フランス

2005年7月に「かかりつけ医」を導入しました。「かかりつけ医」にかからない場合は、負担金が増額される仕組み。ただし、「かかりつけ医」の変更はいつでも可能です。

ドイツ

国民の約9割が「かかりつけ医」を持っている

オランダ

住民のほぼ全員が「かかりつけ医」を持ち、交通事故などの救急時を除き、原則「かかりつけ医」を受診しなければなりません。

デンマーク

自宅から10km以内に開業している医師を「かかりつけ医」として登録し、受診します。


ドイツでは国民の9割が「かかりつけ医」が決まっているというデータがあるようですが、日本ではどうでしょうか。

厚生労働省の資料によると、日頃から決まった医師に受診している人の割合は5割にも満たないという結果が出ています。


一方、決まった医師をもたない人のその理由は、「あまり病気をしないから」が56.3%、「その都度、適当な医療機関を選ぶ方がよいと思うから」が20.6%という結果でした。

年齢が上がるにつれて、「かかりつけ医」が決まっている人の割合は増える傾向にあるようです。

諸外国では、あらかじめ医療機関を登録したうえで受診する体制を採用している国がほとんどであるようです。

フランスは、「かかりつけ医」以外を受診した場合は負担金が増額されるという、患者にとって厳しい仕組み。

こうした仕組みがあるからこそ、医療費のコントロールが可能になるのかもしれません。

受診の機会がなければ「かかりつけ医」の必要性が低いことは当然かもしれませんが、高齢になるにつれて、慢性的な病気や認知症の症状が出てくる恐れがあります。

日頃から医師と信頼関係を築き、心身の変化があったときに相談できる体制にしておくことは、地域住民にとってもメリットがあるといえます。

医療費の抑制のためにこういった措置を取るというより、むしろ緊急性の低い受診に関しては「かかりつけ医」によって十分に対応できる体制にしておく、ととらえておくとよいでしょう。

政府の医療政策の方針転換のきっかけともなり得る「かかりつけ医」制度

厚生労働省はこれまで、国民皆保険のもと、医療への「フリーアクセス(いつでもどこでも医療を受けられる)」を推し進めてきました。

これが医療費の膨張を招いたという意見もあるでしょう。

医療保険財政の持続性が疑われるなか、適正受診を図るために「かかりつけ医」制度が議論されるのはもしかすると自然なことなのかもしれません。

先進諸外国を模範にして、日本でもしこの制度が導入された場合は、受診できる医療機関が制限されることになります。

厚生労働省が推進してきた「フリーアクセス」を自身で否定することにもなりかねない事態です。

日本医師会がここに来て「かかりつけ医」の能力向上を図る目的で「日医かかりつけ医機能研修制度」を始めています。

ともすれば、「かかりつけ医」制度は、医療政策を転換させる端緒となる可能性もあるのではないでしょうか。


地域包括ケアシステムのもと、地域医療の重要性は高まるばかり。

地域医療の核となる医師の役割は今後どう規定されるのでしょうか。


1982年以降、医師数は増加し続けるも「医師不足」は解消せず……

一般的に高齢になると免疫力が低下し、医療が必要になります。

急に体調を崩し、搬送されるケースも多く見られます。

2013年の年齢区分別搬送人員を見ると、高齢者が約290万人と約半数を占め、年々高齢者の割合が高まっているとわかります。

搬送される高齢者の約6割が「中等症」以上。

つまり、搬送された時点で重篤な状況なのです。

救急搬送で死亡する高齢者数は約6万人に上ります。

このなかには、日頃から適切な医療を受けていれば、救われた命もあったかもしれません。

このような状況を招く一端に「医師不足」があります。

とりわけ「救急医療に関わる医師が不足している」と指摘されています。


厚生労働省の「医師・歯科医師・薬剤師調査」によると、全国の届出医師数は31万1,205人(2014年12月31日現在)です。


医師数及び人口10万人に対する医師数は、1982年の調査開始以来、右肩上がりで上昇。

一貫して医師数は増加しているにもかかわらず、「医師不足」と言われるのには理由があります。






日本の総医師数は国際的に見ても少ない。

臨床医師数はOECD平均を下回る

下記のグラフは、2006年の人口千人当たり臨床医師数を国際比較したものです。

日本は、2.1人とOECD平均である3.1人を下回っています。

上位には、ベルギー、スイス、ノルウェーなど福祉国家が顔を出す結果に。

つまり、日本の総医師数は先進諸国のなかで「少ない」とデータも証明しているのです。

不況のなかにあっても必要求人医師数は高止まりしています。

厚生労働省の「病院等における必要医師数実態調査」によると、必要求人医師数は18,288人。

病院側も「医師不足」を強く認識していると言えるでしょう。


無医地区は705地区。北海道や広島県などいまだに満足に医療を受けられない地区もある

救急患者の受け入れ拒否などが明るみに出ると「医師不足」だけでなく、「医師の偏在」が議題に上ることもあります。

厚生労働省の「医師・歯科医師・薬剤師調査」によると、都道府県(従業地)別にみた医療施設に従事する人口10万対医師数を見ると、京都府が307.1人と最も多く、次いで東京都304.5人、徳島県303.3人となっています。

一方、最も少ないのは埼玉県で152.8人。

次いで茨城県169.6人、千葉県182.9人となっており、人口集中地帯である首都圏においても格差があることがわかります。


注目したいのは同一都道府県内における医師数の違いです。

例えば、岩手県。

岩手県の二次医療圏別に人口千人当たりの医師数を見ると、医科大学がある県庁所在地の盛岡では、2.80人と全国平均の2.19人を大きく上回っています。

しかし、地方の二次医療圏に目を移せば状況は一変します。


※「二次医療圏」とは、健康増進・疾病予防から入院治療まで一般的な保健医療を提供する複数の市町村にまたがった圏域のこと。


三陸海岸沿岸の久慈や宮古、釜石ではそれぞれ1.14人、1.19人、1.28人と深刻な医師不足に陥っています。

つまり、県庁所在地ほか主要都市に医師が偏在し、過疎地域が苦境に立たされているということが見て取れます。


過疎地域のなかでも「へき地」と呼ばれる地域では、問題は深刻です。

医療分野における「へき地」とは「交通条件および自然的、経済的、社会条件に恵まれない山間地、離島その他の地域のうち、医療の確保が困難である地域をいう。

無医地区、無医地区に準じる地区、へき地診療所が開設されている地区等が含まれる」と定義されています。


厚生労働省の調査によると、無医地区は705地区、無医地区人口は13万6,272人(出典:平成21年度無医地区等調査・無歯科医地区等調査)。

へき地数が最も多いのは、北海道で111地域。

次いで、広島県56地域、鹿児島県53地域となっています。

徐々に地区数は減少しているとはいえ、いまだ満足に医療を受けられない地域がいまだ存在するのです。

ちなみに、無医地区とは「医療機関のない地域で、当該地域の中心的な場所を起点として概ね半径4kmの区域内に人口50人以上が居住している地域であって、かつ、容易に医療機関を利用できない地区のことをいう」と定義されています。

事態を重く見た広島県は「広島県北部地域移動診療車」を整備。

この移動診療車は、庄原市のほか2自治体及び庄原赤十字病院など3病院と共同して、現在運行されています。

この車両には、各種医療機器が搭載されており、血液検査や腹部・心臓の超音波診断、心電図検査が可能となっています。


医学部入学定員増で医師不足は解消する?「医師の偏在」を解決するには荒療治も必要か

これまで見てきたように、医師不足は「医師数の不足」と「医師の偏在」から成り立っています。

そこでここからは、その解決策を考えていきましょう。

まず「医師数の不足」からです。

これは、医学部の入学定員数を増やすことである程度対処できるかもしれません。

文部科学省は、医師不足を受けて、2015年度の医学部入学定員総数を9,134人に引き上げました。

ただし、「地域医療に従事することを条件とする奨学金を設けたり、複数の大学が連携して研究医を養成したりする場合に定員増が認められる」としています。

しかしながら、少子化が進むなか、学生数を確保できるかは未知数。

私立大学を中心に一部の医学部では、定員割れを起こしています。


次に「医師の偏在」についてです。

「医師の偏在」が加速化した要因についてよく言われているのが2004年に導入された「新医師臨床研修制度」の影響です。

この制度により、研修医は自由に研修先の病院を選べるようになりました。

結果、多くの研修医が都市部の病院を選ぶようになり、そのまま就職するようになったのです。

それまで、研修医の多くは出身大学の医局に加入し、その医局から派遣された大学病院やその関連病院において研修を行うことがほとんどでした。

そして、大半の研修医は大学病院などに勤務し、地域医療に尽力したものです。

欧米各国でも、実は「医師の偏在」は大きな問題になっています。

対処策として、フランスでは、国が地域や診療科ごとに必要な医師数を調査し、病院ごとに受け入れる研修医の数を決定しています。

ドイツでは、州の医療圏ごとに人口当たりの医師の定数を設け、定数の110%を超える地域では保険医として開業できない、という規制を敷いています。

医療は「社会インフラ」の一部です。

たとえどこに住んでいても、高齢者が受けたいと望む医療がいつでも受けられるよう医師不足に取り組む必要があるのではないでしょうか。

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